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情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

本年6月に集中するトランプ政権の足元を危うくする危険をはらむ一連の連邦最高裁判決の背景とその内容を法的に検証

2020-07-04 18:11:41 | 国家の内部統制

 2020.6.17 カナダの大手法律事務所であるMcCarthy Tétrault LLP報告「Textualism(文言主義/文理主義/原文主義/法文尊重主義)」(筆者注1)に基づいて:米国連邦最高裁判所(SCOTUS)は、法律上の単語を介してLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(生まれた性と異なる性で生きる人)、クエスチョニング(性自認や性的指向を定めない人)の頭文字をとっている)の権利を勝利に導いた(On the Basis of Text: SCOTUS Deals Victory for LGBTQ Rights Through the Words on the Page)」とする解説記事が届いた。 この判決は極めて保守化する米国司法の中で画期的な内容といえるし、わが国でも解説記事は多い。

 しかし、週刊誌やSNS等であればそれで良しとできようが、本ブログではそうはいかない。

 解説サイトをいくつかあたった結果に基づき、個性的な内容であり、かつ判例解説として代表的と思われる解説レポートを抜粋すべく、以下のとおり整理した。

 今回は、まず、この裁判をめぐる連邦最高裁の人事問題や連邦議会とのかかわり等周辺的な情報も含め整理し、(1)NPRの記事を中心に紹介し、次回以降、順次(2)以下の判決に関するレポートを紹介する。

 できる限り、この連載中で連邦最高裁判事の人柄や米国民にどのように理解されているか等についても随時引用するつもりである(単にリベラル派や保守派で片づけるには米国社会はもっともっと複雑である)。

(1)2020.6.15 ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)(筆者注2)Supreme Court Delivers Major Victory To LGBTQ Employees」

(2)2020.6.15 SCOTUS blog :Amy Howe  「Opinion analysis: Federal employment discrimination law protects gay and transgender employees (Updated)」

(3)2020.6.16 McCarthy Tétrault LLP報告「テキスト主義に基づいて:米国連邦最高裁判所(SCOTUS)は、ページ上の単語を介してLGBTQの権利を勝利に導いた(On the Basis of Text: SCOTUS Deals Victory for LGBTQ Rights Through the Words on the Page)」

(4)2020.6.16 POLITICO「LGBTQ groups vow to extend landmark court ruling beyond workplace」

2020.6.15 POLITICO「With LGBT ruling, Supreme Court hands liberals a surprise victory」

 また、今回の最高裁の判決内容を精査するうちに、トランプ政権の維持にとって重要判決といえる3件の最高裁判決が浮かび上がった。

 すなわち、(1) 618、幼少時に親に連れられて米国へ不法入国した若者の強制送還を猶予する措置「DACA」について、トランプ政権による撤廃を認めないと判示, (2) 627 、国政調査の米国籍を問う質問を含むことを却下―トランプ大統領は国勢調査の延期を指示, (3)629、人工妊娠中絶を大幅に規制する南部ルイジアナ州法を認めず無効とする判断を下した判決である。 

 これらの裁判は、連邦最高裁判所の現在の開廷期(2019年10月第一月曜日~2020年10月第一月曜日)の実質最後期にあたる本年6月中に米国の保守、改革派をめぐる問題でかつトランプ政権が真剣に取り組んできた問題につき、おおよその関係者の予想に反した判決が今回取り上げた判決以外に3件出ていることも、偶然ではない気がする。

 大統領本選挙を2020年秋に控え、トランプ政権の安定性が問われる中で反トランプ陣営定の攻撃対象は単に連邦最高裁判事の保守派、革新派裁判官では解決できない、まさに裁判官の法遵守精神が問われている重要な問題であるだけに、解説を加えるべき論点は多い。

 筆者としては、これらの裁判の判決内容の詳しい内容とかつ法律や判例などから見て後日の批判に耐えうる解説を試みたいと考える。しかし、時間の関係で今回のブログの最後に簡単な各判決文の概要のみを紹介し、詳細な解説は別途機会を改めて順次まとめたいと考える。

