不思議活性

一冊の本 チャタレイ夫人の恋人 2



     2

 クリフォド・チャタレイと結婚したコニイですが、肉体的な生活というものは二人はほとんどもたなかったのです。

(チャタレイとコニイ。精神上のことでは彼は彼女と一つであった。だが肉体上では二人はたがいに存在していないのだった。それで、どちらからもcorpus delicti(罪体)について話し合うことはできないのだった。二人はきわめて親密でありながら、まったく触れ合うところがなかったのである。)

(彼女は、もしクリフォドに絶対に知れないことであり、彼がそれを自分の眼で見るようなことでさえなければ、彼女が半処女であろうと堕落した女であろうと、彼にとってはどうでもいいのだということを知っていた。眼の見ぬもの、心の知らぬものは、存在しない、というわけなのだ。)

(クリフォドは大きく見開かれた薄暗い眼で彼女をじっと見つめた。
「あなたがだれかほかの男の子供を産んでくれると、その方がいいんだが」と彼が言った。「もしも僕らが、それをラグビイ邸で育てれば、それは僕らの子供であり、家の子供なのだ。」)
 
(哀れなコニイよ!年月がたってゆくにしたがって彼女にとりついてきた恐怖は、自分の生活が空虚だということであった。クリフォドと彼女の精神生活はしだいに空虚なものに思われてきた。彼らの結婚生活、完全な生活というものは、彼が言ったとおり、習慣的な親密さというものに基礎を置いていた。だがそれがまったく空白であり虚無であると思われるような日があった。それは言葉、ただの言葉にすぎないものであった。ほんとうはただ空虚だけなのだが、その表面が偽りの言葉でおおわれているのだ。)

(クリフォドのふしぎな仕事上の能力は、ある意味で彼女を威圧していたので、彼がひそかにいだいている崇拝は彼女を狼狽させてしまったのである。二人の間には何もなかったのだ。彼女はこのごろは彼にさわりさえもせず、また彼の方でも彼女に決してさわらなかった。)

     * * * * * *
 
 そんな充たされないコニイが、ある日、森へ散歩に出かけ、メラーズという森番に出会ったのです。それから、コニイの運命は大きく展開して行くのですが・・・・。

(彼女はできるだけ森に逃げていった。ある日の午後、彼女がジョンの井戸で涼しげに吹き上げている水をながめて思い沈んでいると、森番が彼女のほうに近寄ってきた。)

 その日、コニイは森番と結ばれたのです。

(不思議な柔順な気持ちで彼女は毛布の上に横たわった。やがて、軟らかい、さぐるような、欲望をおさえきれないような手が彼女の顔をまさぐり、からだにさわるのがわかった。その手は彼女の顔を軟らかく、軟らかく、撫でた。それは無限な慰藉と救いであった。そして最後に彼女の頬にやわらかい接吻が触れた。)

     * * * * * *
 
 チャタレイ夫人コニイは、自分の人生を自分に誠実に生きていると言えるのかも。クリフォド・チャタレイも地主として、石炭業を経営し、彼なりに精一杯生きているように思えます。

(今ではコニイはかなりひとりでいられるようになった。ラグビイ邸を訪ねてくる人も前より少なくなった。もうクリフォドは彼らを必要としなくなったのである。)
(今ではクリフォドはその工業上の不気味な活動に熱中して、ほとんど、外部が堅い殻で、内部の肉が柔軟な、一つの生物になっていたのであった。)
 
 次回は、チャタレイ夫人コニイの行くすえについて・・・・。

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