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ホワイトハウスの無人航空システムの使用時のプライバシー権等に関する覚書と法制整備等の最新動向(3完)

2015-03-22 16:59:00 | 個人情報保護法制

Last Updated:April 30,2024

Ⅲ.国土安全保障省(DHS)のOIG(監察総監部)の批判的内容の監査報告書と連邦議会の反応

1.OIGの監査報告書

 2014年12月、DHSの内部監査機関であるOIG(監察総監部)は税関・国境警備局(CBP)におけるUASの支出の無駄につき次の内容の報告書(U.S. Customs and Border Protection's Unmanned Aircraft System Program Does Not Achieve Intended Results or Recognize All Costs of Operations 」全文(全37頁))を公表した。 (筆者注14) (筆者注15)その概要を仮訳する。 

 米国の国土安全保障省(DHS)の税関・国境警備局(CBP)は、8年間にわたり市民の税金を何億ドルを消費した後においても、かかる費用を抜本的に控え目にいっている一方で、未だにUAS(Unmanned Aircraft System(無人航空機))プログラムの総額の支出額を立証していない。

 DHSの監察総監室(OIG)の調査結果に基づく最新の報告によると、 OIGはCBPが追加的に無人航空機の購入につきさらに4億4,300万ドル(約483億円)を費やす計画を破棄し、それらの税金を効果的に利用するよう勧告した。 

 米国税関・国境警備局のUASにかかる全費用に関する検証作業(OIGの2012年以来の第2回目の監査プログラム)は、CBPの航空・海上作戦局( Office of Air and Marine Operations:AMO)、航空・海上担当官(Air and Marine Officers:OAM)の努力には性能を測定する確かな方法が未だになく、かつ不法な移住を食い止めることの効果は最小限であったことが判明した。 

OIGは、2013財政年度(Fiscal Year 2013)の間に明確に以下の問題点を見出した。

① OAMは、無人航空機を運用するのに時間あたり2,468ドル(約27万円)かかったと見込んだ。 一方、OIGはOAMがオペレータの給与、設備および諸経費(overhead)等のような主要なコストを省略したことに注目して、実際の経費は時間あたり1万2,255ドル(約134万円)であることが明らかとなった。 

② 実際の飛行時間はOAMが想定した1日あたり16時間、365日の稼動目標とはほど遠かった。 OIGは、それらの目標時間の22パーセントだけにおいて、無人機(しばしば悪天気によって基地に置かれたまま)が飛行したことが判明した。 

③ CBPは米国のSouthwest Border(テキサス州からカリフォルニア州までの1,993マイル)を無人機監視することを売り込んだが、実際の展開の大部分はアリゾナ州の100マイル前後とテキサス州の70マイルのセグメント・エリアのみに使用範囲が制限された。 

 ④無人機監視は、不法移民の2パーセント未満のCBPの検挙を助けるのが功績とされた。しかし、監察総監ジョン・ロス(John Roth)は「高額な投資にもかかわらず、私たちは無人機がより安全な境界に貢献するという証拠を全く見出せないし、そして、現在追加しようとしている税者の税金を投資する理由が全くない。また、CBPが国境の安全性を確保するのはCBPとDHSにとって重要な任務であるが、CBPの無人機プログラムは、今までのところその努力の報いているにはほど遠い」と、C-SPAN 等で述べた。 

John Roth氏

 同時に同総監は、2015年2月26 日に連邦議会下院の国家安全保障委員会・監視および管理機関の効率化小委員会(Homeland Security:Before the Committee on Homeland Security Subcommttee on Oversight and Efficiency)において同主旨の証言「Assessing DHS’Performance:Watchdog Recommendations to improve Homeland Security 」(全13頁)を行っている。その詳細は略す。 

2.連邦議会の反応

 OIG報告は、ブッシュ政権の移民問題と並行する新年度DHS予算問題と微妙に関連するものとして連邦議会の論議を呼んでいる。 

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(筆者注14) 2014年10月24日、 関税・国境警備局の行政局副局長(assistant Commissioner Office of Administration)がOIGの報告書案に対する反論意見書(全8頁)を提出している。 

(筆者注15) 米国人権擁護団体EPICサイト「Domestic Unmanned Aerial Vehicles (UAVs) and Drones」もDHSのOIGの監査報告書を取り上げている。

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ホワイトハウスの無人航空システムの使用時のプライバシー権等に関する覚書と法制整備等の最新動向(その2)

2015-03-22 16:58:54 | 個人情報保護法制

 