 なお、本文中で随時引用するが、わが国で最高裁判所の長官を含めて裁判官の法律解釈や人間性等につき国民はいかほどの情報をもっているであろうか。

 最高裁裁判官の任命は、最高裁長官の意見を聞いたうえで、内閣として閣議決定する。○最高裁長官に意見を聞くのは、最高裁の運営の実情を踏まえたものとなるよう人事の万全を期すため慣例として行っている。○最高裁長官の意見は、一般的には、出身分野、候補者複数名と最適任候補者に関するものである。○候補者については、(ア)主として裁判官、弁護士、検察官の場合は、最高裁長官から複数候補者について提示を受け、(イ)行政、外交を含む学識経験者については、原則内閣官房で候補者を選考し、いずれの場合も内閣総理大臣の判断を仰いだうえで閣議決定する。(司法制度改革推進本部顧問会議(第5回)「配布資料5」

 さらに国民審査制度がある。日本国憲法第79条に規定される最高裁判所裁判官国民審査は、既に任命されている最高裁判所の裁判官が、その職責にふさわしい者かどうかを国民が審査する解職の制度であり、国民主権の観点から重要な意義を持つものである。最高裁判所の裁判官は任命された後に初めて行われる衆議院議員総選挙の投票日に国民審査を受け、この審査の日から10年を経過した後に初めて行われる衆議院議員総選挙の投票日に更に審査を受ける(その後も同様)。

 これに比べ、米国の連邦最高裁判事に任命については、例えば司法制度改革推進本部主催「法曹制度検討会」14年10月31日第11回の配布資料 (筆者注3)  を見ておく。大統領が指名し、連邦議会上院の助言と同意を得て任命とある。この点は間違いないが、実は最高裁判事の人事は極めて現政権にとって重要な意味を持つことは言うまでもない。(筆者注4) (筆者注5)

1.2020.6.15 ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)「Supreme Court Delivers Major Victory To LGBTQ Employees」の概要

 歴史的な決定で、米国連邦最高裁判所は6月15日、「1964年公民権法(1964 Civil Rights Act)」 (筆者注6)はゲイ、レズビアン、トランス・ジェンダー(筆者注7) (筆者注8)の従業員を性に基づく差別から保護するとの判決を下した。判決結果は6-3で、トランプ大統領の最初の任命者であるニール・ゴージッチ判事(Justice Neil Gorsuch)が多数意見を書いた。この意見には、ジョン・ロバーツ裁判長(Chief Justice John Roberts)と最高裁判所の4人のリベラル派の判事が加わった。

 ゴージッチ判事は「今日,私たちは雇用主が単に同性愛者またはトランス・ジェンダーであるという理由だけで誰かを解雇できるかどうかを決定しなければならない。

「答えは明らかである」と述べた。

 彼は、人種、宗教、国籍または性別に基づいて雇用における差別を禁止する「1964年の法律(公民権法)の条文の用語によって、そのような差別が禁じられていることを明らかにした。

 この決定はLGBTQコミュニティにとって大きな勝利であり、連邦最高裁に起こされたに3つの事件で雇用者に味方していたトランプ政権にとって大きな損失といえる。

 彼らが同性愛者だったので解雇されたと主張した後に訴えた2人の関与した従業員がいる。そのうちの一人、ジェラルド・ボストック(Gerald Bostock)は、カルフォルニア州クレイトン郡の児童福祉コーディネーターとしての仕事に関し賞を受賞していていたが、ゲイのレクリエーションソフトボールリーグに参加した後に解雇されたと主張した。彼が10月にNPRに語ったように、「数ヶ月以内に、私は同性愛者であることのために解された。私は生計を失うとともに、医療保険をも失い、当時前立腺癌から回復していた。それは壊滅的であった。」

 2番目の事件では、ゲイであった現在死亡したスカイダイビング・インストラクターのドナルド・ザルダ(Donald Zarda)を含んでいた。

 3番目の事件は、ミシガン州リボニアで男性の葬儀ディレクターとして6年間働いていたエイミー・スティーブンス(Aimee Stephens,)によってもたらされたが、彼女は上司にトランスジェンダーであり、女性として働きに来ると言った2週間後に解雇された。彼女は2020年の初めに死亡したが、彼女の訴訟は生き続けた。

