平和のつくりかた

「戦争のつくりかた」という絵本を読み(今の平和を守るためには、何かをしなければ!)とこのブログを始めることにした。 

「海の中から地球を考える」(プロダイバーが伝える気候危機)

2022年01月28日 21時29分24秒 | 地球の視点で考える

     児童向けの本だが、内容は濃い!この本のタイトルから、考えて「地球の視点で考える」というカテゴリーを作りました。持続可能な社会をめざす「SDGs」としてもいいかとも思いましたが、自分の家族や自分の国のことだけを考えるのでは、もう自分たちの生活もままならなくなる現実を知るにつけ、このタイトルを加えてみることにしました。過去の記事でも、これに当たるものもあると思いますが、今回からスタートしました。

   さて、最初は37年のダイバーが海をみての気づきから:

   ダイバーとして海に潜った作者の目で見た気候変動・・・太平洋のど真ん中でも、人間の廃棄したペットボトル、ビニール袋、漁網が浮かび、2050年には、海にいる魚の量を海洋プラスチックゴミが上回るという予測もある。水温の上昇がもたらしたと思われる珊瑚の死滅(白色化)

   1984年にプロダイバーになり、翌年に神奈川県藤沢市に「パパラギ」というダイビング会社を作った著者。

   *この「パパラギ」の由来となった100年前に出版された、自然と共生するサモアの酋長のヨーロッパ旅行記のタイトルから取った名という。この本、読んでみると示唆に富んでいたので、是非簡単に読めるしお勧めです。

    この本で、一番ショックを受けたのは、白色化が進む珊瑚についての話でした。珊瑚は褐虫藻(かっちゅうそう)という陸の植物のようにCO2を吸収して酸素を出す光合成を行う植物プランクトンを身体の中にたくさん住まわせて、その栄養の1部をもらい、動物プランクトンも食べながら生きている。そして、褐虫藻と珊瑚が作り出す環境が、たくさんの生き物の「生命のゆりかご」になっているそうだ。

   陸地の森林火災で森が失われている話はよく聞くが、この海中の珊瑚礁の瓦礫化は、一旦始まるともどせないという。2011年に国連生物多様性条約事務局がレッドリストを発表した際にも、「人の目に触れない海が最も危機的である」と述べていたという。陸の森林に当たる海藻も光合成を行うが、これも「磯焼け」と言って日本全国で減少しているという。

   そして、この太陽光が届く場所に住む海藻類や植物性プランクトンの光合成が、地球の酸素の3分の2を作っているという。

   さらに注目しないといけないのが、海が大気中のCO2を吸収する力のこと。海は大気の中にある約50倍のCO2を蓄えており、人間によって出されたCO2も約30%吸収してくれているという。今、光合成を行ってくれている海藻や植物プランクトンが減少していくと、大気中のCO2は大気に残ってしまうのだ。

   また、海というのは、山、川、海岸と深い関連性をもっていて、降った雨や、雪が溶けて川になり海に流れ込む。この自然の循環を、山にスキー場ができて保水力が失われ土砂崩れが起こったり、海岸線にコンクリ土台を作ったリゾートホテルや何かができて砂浜が減少すると、問題が起きた。海を健康にするには、山や川も大切なのだ。 襟裳岬の百人浜一帯ではこの問題の解決に広大なクロマツの植林を漁師が行い、襟裳の海が守られた話が載っていた。気仙沼でも、海で養殖のりの生産をしていた人々が、大川の上流に広葉樹の植樹を行った話がある。(そういえば、前回のNHKの朝ドラ「お帰りモネ」でも山と海は友達~という話が取り上げられていた)