Last Updated:April 30,2024

Ⅱ.ホワイトハウスの大統領覚書や連邦議会におけるUASのプライバシー保護法案の上程経緯およびFAAのUAS規則やプライバシー問題への取組み

1.ホワイトハウスの覚書(Presidential Memorandum)の内容

(1)2月15日、ホワイトハウスはオバマ大統領が大統領覚書「 Promoting Economic Competitiveness While Safeguarding Privacy, Civil Rights, and Civil Liberties in Domestic Use of Unmanned Aircraft Systems」(以下「覚書」という)に署名した旨リリースした。覚書はUASのビジネス利用に関する自主的なプライバシー標準および連邦政府機関によるUASの利用を統治する諸原則を確立するため、複数の関係者による手続きを確立するというものである。以下、その内容を仮訳する。

 覚書は、連邦航空局が策定した前述のNPRM「特定の小型UASに関する枠組み規則案(Operation and Certification of Small Unmanned Aircraft Systems:Notice of proposed rulemaking )NPRM」と同時に公布されたもので、政府や民間の状況下におけるUAS使用時におけるプライバシー侵害の懸念に関する政策立案者の一連の最新活動である。 

第1節 連邦政府機関の使用にかかるUASのポリシーと手続き

 連邦機関におけるUASは現状でも連邦の土地の管理、山火事のモニタリング、科学的調査、国境の監視、法執行の支援、軍の効率的な訓練等多くの分野で利用されている。この使用にあたり合衆国憲法、その他適用可能な規則やポリシーに合致するように個人情報は収集されねばならないし、また連邦機関は同時に「1974年プライバシー法(U.S.C.552a)」等に準拠する義務を負う。一方、データ主体は当該情報につきアクセス権や記録の修正権を持つ。 

(a)プライバシー保護

 特に連邦航空局・全米航空システム(National Airspace System:NAS)における多様な潜在的な使用に光を当てるとUAS技術の進捗が期待されるし、将来において先んじたUASの利用が見込まれることから、連邦政府はUASの持続的開発にかかるプライバシー保護やUASに関するポリシーを保証すべく手順を追うべきである。従って、連邦機関は、UASの新技術の配備に先立ってかつ少なくとも3年度ごとに保護されるべきプライバシー、市民権および市民自由権を保証すべく既存のUASに関するポリシーやUASが収集した個人情報の収集、使用、伝達にかかる手続きの検証義務が求められる。

 適用される環境下における1974年プラバシー法(筆者注6-2)の遵守要求に加え、NASにおいて収集された個人情報を収集する連邦機関は、次の要求要件を尊重した形でそのポリシーや手続を保証しなければならない。 

(ⅰ)収集および使用原則 

連邦機関はその収集または使用は認証された目的に関し、またその範囲内でのみUASを使用した個人情報の収集、またはUASの収集した個人情報を扱わねばならない。 

(ⅱ)保持期間の原則

 UASを使用して収集した個人識別可能情報(personally identifiable information:PII)を含む個人情報の収集は、保持機関の認可された任務にかかるうえで必要性があり、プライバシー法によりカバーされる記録システムまたはその他の適用法や規則により定められた長期の保持が要求される場合を除き、180日以上保持はしてはならない。 

(ⅲ)伝達(Dissemination)範囲の限定の原則

 プライバシー法に基づく記録システムにより維持されないUASが収集した個人情報は、その機関外への伝達は、法律が認めたとき、承認された目的を充足する場合または当該機関の要求される条件を遵守する限りにおける以外の伝達は行ってはならない。

 (b)市民権および市民的自由権の保護

 連邦機関は、市民権および市民的自由権を保護するため以下の行為を行うものとする。

(ⅰ)合衆国憲法修正第1に違反する手段または個人の民族性、人種、性、国籍、宗教、性的指向(sexual orientation)、性同一性障害(gender identity)に関する法違反の手段にかかる情報の収集、使用、保持または伝達に関する適宜のポリシーによる保証

(ⅱ)UASの諸活動は、合衆国憲法、適用すべき法律、大統領行政命令(Executive Order)その他大統領令(Presidential Directives)と整合性を取った方法で実行されることを保証

(ⅲ)適切なかたちでプライバシー、市民権および市民的自由に関する苦情の受付、調査に取り組む適宜の手続を保証 

(c)説明責任の遂行のための行動

 連邦機関は、効果的な監視を行うため、次の行動をとらねばならない。

(ⅰ)連邦機関のUASの使用に関し、既存の当該機関が持つポリシーや規則に準拠した監査やアセスメントに関する監視手続を保証

(ⅱ)USAのプログラム下で働く連邦職員や契約先の教育および行動基準の存在およびUSA技術の誤用や濫用のうかがわしいケースの報告に関する手続の存在を証明する。

(ⅲ)UASを使用して収集する個人情報のうちPIIを含む機微情報のアクセス可能な個人の意味ある監視を提供する現下のポリシーや手続を設定したりあるいは確認する。

(ⅳ)UAS使用に合致する適用法、規則やポリシーに適用可能なデータの共有合意やポリシー、データの使用のポリシーおよびデータ記録ポリシーを保証する。 

(d)UASの活動内容の透明性保持

 NAS内における透明性を増強するため、合理的に見てUASを使用する連邦機関は法執行や国家安全保障を危うくすると思われる個人情報の漏洩に関し、次の点で透明性を保証しなくてはならない。

