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英国政府の公開諮問「オンラインを介した加害行為からのユーザ保護に関する政府の対策白書」等を検証する

2019-04-10 14:08:24 | 国家の内部統制

 Last Updated :April 11,2019

 筆者は別のブログで、①4月8日に英国政府(担当省は「デジタル・文化・メディア・スポーツ省と内務省)からの通知を受信した点、②その表題は「Open consultation:Online Harms White Paper(意見公募「オンラインを介した加害行為に関する政府の対策白書」)」であり、提出期限は本年7月1日である点、③白書本文(PDFで102頁)および主要論点整理(Executive Summary)へのリンクが可能であるが、白書の内容は多岐にわたりかつその本文のボリューム(PDFで102頁)であることから、筆者はその解析を行ったうえで改めてブログに投稿する予定である旨書いた。

 今回のブログは、(1)英国政府のオンラインサイトの諮問の告示内容、(2)デジタル、文化、メディア&スポーツ省と内務省の共管によるプレスリリースを仮訳する。なお、「白書の主要論点整理( Executive summary」についても仮訳する予定でいたが、(1)(2)と重複するので略す。

  なお、大手ローファームLatham & Watkins LLPの解説ブログ「UK’s Proposed “Online Harms” Compliance and Enforcement Regime Will Target Platforms」を参照されたい。

1.2019.4.8 英国政府オンライン・サイトから受信内容

 英国政府の公開諮問「オンラインを介した加害行為からのユーザ保護に関する政府の対策白書」を以下、仮訳する。

 なお、今回の諮問は「デジタル・文化・メディア&スポーツ省」および「 内務省」の共管であり、内務大臣(Rt Hon Sajid Javid MP )

 

および「デジタル、文化、メディア&スポーツ大臣( Rt Hon Jeremy Wright MP) 

 がそれぞれコメントを寄せている。

【公開諮問の趣旨説明】

 「オンラインを介した加害行為からのユーザ保護に関する英国政府の対策白書(Online Harms White Paper )」は、革新と繁栄するデジタル経済をも支援する、世界をリードするオンライン安全対策のパッケージに関する政府の計画を示している。このパッケージは、(1)立法措置、(2)非立法措置から構成されており、特に企業における、特に子供やその他の脆弱なグループのユーザーに対して、オンラインでの安全性に対する責任をより高めることを意図している。

 本白書は、独立性を持った新たな規制当局によって監督される、利用者に対する新しい注意義務を法律で確立することを提案している。違法な活動やコンテンツに関し、有害ではあるが必ずしも違法ではない行動に至るまで、包括的な一連のオンライン加害行為に取り組むために企業は説明を受けることになろう。

 この諮問は、(1)政府による規制、および(2)オンラインでの加害行為への取り組みに関する計画につき、以下のさまざまな側面に関する意見を集めることを目的としている。

① 規制の枠組みの範囲内に含まれるオンラインサービスの定義

② 新しい規制の枠組みを実施、監督、執行するための独立した規制機関を任命するための選択肢(新規機関の設置または既存機関か)。

③ 独立した規制機関の法執行力

④ オンラインユーザーのための潜在的な救済メカニズム

⑤ 規制を確実にするための措置は、産業界に的を絞っており、かつ比例的である。

  これは公開諮問であり、私たちは、関連する見解、洞察、または証拠を持った組織、企業、その他からの意見提示を特に奨励する。

  なお、この諮問は2019年7月1日23時59分に終了する。

【添付Documents

 ①主要論点整理: Online Harms White Paper:Executive summary HTML

 ②Online Harms White Paperの本文PDF, 968KB, 102 pages 

2.英国政府のプレスリリース

  プレスリリース「世界初のオンライン安全法を導入する英国:政府は本日、英国がオンラインで世界で最も安全な場所であることを保証するための厳しい新しい対策を発表した」を以下、仮訳する。なお、リリースの中身としてテレサ・メイ首相はじめ関係大臣、利害関係者等のコメントが引用されているが、あえて今回のブログでは略す。

