最近、「脱炭素100%を2050年までに実現」して、地球の平均温度上昇を1.5°以下に抑えようという声が、やっと日本でも高くなってきました。その脱炭素100%の実現に日本では今、まだ原発の再稼働が炭素をださないと組み入れられていたり、脱炭素と言いながら外国から輸入した化石燃料を新技術で炭素を少なくするとか・・・まだまだ後ろ向きである感が拭えません。
世界はどんどん自然エネルギーの割合を増やしているのに、日本はまだ立ち後れています。COP26でも、いまだに石炭火力発電への依存度の高さに化石賞という有り難くない賞をまたもや頂いてしまいました。
そんな日本に将来はあるのか?と心配になった時に、「ご当地電力はじめました!」をみつけて読みました。この著者の高橋さんは世界70ヶ国を持続可能な社会をテーマにまわったノンフィクション・ライター。この本は2015年に書かれたものですが、この東日本大震災から数年の短期間の間に、これだけいろいろな人がエネルギーについて問い直し、行動を起こしていたということに驚き勇気をもらえました。
今は、震災から11年目、ドイツでは福島原発事故をきっかけに原発から自然エネルギーへと大転換を果たしたというのに、日本の現状は悲しいばかりと嘆いていましたが、この本を読んでいて、(嘆いている場合じゃない。ここでしっかり日本も市民から立ち上がって、「脱原発&脱炭素」を実現していかねば!)と思いました。最新情報が手に入っていませんが、この2015年の以前の段階で、この本に書かれていた多くの地域の人々がしてきたことが、きっともっともっと日本に広がっているはずです。
では、この本に書いてあった自然エネルギーの実践例を手短にあげてみましょう。
1 神奈川県相模原市・藤野電力 独学で代表がミニ太陽充電器のキットを設計。その充電器づくりのワークショップをした。やがて、山間部で電動スクーターや電動自転車の利用が多いことから、太陽光充電ステーションを人が集まる場所に設置。誰でもコンセントが使えるようにした。2014年までに「大地を守る会」などの支援もあり、5号機までできた。
2 小田原・ほうとくエネルギー 実は、1930年代以降に電力の国家管理体制ができるまでは、地域で水力発電をしたりした例はあり、小田原にも小水力発電の遺構が残っていた。報徳(ほうとく)二宮金次郎の精神~飢饉に苦しむ農村で収穫を分け合い、ぜいたくせずに残った物を将来に備えるを胸に小水力発電を復活。市と地域の企業や人が協議してすすめた。
3 北海道・生活クラブ生協 震災よりずっと前、1999年にNPO法人「北海道グリーンファンド」設立。風力発電。2014年までに秋田、青森、茨城県などに12基の風力発電。市民出資が23億円にあったという。
4 長野県飯田市・おひさまの町 市民出資で集めたお金で町ぐるみで協力。公共施設や民間企業の屋根にソーラー。
5 福島・えこえね南相馬 ソーラーシェアリングで、太陽光発電の下でブルーベリーとナタネを栽培。
6 福島・いわき市「おてんとSUN」 耕作放棄地に有機コットンを栽培、小規模分散型の太陽光発電。
7 福島・会津電力 太陽光発電、今後水力発電やバイオマスへ
8 兵庫県宝塚市 株宝塚すみれ発電 宝塚市の新エネ課と市民が立ち上げたNPOがタグを組んで実現。太陽光発電。補助金のような一時的にもらう形でなく、市民参加で持続する形に。第3者のISEP(飯田哲也が代表)のアドバイスが入ったのも働いた。
9 岐阜県郡山市 人口300人の過疎の町に、平野さんがきてNPO地域再生機構を作り、地元の人たちと農業用水を利用した地元の木などを使った手作り小水力発電を実現。稼働率の悪かった農産物工場にも電気を送ったことで町おこしにもなり、町のトウモロコシの加工品や水車そのものも評判になり、人が集まるようになった。