(ⅰ)連邦機関のUASの使用がNASにおいてその運用が承認されている場合は、公示にかかる公表が提供されていること

(ⅱ)重要な点でプライバシー、市民権および市民的自由権の影響がある変更と同様に連邦機関のUASプログラムにつき公に公開されること

(ⅲ)一般大衆に対し、飛行任務の形式やカテゴリーの簡単な記述を含む年次ベースで前年度の予算ベースとの間のUASの運用の概要、当該連邦機関が他の連邦機関、州、地方政府、部族や特定地域に対し支援した回数を照会可能とする。

 (e)報告義務

 本大統領覚書の公布後180日以内に、連邦機関は大統領に対し本節の適用状況報告を提出しなければならない。本覚書公布日付の1年以内に連邦機関は本節の適用にかかるポリシーや手続につき国民のアクセス方法を公表する。

 第2節 複数の利害関係者の誓約手続き

 第1節で記載したUASの連邦機関の使用に加え、より優れた柔軟性、より低い資本経費や運用コストの組合せは、UASにおける都市部のインフラ管理、農業や災害時対策といった多様な側面で商業の民間部門の斬新な技術となることを認める。

 しかしながら、これらの機会は米国経済において競争力を強化する一方で、米国はプライバシー、市民権や市民的自由について潜在的な考慮を忘れてはならない。 

(a)ここではNASにおけるUASの使用に関し発行すべきプライバシー、説明責任および透明性に関する最善の実践実務の開発および対話のため複数の利害関係者による取組手続きが設置された。 

(b)本覚書の公布の90日以内に、商務省・電気通信情報局を介して、また他の関係機関と協議のうえ、民間ベースのUASの使用に関するプライバシー、説明責任および透明性についての枠組みの開発手続にかかる複数利害関係者の取組手順のイニチアチブを取ることになろう。この手続きに関し、民間航空での商業目的のUASの使用は、それが連邦法典U.S.C.40102(a)(41) (筆者注7)およびU.S.C.40125のもとで公共航空としての適格がある場合でも、民間航空の商業目的使用に含まれる。 

第3節 本覚書で使用する用語の定義

(a)「連邦機関(Agencies)」とは、NASのもとで運用するUASを実行する連邦行政執行機関(executive departments (筆者注8)および連邦政府をいう。

(b)「連邦政府による使用」とは、NASにおける連邦機関のUAS運用を意味する。連邦機関によるUASの使用には、別の連邦機関または州、地方政府、部族や特定地域に代わって行うUASの運用、あるいは連邦機関に代わりUASを運用する非政府機関を含む。

(c)「連邦航空局・全米航空システム(Natioal Airspace System:NAS)」は、合衆国の空域利用の共通ネットワークすなわち航空施設、機材やサービス;空港や着陸エリア;航空図、情報やサービス;関連する規則、法規および手続き;技術情報;労働力や器具を意味する。この定義には国防総省、運輸省や国土安全保障省により共同して共有するシステム・コンポーネントを含む。

(d)「無人航空システム (Unmanned Aircraft System)」は、NASのもとで安全かつ効率的に命令を下すため、パイロットやシステム操縦者に求められる無人航空機(航空機内の内外で直接の人間による介入なしに運行する航空機)でかつ関連する要素(無人航空機をコントロールする通信リンクや部品を含む)を含む。

(e)「個人識別情報(Personally identification information)」は、2007年5月22日、大統領府行政予算管理局覚書(Office of Management and Budget Momorandum M-07-16)および2010年6月25日、同局覚書(M-10-23)に定めたとおり単独または他のものと組み合わせで特定の個人にリンクまたはリンク可能な個人または識別情報を意味する。

 第4節(総則)

 略す。 

2.過去における連邦議会のUASのプライバシー保護法案

(1)2014年12月、ジョン D.ロックフェラー(John D.)上院議員(ウェスト・ヴァーニア州・民主党)の「2014年無人航空システムのプライバシー保護法案(Unmanned Aircraft Systems Privacy Act of 2014)」 (筆者注9)

  筆者は、同法案の正確な内容にあたるべく調査したが、現時点の同議員への取材に基づくメデイア情報仮訳をもって解説する。なお、筆者は同議員のコメントにつき調査した範囲で補筆した。

