ハムぞーの「職業野球研究所」

~プロ野球がある風景を楽しむ。そんな話をぼちぼちと~

近未来SF的野球小説?「おしえてしょちょお」~第4回「それぞれの人たち」~

2004-11-27 21:46:37 | その名もパシフィック
<前回までのあらすじ>
プロ野球参入の最終決戦が大晦日に急遽、行われることとなった。内部ドア堀衛門社長は「職業野球研究所」をアポなし訪問し、対策を練るのだった。
またライバル美貴谷氏も、一本気ビルズの「エビ天」社長室で・・(詳細は10月30日号から御覧ください)


ところ変わって、深夜のエビ天社長室。オフィスには誰もいない、一人佇む美貴谷。
「あ~あ、参入決まっちまったよ。まあ判ってたこととはいえ。大変だなあ。オレ、本心はサッカーだけで手一杯なんだけど、「プロ野球入ってくれ」って、付き合いのある見田撃(みたうち)さんにだけならともかく、アベツネや西部の包さんまで揃って頭をさげられちゃあね。いやとはいえないよ。あれだけ頼まれればしゃあないよなあ。トレードマークのヒゲも剃らされたし。スーツはサラリーマン時代に着て慣れているからいいけど、本来は余り好きじゃないんだな、これが。
しかし参入決定でウチの株価まで下がってくるし、経営もやりにくいったらありゃしないよ。ああ困ったもんだ。
あんまり赤字が続くようじゃ、手放してやろうか?しかしIT企業は勢いが命だしな、手放したりしたら水に落ちた犬のようにされてしまうんだろうか、こんなことでつまづきたくないし。
こっそり株を半分、堀衛門に売ってやろうか。売り方は包さんに教えてもらって。

本拠地の仙台だって、ホントは俺は神戸がいいのに、見田撃さんが大阪神戸両方だって。合併していいとこどりでズルイよな。じゃあ大阪神戸のどっちかにするか、その半分づつするんだったらその半分は空いてるんだから譲ってくれればいいじゃんか。
仙台の球場、改修費でも凄いかかるんだぜ。ちょっと助けて欲しいくらいだよ。

まあぼやいてばかりでもしょうがないか。明るい話題でもないかな。そうだ、ヘッドコーチでも呼び出して、一杯呑みに行くか。


翌日、美貴谷は社長室で昼食を取っている。
「社長、これも召し上がってください。」と秘書。
「そうそう、伊達巻きね。仙台をアピールしないとなあ。しかし毎日じゃ飽きて来るんだが、マスコミに「食べてますよ」って言ってしまったし、しょうがないねえ。」
「いつ取材を受けるか判りませんので、しばらくはこれでお願いします。」
「社長。」
「秘書課長。どうした?深刻な顔をして、」
「あごに、米つぶがついています。」
「おっといけない。」
「ではなくて、面会を要求している若者が受付に来ており、社長に会うまで帰らないと言っているのです。守衛曰く、昨日の夕方からいるそうです。」
「で、何て言ってるの、要件は?」
「エビ天の新ユニのデザインを見ていただきたい、の一点張りです。」
「それ多いんだよな。ここんとこ。」
「でもパテックスにも行って実際プレゼンもしたようです。」
「よし、会ってみようじゃないか。通しなさい。」
「社長。」
「何だ、課長?」
「米つぶ、まだついてますよ。」
「・・・・・」


こちらは、投売リトルズ元オーナー、ご存知アベツネ。
都心のマンションで、ベランダから日の入るコタツに入って、渋茶をすすりながら、
「世間がごじゃごじゃ俺のことばかり言うから、マーケットだか市場だとかいう学生のせいにして、オーナーを辞めたはいいものの、投売新聞の役員会で「売上減少の責任は?」とか「販売店からこのままでは売上が維持できない」とか言いやがって。俺を誰だと思ってるんだ。1000万部に投売を育てたんじゃないか。無礼でむしゃくしゃするから、投売の社長職放っぽり出してやった。
そいつはよかったのだが、今度はブンヤが全然取材に来ない。おいあまりに急すぎるぞ。寂しいではないか。
この間投売本社に行ったのだが、受付嬢が「どちら様ですか?」と言いやがる。腹が立ったので「たかが受付が」と言ってしまったのだが、危うく守衛に連れて行かれるところだった。そんな急に手のひらを返したようにしなくてもいいではないか、ブツブツブツ。」
 ピンポン!!
「お~い、誰か出てくれ、お客だ。ちぇ、カミサンも外出してやがる。しょうがねえな。ハイハイと。」
 ガチャ
「阿部常蔵さんですね。凸凹区役所福祉課、老人会担当の竹花です。」
「老人会?うちに老人はおらんぞ。」
「なにをおっしゃいますか。年齢はわかってますよ、阿部さん。」
「ワシは投売の相談役だ。そんな活動するヒマはない。」
「皆さんそうおっしゃるんですよ。この地域は社会的地位のある方が多くお住まいですからね。しかしこの区は住民が少ないので、阿部さんにも是非ご協力をお願いしたいんですよ。」
「何をしろというのだ。」
「阿部さんはご存じないかも知れませんが、この区は地域活動が盛んでしてね、しかし都心部の常として人口は減ってるのです。そこで阿部さんの豊富な経験とお知恵を拝借したいのです。」
「今、何と言った?」
「ですから、豊富な。」
「豊富な?」
「経験とお知恵を拝借したい、と。」
「君、それを早く言いたまえ。それくらいのこと、ワシが協力せん筈がなかろう。」


