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希少元素を含まない窒化銅を使って、高性能半導体を開発

2018-07-09 | 科学・技術
 東京工業大学細野秀雄教授 (元素戦略研究センター長) 、元素戦略研究センター松崎功佑特任助教、科学技術創成研究院大場史康教授、物質理工学院原田航大学院生 (博士後期課程1年) 、元素戦略研究センター熊谷悠特任准教授、笹瀬雅人特任准教授らは、物質・材料研究機構先端材料解析研究拠点の木本浩司副拠点長、越谷翔悟NIMSポスドク研究員、上田茂典主任研究員らと共同で、希少元素を含まない窒化銅 (Cu3N) を使って、p型とn型の両方で高い伝導キャリア移動度を示す半導体を開発した。
 成果は、新たに考案した窒化物合成法と、第一原理計算に基づいた有効なキャリアドーピング法、原子分解能の電子顕微鏡による観察および放射光による電子状態解析を組み合わせることで得られた。本研究により、大面積・低コスト化に適した合成法でp型とn型の窒化銅が実現し、同一材料のp型とn型半導体を使った、希少元素を含まない薄膜太陽電池への応用が期待できる。
 研究成果
 窒化物合成の代表的な窒素源である窒素(N2)やアンモニア(NH3)は銅(Cu)と直接反応しない。これらの窒素源では高品質な窒化銅の結晶育成は困難である。
 今回、銅金属の触媒機能に着目し、アンモニア分子の酸化反応により得られる、反応性の高い活性窒素種(NHやNH2など)を窒素源とした銅の直接窒化反応を考案した。この反応に基づいて、アンモニアと酸化性ガスである酸素(O2)の混合気体を使って、アンモニアを選択的に脱水素化(酸化)できる条件で生成される活性窒素種によって銅から窒化銅を直接合成した。合成可能な温度範囲は200~800 ℃と広く、従来のプラズマ窒化法の上限温度200 ℃より高温で反応させることができる。
 この直接窒化法により、従来困難であった高品質な窒化銅薄膜の作製が可能になった。得られた純粋な窒化銅薄膜はn型半導体であり、この結果は第一原理計算による予測と一致した。電子濃度は1015~1016 cm-3に抑制でき、電子移動度が180~200 cm2/Vs まで向上し、高性能な半導体となった。
 次にp型半導体を作製するために、アクセプターとなり得るドーパントの候補を第一原理計算により探索した。格子の中心に大きな空隙を持つ窒化銅の特徴的な結晶構造に着目し、ドーパントの候補をスクリーニングした結果、フッ素イオン(F)の挿入が有効であると分かった。この理論予測を踏まえて、酸化性ガスである三フッ化窒素(NF3)を用いて直接窒化法によってフッ素を添加した窒化銅を作製した。
 電子線エネルギー損失分光を使った走査透過型電子顕微鏡で試料を直接観察したところ、フッ素が理論予測通りに格子中心の空隙に存在していることを確認した。また硬X線光電子分光による電子状態解析とキャリア輸送特性の評価から、フッ素を添加した窒化銅はp型半導体であることが判明した。正孔濃度は1016~1017 cm-3であり、正孔移動度は50~80 cm2/Vsと代表的な窒化物半導体である窒化ガリウムより高い値。
 ◆伝導キャリア移動度
 物質中の伝導キャリア(正孔または電子)の移動のしやすさを示す物理量。伝導キャリア移動度は半導体デバイスの特性を決める重要な指標となっている。
 ◆第一原理計算
 量子力学の基本原理に基づいた計算。物質の性質を支配する電子の状態だけでなく、安定性や構造を決定する際の指標となる全エネルギーが得られ、結晶や分子の構造や安定性を予測できる。
 ◆薄膜太陽電池
 光吸収係数の高い半導体薄膜を光吸収層に使った太陽電池。省資源と生産性に有利な薄膜製造法によって、低コスト化と高効率化を両立する。
 ◆キャリアドーピング
 伝導キャリア(正孔または電子)の濃度を調整するために、純粋な半導体に少量の不純物を添加すること。
 ◆プラズマ窒化法
 真空に近い減圧で高電圧をかけてガスを放電させて発生したプラズマを用いて、窒素分子から生成される原子状窒素(ラジカル)と反応させる窒化法。
 ◆電子線エネルギー損失分光
 電子線が薄片試料を透過する際に、試料中に存在する元素固有のエネルギーを電子線が失うことを利用して、試料中の構成元素、電子状態などを調べる分析手法。電子顕微鏡の観察下でも測定が可能なので、局所の分析ができる。
 ◆硬X線光電子分光
 光電子分光は試料に光を照射し、光電効果によって放出される電子のエネルギーを測定することで、物質の電子状態や化学結合を調べる手法。光源に高エネルギーのX線を使うと光電子の脱出深さが数ナノメートルに及ぶので、通常のX線を用いる場合よりも、表面の影響が小さくなり固体内部の電子状態を測定できる。

 今日は久しぶりに雲が少なく、快晴。
 梅雨となれば、連想する花は、”アジサイ(紫陽花)”。”アジサイ(紫陽花、学名:Hydrangea)”はアジサイ科アジサイ属の植物の総称である。アジア・北アメリカに約40種が分布する。最も一般的に植えられている球状のアジサイは、セイヨウアジサイ(ヒメアジサイ・テマリ咲きアジサイは別)であり、日本原産のガクアジサイ(Hydrangea macrophylla)を改良した品種である。
 今日の”アジサイ”は、”ダンスパーティー”。”ガクアジサイ”に比べると装飾花の数が多く、華やかで優雅なアジサイである。装飾花は萼片が八重に重なり、華麗な花姿だ。”ダンスパーティー”は、日本のガクアジサイとアメリカの園芸種を掛け合わせて作られた園芸品種。1994年頃に静岡県の加茂花菖蒲園で作出された。
 アジサイ(紫陽花)
 ユキノシタ科アジサイ属(アジサイ科アジサイ属)
 落葉性低木
 開花時期は、6月~7月
   梅雨時期と重なる
 ガクアジサイ(萼紫陽花、額紫陽花)は日本原産
 球状のアジサイ(紫陽花)はセイヨウアジサイで、ガクアジサイの改良品種
 ダンスパーティーは、日本のガクアジサイとアメリカの園芸種を掛け合わせて作られた園芸品種
 花に見えるのは萼(ガク)で、その色は様々(紫・白・青・ピンクなど)である。この色は土の酸性度とアルミニウムイオンおよびアジサイの助色素(遺伝)により、酸性土壌→ 青色、アルカリ性土壌→赤色 となる。


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