・同法は、商業UASの運用者に個人情報の収集および使用に関し、適切なプライバシー・ポリシーの採用とその遵守を求めるものである。同法案は商業無人機の使用の急増する一方で、米国の消費者が安全対策が適所に配備されないままにプライバシー問題に妥協することがないようにすべきであるという考えが背景にある。私は、2014年1月15日に開催した商務・科学・運輸委員会において、委員長として関係者から公聴した。急速な利用拡大と米国のビジネス界や消費者にとって極めて有望である一方で、もしわれわれがこの問題につき事前に対処しないと、重要なプライバシーリスクを引き起こすといえる。この法案はまさにそのことへの試みであり、手遅れにならないうちにこの問題に向けた取組みが必要である。

 法案は情報主体につき明示的事前同意なしに民間企業によるUAS監視を禁じる。また、同時に連邦運輸省とともに連邦取引委員会に対しリテール市場においてUASを購入するUAS事業者の法的義務に関するモデル・プライバシー・ポリシーの策定を命じる。同時に、法案は次の内容を含むプライバシーポリシーを公的なウェブサイト上に掲示するよう民間UAS事業者に求める。

・UASの運営にかかる環境の情報

・イメージ、データその他情報の収集にかかる特定の目的

・該当個人から事前に同意が得られない場合の情報の匿名化や集約手段

・個人がいったん行った同意を無効化するときや収集した個人情報のコピーの入手等についての事業者へのコンタクト方法

 また、法案は次の内容を含む。

・同法に違反する結果生ずる身体的危害やプライバシー侵害に対する民事訴訟権を付与する。

・無人航空機にかかる特定化情報の搬送が可能となる軽量かつ廉価UAS技術の開発を米国商務省・国立標準技術研究所(NIST)に命じる。

・NISTに遠隔識別情報送信(remote identification transmission)の能力評価にかかる標準試験方法の開発を求める。

・DOTに、小型無人航空機の製造・運用に関する遠隔識別情報にかかる諸規則の策定を求める。

・DOTに、遠隔識別送信のための「任意のモデル航空機ガイドライン」の公表を命じる。

・FTCに遠隔識別情報規定を含むプライバシー・ポリシーにかかる従来の関係規則の改正権を付与する。 

(2)2013年のEdward J. Markey 上院議員提案法案(S.1639 - Drone Aircraft Privacy and Transparency Act of 2013 :113th Congress (2013-2014)) 

 同法案の審議は2回の読会を終了しているので、詳細には立ち入らないが、後述4.で述べるとおり、同議員は2015年議会に同主旨の法案を再度上程している。 

3.FAAのUAS規則やプライバシー問題への取組み

(1)FAAが公表した「小型無人航空機システムに関する規則」の枠組み

 2月15日の FAAのリリース文に基づくわが国のCNET解説「米連邦航空局、商用ドローンの規制案を発表」があり、ほぼ網羅されているので、そのまま引用する。

「規制案は「運用制限」「操縦者認証と責任」などの主な4つの項目を定めている。運用制限の項目では、UASを重量55ポンド(25㎏)以下の無人航空機と定義し、オペレーター(操縦者)またはビジュアル・オブザーバー(VO)と呼ばれる操縦および監視担当者の見通し範囲内(VLOS:Visual line-of-sight)からUASを出さないよう義務付けている。UAVは肉眼(視力矯正眼鏡は着用可)で視認できることとする。運用時間は日の出から日没までの日中とし、飛行速度は最高で時速100マイル(時速約160㎞)、高度500フィート(約150m)までとする。操縦場所からは3マイル(約4.8㎞)まで見渡せる気象条件で、操縦に関与しない人物の頭上は飛行しない。上空1万8000フィート以上のクラスA空域(管制された空域)の飛行は禁止とされ、国際空港周辺や空路周辺などのクラスBからクラスEまでの空域は、許可を得て飛行可能となっている」 

 筆者なりに前述の「2012年連邦航空局の近代化・改革法(FMRA)」やFAAの連邦航空規則改正案の関係者の意見公募(NPRM)(Billing Code 4910-13-P:14 CFR Parts 21,43,45,47,61,101.107, and 183)(Notice of Proposal rulemaking) (筆者注10)の内容および米国ビジネスローファーム(Buchalter Nemer )の解説をもとに次の点を補足しておく。 

○FAAのパイロット免許(Pailot’s License)は必要ではない。FMRAの第333条は暫定的であるが商業用小型無人航空機の迅速な認可手続きについてFAAは検討を進めるであろうし、また連邦航空規則パート107は米国における数十億ドルにわたるUAS産業基盤の根拠となる。すなわち195頁にわたるNPRMを読む限りにおいて、Amazonの新ビジネスの可能性につき慎重な文言を使用しつつも、将来的な対価をえる配送ビジネスの問題に前向きに取り組みつつある。 

