第十九首
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難波潟 みじかき葦の ふしの間も
あはでこの世を 過ぐしてよとや
伊勢
(875?-940?) 宇多天皇中宮温子に仕えた。伊勢の通称は父の任国から。三十六歌仙の一人。
部位 恋 出典 新古今集
主題
訪れて来ない男をなじる恨みと嘆きの心
歌意
難波潟に生い育つあの葦の節と節の短い間のように、そんな短い間でさえ、あなたとお逢いしないで、このままこの世を過ごせとおっしゃるのですか。とてもできません。
「あはで」逢わずに。「で」は打消し含んだ接続助詞。
ほんのしばしの間も逢わずに、この世を空しく終えてしまえというのですか。こんなに私が恋い慕っているのに。
繊細にして強く、恋の恨みを美しいしらべに包んで、巧みな比喩の序詞を駆使した、いかにも定家ごのみの恋の歌である。
貫之らと並称された古今時代一流の女流歌人で、多くの屏風歌をよんだ。家集に、『伊勢集』がある。