何を見て、何を感じ、何を考えるか? いやいや。今回の経験は、頭で分かっていても、実際に見てみると驚きの連続。
例によって、例のごとく。
GALANT's Cafeの幼馴染が、医療関係者でもなんでもないGALANT's Cafeを、病院公開勉強会に招待してくれた。
GALANT's Cafeは、医療関係者でもなんでもないから。
こんなことを見聞きしたところで、その経験が実生活(特に本来業務)に直接役立つ可能性なんて、非常に少ないのだが。
でも、新技術という奴は。
理系男として、純粋に面白い^^
今回のテーマは、新しい消化器内視鏡検査。
消化器内視鏡検査ってなんだ?って方。
胃カメラ検査だよ と言えば、分かってもらえるだろうか?
#本当は、この表現は適切ではない。
#なぜならば、消化器とは胃だけではなく、腸類だってあるからだ。
#が、非医療関係者にもよく知られた内視鏡検査といえば、胃カメラ検査だと思う。
ここ最近の消化管入り口から覗く内視鏡は、口から食道を通って胃の内部を検査する手法が主流。
いや、主流だったというべきか。
というのは、技術の進歩により、経鼻(早い話が、鼻の穴だね)から食道を通って胃の内部を検査する手法が主流になるかもしれない。
技術の進歩というのは。
見た目には、簡単で。
内視鏡の直径が、細くなっただけのこと。
#特殊なφ4mmタイプを除くと、φ5mm程度のものが一般的なようだ。
内視鏡が細くなれば、狭いところも容易に通過できる。
が、しかし。
鏡が細いということは、小口径のレンズしか装備することは出来ず、視野角を広くすることは困難になり、ましてや、明るさや分解能(精細度)は悪化する。
それでは、肝心な診断に悪影響を及ぼす。
これらの問題を、最新技術(画素数の多いCCDカメラや、ズーム比率の高い小口径ズーム、今や新時代の光源として定着した白色LEDなど)により解消し、胃の粘膜に走る微細な血管までも鮮やかに見せる。
驚くべき高画質かな。
モニタに映し出される映像は、想像していたよりも、はるかに鮮明で。
これが、人を一切開腹させることなく見えるとは。
ただただ、驚くしかない。
工学系理系男として言えば。
それらを構成する各部品の原理なんて、自明なものばかり。
その原理を知っていれば、目の前にある装置なんて、その存在が不思議なものではない。
#現に、最近の検査機械を構成する部分部分は。
#パソコン用周辺機器を上手に組み合わせて構成されていることが多い。
#これが、専用技術によってのみ実現が可能であった昔の検査機械と、
#汎用技術から構成されることが多くなった最新検査機械の違い。
#こんなところにも、技術の進化が感じられる。
が、しかし。
そこには、それらの装置を設計・開発した人間達の英知が潜んでいるわけであり。
実際に目の当たりにすると、その素晴らしさに驚愕する。
だが、しかし。
驚くのは、まだ早い。
これらの内視鏡は、消化器内部の状態を見るだけではなく。
電気メスやレーザ照射によって、開腹を必要としない外科的治療すら可能にする。
話には聞いていたけれども。
実際に目の当たり(ビデオだけれども)にすると、驚愕する。
まるで、無人の潜水探索船が、深度何千mにて海中サンプルを拾い集めるがごとし。
今、目の前のモニタに鮮やかに映し出されていることは、人間の内部へ何mか先で行われていることなのだ。
確かに。
これでは、術者も患者も、今までよりもはるかに楽なはず。
ところが。
これらの技術にも、大いなる欠点がある。
それは、有線(ケーブルで繋がっている)であること。
インターネットに接続されるPCだって。
今や、有線だけでなく、無線で繋がる時代。
有線である限り、いつでもどこでも利用できるとは限らない。
その線が届く範疇(つまりはケーブルの長さ)に限定される。
それに対し。
いつでもどこでも気軽に利用できる無線環境は、便利なものだ。
#無論、無線ならではの問題(確実性であったり、セキュリティ対策の面など)もあるのだが。
それは、内視鏡も同じ。
経口からであれ、その反対側からであれ、有線である限り届く距離が限られる。
ましてや、人間の消化器官は、複雑に曲がりくねっている。
消化器官は有限長と言えど、内視鏡が長ければ解決できる問題ではないのだ。
では、どうする?
だれしも考えることは。
小さなカメラを、しかも無線で動作するモノを、人間の消化器官に入れて、体外から観察しようとすることではないか?