4.商務省・電気通信情報局(NTIA)の「UAS規制にかかるプライバシー、透明性および説明責任に関する意見公募」および新しいマルチ・ステーク・ホルダー・プロセスのための意見公募

(1)3月4日、米商務省・電気通信情報局(NTIA)は、「UAS規制にかかるプライバシー、透明性および説明責任に関する意見公募Privacy, Transparency, and Accountability Regarding Commercial and Private Use of Unmanned Aircraft Systems) およびUASの商業的で専用無人航空機のために最高の業務を拡張するために新しいマルチ・ステーク・ホルダー・プロセス(new multi-stakehlder process) (筆者注11)を構築するため「連邦官報」で「コメント公募(Request of Comment:RFC)」公布後90日間以内に第一回目の公開討議を召集したいと発表した(このため、コメント期限は公布後、45日目(4月20日)とされた)。 (筆者注11-2)

 前者につき逐語的な質問項目は次のとおり (筆者注12)NTIAの意見公募は2月15日のホワイハウスの大統領覚書を受けたものであるが、覚書が民間部門と政府によるドローンの利用に関するプライバシー問題を取り上げているのに対し、NTIAの対象は民間部門のみを対象としている。 

①プライバシーに関する質問:NTIAはUASにより収集した個人情報の収集、使用、保持および流布に関しプライバシー問題を課すとともに、利害関係者に商業および個人的なUASの使用におけるプライバシー保護に向けた安全装置の特定化を奨励する。 

③透明性に関する質問:NTIAはUASの使用につきプライバシーを強化するとともに他の価値を増強すること、またUASの操縦に関する透明性を推進するため、色等物理的マーキングや電子識別子(electronic identifiers)等といった識別メカニズムについての意見を求める。

 また、UAS操縦者に対し、重大な意味でプライバシーに影響を与え、迷惑をかけない、または安全面で関心等につき大衆にいかなる方法で適格な情報を提供しうるかを尋ねる。 

④説明責任に関する質問:NTIAはUASの操縦に関し、監査や調査という説明責任についてのコメントを求める。また日頃の行動、訓練、操縦、データのハンドリング、監視等につきどのような規則の策定が商業用のドローンの操縦に対する説明責任を実行することになるかにつき尋ねる。 

⑤利害関係者の取り組みの構造化への質問:NTIAはどのようにマルチステークホルダーの取り組み手順を構造化するべきか、また既存の最も優れた実務が参加者の仕事の上でモデルとなりうるかなどにつき尋ねる。 

(2)2月15日に公表した規則案に対する関係機関の意見はこれから出てこようが、プライバシー保護の観点から検証する意味でEPICのサイトのコメントを参照されたい。

 5.今連邦議会におけるUASにかかるプライバシー保護法案の上程

 この問題に関する2つの法案がエドワード・マーキー(Edward Markey)上院議員ピーター・ウェルチ(Peter Welch)下院議員から同時に上程されている。なお、FAAは2020年までに7,500機以上のDroneが米国の空を飛び回ると予測している。 

 法案番号、法案要旨のみあげ、詳細は略す。なお、両法案につき、米国の人権擁護団体である”American Civil Liberties Union(ACLU)”、”Electronic Frontiers Foundation(EFF)”、”Electronic Privacy Information Center(EPIC)”および”National Association of Criminal Defense Lawyers(NACDL)”等が支持するコメントを述べている。 

(1)マーキー法案 S. 635(113th): A bill to amend the FAA Modernization and Reform Act of 2012 to provide guidance and limitations regarding the integration of  unmanned aircraft systems into United States airspace, and for other purposes.

 (2)ウェルチ法案H.R. 2868 (113th): Drone Aircraft Privacy and Transparency Act of 2013

  同法案の要旨は次のとおりである。

①FAAは、Droneの免許受付にあたり、()個人情報を誰が収集するか、()飛行エリア、()どのような種類の個人情報を収集するか、()どのように個人情報を使用するか、()情報を第三者の売却することがあるか、および()情報の保持期間について説明する個人情報の収集声明文言を含む免許申請がない限り免許の発行を禁止する。

②さらに法執行機関およびその契約者(再委託先を含む)に対し、犯罪に無関係の情報の収集および保持情報の最小化に関する声明文言を求める。

③法執行機関が取り組むいかなる捜査等において捜査令状または極端な緊急性のあること(extreme exigent circumstances)の必要性の存在を義務付ける。

④FAAに対し、すべての承認された事業者一覧とデータ収集、データ最小化、免許に基づくデータの漏洩侵害およびDroneが飛行する時間と位置についての声明文言につき、公に入手可能なウェブサイトの作成を義務付ける。