(1) 対策白書の要旨

① 独立性を持った規制当局が、厳格な新しい基準を実施するために任命される。

② ソーシャルメディア会社等はユーザーを保護するために義務的な「注意義務」を遵守しなければならず、彼らが配信に失敗した場合、重い罰金に直面する可能性がある。

③ 今回の英国の進める対策は、インターネット世界をより安全な場所にするための戦いにおいて、世界で最初のものである。

 この種類の世界で最初となるオンライン安全法では、ソーシャルメディア会社やハイテク会社は彼らのユーザーを保護するために合法的に要求され、彼らが遵守しない場合、厳しい罰則に直面することになろう。

 デジタル・文化・メディア&スポーツ省および内務省の共同提案である「オンラインを介した加害行為からのユーザ保護に関する政府の対策白書」の一部として、企業が彼らの責任を果たすことを保証するために新しい独立した規制・監督機関が導入されることになろう。

 これには、ソーシャルメディア会社やハイテク会社に対する義務的な「注意義務」が含まれる。これにより、これら企業はユーザーを安全に保ち、サービスに対する違法で有害な活動に取り組むための合理的な措置を講じることが求められる。 規制当局には効果的な法執行ツールがあり、1)相当な罰金を科し、2)サイトへのアクセスを阻止し、3)上級管理職の個々の職員等にも責任を課す可能性があることについて、我々は諮問を行う。 

(2) 具体的な取組み

 新しい枠組みを執行するために規制当局が任命される。政府は現在、その規制当局が新規機関と既存機関のどちらであるべきかについて協議している。規制当局は中期的に産業界から資金提供を受けることになり、政府はそれを持続可能な基盤の上に置くための産業賦課金などの選択肢を模索している。

 我々の提案に関する12週間の諮問が本日開始された。 これが終わったら、その次に我々が立法案の最終案を作成する際に取るであろう行動計画を策定する。 

 本白書に記載されている厳しくかつ新しい対策項目は次のとおりである。

 なお、テレサ・メイ首相のコメントを追記する。

 「新しく提案された法案は、ユーザーがユーザーが作成したコンテンツを共有または発見したり、オンラインで相互作用したりすることを許可する会社に適用される。つまり、「ソーシャル・メディア・プラットフォーム」(筆者注1)、ファイル・ホスティング・サイト(筆者注2)、公開ディスカッションフォーラム、メッセージング・サービス、検索エンジンなど、あらゆる規模の幅広い企業が対象となっている。」

① ソーシャルメディア会社等がユーザーの安全に対してより多くの責任を負うようにし、サービスの内容または活動によって引き起こされる損害に取り組むようにするための新しい法律上の「注意義務」を明記する。

② 子供の虐待やテロリストのコンテンツを確保するため、ハイテク企業に拡散型オンラインを認めないというさらなる厳格な要求を明記する。

③ 規制当局に、ソーシャルメディアプラットフォームやその他のプラットフォームに、自社のプラットフォーム上の有害なコンテンツの量と、これに対処するために行っていることに関する透明性を持ったレポートを発行を命じる強制的な権限を与える。

④ 企業にユーザーの苦情に対応し、迅速に対処するよう行動させる。

⑤ 特に選挙期間中の専任の「ファクト・チェッカー(fact checkers)(筆者注3)による誤解を招く有害な誤報の拡大を最小限に抑えるための要件などの措置を含む規制当局によって発行する実務規範を策定する。

⑥ 最初からオンラインの安全機能を新しいアプリやプラットフォームに組み込めるようにするための新しい "Safety by Design"フレームワークを制定する。 

⑦ キャットフィッシング(catfishing) (筆者注4)、グルーミング(grooming) (筆者注5)、暴力的過激主義(extremism) (筆者注6)など、さまざまな詐欺的で悪意のある行動をオンラインで認識して対処するための知識を人々に提供するためのメディア・リテラシー戦略(筆者注7)を策定する。 

 英国は、自由でオープンで安全なインターネットを引き続き約束する。規制当局は、イノベーションを尊重し、オンラインでユーザーの権利を保護する法的義務を負うことになる。特にプライバシーと表現の自由を侵害しないように注意する必要がある。

(3) メディアの編集者への注記(筆者注8)

 本日、我々は白書とともに、最新の「デジタル憲章(Digital Charter)(筆者注9)を発行した。 デジタル憲章を通じて、私たちは市民を保護し、新しい技術に対する国民の信頼を高め、デジタル経済と社会が成功するための最善の基盤を築く。

