Harukoの濾胞性リンパ腫日記【B細胞 Ⅳ期 B症状 50歳代後半 】 2008年4月28日~

悪性リンパ腫の入院日記。多くのリンパ腫病のうち濾胞性(低悪性)リンパ腫の総合情報サイトを目指して行きます。

悪性リンパ腫の治療は新薬の登場で新しい時代を迎えた

2009-07-27 23:15:54 | 治療法あれこれ
★★★従来の薬では治らないと言われていた難治性のがんに力を発揮する
悪性リンパ腫の治療は新薬の登場で新しい時代を迎えた

http://www.gsic.jp/cancer/cc_01/acd/index.html


監修:小椋美知則 名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍内科部長
取材・文:柄川昭彦
(2008年09月号)

名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍内科部長の小椋美知則さん 悪性リンパ腫の治療に久々の朗報だ。従来の薬では治らないと言われていた難治性のリンパ腫に対して力を発揮する新薬が2つ登場したからだ。1つは、細胞に取り付いて放射線を放ってがんを叩く、もう1つは、経口の抗がん剤で、副作用もマイルドという点も患者さんにとってはうれしい。


難治性の悪性リンパ腫に効果的な治療薬が誕生

[悪性リンパ腫の分類]
悪性リンパ腫の治療薬として、経口薬であるフルダラ錠(一般名フルダラビン)が2007年に承認され、注射薬のゼヴァリン(一般名イブリツモマブチウキセタン)が2008年になって承認された。この2つの治療薬の相次ぐ登場によって、悪性リンパ腫の治療は新しい時代を迎えたといえそうだ。そこで、名古屋第二赤十字病院の小椋美知則さんに、これらの薬について解説していただくことにした。

「悪性リンパ腫というのは代表的な血液のがんです。白血球には、好中球、好酸球、リンパ球などの種類がありますが、リンパ球ががん化したのが悪性リンパ腫。この病気になると、主にリンパ節に腫瘍ができます」

悪性リンパ腫は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類されている。かつてイギリスのホジキン医師が報告したのがホジキンリンパ腫で、それ以外は非ホジキンリンパ腫。多いのは非ホジキンリンパ腫で、特に日本ではその傾向が強い。

進行の速さによる分類もある。治療しなかった場合に、年単位でゆっくり進行するのが低悪性度リンパ腫、月単位で進行するのが中悪性度リンパ腫、週単位で進行するのが高悪性度リンパ腫だ。

さらに、細胞の種類によっても分類されている。リンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞があるが、たとえばB細胞ががん化したものなら、B細胞リンパ腫となる。

ゼヴァリンやフルダラの治療対象となる悪性リンパ腫は、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫と、マントル細胞リンパ腫。マントル細胞リンパ腫は、低悪性度と中悪性度の中間に位置する特殊なリンパ腫である。

「低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫は、従来の薬(抗がん剤)では治らないと言われていた難治性の病気です。ゆっくり進行するのですが、従来の化学療法では治癒に至りません。一方、マントル細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫の5~10パーセントを占め、最も治りにくいリンパ腫と言われています」

ゼヴァリンとフルダラは、特に治りにくい悪性リンパ腫の薬として承認されたわけだ。




細胞に取り付き放射線を照射する薬

まず、ゼヴァリンという薬について解説してもらった。ゼヴァリンは分子標的薬の仲間で、抗体薬に分類されている。抗体薬は他にもいろいろあるが、この薬はきわめて特殊な作用メカニズムを持っているという。

悪性リンパ腫の治療に使われる分子標的薬としては、リツキサン(一般名リツキシマブ)がよく知られている。抗体であるリツキサンは、CD20という標識たんぱくを持つがん(B細胞リンパ腫)細胞を探し出し、そこにとりついて増殖を妨げたり、死滅させる働きをする。実はゼヴァリンも、同じようにCD20をターゲットにした薬なのだ。

「リツキサンは最初に臨床応用に成功した抗体薬ですが、マウスの抗体を、一部ヒトの抗体に置き換えてあります。ゼヴァリンは、置き換える前の、元のマウスの抗体を利用し、さらに治療効果を高めるために、イットリウム90という放射性同位元素を結合させてある薬です。この抗体がCD20を標的にしてがん(B細胞リンパ腫)細胞に取り付くと、放射性同位元素から出るベータ線という放射線が、がん細胞を攻撃する仕組みになっています」

