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横須賀総合医療センター心臓血管外科

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高齢者の慢性下腿浮腫の原因

2019-04-29 04:38:08 | その他
 高齢者で足が浮腫むといって心臓血管外科に紹介される患者さんは少なくありません。
 深部静脈血栓症による静脈還流の阻害、骨盤内の占拠性病変によるリンパ管流の阻害、腎不全や心不全による体液貯留、低アルブミン血症による膠質浸透圧の低下など、疾患による浮腫を最初に複数の検査で否定することになりますが、意外にこうした疾患が見つかることは少なく、特に病的な検査結果がみられないことの方がむしろ多いのが実情です。
 こうした特に病気として下腿浮腫の原因がみられないひとの多くは、一日中椅子やソファなどに座っていて、特にトイレに行くとき以外は歩かない人に多く、そうした患者さんの多くは診察室に間違いなく車いすで入ってきます。診察を受ける場所は病院内ですので、間違いなくそうした患者さんは駅から歩いてくることはなく、送迎車から診察室まで車いすです。
 もう一つ共通して言えることは、多くの患者さんが肥満でおなかがポッコリしていて、おそらく腹腔内の脂肪が静脈還流を悪化させて浮腫を改善しづらくしているということです。
 特に病気として見つからなくても、下肢筋肉のポンプ(マッスルポンプ)作用による静脈血のくみ上げ機能を使っていない、さらに静脈血が心臓に戻る手前でおなかの贅肉で邪魔される、この二つの理由によって浮腫みが起きているのではないか、と思われます。

 利尿剤の内服で若干の改善がみられる場合はありますが、これだけで解決することは稀です。残念ながら運動不足も肥満も診察室や病院で解決することはできません。また、こうした患者さんの多くは寝たきり一歩手前の状態です。普段からの寝たきり予防のための生活習慣(筋力強化、肥満予防)が治療に直結します。