6.欧州のドローンの軍事事業化展開、北朝鮮による基幹施設侵入

(1)EADSの取り組み(UAV news )

 欧州航空機大手エアバスを傘下に置く航空宇宙・防衛関連企業であるEADS (European Aeronautics Defence and Space Company)はEU域内でのドローン市場の強化に向けたビジネス活動を推し進めている。すでに2009年6月のパリ航空ショーで翼長92フィートの諜報、監視、目標取得任務型UASを公開した。

  、(2)非武装地帯等への北朝鮮製ドローンの飛来、落下事件

 CNN記事によると、2014年3月下旬に韓国内でドローン落下事故が報告された。 

 1機目は3月24日、27度線非武装地帯の南数マイルの町、坡州市で発見された。上記写真のとおり大統領府のイメージカラーであるブルー色を使っている。韓国の軍はこのドローンは航空監視が任務目的であり、日本製の小型カメラを搭載した初歩的なものであるとされている。すなわち、北朝鮮がドローーンで偵察する背景は空域情報を監視できる衛星を持たないことをあげている。

 2機目は3月31日に韓国軍の戦略的に重要な位置にある黄海の白翎島(Baengnyeong Island)で発見された。 (筆者注13) 

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(筆者注6-2)米国の個人情報保護法は保護対象者や実施主体別に制定されている。1974年プライバシー法の要旨につき連邦司法省の解説を仮訳する。

「1974年プライバシー法(5 U.S.C.§552a)」は、連邦機関の記録システムで保持さられる個人に関する情報の収集、維持、使用と普及を統治する公正な情報取扱実務の行動規範の確立する。その記録システムとは、情報が個人名で、または個人に割り当てられる若干の識別子により検索される連邦機関の管理下の一群の記録システムをいう。」

(筆者注7)U.S.C.40102(a)(41)本文は次のとおり。

“public aircraft” means any of the following:

(A) Except with respect to an aircraft described in subparagraph (E), an aircraft used only for the United States Government, except as provided in section 40125 (b).

(B) An aircraft owned by the Government and operated by any person for purposes related to crew training, equipment development, or demonstration, except as provided in section 40125 (b).

(C) An aircraft owned and operated by the government of a State, the District of Columbia, or a territory or possession of the United States or a political subdivision of one of these governments, except as provided in section 40125 (b).

(D) An aircraft exclusively leased for at least 90 continuous days by the government of a State, the District of Columbia, or a territory or possession of the United States or a political subdivision of one of these governments, except as provided in section 40125 (b).

(E) An aircraft owned or operated by the armed forces or chartered to provide transportation or other commercial air service to the armed forces under the conditions specified by section 40125 (c). In the preceding sentence, the term “other commercial air service” means an aircraft operation that

(i) is within the United States territorial airspace;

(ii) the Administrator of the Federal Aviation Administration determines is available for compensation or hire to the public, and

(iii) must comply with all applicable civil aircraft rules under title 14, Code of Federal Regulations.  

(筆者注8) executive departments”とは、アメリカ合衆国連邦政府の行政組織で、1789年設立の国務省や財務省を始め、国防総省(1947年)、内務省(1949年)、司法省(1870年、農務省(1862年)、商務省(1903年)、福祉保健省(1953年)、エネルギー省(1977年)、教育省(1980年)、国土安全保障省(2002年)などが含まれる。 

(筆者注9) 2014年無人航空システムのプライバシー保護法案(Unmanned Aircraft Systems Privacy Act of 2014)」の詳細な内容を確認すべく筆者なりに調べてみた。手掛りは連邦議会の情報サイトである”Congress.gov”で同議員の法案上程内容、民間の法案追跡サイト”govtrack .us”等つぶさにチェックした見たがやはり存しない。

また、同議員の公式サイトもリンクできない。本ブログでは、12月22日付け”USA magazine”の記事「ウェストバージニア州選出上院議員がUASプライバシー法案を提出」の内容を紹介するが、同議員は商務・科学・運輸委員会の委員長でもあり重要な法案だけに改めて調査したい。 

(筆者注10) FAAの連邦小型無人飛行機システムに関する運用、利用条件等に関する連邦規則改正案は全文195頁である。時間の関係で詳細な紹介は略すが、本来的な比較検討が必要であろう。

(筆者注11)欧米では1990年代以降に一般的に用いられている「マルチ・ステーク・ホルダー・プロセス」につき簡単に補足する。引用元は内閣府「持続可能な未来のためのマルチステークホルダー・サイト(Multistakeholder Portal for a Sustainable Future)

