Duke MBA 日本人ブログ

Duke University - Fuqua School of Business(非公式)

GATE (Global Academic Travel Experience) - Brazilについて Part 1

2015-11-01 08:44:30 | 課外活動
こんにちは、Class of 2016の三男坊です。
 
最近アプリカントの方からFuquaの看板プログラムの一つである、GATE(Global Academic Travel
Experience)の具体的な中身について照会を受けることが多くなりました。今回、少し前の話になりますが、現在2年生のForest,Tatsu,私の3名がBrazil GATEに参加しましたので、その様子(主に企業訪問の内容)を2回に分けてレポートします。
 
GATEとはアジア、中南米、アフリカの新興国のビジネス、文化、政治、経済について、講義やゲストスピーカーを通じて学んだのちに、春休み又は夏休みを利用して2週間、実際にその国を訪れ、政府機関や現地の企業等を訪問するプログラムです。勿論、単位も付与されるアカデミックなプログラムで、多くのビジネススクールが主催する、所謂、”~Trek”とは大きく異なります。小生は南米最大の経済大国でBRICsの一角を担うブラジルのサンパウロ・マナウス・リオデジャネイロの3都市に訪問しました。尚、今回のGATEの候補地として中国、ブラジル、南アフリカがありましたが、その中からブラジルを選択した大きな理由は下記の通りです。
 
1.  東京で勤務していた頃に石油・ガスのファイナンス業務で何度かブラジルの案件を取組んだ経験があったものの、実際に同国を訪問した事が無く、現実を見てみたかった
2.  地理的にも日本から最も遠い国にも拘らず、同国の経済、文化の発展において日本の影響が強く、またMBAの同級生にも同国出身者が多く、ブラジルについて大変興味があった
3.  同プログラムに参加する同級生達が最も多国籍(延べ10カ国以上の国出身の学生)で2週間の濃厚なプログラムを通じて、生涯に亘るネットワークを築きたかった
 
尚、同プログラムの担当教授(当地への引率も担当)であるAmbassador Patrick Duddy
http://www.fuqua.duke.edu/faculty_research/faculty_directory/duddy/)は、
現在Duke大学で教鞭を執る一方で、過去にはブッシュ政権及びオバマ政権下で駐ボリビア米国大使や駐ベネズエラ米国大使などを務めたアメリカを代表する中南米の専門家の一人で、チリやブラジルなどでも外交官として米国大使館でリーダーポジションを務めました。渡伯前には、過去に米国とベネズエラの外交関係が悪化した際にブッシュ大統領と行った激しい議論の中身をざっくばらんに共有してくれるなど、講義の内容も大変興味深いものでした。またDuddy氏は訪問先の歴史や現在のブラジル経済の状況など、基礎知識をとても分かりやすく教えてくれました。特に在任中の米国とブラジルとの貿易・経済交渉や外交についてのエピソード紹介はどれも生々しくまた刺激的で、毎回の授業がとても楽しみでした。
 
サンパウロで行った企業訪問は下記の通りです。
 
1.サンパウロ
 
米国領事館(U.S. Consulate General São Paulo)
 
米国外では世界最大規模の領事館。ブラジルは政治の都市が首都ブラジリア、経済の中心はサンパウロと明確な役割分担がされており、同オフィスでは約400名のスタッフが当領事館に勤務し、米国とブラジルの経済活動の発展の橋渡しの機能を担っています。上記の通り、Duddy氏が過去に当領事館のトップを務めていたこともあり、普段は滅多に入れない領事館の訪問が実現しました。
訪問では現役の大使及び商務官が多忙の中、時間を割いてブラジルの政治、マクロ経済や米国企業のブラジル進出の動向等を話してくれました。特に先般、米国政府の大規模な情報収集活動を暴露した米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)の元職員、エドワード・スノーデンの事件が起きて以降、ブラジルと米国の関係は冷えきっており、その関係修復が終わらなければ、経済面においても同国間の発展はないという、大使の発言は印象深かったです。
 
エンブラエル(EMBRAER、Empresa Brasileira de Aeronáutica S.A.)
 
