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落穂拾い

Gleanings in my life

凄惨な生産出荷 by SONY

2007年05月17日 00時16分24秒 | small talk
ソニーの08年3月期、エレキ好調で営業益は前年比6.1倍へ(ロイター) - goo ニュース

上記ニュースでは詳細は書いてないのだが、たとえばCNET Japanの記事では、タイトルからして「PS3の累計出荷台数は550万台、ただし実売は360万台--ソニーが明らかに」となっていて、凄惨な生産出荷の実態が明らかになっている。

もはやネット上では知らぬ人はいないと思われるほど認知されたソニーの生産出荷。簡単に言えば生産量のことだ。普通は、売れる量に合わせて生産するので、生産出荷と販売台数の間に大きな乖離はないはずだ。

ではなぜソニーが生産出荷の発表に拘るのか?
それは生産出荷の方がソニーにとって旨味があるからだ。

たとえば、まだ10万台しか売れていない商品であっても、生産さえしてしまえば「100万台生産出荷!」と発表できるわけで、それをCMやメディアに取り上げてもらえれば、「ソニーの製品は100万台売れているらしい」という誤解を招いて、勘違いに基いたブームを呼ぶことができる。結果的に100万台が販売できれば、生産出荷=販売実績となるので、生産出荷を発表してもそれほど大きな問題はない(道徳的な問題は置いておく)。

ソニー以外の製造業者は「生産出荷」を一切使わない。
生産しても売れなければ利益には繋がらない。どんなにたくさん生産しても売れ残ってはマイナスなのだ。というわけで、メーカーが生産出荷を販売実績の代わりに発表することは通常は考えられない。その常識破りがソニーにだけ許されている(勝手にやっているだけだが)のは、ソニーの製品は「造っただけ売れていく」という事情が存在している(はず)だからだ。

生産出荷が販売実績とほぼ等価と見做されるのは、生産後すぐに売れる状態である。生産してから販売されるまでの時間が長ければ長いほど「生産出荷」は「偽物」になっていく。これまでのソニーはこの時間差が小さかった。いや、実際は小さく見せることに成功していただけなのだ。本当に生産出荷が販売実績と等価であるならば、販売実績(セルイン、すなわち正常な意味での出荷でよい)を発表すればよいのだから…。それをしてこなかったということは、おそらく生産出荷を販売実績と誤解してもらえるとメリットがあったからに違いない。

たとえば、過去にはこんな記事があった。PSP、全世界での生産出荷累計1000万台を達成(ITmedia)。この記事の結びにはこういう記述がある。「約10カ月間で1000万台という出荷数量は、SCEIがこれまでに導入してきたプラットフォームの中でも、最速の普及スピードとなっている。」
生産出荷という問屋にさえ渡っていない値でもって「普及スピード」を語るこの記事は、多くの読書を「PSPは史上最高のペースで売れているらしい」と誤解させるに十分な効果があったと考えられる。これがソニーの戦略である。ちなみに、上記の「最速の普及スピード」というのはソニーのニュースリリースの中に明記されている表現である。

とまぁ、過去のこのような事例には事欠かない。話を今に戻そう。

今回のPS3の生産出荷550万台、販売(セルイン、小売店への出荷の意)が360万台というのは、生産したけどソニーに残っているPS3が190万台あるということを意味している。実に生産量の1/3以上が出荷さえできていないのである。生産と需要の間に明確な乖離が見られているのである。

さらに、この値は昨年度末の状態であるが、昨年度末でのPS3の実際の売り上げ(小売店から消費者へ売れた数)は、各種機関の調査結果を見ると、どうやら300万台にさえ達していなかったようである。すなわち、小売店(あるいは問屋)で寝かされているPS3が60万台以上は存在してたということだ。結果として、小売はソニーに発注せず、ソニーは造れども出荷できないという状態になる。

これがPS3の実情だ。
昨年末から今年1月にかけてPS3、北米で100万台出荷を達成、PS2を上回るペース(まんたんウェブ)PS3:国内出荷数100万台突破 世界累計でPS2上回るペース(まんたんウェブ)などという記事が書かれている。もちろん、ソニーの「大本営発表」の垂れ流しに過ぎない。

結局、判明したことは、PS3はPS2を越えるペースで生産を行なったということだけであり、発売後二ヶ月の時点で生産出荷したPS3は、半年後の今もまだ売れ残っているという事実だ(各種調査によれば、国内のPS3の販売実績はいまだ80万台強である)。もはや、生産出荷についての「すごいでしょ、売れてそうでしょ!」というソニーの大本営発表は信頼性を著しく失ったと考えて間違いないだろう。

生産出荷が実販売数から乖離していることは、前期にはすでに明らかになりつつあった。ソニーのゲーム分野苦戦 「生産出荷」は「正確に台数を把握できる」(ITmedia)という記事では、PSPの生産出荷が72%減という惨状であるにもかかわらず、「PSPの72%減は生産出荷台数ベースで販売ではない。特に欧米では好調に売れている」とソニーの湯原隆男SVPが語っており、生産出荷のまやかしをソニー事態が指摘するという事態が発生していた。

要するに、恐ろしい勢いでPSPを生産して「史上最高の速度で普及(実際は生産してるだけ)」と大々的に発表していたのだが、あまりにも売れなさすぎたので生産をストップし、販売に専念したのが昨年末であったということだ。実際、昨年の第四四半期のPSPの北米けおける生産出荷大秀は1万台に過ぎず、実際の売上と乖離していることは、ソニー自身が指摘していた。

実際の販売量が、生産出荷を後追いしていたころは、生産出荷を発表することはソニーにとってメリットがあった。しかし、生産しても売れ残ってしまう現状において、生産出荷の発表は売れ残りをより一層際立たせることにしかなっていない。

そろそろ、ソニーも普通の企業として、販売量を愚直に発表するように変更するときではないのかと思う。


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