平安時代後期の興福寺千体仏・観音菩薩立像です。
興福寺千体仏は興福寺に伝わったものですが、明治以降に排仏棄釈により民間に流出しました。
興福寺千体仏は、保管された状態が悪く、通常、両手なし、脚先なし、台座なしのものが多く見られます。台座、両手、脚先は、ほとんどの物が後補であり、後補されたものが当たり前という仏像です。この像もその例外ではありません。
ですが、この仏像は、朽ちた部分の補修が後補によって丁寧に行われており、像本来の美しさを引き出しています。
興福寺千体仏の多くは室町時代頃に腕などが修理され、金箔を置かれ、台座を補修したらしいと言われていますが、この像にも金箔が置かれたときの漆と金箔の跡が、わずかにあります。時代を経て何回か補修が施されてきた像のようであり、それぞれの時代の補修の痕跡が残されています。
像には幾多の困難な時代を経て、守り伝え続けられて来た歴史が刻まれているようです。
像本体の木は、枯れた表情をなし、旋律を奏でるように細かな木目が浮き立ち、繊細優美な彫りが施されています。
静かな佇まいをもつ、凛とした空気の漂う、美しい仏像です。
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