そのアイディアは、夢物語ではなく。
すでに、カプセル内視鏡として、存在するのだ。
#いや、話には聞いていましたけどね。
#現物見ると、驚きですよ。
#ましてや、コイツが撮影したという消化管内部を見せられると。
#こんなに小さい奴が、こんなに鮮明な画像を8時間!(しかも1秒間に2枚の割合で撮影し続ける)
#に渡って撮影し続け、そのデータを体面表皮に張られた8つのアンテナから体にぶら下げられたHDDへ
#転送し続ける構造なのです。
#後は、そのHDDに蓄積されたデータを、パソコン上の専用ソフトで解析するだけ。
いやぁ、よく出来ている。
基本的なアイディアは、誰しもが思いつくだろう。
が。
それを形にするのは、決して容易ではない。
その困難を乗り越えて。
今、目の前に現物がある。
今まで見えなかったものを、見えるようにする力。
この力は、医療に限ったことではなく。
この力のおかげで、何を見て、何を感じ、何を考え、そして、どのように行動する(生きる)かは、劇的に進化するのだ。
P.S. 今回の講演をして下さった独協医科大学の中村哲也医師より、数多くの内視鏡による観察例を見せて頂きました。
その際に、「この症例では、ここが××であり、これがその典型的な特徴で...」と丁寧な説明を頂きましたが、非医療関係者であるGALANT's Cafeには、すべてが美しい映像にしか見えませんでした^^;
つまり(いや、当然のことなのですが)。
どんなに計測機器や観察装置が進化しても。
その機器・装置達が示したほんの些細な特異点に気がつかなければ、どんな高性能な機器や装置達も無意味になってしまうことを、決して忘れてはなりません。
本当に大切なことは。
高性能な機器・装置が存在していることではなく。
その高性能な機器・装置を使いこなせる専門家が存在していることなのです。
#非専門家だけでなく、肝心な専門家すら、そのことを失念している事例が、各専門分野において見られることを忘れてはなりません。
#本当に最後の分かれ目は、人なのです。
~~~2006.7.23 14:30:00追記~~~
1. 現行の内視鏡は単眼(望遠鏡のように)が主流なようだけれども。
あれだけ細くなったのだから、双眼(正しく双眼鏡のように)にして、立体視(3D画像)を実現すると、医療者はより高度な判断をしやすくなるのではないだろうか?
#無論、ほんの少しばかり見える位置が異なる2枚の映像からなる3D画像を長時間見続けることは、相当疲労することが知られている。
#この点の解消方法については、いくつかの手法があり、GALANT's Cafeの古巣でも研究が進んでいる。
2. 上記の記事において、“本当に最後の分かれ目は、人”と書いたのだけれども。
このことを解消するには、やはり、識別できる能力を持った専門家を育成するということに尽きる。
が、現実問題。
そのような高度な識別能力(しかも、分野ごとに!)を持った専門家を大量に育成することは大変なことであり。
また、ある狭い地域において、常時必要という訳でもない。
と、なれば。
操作をする専門家と識別する専門家を分離し(無論、兼務もかまわない)。
大勢の操作する専門家が収集した映像を、ネットワーク越しに識別する専門家の所に集約し、集中的に識別させるということが現実的ではないか?
#このメリットは、識別する専門家を育成する際にも、短期間の間に集中的に数多くの症例にめぐり合うことが出来ることだ。
通信事業者の夢物語として、高精細な画像による遠隔医療という話は、随分昔からあったが、大量の情報を短時間転送を実現するネットワークの処理能力(しかも現実的なコストで)だけでなく、入力側(カメラなど)や出力側(モニタなど)の処理能力の問題もあり、長年の夢物語であった。
が、しかし。
現行のパソコンベースの検査機器であれば。
後は、IPアドレスさえ振ってしまえば、十二分に実用的な遠隔医療を実現できる。
ほんの10年も前であれば。
高価な専用機でもなければ、まともに使い物にならなかったのに。
今や、その辺の電気屋さんで販売されている民生品で使い物になる(無論、十二分な能力を有するというわけではないが)時代になってしまったのだ^^
例によって、例のごとく。
GALANT's Cafeの幼馴染が、医療関係者でもなんでもないGALANT's Cafeを、病院公開勉強会に招待してくれた。
GALANT's Cafeは、医療関係者でもなんでもないから。
こんなことを見聞きしたところで、その経験が実生活(特に本来業務)に直接役立つ可能性なんて、非常に少ないのだが。
でも、新技術という奴は。
理系男として、純粋に面白い^^
今回のテーマは、新しい消化器内視鏡検査。
消化器内視鏡検査ってなんだ?って方。
胃カメラ検査だよ と言えば、分かってもらえるだろうか?
