診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

ヒートショック

2016年02月26日 | 医療、健康
最近、ヒートショックという言葉をよく耳にしませんか。浴室での突然死を指す言葉です。 いつもご夫婦で月1回、クリニックに通院され、年末に胃がんが見つかり、腹腔鏡下で胃がんの治療を受け、年始には元気に復活されたK氏。その10日後に手術を受けた外科の主治医から『 風呂場で心肺停止状態で奥さんに見つけられ、先ほど救急車で搬送されて来られましたが死亡が確認されました 』と電話連絡を受けた。絶句である。高校時代の友人のお父さんも一昨年、風呂場で亡くなられているところを見つけられた。寒い冬には高齢者の風呂場での突然死が非常に多く、年間の交通事故死の2倍ほどにも上ると言われている。暖かい部屋から寒い脱衣所で裸になり、更に寒い洗い場で今度は熱い湯をかぶってそのまま湯船に入るパターンではないかと想像する。血圧の乱高下で脳梗塞や脳出血、心筋梗塞を起こして突然死に至るなどと書かれている記事が多いが、否定はしないが殆どは失神による溺死と考える。暖かい部屋から寒い脱衣所、洗い場で血圧は上昇し、いきなり42℃程度の熱い湯をかぶり体も洗わず先に湯船につかる。今度は一挙に血圧は下がることになる。血圧が 90mmHgを一気に切れば、脳への血流は一気に減って気を失ってしまう。湯船の中で気を失うものだから溺れ死んでしまうことになる。洗い場で気を失ったのであれば溺れることはなく、間もなく気がつき何事もなかったかのように風呂を出ることになるだろう。お金はかかるが脱衣場と浴室には暖房をつけることが高齢者の場合の対策になるだろうし、熱い湯をかぶっていきなり湯船に長くつかることには十分注意することである。長湯の後、脱衣所で大きな立ちくらみを経験する人も多いと思うが、これも血圧が下がっている症状である。サウナで起こる立ちくらみもそうである。