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GLAY Story

GLAY関連の書籍を一つにまとめてみました。今まで知らなかったGLAYがみえてくる――。

 NOBUMASA、GLAYを脱退②

2009-09-09 | デビュー初期


 僕がGLAYと最後のステージを踏んだのは、4月2日、新宿「日清パワーステーション」での『SPEED POP STANDING GIG』のステージだった。

 この日のライブは、3月1日にリリースした1stアルバム『SPEED POP』の発売に合わせ、プロモーションを兼ねたコンサートの初日でもあった。しかし、僕の脱退ということもあり、このライブは急きょ単発のライブに切り替えられた。


●葛藤のリハーサル

 ライブ当日、楽屋に入ると、TAKUROも、TERUも、JIROも、HISASHIもすでにいた。

 少なくともTAKUROとJIROには、「このままではやっていけない。ドラムをかえたい」はっきりこう言われた。TERUとHISASHIは、「オバちゃんとやっていきたいよ。どうして今ドラムをかえないといけないんだよ」 そう言ってくれた。その言葉は僕の頭の中にこびりついている。とてもじゃないが、JIROやTAKUROの顔を見ても言葉を交わす気にならない。

 そんな僕を見て、TERUやHISASHIが僕に気を使ってくれているのがよくわかった。

 リハーサルに入る。僕もプロだ。「このステージでもう終わりなんだ」 こう思うと、最後のステージくらいは綺麗に飾りたかった。「ワン、ツー、ワン、ツー、スリー、フォー」 僕のスティックが叩かれ、リハ―サルが開始される。音はいつものように進み、強烈なリズムで次々とGLAY独特のサウンドを叩き出していく。

 僕はリハーサルをしながら、「どうしてだ。どうして俺が悪いんだよ。こんなにみんなと音も合っているのに。何が俺に足りないのか。本当のことが俺は知りたい」 頭の中に、そんな言葉が浮かんでは消えた。

 最後までその思いは僕の頭を支配していた。関係者もそんなリハーサルの雰囲気を察知したようだ。何人かの音楽誌の記者が僕のところに来た。「どうしたの? 今日のGLAY、よそよそしいじゃない。なんか違うよ。どうしたの?ライブ前の打ち合わせで何かもめたの?」 なかなか鋭い指摘だった。

 この日からサポートメンバーとして、キーボードのD.I.Eさんが参加していた。キーボードが入ったことで、確かにGLAYのサウンドに厚みが増していた。「自分たちの出せない音が見つかったら、その音が出せるメンバーを加える。GLAYの音は重厚でなくてはならない」 TAKUROのそんな意見で加わったキーボードのサポートメンバーだった。


●力いっぱいのドラムプレイ

 幕が開いた。予定されている曲が次々に消化されていく。TERUのMCが会場に駆けつけたファンには心地よく聞えるようだ

 「こんにちは、みなさん。俺たちのアルバム『SPEED POP』が3月1日リリースされたんです。みなさん買ってください。いい曲が入ってるから。俺たち、すごく自信持ってるアルバムなんですよ」場内は割れんばかりの拍手だ。そしてアンコール。『TWO BELL SILENCE』に続き、最後の曲『BURST』が始まる。

 僕にとっては、GLAYと一緒に演奏できる本当に最後の曲になる。力いっぱいドラムを叩いた。全曲、どこもミスすることなくライブを終えることができた。

 TAKUROとTERUはマイクを持ち、ファンに語りかけ始めた。「今日はみなさんにとって、ちょっと驚くような話があるんですけど、聞いてください。今まで僕たちをサウンド面でサポートし、GLAYのメンバーとして活躍してきたドラムのNOBUMASAが、このライブをもって、俺たちとは別々の道を歩み始めることになりました」

 TAKUROとTERUの報告が終わると、僕は一目散に楽屋に駈け込んだ。知り合いの音楽記者が僕のところにやって来た。

 「どうしたの? 僕はこれまでGLAYのドラムを何代も見てるけど、オバちゃんがGLAYのドラムとして一番合ってるように思うんだけど。音楽性のずれとかメンバーとのが何かあったの? 全然そうは見えないけどね。オバちゃんて、性格も爽やかで、GLAYのドラムとしては最高にマッチしてると思ってたんだよ」

 僕もまったく同じ考えだった。言葉が出なかった。「うん。でも、もう辞めるってことになっちゃったし、それ以上のことを言ってもしょうがないんじゃない」僕はそう言って音楽記者を振りきった。

 TERUもHISASHIも僕のことを心配そうに見つめている。TERUが僕のそばに寄ってきた。

 「オバちゃん、頑張れよ。俺、オバちゃんのドラムとしての腕すごく認めてるんだから。ほかのバンドに行っても、またしっかり頑張ってよ。絶対にこのまま消えちゃうようなオバちゃんじゃないんだからさ」 こう声をかけてくれた。

 HISASHIも、「絶対に遊びにきてよ。俺たち、まだミュージシャン仲間として色々なことを教えあったり、刺激しあったりしないといけないじゃない。俺たちもこんな形でのオバちゃんの脱退って胸が痛むっていうか、やりきれない思いなんだよ。わかってくれるよね」 そう言って僕の肩を叩いた。





【記事引用】 「GLAY‐夜明けDaybreak/大庭伸公(デビュー初期のドラマー)・著/コアハウス


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