#本当は、この表現は適切ではない。
#なぜならば、消化器とは胃だけではなく、腸類だってあるからだ。
#が、非医療関係者にもよく知られた内視鏡検査といえば、胃カメラ検査だと思う。
ここ最近の消化管入り口から覗く内視鏡は、口から食道を通って胃の内部を検査する手法が主流。
いや、主流だったというべきか。
というのは、技術の進歩により、経鼻(早い話が、鼻の穴だね)から食道を通って胃の内部を検査する手法が主流になるかもしれない。
技術の進歩というのは。
見た目には、簡単で。
内視鏡の直径が、細くなっただけのこと。
#特殊なφ4mmタイプを除くと、φ5mm程度のものが一般的なようだ。
内視鏡が細くなれば、狭いところも容易に通過できる。
が、しかし。
鏡が細いということは、小口径のレンズしか装備することは出来ず、視野角を広くすることは困難になり、ましてや、明るさや分解能(精細度)は悪化する。
それでは、肝心な診断に悪影響を及ぼす。
これらの問題を、最新技術(画素数の多いCCDカメラや、ズーム比率の高い小口径ズーム、今や新時代の光源として定着した白色LEDなど)により解消し、胃の粘膜に走る微細な血管までも鮮やかに見せる。
驚くべき高画質かな。
モニタに映し出される映像は、想像していたよりも、はるかに鮮明で。
これが、人を一切開腹させることなく見えるとは。
ただただ、驚くしかない。
工学系理系男として言えば。
それらを構成する各部品の原理なんて、自明なものばかり。
その原理を知っていれば、目の前にある装置なんて、その存在が不思議なものではない。
#現に、最近の検査機械を構成する部分部分は。
#パソコン用周辺機器を上手に組み合わせて構成されていることが多い。
#これが、専用技術によってのみ実現が可能であった昔の検査機械と、
#汎用技術から構成されることが多くなった最新検査機械の違い。
#こんなところにも、技術の進化が感じられる。
が、しかし。
そこには、それらの装置を設計・開発した人間達の英知が潜んでいるわけであり。
実際に目の当たりにすると、その素晴らしさに驚愕する。
だが、しかし。
驚くのは、まだ早い。
これらの内視鏡は、消化器内部の状態を見るだけではなく。
電気メスやレーザ照射によって、開腹を必要としない外科的治療すら可能にする。
話には聞いていたけれども。
実際に目の当たり(ビデオだけれども)にすると、驚愕する。
まるで、無人の潜水探索船が、深度何千mにて海中サンプルを拾い集めるがごとし。
今、目の前のモニタに鮮やかに映し出されていることは、人間の内部へ何mか先で行われていることなのだ。
確かに。
これでは、術者も患者も、今までよりもはるかに楽なはず。
ところが。
これらの技術にも、大いなる欠点がある。
それは、有線(ケーブルで繋がっている)であること。
インターネットに接続されるPCだって。
今や、有線だけでなく、無線で繋がる時代。
有線である限り、いつでもどこでも利用できるとは限らない。
その線が届く範疇(つまりはケーブルの長さ)に限定される。
それに対し。
いつでもどこでも気軽に利用できる無線環境は、便利なものだ。
#無論、無線ならではの問題(確実性であったり、セキュリティ対策の面など)もあるのだが。
それは、内視鏡も同じ。
経口からであれ、その反対側からであれ、有線である限り届く距離が限られる。
ましてや、人間の消化器官は、複雑に曲がりくねっている。
消化器官は有限長と言えど、内視鏡が長ければ解決できる問題ではないのだ。
では、どうする?
だれしも考えることは。
小さなカメラを、しかも無線で動作するモノを、人間の消化器官に入れて、体外から観察しようとすることではないか?