10 東京都多摩市 たまでん 次世代育成プログラムで大学の学生達の参加もよびかけ、広がりを産み出した。
11 長野県上田市 養蚕をして大きい屋根がある家の屋根を利用。太陽光発電のパネルを多めに他の人が出資する「相乗りくん」のアイデアで太陽光発電を広めた。45世帯分の電力を作り出した。
12 徳島県・徳島地域エネルギー 4000世帯以上の発電を扱っているが、それはすべてを所有しての数字でなく、ノウハウを自治体や企業、市民に提供したりした上でその総計。 設備に投資してくれたお返しに、地域の物産品を送ることで地域の産業活性化にも。関わる人たちにメリットがある皆がハッピーになることを目指した「佐那河内みつばち発電所」もそのひとつ。
13 ソーラーブドウカン ロックバンド「シアターブルック」タイジさんが、みんなにできないと思われながらも武道館のライブを自然エネルギーでまかなって実現。その後も野外ライブでも自然エネルギーを使って開催している話
このように、小さな1歩1歩がだんだん積み上がり、人々を繋げ、社会を動かしていく!と高橋さんは多くの現場を見て確信しているようです。読んでいて、明るい気持ちになりました。そして、そうした実績の上記の紹介だけでなく、下のような「自然エネルギー」の地域に結びついて成果を生んでいったこと以外に、他のエネルギーについてのコメントも、文の中のあちこちに入っていて、示唆に富んでいました。
(補足)
・エネルギーには、「電気エネルギー」だけでなく、暖房や給湯に使う「熱エネルギー」、乗り物を動かす「燃料」がある。太陽の光を電気にいったん変換してから熱を作り出すより、そのまま活かす方が効率がいいはず。太陽熱温水器というのがあったが、もっと有効利用してもいいはず。(p26)
・電気に変換してから使うのは、発電時にも無駄に熱を出し、送電して遠くから送ってくる段階で電気を大半失っていて非常に効率が悪い。「オール電化住宅はエコ」「IH調理器はエコ」なんていうのは、嘘! 家庭の中で電気だと二酸化炭素は出さないが、家庭にくるまでに6~7割のエネルギーをロスしていて、化石燃料には2013年で27兆払っている。あまりにもったいない! (p37)
*(化石燃料は輸送の時にもエネルギーを使い、二酸化炭素を出している)と思う。経済産業省が、化石燃料の輸入額が10兆円増えたことを理由に原発再稼働を~と世論を作ろうとしていたが、それは化石燃料の値上がりとアベノミックスで円安となり支払う額が増えたことによると説明(P44) 原発も有害な放射能汚染物質を出す危険なエネルギー。その再稼働はあり得ない選択。
さてさて、とても勉強になることが満載の本でした。トップの人たちが頭で考えた施策をするだけでは、自然エネルギーはなかなか進まないということが、この本を読んでよく分かりました。
地元の人々が、人間関係やネットワークを使い、自分の地域の特性を知って、役所や国を巻き込んで進めていく先に、地に足がついた地域に豊かさをもたらすエネルギー政策が実行されるようです。太陽、風、森を味方につけて、人々が日本中で持続可能なハッピーな社会を作り出してくれる。そんな未来が思い浮かびました。
ただ、それは、コンセントにつなげば電気はどこからか来るからというのでは、始まらない!!!ということも分かりました。
自然が与え続けてくれる力に、私たちが 人任せでなく、自分たちの手を差し伸べて、受け取らないとだめなのです。でも、受け取るために地域で人々が協力しあう先には、地域の人々が仲良く手も繋ぎ合わせ暮らす、なんとも素晴らしい社会が待っていそうではありませんか。
脱原発、脱炭素は、地域の自然エネルギーの活用へ踏み出すこと。私には、何ができるか。そして、あなたには。まずは、あなたも、本を読んでエネルギーをもらってみませんか。