このように、抗体の働きと放射線によって治療する薬を“放射免疫療法薬”という。分子標的薬による治療と、放射線治療を同時に、しかも標的とする細胞にのみ行う画期的治療薬である。

特殊な薬だけに、治療は慎重に行われる。ベータ線を出すゼヴァリンを投与しても、問題がないかどうかの確認が行われるのだ。そのために使われるのが、イットリウム90の代わりに、インジウム111という放射性同位元素を結合させた「インジウム111イブリツモマブチウキセタン」である。

インジウム111は、画像診断に使われるガンマ線という種類の放射線を出す。そのため、ガンマカメラによって全身の画像診断を行うと、投与した薬がどこに集まっているかが明らかになる。これは、同じ抗体を使うゼヴァリンを投与したときに、ゼヴァリンが集まる場所を示しているわけだ。

ゼヴァリンがリンパ節に集まってがん化したリンパ細胞だけを攻撃するならいいが、骨髄や正常な臓器が放射線で照射されては困る。そこで、そのような可能性が疑われる場合には、ゼヴァリンの投与は中止する。このように、ゼヴァリンは安全に治療できることを確認してから投与されることになる。



たった1回の治療で約7割が完全寛解に
ゼヴァリンによる治療は、血液の副作用が遅れて出てくるという特徴がある。

「ふつうの抗がん剤治療だと、投与後10日ほどで、白血球や血小板の減少がもっとも強くなります。白血球数が下がりすぎると感染症の危険があるので、白血球数を上げる薬を使ったり、入院させたりします。また、血小板が下がりすぎると出血しやすくなりますので、血小板輸血が必要になる場合もあります。ゼヴァリンでも白血球や血小板は下がりますが、通常の抗がん剤に比べれば、投与からかなり後になって起きてきます。ただし、きちんと検査して確認していれば、白血球や血小板が低下したときでも、外来治療が可能です」

その他の副作用は比較的軽い。通常の抗がん剤治療では、脱毛、吐き気、手足のしびれなどがよく起こるが、ゼヴァリンによる治療では、こうした症状もほとんど現れない。副作用の強さはグレード1~4で表わされるが、ゼヴァリンの投与では、現れたとしてもグレード1~2程度の副作用だという。

この薬は治療回数も独特だ。多くの抗がん剤治療では、薬を繰り返し投与する。少なくても3~4コース、平均して6コース程度。中悪性度の悪性リンパ腫の初回治療では、8コースの治療が行われることもある。それに比べ、ゼヴァリンの治療はたった1回で終わりになる。

「患者さんにとって非常に楽な治療ですが、効果は優れています。日本で行われた治験では、すでにリツキサンやCHOP療法(エンドキサン、アドリアシン、オンコビン、プレドニゾロンの4剤併用療法)などの抗がん剤治療を受けて再発した低悪性度B細胞リンパ腫の患者さんと、これらの治療でよくならなかった難治性の患者さんが対象になっています。それでも、たった1回の治療で、67.5パーセントの人が完全寛解になるという結果が出ました」

完全寛解とは、画像検査で腫瘍がほぼ完全に消失したと判断される状態のこと。腫瘍は残っているが半分以下に縮小した場合を部分寛解といい、奏効率はここまで含めて求められる。この治験における奏効率は82.5パーセントだった。

「ゼヴァリンによる治療の特徴をわかりやすくまとめると、1回ですみ、副作用が少なく、効果が高い、ということになります。治療対象は再発または治療抵抗性の低悪性度B細胞リンパ腫とマントル細胞リンパ腫ですが、どちらも治りにくい病気で、初回治療を受けた後に多くの人が再発しています。こういう患者さんにとっては、まさに朗報と言えるでしょう」

ゼヴァリンは画期的な作用機序を持つ薬だが、その効果も画期的で、大きな期待が寄せられている。今後は、再発後だけでなく初回治療として用いたり、他のタイプの悪性リンパ腫に適応を広げる、といった進展も期待されているという。






内服薬のフルダラは外来治療に適している

新しく認可されるがんの治療薬は分子標的薬が多いが、フルダラは化学療法剤で、従来の抗がん剤と同じように殺細胞作用を持つタイプの薬だ。ただ、その効果はこれまでの抗がん剤とは異なり、従来あった化学療法の限界を打ち破る抗がん剤として期待されている。