(1)ステークホルダーの平等代表性(equitable representation):あらゆるコミュニケーションにおいて、各ステークホルダー(利害関係者)が、平等に参加し、自らの意見を平等に表明できるということであり、また相互に平等に説明責任を負うこと、(2)意思決定、合意形成、もしくはそれに準ずる意思疎通:政策決定から共通認識の形成、実践的な取り組み実施に向けての合意、ステークホルダー間のパートナーシップやネットワーク形成に至るまでを幅広く含むもの。

 その歴史的な背景としては、1980年代後半から90年代にかけての持続可能な発展に関わる議論の中で登場した概念である。以降、様々なテーマ(環境、人権、労働、消費者問題等)と、レベル(国際、国内、地域等)のおいて適用。 

 なお、最近はこのような民主主義や自由経済の原点といえるこの考え方がややもすると薄れていると感じるのは、筆者のみであろうか。 

(筆者注11-2) NTIAは、2015年4月24日にUASの商用および私的使用に係る「プライバシー」「透明性」「説明責任」の観点からの関係機関や団体等からのコメント集約内容を公開した。Covington Burling LLP がその内容を取りまとめているので、以下、仮訳する。 

「 50以上の関係機関等がUASの非政府における使用に関するプライバシー、透明性問題等に係る意見を提供した。その多くの企業等はプライバシーに関する最善の実務の実践に関し、既存の州法上におけるプラバシーの侵害、不法侵入や覗き見責任を問うことは不要とするものであった。また、NTIAはドローン・ユーザーに対するプライバシーガイドラインを策定するに際し、合衆国憲法修正第一(信教・言論・出版・集会の自由、請願権)、および修正第四が定める権利(不合理な捜索・押収・抑留の禁止)に関する裁判管轄権問題に配意するよう強く求めた。その他の意見としては、現行法がUAS規制において、長期の監視に使われたり個人識別情報の集約にされることについて不十分である旨の懸念を述べた。これらの懸念に対処するため、コメントは(1)被写体となる個人は自身の財産上等の撮影に対するオプトアウト権を認める「飛行禁止ゾーン」の設定、(2)ドローンで収集した一定の個人識別情報の保有期間の制限、(3)顔認証ソフトや車のナンバープレート読み取りソフトの使用の組み合わせの限定等を勧告した。また、利害関係者からは、(1)ドローン本体に使用者名等を表示させる、(2)企業にはドローンをどのように使用するかについて詳細をオンライン上で表示させる、(3)ドローン・ユーザー名登録制度の創設等の指摘があった。他方、その他のコメントとしては集中化したオンライン登録制度の実施は特に趣味でUASを利用する操縦者に対する権利侵害につながるという指摘も出された。」

(筆者注12) Covington&Burling LLPのブログから引用する。 

(筆者注13) 2月27日の朝日新聞は韓国国防省が指摘した北朝鮮のドローン問題につき、国連安全保障理事会の専門家パネルの調査報告に言及している。この問題につき、さらに詳しい記事として「38 North」の関連部分を仮訳する。

「無人飛行機:2014年に3機の北朝鮮の無人空中車両(UAVs)は、軍事施設の上に空飛ぶ偵察任務の後、韓国で破壊た。同機の破片の検査では、飛行機が北朝鮮製であったか製造されて外国製だったかどうかは確定できなかった。いずれにしても、これらの事件は平壌が無人の航空機システムをその活動に取り込み続けそうなことを示唆する。韓国はこの問題は制裁に当たるすなわち「これらの無人空中車両の、そして、北朝鮮に対するすべての武器関連した軍需品[DPRKに]の供給、販売または移動を禁止している国連決議1874号 (2009年:resolution 1874 (2009))の第10項違反となる旨」専門家パネルに警告を通知した。 

 現行の決議カテゴリー1の規制対象は「少なくとも積載量500kgで少なくとも300kmの範囲に届けることができる完全な無人空中機ミサイル・システム(巡航ミサイル・システム、標的型ドローンや探査ドローンを含む)」というものであり、今回3つの落下したドローンがより短い距離が彼らがそのカテゴリー該当しないことを意味する。しかし、韓国は彼らがまだ「武器に関して」、したがって制裁の対象となると思われなければならないと考えている。 これは、今後数ヶ月に国連とそれの外部でおそらく討議される点である。 

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ホワイトハウスの無人航空システム使用時のプライバシー権等に関する覚書と法制整備等の最新動向(その1)

2015-03-22 16:58:30 | 個人情報保護法制

 

Last Updated :April 29,2015

Illustration by NH/Shutterstock
(2015.3.9 MITは手紙のdrone配達を希望(MIT wishes it could deliver acceptance letters via drone)という動画サイトからの写真を引用)