 ゴルジッチ判事は、1964年の法律(公民権法)の条文とセックスによる差別の禁止の面で自身の意見を表現した。

 すなわち、「性にもとづいて差別することなく、同性愛者やトランスジェンダーであることを人を差別することは不可能である。」と判事は判決文に書いた。男性に惹かれた2人の従業員(男性1人、もう1人は女性)の例を挙げた。「雇用主が男性に惹かれているという事実以外の理由で男性従業員を解雇するならば、男性に惹かれる女性ではない場合、それは明らかにセックスに基づく解雇であると、同判事は述べた。

 ゴルジッチ判事の意見は、最高裁裁判所のもう1人のトランプ大統領に任命された判事であるブレット・キャバノー(Brett Kavanaugh)判事から2つの反対意見を引き出した。これらトランプ大統領が任命した2人の判事は、エール法学教授ウィリアム・エスクリッジが"「塹壕戦(trench warfare)」(戦争において、当事国同士が戦場に長大な塹壕を築城し、互いに相手の塹壕を突破できずに長期に渡って戦線が膠着した状況)と呼んだ口頭によるだけの論戦バージョンであった。

 クレランス・トーマス判事(Justice Clarence Thomas)が加わったサミュエル・アリトー判事は、リード反対意見を書いた。それは、本質的に法令の言葉に忠実であり続けるふりをするが、代わりに"社会の現在の価値をよりよく反映するためにそれを更新する」という名目の下で多数意見を非難した。

 トランス・ジェンダーの解雇事件で雇用主である葬儀場側を代表した弁護士ジョン・バーシュ(John Bursch)は同意したが、「雇用主は法律ではなく文化に従っただけである」と述べた。

John Bursch, (Federalist Societyの正会員である)

 ゴルジッチ判事は、1964年の連邦議会は、法案の審議において性差別に基づく差別を禁止する際にLGBTQコミュニティを念頭に置いていない可能性が高いことを認めた。しかし、彼は法律の用語は明らかであると述べた。そして、彼は、法律の連邦議会の通過以来、いくつかの主要な裁判所の判決を指摘した 。 例えば、彼らは子供を持っている女性と男性の両方に対するセクシャルハラスメントを禁止するために、女性に対する差別を禁止した。

 ゴルジッチ判事が公民権法第VII編について、「法案起草者の想像力の限界は、法律の要求を無視する理由を提供しない」と述べている。しかし、ゴルジッチ判事は33ページの判決文の最後に、いくつかの潜在的な留意点を呼び起こした。

 例えば、彼は、一部の雇用主はゲイや性転換ワーカーを雇うことに有効な宗教的反対を持っているかもしれないと指摘した。しかし、彼は、「1964年公民権法が宗教の自由と交差する方法についての懸念は何も新しいものではない。宗教的な理由で、ゲイや性転換者個人を雇うことに反対する雇用主に潜在的な生命線を提供するかもしれない「スーパー法」(筆者注9)として「1993年宗教の自由回復法(1993 Religious Freedom Restoration Act)」を指摘した。

 しかし、6月15日の判決は多くの点で顕著なものであった。すなわち、現在米国の州の半数近くがLGBTQの従業員に法的保護を与えていない。今後、連邦法は、性的指向や性同一性に基づいて行われた解雇やその他の不利な雇用決定から、それらの州の従業員を保護することになろう(議会が立法に動く可能性が高い)。

 今回の最高裁判決は、これらの事件でその判決の決定を利用して、トランス・ジェンダーたる個人に対する以前の保護を奪う新しい指令を出して雇用者に味方したトランプ政権に対する直接的な叱責である。

 LGBTQの擁護、支持者は、法的な突起が今後あるかもしれないことを認めているが、スタンフォード大学ロースクールのパメラ・カーラン教授(Pamela S. Karlan ) (筆者注10)は、企業、病院、大学などの大企業からの差別に直面するLGBTQ労働者はほとんどいないと楽観的に表明した。