一方もう一人、半身キャッツの球磨オーナー宅。
「ああ、よお来てくれたなあ。あんた何新聞やったっけ。ウィークリースポーツ?そうかあれはウチで持ってたようなもんやからなあ。元気かって?そらおかげさんで。ぼちぼちやってますわ。
あ~あ、ヒマやなあ。あれだけ毎年お家騒動があった球団辞めたら、ホンマヒマやで。
アベツネはんは老人会の役員してるらしいなあ。自分とこの会が参加するゲートボール東京都大会のため、他の区から有力選手を連れてきたらしいわ。ルール変えろまで言うてるんやてなあ。現役時代とちっとも変わらんなあ。あら、もお帰るんか。またいつでも来てや。たいしたネタにはならんがなあ。
ああ、帰ってまいよった。しゃあないなあ。向こうは忙しいやろし。
そや、内部ドアの堀衛門とか言うやつに、激励の電話をしたろ。ちょっとフライングでワシ言い過ぎたしなあ。ちょっと若いもんにアドバイスもしたらなあかんなあ。」
ジーコ、ジーコ、トルシエ。黒い電話機のダイアルを回す。
「はい、内部ドアです。」交換の女性だ。
「社長の堀衛門さんにつないでくれ。」
「失礼ですが、どちら様で?」
「球磨や。」
「ハあ?」
「知らんか?テレビのニュースに、こないだまでよお出てたがな。」
「餌を求めて民家に舞い込んだとか?」
「アホ、何言うとんねん。それは熊や。ワシは球磨や。」
「ですから同じでは。」
「もおええ。止めさせてもらうわ。」
  ~続く?~

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4 コメント

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役者が揃ってきた (kawajiro)
2004-11-29 22:38:30
所長、こんばんわ



今回も楽しい連載ありがとうございます。

本音を漏らす美貴谷君の、



>「社長。」

>「何だ、課長?」

>「米つぶ、まだついてますよ。」

>「・・・・・」



この間はなんともいえず、おかしかったです(笑)



ヒマを持て余すアベツネと球磨が、ひと悶着おこすんでしょうか。老人会担当の竹花とはつまりは滝鼻ですね。



>「もおええ。止めさせてもらうわ。」

いかにも、半身らしい終わり方でいいですね。

本物の久万さんの顔が浮かんできて、笑ってしまいました。
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老人会・・・・。 (キュベレイ)
2004-11-30 00:03:06
アベツネさんの老人会スカウト・・ありそうな話です。

ウチの会社にも自治会とか老人会とかの「名刺」を持ってこられる方がいて、やっと会社をやめたのに、まだ肩書きの書かれた名刺を持つのか・・と驚くことがあります。

アベツネさんも、老人会のリーダーとして余生を送ってくれればいいのですが。

「くまさん」≒「熊さん」って笑いました。ホンネを言うと彼には残って欲しかった。一場問題は不可思議なことばかりでしたが、真相は闇の中って感じです。

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作者ウラ話 (ハムぞー所長)
2004-11-30 06:22:55
前回と今回分は一気に書いたので、よかったのですが

実は今ストックがありません。



次の土曜日までに次の展開が浮かんでくるだろうか、コレが心配で仕事も手につきません。



まるで流行作家のようなことを言ってる、勘違いしているしょちょお。



ま、ボチボチ、いきましょう。
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栄養費オーナー3人組 (ハムぞー所長)
2004-11-30 06:27:54
栄養費オーナー3人組を書きたかったのですが、もう一人の方は人となりが全く判りませんので、無理ですた。



しょちょうと堀衛門もどこかへ行ってしまい、しょちょおの混乱の世界に入ってきております(それが証拠に本人も何処へ行くやら判りません)。



皆様の励ましだけが頼りです。叱咤でも結構ですので、コメントお願いしまあす。



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