Playback Summer １９９１【前編】

　１９９１年の夏、私は４人の仲間と日本海を目指した。

　自転車で。

　あれから２０年以上、当時の軌跡をバイクで辿ってみたい。

　
　きっかけは、友達の「日の出を見たから、次は日の入り見に行かねぇか？」という言葉だった。
　私はその年の正月に、友達２人と自転車でいわき市塩谷崎まで初日の出を見に行っていた。

　いわきまでは、片道約１００㎞。
　１泊で旅をしたことで変な自信が付いていたのと、自分は自力でどこまで行けるのだろう？という好奇心から「いいね！」と即答した。

　そこからは、友達に声をかけ３人の仲間が集まった。

　新潟へは、国道４９号線を走るルートで計画。というより、選択肢はこれしか無い。
　出発は７月２５日。４泊５日の行程とした。
　出発の当日、徳永英明の「夢を信じて」を聞きながら荷造りしたことを覚えている。

　１日目は、新潟県に入ることを目標に走ることにした。
　集合場所は、地元農協の駐車場。ここを午前１０時に出発した。

　

　まず、会津街道を走り磐梯熱海温泉へ向う。そこから国道４９号線と合流。
　温泉街を抜けると登り坂が続くが、２時間ほどで上戸浜へ。
　ちょうどお昼だったので、志田浜のセブンイレブンで昼食を食べる。

　昼食後、猪苗代湖と磐梯山を見ながら会津を目指した。

　

　猪苗代町を通過中に、アクシデントが発生する。
　一人の自転車がパンクしたのである。

　無理して１０分ほど走ると、偶然、輪業店があった。ここで修理しようと駆け込むが、再びアクシデントが。
　出てきたのは留守番をしているおばあさんで、修理をできる者は出かけていると言われた。
　しかし、修理しないことには先に進めない。
　そこで、道具を借りて自分たちで直すことにした。私と言いだしっぺの友人は、中学校時代から自転車を好き勝手にいじっており、パンクなら自分で直すことができた。

　約３０分で修理完了。
　再出発である。

　その後は、猪苗代湖畔を順調に走り続け、会津村の入り口まで進む。
　この先で、一度４９号線から外れるルートを取った。
　４９号線をそのまま進むと、会津若松市内をコの字に走ることになるため、距離短縮のためこの道を選択したのだった。

　

　会津村を過ぎると、長い下り坂になる。そのまま会津盆地を西進し、新潟との県境をめざした。

　

　会津坂下町を過ぎると、柳津町までは緩やかな登りが続く。
　この坂の途中で、新潟方面から来た自転車の集団とすれ違った。

　年齢は少し上だったと思う。相手は４人連れ。
　道路の反対側を走っていたが、お互いすれ違いざまに「頑張れ！」と声をかけ、ガッツポーズでエールを送りあった。

　相手はどこまで行くのか？
　「こんなことしているのは私達だけじゃないんだ」と、うれしくなったものである。

　柳津町　→　西会津町と走り抜けると、県境は目の前。ここで午後６時半を過ぎていた。
　そこで、晩飯を食べながらどこに泊まるかを相談することにした。

　しばらくして見えてきたのが、１件のドライブイン。ここで晩飯を食べながら、地図を広げ宿泊場所の相談をした。

　そのドライブインだが、久しぶりに訪れると廃業していた。
　まだ、当時の建物が残っていたが、これも時代の流れかと寂しくなった。

　

　地図を見ると、近くを磐越西線が走っていることに気づく。
　「それなら駅がある！」駅に泊まればいいし、ダメなら駐車場にテント張って寝れば良いという結論に。
　宿に泊まる考えは無かったため、テントを持ってきていたのだ。

　ドライブインから少し走ると、４５９号線へ下る交差点がある。

　

　これを下ると新潟県に入り、磐越西線にもぶつかるのである。
　阿賀野川沿いをしばらく走ると、「豊実駅」という無人駅があった。

　ここを、初日の宿泊地とすることにした。

　

　駅に着いたのは、午後８時過ぎ。
　荷物を待合室へ運び、休むことにした。

　しかし、一日中動いていたため晩飯が足りなかったらしい。
　全員、腹が減って寝れない始末・・・。
　山間の集落のため、コンビニなんて有るわけ無い。何かないものかと駅前を散策すると、１件の雑貨屋があった。
　明りが着いていたので、店に入りカップラーメンとお菓子を購入。
　お湯までもらい、何とか夜食をとることができた。

　このお店は、今も変わらず営業していた。

　

　その後は、待合室で雑談をしながら時間を過ごし１１時過ぎに就寝。
　待合室にはベンチが２脚しかなかったため、地下道と２ヶ所に別れて休むことにした。

　時折走る磐越西線の列車の音を聞きながら、私たちは眠りについた。