同社は、国営石油公団ペトロブラスと並ぶブラジル最大の輸出企業の一つであり、世界第4位の旅客機メーカーです。航空機トータルのシェアでは、ヨーロッパのエアバス社、米国のボーイング社、カナダのボンバルディア社についで、世界で第4位の地位にありますが、ボンバルディアを追い抜くのも間近と言われていて、また中型機マーケットでは圧倒的な地位を確保しています。日本でも2007年に日本航空が国内線用の小型機を10機導入しました。その他、軍事部門にも積極的に注力していて、世界20カ国以上の軍隊で同社の戦闘機が採用されています。
今回の訪問では、企業の広報部担当より会社全体の説明を受けた後、エアライン向けの中型航空機やプライベートジェットの製造ラインを1時間程かけて見学しました。ちょうどオペレーションの授業を受講した直後だったので、部品の調達、適正在庫水準、製造ラインの最適化等、活発な質疑応答がなされました。また当社で実際に行われているKaizenプロジェクトについて話を伺い、組織としてどの様にオペレーションの最適化を管理しているのか、実例を踏まえて学ぶことが出来ました。同社のオペレーションにおいて日本(トヨタ)の影響がここまで強かったことには驚きました。
 
<写真1:EMBRAER訪問の様子>
 
イタウ・ウニバンコ・ホールディング(Itaú Unibanco Holding S.A)
 
同行はブラジルのサンパウロに本社を置く総合金融機関です。2008年にイタウとウニバンコの合併によりイタウ・ウニバンコ・ホールディングが誕生しました。金融機関としては南半球で最大で、世界でも上位10位以内の時価総額を誇っています。
特にブラジルにおいてはリテール事業で大きなシェアを維持しており、最近ではアルゼンチン、チリ、ウルグアイにも支店網を拡大しています。その他、ニューヨーク、ロンドン、リスボン、上海市にも事業所を設けていて、同行の投資銀行部門はブラジル人MBA留学生の卒業後の進路先としても人気だそうです。
訪問では主席エコノミストより2時間程、同行の今後の戦略やブラジルマクロ経済の短期・中期見通しについての説明を受けました。
今後の戦略については、多く米銀同様に自己勘定によるトレーディング業務を縮小し、投資銀行業務(特にクロスボーダーのM&Aのアドバイザーリー業務)、リテール業務、中小企業の貸出を延ばし、ユニバーサルバンクとしての確固たる地位を築いていくのが当面の方針とのことでした。
またマクロ経済については、足許は石油価格の下落を背景に2015年は一旦、ブラジルのGDPの成長はマイナス(1%台)に突入するも、国内消費が引続き活発であることから2016年以降はGDPの成長もプラス(2%-3%)に転ずるとの強気のコメントがあった。また原油価格についても先々、60ドル台までは回復するだろうとの見通しでした。一方でリスク要因としては、昨今開発を進め始めているブラジルの深海石油掘削プロジェクトの多くが原油価格55-60ドル台まで回復しないと経済的にメリットが無く、今後いくつかのプロジェクトが頓挫する可能性が有るとのことでした。
 
<写真2:イタウ銀行訪問の様子>
 
ブラジル・フーズ(BRF)
 
同社は、食品・飲料の製造・販売を行う食品コングロマリットで、冷凍食品からベビー食品まで業界を幅広く網羅しています。ブラジルには50にも及ぶ工場と12万人の従業員を抱える大企業です。
訪問では当社の歴史や今後の当社グローバル化に向けての人材育成の方針、当社のマーケット競争力についての説明を受けた後、当社の冷凍食品の物流センターの見学を行いました。
人材育成については、今後のグローバル化(特に注力地域は南米と中国)を視野に入れ、5年間の間に4つの異なった地域で仕事をする、グローバルローテーションを積極的に取り入れており、当社の今後の目指す姿とビジネスのボーダレス化を肌で感じることが出来ました。また同業他社に比べてまだまだグローバルの知名度が低いことから、相応のコストを掛けて、グローバルでの採用活動を強化しているとのことです。
また物流センターの見学については、以前日本で見学したことのある物流センターに比べるとまだまだオペレーション自体にやや無駄があり(例えば、何度も同じ場所にフォークリフトが食材を収集しに来る、明らかに人が余っていて喋っている人がいる、スペースが広すぎる、室温マイナス10度を維持するための工夫がなされていない、など)、まだまだ荒削りの印象を受けました。
 
 
<写真3:物流センター見学前>
 
 
次回はマナウス、リオデジャネイロでの活動内容をレポートします。