第十八首

住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通ひ路 人めよくらむ
藤原敏行朝臣
(?-901?) 在原業平の妻の妹と結婚。三十六歌仙の一人で、能書家。
部位 恋 出典 古今集
主題
夢においても人目を忍ぶ恋のもどかしさ
歌意
住吉の海岸に打ち寄せる波の、そのよるという言葉ではありませんが、昼はもちろん、夜までもどうして私は夢の中の恋の通い道で人目を避けるのでしょう。
「よるさへや」夜までも。 「 よくらむ」の 「よく」は避ける。 現実の世界ばかりでなく、夜までも、夢の中の通い路で、あの人はひと目を避けているのだろうか。夢にも会えないことよ。
敏行の歌としては、「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(古今・秋上)の歌が秀歌として知られています。
若くより能書家として知られ、『江談抄』、『古今』などに書道に達していたことを伝える逸話があり、神護寺の照鐘銘が現存している。