「フルダラが新しいのは、細胞分裂の盛んな中悪性度や高悪性度のがん細胞だけでなく、細胞分裂がゆるやかな低悪性度のがんにも効果がある点です。通常の抗がん剤の多くは、細胞が分裂期に入ったときに作用しますが、フルダラは分裂期に入っていない静止期の細胞に対しても、効果を発揮します。そのため、低悪性度リンパ系腫瘍に効くだろうということで開発されたのですが、まさにその通りだったのです」

フルダラは内服薬なので、外来治療を行いやすいという長所も持っている。もともと注射薬として先に開発された薬だが、悪性リンパ腫の薬として我が国で開発する段階で、外来治療が行いやすいように内服薬での開発にしたのだという。

「飲み薬のフルダラで悪性リンパ腫の治療に最初に成功したのは日本で、その治験データは世界的に評価されています」

フルダラの治療対象となるのは、再発または難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫とマントル細胞リンパ腫だ。これらの悪性リンパ腫には、初回治療として、リツキサンとCHOP療法を組み合わせた「R-CHOP療法」が行われている。古くから行われてきたCHOP療法にリツキサンが加わることで、治療成績は明らかに向上してきた。しかし、それで治癒しているのかというと、必ずしもそうではないのだ。

「以前は、R-CHOP療法で治療して再発したら、もっと強い薬を使うしかありませんでした。そのため、副作用が大変でしたが、現在はフルダラとゼヴァリンがあるので、これらを使えます。どちらも副作用として白血球減少が起こりますが、脱毛、手足のしびれ、便秘などが起こるCHOP療法と比べると、ずっと楽ですからね」

フルダラやゼヴァリンの登場は、副作用の面でも大きな改革だったのだ。



抗がん剤治療を受けた気がしない

小椋さんは、リツキサンとフルダラの併用療法を、発売前の治験として8人の患者さんに行ってきた。全員が低悪性度B細胞リンパ腫の初回治療としてR-CHOP療法を受けていったんよくなったものの、再発した人たちだ。結果は、8人中6人が完全寛解に入った。

「患者さんたちは、最初に受けたR-CHOP療法に比べてすごく楽な治療法で、雲泥の差がある、とおっしゃっていました。患者さんの半数は女性でしたが、髪が抜けないのがうれしかった、ともおっしゃっていました。R-CHOP療法のときに経験した副作用がないのに、腫瘍が消えていくのが、患者さんたちにはうれしい驚きだったようです」

ゼヴァリンに関しては、治験で8人の患者さんに投与している。やはり、R-CHOP療法を受けて再発した人がほとんどだった。

「ゼヴァリンは、治療しているときにはまったく副作用が出ません。そのため、抗がん剤治療をしている気がしないと言われました。投与時は(治験ということもあって)入院で行いましたが、8人中7人は再入院することなく外来で治療を続けました。腫瘍が消えた人が8人中5~6人。ある患者さんは、『こんなにいい治療法なんだから、もっと広まるといいですね』と話していました」

ゼヴァリンを使うには、放射性同位元素を抗体部分に結合させる調剤作業を、それぞれの医療機関で行う必要がある。また放射線を出す薬なので、放射線の取扱いに習熟していることも大切だ。そこで、日本アイソトープ協会の講習を受けた施設でないと、ゼヴァリンは投与できないことになっている。そうしたこともあって、ゼヴァリンによる治療を行える医療機関は、現在のところ非常に限られている。ただし、これは順次増えていく予定だ。

また、ゼヴァリンは特殊な薬なので、治療を受ける患者さんにも心得ておいてほしいことがある。治療前に十分な説明を受け、いったん受けると決めたら重大な理由無く変更しないことだ。なぜなら、イットリウム90の半減期は64時間なので、ゼヴァリンは保存しておくことができない。いったん製造したら、決められた日に投与しなければ、そのゼヴァリンは破棄することになるのである。

「治療を受けると決まって治療日程が決まったら、予定の日に確実に投与できるようにしてください。こうした点が、普通の薬とはまったく違います」

ゼヴァリンは注文が入ってからオランダとフランスの工場で放射性同位元素の生産が始まり、日本に空輸されて製剤化されるのだという。気楽にキャンセルできる治療でないことは、よく理解しておきたい。

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