   2006年の米国科学雑誌サイエンスには、2048年には海から食用の魚がいなくなると書かれていたという。海水温の上昇、陸地からの海水汚染などが予測されるからだ。持続可能な漁業のあり方。日本で普通のイルカのショーが、外国の人には残酷と見られている(鯨を食用するのと似ている?)話。火山噴火で5年全島避難があった三宅島の海は、驚くほどの生物が育っていたという話から、海洋保護区の設定をして、海の生物を乱獲から守ろうとの訴え。「海の公海は地球表面の半分。そこに大規模な海洋保護区を国連が国際条約で作ろうとしている」と書かれていた。

  「海を守ることが、地球全体の命を守ることに繋がる」

  海が光合成に重要な働きをしている認識が全くなかったので、これには驚嘆した。もっと多くの人に理解してもらわないといけないと思った。

  また、核実験や兵器、戦争による環境破壊ほど有害なものはない。プラスチックはリサイクルすればいいという話もあるが、リサイクル率85%といっても、中身が問題。リサイクルの6割は「熱回収」といって、プラスチックゴミを燃やした熱で発電するのに使っている。(詳細は、一般社団法人プラスチック循環利用協会HPへ)日本では、熱利用することを「サーマルリサイクル」と言っているが、海外では燃やすことをリサイクルとは認めていないという。

    *因みに、このHPにアクセスしたら、ココに下のような「2020年のプラスチック再利用フロー図」が出ていた。

   

   熱利用と思われるものを足し込んで全体から割合を調べたら、6割ちょっとが「熱回収」2割ちょっとしか「再生利用」されていないのが分かった! 6割は熱にする時にCO2もだしているのだ。

   「3Rが大切。リサイクルよりリユース。リユースよりもリデュース」(リサイクルより再使用。再使用より使用を減らす)

  著者は自分の店エコストアー「パパラギ」で講習会を行い、環境問題を人々と考えてきたという。そういう皆で身近に環境問題に意見交換する場をもつのは、とても大切だと思った。また、そんな中で、著者は、神奈川県の横須賀石炭火力発電所建設中止の活動もしているという。

  石炭火力発電については、NPO「気候ネットワーク」の平田仁子さんが、環境部門のノーベル賞といわれる「ゴールドマン環境賞」を取って去年大きく話題となって私も凄いことだと思った。彼女たちの働きで住民達も動き、50基の石炭火力発電計画の17基が計画中止されたのは快挙だと思った。ただ、彼女の話を聞くと、現在166基の石炭火力発電が稼働中で、CO2を排出し続けている現状。いまだにそんな中で、新設石炭火力発電の建設をしようとしている日本の問題点を、国民はもっとしっかり見ていかないといけない。原発の廃炉どころか再稼働や、海外への売り込みを続けようとしていた日本。今は、石炭火力発電を海外に売り込もうとしている! 本来なら、福島原発事故の当事国として、先頭にたって廃炉技術を磨き、それを海外に売れるほどに進めるのが日本の進むべき道なのに!!!!

                *平田仁子さんの受賞スピーチはとても素晴らしいので、10分で聞けるので是非ココから聞いてみよう!

  石炭火力は、CO2排出が液化天然ガスLNGの2倍と言われ、世界的に脱石炭が潮流になっている今、新しくこの時期に新技術と言いつつ排出ガス量の大きい石炭を新設するのはおかしすぎる!日本は、COP26で不名誉な化石賞を連続もらっているが、原発再稼働や、CO2を再利用する新技術と言い出したり、エネルギー政策は迷走中だ(嘆息) 再生可能エネルギーに全力を注がないので、菅元首相が「脱炭素が2050年にゼロに」とは言ったモノの、実現は疑わしい。

  皆で、エネルギー問題を自分のこととして考えていきたいものだ。

  まず知ること。そして、知ったら、自分のこととして行動すること。

  この本の著者も、平田さんも、人々に呼びかけ、どうしたらいいかを語りかけ続けている。耳を傾けよう。

  福島原発事故で、なぜコンセントの先のことを考えてこなかったのかと思った方、その反省の気持ちを忘れずにエネルギー問題や地球の温暖化の差し迫っている問題から目を背けずに1歩前に踏み出しましょう。