Pamela S. Karlan氏

 カーラン教授は2019年10月の最高裁判所の証言で公民権法第VII編事件の1つの事件に関し「カトリック司教会議以外の誰かが入ってきて、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人々を雇うために毛布として提供を拒否する雇用主が多数いるとは見ない」と、主張した。

 イェ―ル大学のエスクリッジ教授もこの点に同意した。彼は、アール・ウォーレン裁判長が率いる1960年代のリベラルな最高裁判所は、同性愛者に適用するためにサイコパス(反社会性パーソナリティ障害者)が入国することを禁じた移民法を解釈したと指摘した。

 すなわち、「LGBTの人々は、最後の世代で長い道のりを歩んできた。その国は最後の世代で長い道のりを歩んできた。そして、最高裁判所は、最後の世代で長い道のりを歩んできた」と、米国の同性婚平等の歴史について、今後出版予定の本「結婚平等:無法者から義理まで」の共著者であるエスクリッジは述べた。

 「同性婚の自由(Freedom to Marry,)」の創設者・代表である弁護士エヴァン・ウルフソン氏(Evan Wolfson)は、「この判決から1つの大きな教訓はあきらめないことである。あなたは物事を変えることができると信じる必要がある」と述べた。

 判決後、記者団に対して、トランプ大統領は本判決について「最高裁は判決を下し、我々は最高裁判所の決定と共に生きている」と述べ、彼は今回の判決は「非常に強力」と呼んだ。

 民主党大統領候補者のジョー・バイデン元副大統領は声明の中で、今回の最高裁判所の決定を称賛し、「今日、公民権法の第VII編の下で「性的指向」と「性同一性差別」が禁止されていることを肯定することによって、最高裁判所は、すべての人間が敬意と尊厳をもって扱われるべきであるという単純だが深くアメリカ人の考えを確認した」と述べた。

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(筆者注1) textualism(文言主義/文理主義/原文主義/法文尊重主義)とは、法律の解釈は、主に議会の法律立法の意図、法律が改善することを意図した問題、または法律の司法または正しさに関する重要な質問等法律の文言以外の情報源は考慮せず、あくまで法律文言の通常の意味のみに基づいておこなうべきとする法形式主義理論である。(Wikipedia を抜粋、仮訳した)

 なお、あえてここでwikipediaの簡単な解説を引用したのは、この問題が裁判所とりわけ連邦議会と連邦最高裁との法解釈をめぐる確執と大きくかかわるし、また州の立法や司法等への影響を与える重要な問題であり、従来から米国の多くの公法研究者の取り上げるテーマであったからである。したがって、サイトから読める代表的な米国の論文を以下で列記する。感心のある方は、ぜひ各論文に直接あたられたい。

①2008年 Peter J. Smith(Professor,  George Washington University Law School  )「TEXTUALISM AND JURISDICTION(Forthcoming, Columbia Law Review)」

 textualismに関する裁判実務面等からみた批判的論文である。

② Schweitzer, Thomas A. (2017) 「Justice Scalia, Originalism and Textualism」" Touro Law Review: Vol. 33 : No. 3 , Article 7

Textualismの提唱者とされる連邦最高裁のアントニア・スカリア(Antonin Scalia)判事の例えばオバマケア法(Patient Protection and Affordable Care Act)に対する法廷運営や人物論を批判的に書いている。

③ 2017.11.14 Jonathan R. Siegel(Professor of Law at George Washington University Law School.)「Legal scholarship highlight: Justice Scalia’s textualist legacy」

④ 2019 Jesse D.H. Snyder 「HOW TEXTUALISM HAS CHANGED THE CONVERSATION IN THE SUPREME COURT」(University of Baltimore LawReview: Vol. 48 : Iss. 3 , Article 4.) 

