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不思議活性

詩について 4

 

 詩って、自然や人事について起こる感動とありましたが、自分が詩らしきものを書くようになったのは、社会人になった頃でした。自分は生きて行くということに悩んでいました。生きて行くことにやっとこで、自然や人事について起こる感動ということもなかったと思います。
 で、自分なりの観念を言葉にして、詩らしきものとしていたのです。社会人
となったばかりで、これといった人生経験もなくさびしい日々でした。それでも、1972年(昭和47年)から1981年(昭和56年)の東京での一人暮らしの人生経験が、さびしかった心をほぐしてくれたのです。そして、(昭和56年)27歳に故郷に戻ってきてからは、平凡な日々が続いているのですが・・・・。

 その後の私の詩とのかかわりですが、本棚をみると、詩誌「月刊近文」が幾冊か並んでいるのです。1983年(昭和58年)の月刊近文8・9合併号が最初で、廃刊となる1992年(平成4年)月刊近文4月号までの9年間の縁でした。
 記憶を辿っていくと、1983年(昭和58年)月刊近文10月号に、拙い自分の一篇の詩を掲載させていただいたことが縁でした。私はそのあともう一度掲載させていただき、あとは、毎月送られて来る詩誌に、目を通すという感じでした。思えば、私が詩らしきものを書きはじめた二十歳の頃から、「月刊近文」を購読していた37歳頃までの時期が私の詩との関わりの一期でした。思い返すと、恥ずかしい自分の詩です。
 まもなく37歳を迎える頃、結婚した私は、自然と詩を書くことから遠ざかりました。それが、2005年(平成17年)にウェブリブログに出会い、そのウェブリブログでの詩を書く仲間との出会いが、私を再び詩を書くことに誘ったのです。その、ウェブリブログでの詩の仲間との、2008年(平成20年)から2018年(平成30年)頃までが、詩との関わりの二期と言えるでしょうか。第二の青春という感じでした。

 「月刊近文」との出会いは三十年も前になりますが、リタイアして過去を振り返ることができ、当時は目を通すだけだった作品のなかから、幾篇か紹介させていただきます。
 「月刊近文」 1990年10月号  より。

『風』 石川礼子

私の前を風が吹く
風は
若き日の情熱と羞恥を演じ
枝の青い果実を
揺らす

若き日の情熱に
頬をそめる私
胸に開いた一輪の赤い花が
輝いて

ああ
容赦ない時の流れは
私から情熱を奪い去り
ティーカップの底の澱のように
羞恥だけが苦く残る

まだ
胸の中に咲いているだろうか
あの赤い花
私は風に問いかける


『吊り橋』 横山せき子

ふるさとを思うとき
銀色に耀いていた滑津川が浮ぶ
山の麓に流れ出る
谷間の渓流に繋がり
そこかしこに吊橋がかかっていた

春は新緑が芽吹き
甘く香るアカシヤの花が咲いていた
山に遊ぶ子供たちの
活き活きとした賑やかな声が
聞えてくる

牛を引いて山に向う農夫が
吊橋を渡る
のどかな田園風景など
春がめぐるたびごとに
あのころの
私のふるさとが蘇生する


『ゆばりする眼』 沢田敏子

お天気がよいので
二階のベランダや窓にいっぱい布団を干した
最後のいちまいを干そうと
身をのり出したとき
塀にしきられた隣家の庭の日向で
おんなのこをこちら向きに抱いて
おしっこをさせているのが見えた
まるいおんなのこの顔と
おんなのこによく似たおばあちゃんの顔
ふいの風に吹かれたような
遠くを眺める眼になった
窓をわたしが離れようとする一瞬の間に
ふたりはそろって同じ方へ目をやったのだ
その先へは
まだ おしっこも流れていないー

あれは
こちらに気まずい視線を合わせぬように
さりげなく外した気づかいの眼?
(とんでもない!とてもよいものを見せてもらって)
そうでないなら
いっときの間をおいてほとばしる
おんなのこの 透明ないのちの水のみなもとに
束の間 呼ばれていたような
遥かなものを追視するあのまなざしはなんだったろう
あのようなまなざしを
ひとは ときどきするらしい
わたしにも
<小用する少女の恰好>が
妙に眩しく 永遠になつかしいものであるように


『私が詩を書くかぎり』 秋山喜久江

あなたの愛情に抱かれ育まれて
あなたの優しい光のなかで
詩を書きはじめた私が
いつのまにか詩を通じて
あなたを見るようになっていた
といっても
あなたに死なれた悲しみは格別で
こんごも詩を書くことによって
独りの淋しさを乗りこえられるかどうか
それではあなたにすまない
私が詩を書くかぎり
あなたの優しい光は
生前の約束どおり
あの世から私に放たれつづけるのである
私が詩を書くかぎり
私が詩を書くかぎり

・若かりし頃は、今は想い出ですが、誰にも若き日々はあります。そのどうしようもない力に翻弄されてしまう愛すべき日々・・・・。今の自分は、少し退屈な日々です・・・・。それでも、こうして一篇の詩に出会うたび、生きていることが幸せであることを思う私です・・・・。

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