【白書の範囲内でのオンラインを介した加害行為の例示】

 以下の表は、個人および社会への影響とその流行(prevalence)の評価に基づいた、白書の範囲内でのオンラインの有害なコンテンツまたは活動の初期リストを示している。このリストは、設計上、網羅的なものでも修正されたものでもない。このような静的リストは、新しい形態のオンラインの加害、新しい技術およびオンラインの活動に対処するための迅速な規制措置を妨げる可能性がある。

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(筆者注1)ソーシャル・メディア・プラットフォームの例としては、Line、 Twitter Facebook、 InstagramYoutube等があげられよう。

(筆者注2) ”file hosting service”は「オンライン・ストレージ・サービス」ともいい、「各種データを保存するためのディスクの空き領域をインターネットを通じて貸し出すサービス。有料のものと無料のものがあり、後者では利用時に広告を表示したり、利用できる容量に制限があったりする。自宅・職場・外出先で同じファイルを利用できるほか、複数の利用者によるデータの共有も可能。」(「コトバンク」から引用)

(筆者注3) ファクト・チェック」とは選挙や議会での発言等において事実かどう疑わしいさまざまな言説・・情報の真偽を検証することである。政治家等公人の発言、Twitter等ウェブ上でアップされたコンテンツ、メデイアの報道、SNSやソーシャル・メディア・プラットフォーム上のデマ等、社会に影響を与える様々な言説が対象となる。(NPO法人:FactChek Initiative Japanサイト「2017年総選挙ファクト・チェック・プロジェクトについて」等から一部引用)

(筆者注4) なりすまし。SNSなどで、自分の個人情報を偽って他人とネット上で交流すること。

(筆者注5) SNSなどで相手の警戒心を解き信頼を得ようとすること(例:child grooming ; sexual grooming)

(筆者注6) 暴力的過激主義とSNSとの関係につき国連のブログでも正面から取り上げられている。

2016.1.19国連広報センター 国連広報センター ブログ『国連の「暴⼒過激主義防⽌の⾏動計画 (Plan of Action to Prevent Violent Extremism)」に、メディアも参画を』

近年、ISIL、アルカイダ、ボコハラムなどのテロ集団が標榜する暴⼒的過激主義が世界に 蔓延し、この脅威にいかに対処するかについて議論が展開されています。それらテロ集団 の宗教的、⽂化的、社会的な不寛容さや、SNSの活⽤は、私たちの共通の価値である平 和、正義、⼈間の尊厳をおびやかしています。・・・・・

 なお、過激主義を広くとらえると、宗教、人種、政治的過激・急進主義、極右・極左組織等のついてもSNSなどと深くかかわる点は重要な意味があり、英国の現状分析分論文としては早稲田大学 樽本英樹「英国における移民と排外主義」等が参考になろう。 

(筆者7) 民主主義社会におけるメディアの機能を理解するとともに、あらゆる形態のメディア・メッセージへアクセスし、批判的に分析評価し、創造的に自己表現し、それによって市民社会に参加し、異文化を超えて対話し、行動する能力である。(Wikipediaから一部引用)

(筆者注8) 英国政府のリリース文の表現のみでは必ずしも正確な理解に結びつかない。仮訳にあたり筆者の責任で補足した。

(筆者注9) デジタル・文化・メディア・スポーツ省のPolicy paper「デジタル憲章Digital Charter」は2018年1月25日に公布され、2019年4月8日の更新された。

 その趣旨を同省のサイトから引用、仮訳する。

 我々は、インターネットを、市民、企業そして社会全体のために、すべての人のために機能させたいと考えている。我々は、英国が技術部門を奨励し、企業に安定性を提供する革新的な規制で世界をリードするべきであると確信している。この取り組みを通じて、我々は市民を保護し、新しい技術に対する国民の信頼を高め、デジタル経済と社会が成功するための最良の基盤を築く。

 このデジタル憲章は、オンラインの世界の規範や規則に同意し、それらを実践するための作業のローリングプログラムである。ある場合は、これは行動への期待を変えることになろうし、ある場合は、新しい規格に同意する必要があるであろう。また、他の場合では、我々の法律や規則を更新する必要があるかもしれない。我々の出発点は、私たちがオフラインで行うのと同じ権利を持ち、同じ行動をオンラインで期待するということである。

【憲章の内容】

(1) 担当省が守るべき6つの原則

(2) 担当省の行動プログラムWork programme

(3) 担当省の具体的に取組むべき課題

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