⑤ 2018.2.27 スタンフォード大学Hoover Institute:Clint Bolick(Reseach Fellow)「The Case For Legal Textualism」

  一方、わが国でtextualismに関する論文を筆者なりにさがしてみた。(1) 立命館大学法学部教授 大西祥世氏「法解釈と権力分立:立法府を中心に」:アントニン・スカリア連邦最高裁判所判事等が主張した司法の法解釈論で、ヴィクトリア・ノース(Victoria Nourse)氏(ジョージタウン大学ロースクール教授)のゼミを受けてこの論文を書いたとある。

ヴィクトリア・ノース(Victoria Nourse)氏

(2) 広島大学教授 福永実教授「アメリカにおける制定法解釈と立法資料(6)」広島法学 40 巻4号(2017 年)- 188 :福永教授によると、new textualismを支持する連邦最高裁判事、公法学者が出ているといわれている。

(筆者2) ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は、1971年4月にアメリカ公共放送社 (CPB)によって設立された。前身はNERN(National Educational Radio Network)。本部はワシントンD.C.にあり、現在はNPRを正式名としている。約900の加盟局に番組を配信、組織化するとともに独自編成によるインターネット放送や、加盟局のストリーミングサービスの代行を行っている。加盟局そのものが独自の組織体であり、編成権は各放送局に委ねられている。加盟局はNPR以外の公共ネットワークから番組の配信を受ける事も出来る(日本語でいうクロスネット局)。

 配信する番組はNPR独自制作のほか、加盟局制作の番組も配信する。独自番組はニュース・文化系が中心であり、通勤時間帯に放送されるワイド番組『Morning Edition』及び『All Things Considered』がある。クラシックやジャズなどの音楽番組も制作している。

 NPRの予算は12%が政府からの交付金、50%が聴取者とスポンサーからの寄付金、残りは財団や大学などから提供される。

 発足以来、略称の「NPR」を愛称として知られていたが、2010年にNPRを正式名称にしている。(Wikipediaから一部抜粋)

(筆者注3)この資料を読んで関係者はすぐにその誤りに気がつくであろう。すなわちAttorney Generalを「法務総裁」と訳している。明らかに誤りとは言えないが、閣僚たる「司法長官」という訳語が一般的であると思う。

(筆者注4) JETRO 今泉慎也「米国連邦最高裁の新たな裁判官の指名と上院審議」(2009年7月)は、筆者が調べた結果とも合致する実態に即した優れたレポートである。一部抜粋する。・・・

連邦裁判所、とくに連邦最高裁の裁判官の選任は、上院の「助言と同意」(Advice and Consent.)を要する。大統領による指名が行われると、裁判官任命の案件はまず上院司法委員会(Committee on the Judiciary)に付託され、confirmation hearing(筆者注5)(原文ではこの重要部が抜けているので筆者の責任で追加した)、その議決を経て、上院の本会議において採決が行われる。指名を受けた者については、全米法律家協会連邦司法常設委員会(American Bar Association, Standing Committee on the Federal Judiciary)による格付けが行われ、候補者はWell Qualified (WQ),Qualified (Q),Not Qualified (NQ)の三段階で評価される。ソトマイヤー氏については、6月1日付でWQの評価が与えられた。司法委員会の公聴会にあたって、候補者に事前に質問票(questionnaire)への回答が求められ、さらに追加の質問が行われる。承認手続においては、候補者の経歴、過去の発言、活動、過去の裁判が根掘り葉掘り吟味される。

 候補者が、裁判官としてふさわしい人物であるかどうか、法律家としての有能であるかどうか、といった点が審査されることは言うまでもない。しかしながら、審査はそうした側面にとどまらない。大統領は、将来の法制度のあり方をにらんで、自分の所属政党、支持勢力にとって望ましい立場をとるであろう者を裁判官に任命しようとし、他方の政党は、さまざまなテクニックを駆使してそれを阻止しようとする。保守とリベラルとのさまざまな対立軸・争点――たとえば中絶(abortion)問題――が承認手続にも持ち込まれ、たとえ候補者が法律家としてWQの格付けを与えられていたとしても、候補者の政治意識やイデオロギーを問おうとする動きが強まっている。