そのアイディアは、夢物語ではなく。
すでに、カプセル内視鏡として、存在するのだ。
#いや、話には聞いていましたけどね。
#現物見ると、驚きですよ。
#ましてや、コイツが撮影したという消化管内部を見せられると。
#こんなに小さい奴が、こんなに鮮明な画像を8時間!(しかも1秒間に2枚の割合で撮影し続ける)
#に渡って撮影し続け、そのデータを体面表皮に張られた8つのアンテナから体にぶら下げられたHDDへ
#転送し続ける構造なのです。
#後は、そのHDDに蓄積されたデータを、パソコン上の専用ソフトで解析するだけ。
いやぁ、よく出来ている。
基本的なアイディアは、誰しもが思いつくだろう。
が。
それを形にするのは、決して容易ではない。
その困難を乗り越えて。
今、目の前に現物がある。
今まで見えなかったものを、見えるようにする力。
この力は、医療に限ったことではなく。
この力のおかげで、何を見て、何を感じ、何を考え、そして、どのように行動する(生きる)かは、劇的に進化するのだ。
P.S. 今回の講演をして下さった独協医科大学の中村哲也医師より、数多くの内視鏡による観察例を見せて頂きました。
その際に、「この症例では、ここが××であり、これがその典型的な特徴で...」と丁寧な説明を頂きましたが、非医療関係者であるGALANT's Cafeには、すべてが美しい映像にしか見えませんでした^^;
つまり(いや、当然のことなのですが)。
どんなに計測機器や観察装置が進化しても。
その機器・装置達が示したほんの些細な特異点に気がつかなければ、どんな高性能な機器や装置達も無意味になってしまうことを、決して忘れてはなりません。
本当に大切なことは。
高性能な機器・装置が存在していることではなく。
その高性能な機器・装置を使いこなせる専門家が存在していることなのです。
#非専門家だけでなく、肝心な専門家すら、そのことを失念している事例が、各専門分野において見られることを忘れてはなりません。
#本当に最後の分かれ目は、人なのです。
~~~2006.7.23 14:30:00追記~~~
1. 現行の内視鏡は単眼(望遠鏡のように)が主流なようだけれども。
あれだけ細くなったのだから、双眼(正しく双眼鏡のように)にして、立体視(3D画像)を実現すると、医療者はより高度な判断をしやすくなるのではないだろうか?
#無論、ほんの少しばかり見える位置が異なる2枚の映像からなる3D画像を長時間見続けることは、相当疲労することが知られている。
#この点の解消方法については、いくつかの手法があり、GALANT's Cafeの古巣でも研究が進んでいる。
2. 上記の記事において、“本当に最後の分かれ目は、人”と書いたのだけれども。
このことを解消するには、やはり、識別できる能力を持った専門家を育成するということに尽きる。
が、現実問題。
そのような高度な識別能力(しかも、分野ごとに!)を持った専門家を大量に育成することは大変なことであり。
また、ある狭い地域において、常時必要という訳でもない。
と、なれば。
操作をする専門家と識別する専門家を分離し(無論、兼務もかまわない)。
大勢の操作する専門家が収集した映像を、ネットワーク越しに識別する専門家の所に集約し、集中的に識別させるということが現実的ではないか?
#このメリットは、識別する専門家を育成する際にも、短期間の間に集中的に数多くの症例にめぐり合うことが出来ることだ。
通信事業者の夢物語として、高精細な画像による遠隔医療という話は、随分昔からあったが、大量の情報を短時間転送を実現するネットワークの処理能力(しかも現実的なコストで)だけでなく、入力側(カメラなど)や出力側(モニタなど)の処理能力の問題もあり、長年の夢物語であった。
が、しかし。
現行のパソコンベースの検査機器であれば。
後は、IPアドレスさえ振ってしまえば、十二分に実用的な遠隔医療を実現できる。
ほんの10年も前であれば。
高価な専用機でもなければ、まともに使い物にならなかったのに。
今や、その辺の電気屋さんで販売されている民生品で使い物になる(無論、十二分な能力を有するというわけではないが)時代になってしまったのだ^^
次の勉強会(認知症)も遊びにきてね。
次回の認知症も楽しみにしています。
そのうちちょっと困ったチャンになるかもな兆し。
またご意見を伺わせていただくかもしれません。
呼んでくれて、ありがとね^^
次の勉強会も参加したいな。
...最近のGALANT's Cafe自身が、認知漏れが多くて(汗)
●柊さま
これ(次回への期待)だから、理系女はこまるなー(嘘)
...また、なんかやらかしたの?w(それっ、にげろろー)
今年の日経サイエンス誌にも記事があったような。。。(いつだったかは自信ない ^^;)
オリンパスのが有名ですね。 あとアールエフのNORIKAって名は目にしたことがあります。
ごめんなさいっ m(_ _)m(平謝り)
読むのも、めんどぉですよね?^^;
カプセル内視鏡については、GALANT's Cafeも学生の頃(1990年代末)から聞いていました(その頃は、内視鏡としてではなく、マイクロマシン(極小ロボット)として)。
その頃は、まだまだ実用的ではなかったのですが。
今や、実用化され、有効な手段として用いられているという話を(ユーザサイドから)聞かされると、技術屋としては、嬉しいのですよね。
ということで老眼のせいにしてくだされ。。。 < ずるぃっ ^^;
書き手も工夫して。
もっと簡潔に書かないと...(汗)