はぐれの雑記帳

極めて個人的な日めくり雑記帳・ボケ防止用ブログです

歌集 色あせた自画像 第1章 夢がさめてから(2)

2016年05月08日 | 歌集 色褪せた自画像
天皇即位  90.11「芸術と自由」154       

             昭和の時代が終わり、平成と年号が変わり、新しい天皇を民は頂くこととなった。
             同時に父の時代が去ったものの、どこかで昔を懐かしむ声が聞こえるのだ。

0038 神ともに位祝ぐ真夜中に現人神の子は夜逃げの相談

0039 定年後の金を憂いる夜 一夜のための二十億円を盗みにいく

0040 機動隊街にあふれて 安保はむかしいま天皇即位劇の開幕

0041 兵士のように立つ機動隊員の盾にうすら寒い雨が流れる

0042 鳩の群れに真っ黒なカラス二羽三羽 平和にみえる雨の公園

0043 民族の狂気悲劇忘れたふりして 公会堂は古びれて立つ

0044 右・右に傾く政治横に見て 雨の日比谷を左に曲がる

0045 継ぐべき家など持たぬ身にいきなり吹いて来る師走の空っ風





かの日はるかに   90.12

             大学の門を何十年ぶりかに訪れた。昔と変わらぬ若者の姿は美しい。
             学園闘争も遠い物語となり、立て看板も消えあの日の叫び声も絶えて久しい。
             正義を問い、あのほとばしるような情熱を懐かしむのは私だけだろうか。
             プラハの春をひきつぶした戦車の侵入を思えば、ベルリンの壁の崩壊は誰 が想像していただろうか。
             はげしく世紀末へと向かって歴史が動いている のに、悲しいことに私はもう若くはないのだ。

0046 すがすがしい若者数多群れていてそのなかに行方不明の一人を捜す

0047 実らぬ果実あり青年撒きたる種子にいま陽炎が立つ

0048 無造作に貼られたビラの数枚傾いて掲示板に過去の独白

0049 すれ違う女子学生の香水教壇にただよい老けてゆく助教授

0050 鏡に写る君は昨日までの僕 明日の僕がそこにいない

0051 目をつむり手のひらを硬く握る 押し黙った君の自画像

0052 資本論その束縛から放たれてベルリンの壁取り除かれる愛の結末




大学改革運動 全共闘ノスタルジア  90.12 

               
             青春時代はこの全共闘の学生運動の真っ只中であった。
             大学運営の民主化とカリキュラムの改革を目指した学園闘争を展開し、創立者の理事長の退任と運営の近代化を達成することができたものの、
             カリキュラムム闘争は教授会主導のものともなった。その後の運動はセクトの内ゲバなどで政治的なものとなったのは残念だった。

0053 理事長の退陣せまり立ち上がる我らに民主の二文字があった

0054 教授らに浴びせるヤジの適不適思いながら団交の議長席にいる

0055 学生のヤジ一段と激しくなり壇上で棒立ちとなるマル系教授ら

0056 幾人かの師と仰がれる教授壇上に立てば学生のヤジ静まる講堂

0057 学生に堂々と真向かった教授らにみな拍手して団交終わる

0058 団交終わり無人となった講堂をでれば夜空に白い息を吐く




反戦運動 全共闘ノスタルジア  90.12

            大学闘争と併せて、ベトナム反戦運動の行動がその当時の若者の心を揺り動かしていた。
            七十年安保体制の否定はその大きな課題であった。国際反戦デーや羽田闘争、安田講堂の攻防など加わったものもあったけれど、
            機動隊はまぎれもなく権力の象徴であったと思う。正義感に支えられて行動したエネルギーが失われていく社会は不幸だと思う。

0059 反戦デモの行進を取り巻いているジュラルミンの無機質の盾

0060 ジグザグのデモに移れば機動隊茶色の顔のロボットがならぶ

0061 襲ってくる機動隊の振り上げる権力という棍棒に逃げ惑う

0062 逃げる学生追い詰めて民家の屋根を踏み壊していく機動隊員の重靴

0063 目の前で反乱兵を捕らえるように殴り蹴る機動隊に向かう術なく

0064 催涙弾のガス街路に充満し悔し涙おさえきれぬ灰色の闇


















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