(筆者注5) 大統領の強大な人事権に対する野党の対抗手段はかなり激しいものがある。その1つが (筆者注3)“confirmation hearing”である。例えば連邦最高裁裁判官の指名で最近時ではブレット・キャヴァノー(Brett Kavanaugh)判事の時は2019年9月4日~7日の3日間にわたる激しいやり取りがあった。そのyoutube のアクセス回数が極めて多いだけでなく、きわめて論戦内容は興味深い内容である。

 この公開公聴会は多くのメデイアや人権擁護団体等が押し寄せており、野党である民主党の代表格であるダイアン・ファインスタイン(Dianne Feinstein)議員、カーマラ・デヴィ・ハリス( Kamala Devi Harris)議員等大物議員が論戦をはっている。

Dianne Feinstein氏

 キャバノー氏の後ろの席には元国務長官であるCondoleezza Rice氏がいる。彼女は当時スタンフォードビジネススクールの教授であったがなぜそこにいるの?また、その会議には筆者がかつて米国視察時に面会している上院司法委員会の長老であるパトリック・リーヒー(Patrick Joseph Leahy)議員も出席している。

(筆者注6) JUSTIC comから the Civil Rights Act第7編の解説文を仮訳する。

 1964年公民権法の第VII編は、人種、肌色、国籍、性別、宗教など、特定の特性に基づく差別から従業員を保護する連邦法である。第VII編では、雇用主は雇用のいかなる期間、条件または特権に関して差別することはできない。同法の違反を引き起こす可能性のある分野としては、採用、雇用、昇進、移転、教育トレーニング、懲戒処分、解雇、仕事の割り当て、業績の測定、福利厚生の提供などがある。

 第VII編は、15人以上の従業員を持つ民間部門と公共部門の双方の雇用主に適用される。また、連邦政府、雇用機関、労働機関にも適用される。第VII編は、雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission)によって法施行される。

 第VII編の対象となる会社、団体等に雇用されたり、その会社に就労する場合、人種、宗教、国籍、性別、宗教的特徴に基づく職場の決定に関して、雇用を拒否されたり、異なる扱いを受けたりすることはできない。これらの保護された特性のいずれかを持つ人との関連付けに基づいて、当該従業員を異なる扱いを受け取る従業員はありえない。

(筆者注7) トランスジェンダー(Transgender)は、ラテン語で「乗り越える」や「逆側に行く」を意味する「トランス」という言葉と、英語で「社会的性別」を意味する「ジェンダー」との合成語である。一般に (常にではない) 生まれたときからもっているとされる、伝統的に社会で認識されている役割と同様の規範的な性役割に収まらない傾向を含む、あらゆる個人および行動、グループに当てられる一般用語である。(Wikipediaから抜粋)

   一方、「性同一性障害(ender Identity Disorder)」というのは、医学的な疾患名で、自分の身体の性別と自分の気持ちの性別が異なり、時には性の適合を願うこともあるという状態に対する病名である。性自認と異なる自身の身体に対する違和感や嫌悪が強い状態、ともいわれる。性同一性障害をかつてはトランスセクシャル(性転換症)ともいった。

(筆者注8) Justic comサイトの解説を引用、仮訳する。

 トランス・ジェンダーの従業員は、性同一性やジェンダー表現に基づいて職場で非常に厳しい差別に直面することがよくある。この種の差別には、オフィス内の憶測やトランスジェンダーの従業員の性同一性に関する虚偽の噂など、幅広い攻撃的行為が含まれる可能性がある。それは重大なハラスメントだけでなく、身体的または性的暴行にも及ぶ可能性がある。

 米国のいくつかの州では、3つの一般的なアプローチのいずれかを使用して、性同一性差別を明示的に禁止している。アイオワ州やニューメキシコ州などの特定の州では、保護された特性として性同一性を明示的に含む法律が制定されている。コロラド州やミネソタ州などの他の州では、性的指向による差別(prohibit sexual orientation discrimination)が禁止されており、性指向差別の法的定義には性同一性が含まれている。カリフォルニア州は、トランス・ジェンダーの従業員を職場での差別から保護し、差別禁止法の目的で性の法的定義に性同一性やその表現を含めている。

