はぐれの雑記帳

極めて個人的な日めくり雑記帳・ボケ防止用ブログです

歌集  遥かな空に (3)

2016年08月21日 | 短歌
転地ご通知  95.9.27「芸術と自由」184                 

          「わけあって郡山市に単身赴任致しました。
            仮住まい先、郡山市富田町音路83‐23 メゾン103
            電話0249-xx-0664 右お知らせ致します。」

0834 板橋・アリゾナ・所沢・郡山、一家離散す長女次女、母、そして父
0835 一人暮しを楽しむか、夜遅く帰れば妻につながるFAX回線
0836 家建てて住みつけば墓地が付録です、過疎の村すぐ隣にある
0837 山合いに数十軒の家々 白く埋まる冬の風に寄り添っている

0838 公営温泉六十歳以上三百円、未来を憂う老人が集まってくる
0839 恋人をまつように妻を待つ改札口、二十五年目の離れ離れ
0840 自衛隊の基地をかくして銀杏並木の黄色く色づきはじめる
0841 地取りのたまごの殻の固さこそたしかな生の証とも思う
0842 山合いの道をひた走る会津磐梯山こそふるさとの山かも
0843 一人眠りにつけば闇の部屋に通過する銀河鉄道の列車のひびき






郡山にて  96.6                   

0844 さりげなく振りむく人の肩ごしにゆっくり沈む夕陽に手をあげた
0845 山が若葉に萌えて 騒然とした日々の暮らし吸い込んでいく
0846 五月の風に早苗が水にゆらいでゆっくりと大地が生き返る
0847 仕事を格闘技と心得て負けること嫌いながら苦い水を飲む
0848 母の古い写真さがし或る女の実在をアルバムに貼りつける

0849 過ぎ去った日々ほろほろ抱けば目分量で図る明日が軽い 






八月の海  96.7                 


0850 八月の海 肩の肉盛り上がる男 灼熱の陽に立ちあがる
0851 厚い胸の陽に焼けてめぐる血潮の熱きこと懐かしむ八月
0852 いま男の夏の盛り過ぎてオレンジの種子噛み砕く
0853 男 夏の夜に星宸圖広げ眠れぬままに憧憬の星を探す
0854 才無きことを思い知る寝苦しい夏 開かれぬままの救いの書


0855 夏盛り 力弱まる男射貫いていくか強い陽射しは
0856 愚痴は言わず 男本懐を遂げる夢真夏の夜に見ている







少し疲れて  96.7                


0857 ゆっくりと雨降り少し疲れた身体大袈裟に投げ出してみる
0858 気ばかり焦る五十過ぎコンピューターの画面睨みつけている
0859 真夏日盛り地を這って動き回る蟻のたくましさを羨む歳となる。
0860 単身赴任した土地の夏 ふと漏らす弱音吹き払う古扇風機
0861 コンピューター操作がままならぬ ヤツは僕のこと嫌いなんだ

0862 真夏日盛り若さと競う気力もちながら歌は老いを隠せない
0863 足腰の弱い会社立て直す気力さらに強めて真夏日盛り悠々と休む
0864 何時間も眠れる若さ笑いながら 目覚ましの鳴る前に起きている





寒い夏  96.8                  


0865 夜の底に沈む想い抱くとき明日という日が化物みたいだ
0866 運不運自ら拓くものとひとり祭りの花火遠くにきいている
0867 寅さんという男の後ろ姿 見送って肌寒い夏がつらい
0868 夏山の高み恋しく左下がりの数値に憂うつな曇天の空




一 日    96.8                 


0869 単身赴任して一年 ひとりの広さになれてせわしく身仕度する
0870 死ぬまで働く者の一膳の飯食べ終えて一日のはじまりとする
0871 妻から聞く娘の暮らし朝顔の蔓のその先少し不安な
0872 コツコツと階段を踏む音の愚直にひびく朝のはじまり






静かな夏に  96.8


0873 もくもくと湧く雲の強さも見ずに過ぎて 静まっていく夏




秋の空 単身赴任の十月・裕子へ

0874 ともかくきみのいない街は つらいほどに静かすぎる夜につつまれていく

0875 さりげなく秋のそらにかわってゆきます きょう君にラブレターかきました


0876 かなしげな想いでいるのは秋のそらのあまりにもふかい蒼さのせいです

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