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児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

めざめた

2025-03-29 | 物語 (電車で読める程度)
胸焼けと朝焼け

もうどうにかなってしまいそうだった。

おめでとう、という昇進

おめでとう、という誕生

おめでとう、という傷心

なにも書けない。
どうせ書けない。

どうせ何者にもなれない。

つまらない人間だとつくづくおもった。

その一方で我が子らにとっては唯一なのだと奮い立たせた。


奇跡も痛みも胸いっぱいにつまらせて

どこか遠くへいってしまおう。


そんな3月だった。



【おわり】



その後

2025-03-01 | 物語 (電車で読める程度)
「覚えてますか。」
「覚えてるよ。」
「おれ、ここでバイトしてるんすよ。」

そのやり取りにどんな価値があるのか私にはわからなかった。

ただ店の奥に隠れる彼は私とは目が合わなかった。
580円が私から今彼にできるせめてものエールだ。
このパスタも彼が作ってくれたものかもしれない。言葉はない。彼とのやり取りを思い出そうとしてあまり浮かばなかった。

それでも彼のおかげだという人もいた。友人は多いのだろう。人間の感情をようやく掴みかけているらしい。

笑顔で話すウェイターの先で彼はどんな顔でなにを話していたのだろう。

どうせなら幸せでいてほしい。


あるときの講義室で隻腕の教授が繰り返し話す姿が浮かんだ。
ここで咲かなくていい。私でなくていい。
種を撒いて、どこかで花がひらけばいい。

なら種を撒くにしろ、土を耕すにしろ
あるいは鍬の手入れをすることにしろ。なんでもよいではないか。
私でなくてもいい。
よかった。


それから新しい場所へ



【おわり】