 連邦法は性同一性差別を明示的に禁止していないが、EEOC(Equal Employment Opportunity Commission)雇用機会均等委員会をいう。人種、宗教、性別などのあらゆる雇用差別を防止するための行政活動をする米政府内の独立機関。1965年設置)は、性同一性に基づいて差別する雇用者が1964年公民権法の第VII編に基づく性差別の禁止に違反しているという意見を発表した。この意見は、連邦機関が彼女が性移行を受けたことを知った後、連邦の雇用を拒否されたトランスジェンダーの女性のケースに関連して提供された。それはEEOCの意見または決定であるが、連邦裁判所の一般的傾向は、性同一性差別が第VII編と特定の憲法上の保証の下で禁止されている性差別の一形態であることを見出すことにある。

(筆者注9) スーパー法(super statute)という新たな用語は、2001年にイエール・ロースクールのウィリアム・エスクリッジ・ジュニア教授(Professors William Eskridge, Jr.)とニューヨーク大学ロースクールのジョン・フェレジョン教授(Professor John A. Ferejohn )によって「公的文化における新しい規範的または制度的枠組みである「スティック」を確立するための努力」を特徴付けるために適用され、 「法律への広範な影響」を持つものをいう。その結果、法律としての正式な地位を超える「準憲法」上の重要性を持っているという概念である。

William Eskridge, Jr氏(Federalist Society会員 )

(筆者注10) パメラS.カーラン(Pamela S. Karlan)教授の経歴(スタンフォード大学ロースクールサイトから抜粋、仮訳) 一部筆者の責任で補足した。

 生産性の高い学者であり、受賞歴のある教員であるパメラS.カーランは、学生が裁判所で訴訟を起こしているロースクールの最高裁判所訴訟クリニックの共同ディレクターである。 投票と政治プロセスに関する全米有数の専門家の1人である彼女は、カリフォルニア州の公正政治実践委員会(California Fair Political Practices Commission (州の政治改革法の公平で効果的な管理に主たる責任を負う5人の委員からなる独立した非党派の委員会。委員会の目的は、公務員が政府の意思決定プロセス、政府の透明性を促進し、政治システムへの国民の信頼を育むことにある)、全米黒人地位向上協会/全国有色人種向上協会( National Association for the Advancement of Colored People: NAACP)は、メリーランド州ボルチモアに本部を置く、アメリカ合衆国で最も古い公民権運動組織の一つ)の法的防衛基金の補佐役および協力弁護士、公民権の副補佐官代理を務めた。 米国司法省の課(米国対ウィンザーでの最高裁判所の決定の実施に責任を負うチームの一員として、彼女が法務部の臨時奉仕賞(従業員の業績に対して部門の最高の賞)を受賞した場合)。 カーラン教授は、憲法、憲法訴訟、民主主義の法律に関する多数の裁判事件簿、および多数の学術論文の共著者である。

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 このような経験を踏まえデータの入手日から最短で1~2日以内にアップすることが可能となった。

 なお、海外のメディアを読まれている読者は気がつかれていると思うが、特に米国メディアは大多数が有料読者以外に情報を出さず、それに依存するわが国メデイアの情報の内容の薄さが気になる。

 本ブログは、上記のように公的機関等から直接受信による取材解析・補足作業リンク・翻訳作業ブログの公開(著作権問題もクリアー)が行える「わが国の唯一の海外情報専門ブログ」を目指す。

4.他にない本ブログの特性:すべて直接、登録先機関などからデータを受信し、その解析を踏まえ掲載の採否などを行ってきた。また法令などの引用にあたっては必ずリンクを張るなど精度の高い正確な内容の確保に努めた。

その結果として、閲覧者は海外に勤務したり居住する日本人からも期待されており、一方、これらのブログの内容につき著作権等の観点から注文が付いたことは約15年間の経験から見て皆無であった。この点は今後とも継続させたい。

他方、原データの文法ミス、ミススペリングなどを指摘して感謝されることも多々あった。

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                                                                 Civilian Watchdog in Japan & Financial and Social System of Information Security 代表

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