GLAY Story

GLAY関連の書籍を一つにまとめてみました。今まで知らなかったGLAYがみえてくる――。

 キーボード D.I.E. / ドラムス TOSHI、新加入

2009-09-09 | デビュー初期



 新宿「日清パワーステーション」での”SPEED POP STANDING GIGS”を最後に、NOBUMASAが脱退した。

 ちょうどその頃、キーボードのD.I.E.がサポートメンバーとして加わることになった。二つのことが同時に起こったこともあって、GLAYの中でバンドに対する意識が大きく変わってきていた。

 「5人いないとバンドじゃないっていう考え方は、もうやめにしないか?それに、そういう形のバンドじゃないとロックができないっていうのも」 TAKUROがせきを切ったように話しはじめた。

 「うん、変なところにこだわりすぎていたような気がする」とJIROが答えた。簡単に割り切れるような問題ではなかったからこそ、TERUもHISASHIも、辿り着いたその結論に確信を持った。

 「好きなようにやろうとしてたことが、かえって自分たちの枠を作っていたのかもしれない」 もはや、GLAYを維持していくことに躍起になる必要はなかった。あとは作品としていいものを残し、納得のいくライブをやるだけだ。



最上のドラマー探し

 GLAYをサポートしてくれる最上のドラマー探しが始まった。

 「げ、すごい!」 JIROは慌ててアンプに近づくと、一気にボリュームを上げた。今まで通りのセッティングではとても太刀打ちできないと思ったのだ。横目で見ると、TAKUROもHISASHIもアンプをいじっているのがわかった。

 「こんなに違うものなのか……」

 耳がちぎれそうな感覚に、JIROは嬉しくなってもうひと目盛りぶんツマミをまわした。新しいドラマーのことで悩んでいたGLAYに、スタッフの井ノロが「いい人がいる」と紹介してくれたのが、氷室京介のサポートとしても活躍している永井利光だった。

 「とりあえず1回合わせてみよう」ということになったのだが、その圧倒的なパワーにメンバーの誰もがなぎ倒されそうになった。

 当初、氷室京介のパックでシンプルなドラミングをしている永井に対して「GLAYとは少しタイプが違うかも」と懸念を抱いていた4人だったが、実際にスタジオに入るとそんな思いはきれいにフッ飛んでしまった。

 「とにかく、言うことないよ!」 レコーディングもツアーもOKだということだった。心強い仲間を迎え、誰もが胸を踊らせた。それに何より彼は温厚で話しやすく、人間的にも信用ができた。

 メンバーは全員一致で、迷う間もなくすぐに決断を下した。



確かな手ごたえ

 新生となったGLAYは、どこに行っても確かな手応えを感じていた。95年4月、新潟を皮切りにスタートした”SPEED POP GIG ‘95”はどの会場も超満員で、前回までのツアーがまるで嘘のようだった。

 「モニター、もっと上げてもらえます?」 「あ、俺のも」 リハーサルが始まった。「じゃ、いくよ!」 TOSHIのカウントで曲がスタートすると、誰もいない客席に大音量が響き渡った。

 「この曲はもっとおとなしめのほうがいいですか?」 何曲か進み、JIROは確かめるようにマイクに咳く。

 「いや、全然。もっと好きなようにやったら?」 新しいライブの制作スタッフたちは、どうしてそんなことを聞くんだという風にそう答えた。「うん、これなんだよなあ。これが違うんだ」とJIROは思った。

 以前はどこか遠慮しながらライブに挑んでいたが、新しいメンバーになりスタッフも一新してからは、たいていのことは解禁になった気がしていた。サポートメンバーのD.I.E.は、ライブ中に鍵盤の上に乗ってブチ切れる。

 ドラムスのTOSHIも、これでもかという具合に暴れまくる。今まで思い通りにやっていたつもりだったが、彼らを見ていると自分がいかにまわりを気にしていたか嫌というほどわかった。

 「なんか、今回のツアーは楽しいよね」 TERUが昨日のミーティングで顔一杯に笑みを浮かべていたのを思い出した。TAKUROもHISASHIも、このツアーが始まってからはすこぶる調子がいいように思えた。

 「ムチャクチャをやるんじゃなくて、思いっきりやればいいんだ」 JIROはその夜、客席に向かって最初のダイブを敢行した。



「ああ、狭いなぁ」

 ツアー最終日、2度目の渋谷公会堂は即日ソールド・アウトとなった。TERUはゆっくりとステージ中央に立つと会場をぐるりと見渡し、おもむろにマイクをつかんだ。

 歌い始めると歓声が一気に膨れ上がるのがわかった。前のライブから約2週間空いていたが、そのことがかえってTERUの気持ちをリラックスさせ、全身がまるで1本のしなやかな鞭のように弾んでいた。

 「ああ、狭いなぁ」 2度目だけに、ステージ上の距離感はしっかりとつかんでいたつもりだった。ところがライブが進むにつれて、その目測はあやふやになってきた。前回広いと感じたステージが、自分の中でまったく違和感がなくなっていたのだ。

 ステージの両端と正面のモニターから流れ出す音の洪水に、体が敏感に反応する。客席のファンが、揺れながらスローモーションでこちらに近づいてくる。

 このツアー中にリリースした5枚目のシングル「ずっと2人で…」を歌うと、その思いはもっと強くなった。函館時代から歌い続けてきたこの曲が、今また新しい意味を持って生まれ変わったような気がした。

 「気持ちいい。こんなに歌うことが気持ちいいものだったなんて……」 鳴り響く拍手の渦に、TERUは右手を高く突き上げて応えた。





【記事引用】 「私の中のGLAY」 「GLAY STORY-永遠の1/4


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