 わが国では、最近、「日本政府は国家戦略特区の第二弾として、地方創生特区を2015年春をメドに指定する方針を公表した。地方創生特区では、無人飛行機(UAS:Unmanned Aircraft Systems (筆者注1) (いわゆるDrone(ドローン)による宅配サービスやネット利用の遠隔医療・遠隔教育など中山間・離島地域の活性化につながる先進技術の実証実験を目指す。有識者会議(筆者注2)では、無人飛行機の試験運用が始まっているアメリカ等の海外の先進事例の研究などの検討を進めており、政府は2月中にも実施計画を策定したい」とのニュースが出ている。 (筆者注3)
 また、日本ではまだ無人機に関する法律は整備されておらず、日本政府の「日本経済再生本部」は2月10日に公開した「ロボット新戦略 Japan’s Robot Strategy―ビジョン・戦略・アクションプラン―」 において、「小型無人機に関して運用実態を把握し、関係法令等の整備を検討する」としている。

 このようなわが国政府の動きの背景には、米国国内で業務用の無人航空機(UAS)がニュービジネスとして離陸しようとしている点があげられる。すなわちオンライン・コマース最大手のAmazonやネット大手Googleを筆頭に、業務用のドローンを使った自動配送システムの開発競争が活発化する中、米連邦運輸省・航空局(FAAは2月15日、商業利用のための小型UAS規則案(Operation and Certification of Small Unmanned Aircraft Systems:Notice of proposed rulemaking (NPRM)を発表する等(筆者注4)わが国の関係業界や規制・監督機関としても無視しえない重要な点があげられる。



(英国メデイア:The Telegraph2014.8.29付け記事のGoogleテスト飛行写真)

 他方、昨年10月以来フランスでは原子力発電所の周辺でドローンが飛来する事件、また韓国では2014年3月以降、北朝鮮からの飛来したと見られるドローンが非武装地帯等に落下するなど、国家の基幹施設等のセキュリティ問題も急浮上している。

 本ブログでは、第一部として米国UAS問題の取り組みを整理する意味で主要な学術的研究、連邦議会の関係委員会での論議、議会の勧告機関である連邦議会行政監査局(GAO)報告、人権擁護NPOの州立法の詳しい解析等の検討内容等をまとめた。関連する動向すべては網羅していないが、本文を読むと米国のこれまでの法整備にいたる経緯が正しく理解できるととともに、他方わが国の関係法整備も含めた研究の遅れが大いに気になろう。

 第二部として米国政府やローファーム”Hogan Lovells”の2月18日ブログ等に基づき、(1)2月15日、ホワイトハウスが無人航空システムの国内使用におけるプライバシー、市民権および市民的自由権保護に関する大統領覚書を公表したことからその具体的内容、(2)各州にけるプライバシー保護等の観点からの立法対応、(3)FAAの小型UAS規則案、(4)商務省・電気通信情報局(NTIA)の「UAS規制にかかるプライバシー、透明性および説明責任に関する意見公募(Privacy, Transparency, and Accountability Regarding Commercial and Private Use of Unmanned Aircraft Systems)および(4)フランス等のUASのビジネス面および北朝鮮からの飛来等社会的なリスク問題を概観する。

 第三部として最後に1月5日に国土安全保障省(DHS)の内部監査機関であるOIG(監察総監部)が行ったDHSへの批判的内容の報告書を概観し、併せて連邦議会の反応を見る。その意義は、これからわが国において官民共通して利用の拡大が見込まれるUAS分野において果たして国民の血税が無駄なく執行されているか、会計検査院等わが国のWatchdogの真のミッションのチェックの参考例と考えたことが背景にある。  

 なお、3月24日にGAOは「無人航空システム:FAAが実施している米国内における試験サイトにおける飛行試験結果およびカナダ、オーストラリア、フランス、英国の商業用UASの規則制定動向」を発表した。その内容もさることながら、筆者はそこで引用されているカナダ、オーストラリア、フランス等の関係機関のサイト等に当たってみた。具体的な規制内容の図解解説やガイダンス(カナダオーストラリア:ガイダンス、 ;フランス;EASA)は極めて分かりやすく、わが国の検討において参考になる点が多い。別途本ブログで詳しく取り上げる予定である。

 今回は、3回に分けて掲載する。

Ⅰ.これまでの米国のUASの基本的取組み
1.連邦議会の下院、上院関係委員会における公聴会の状況
 時間の関係ですべて網羅できないが、筆者が調べた範囲で引用する。これを読むだけでもUASに対する議会の多方面にわたる関心が高いことが窺えよう。なお、米国の無人航空機の官民、アカデミック等の取り組みの概要の解説はFAAの解説サイトを参照されたい。
 また、2012年までであるが、米国の無人航空機の規制にかかる法律、規則、ポリシー、法案等を概観できる資料「ミシシッピー大学ロースクール:The National Center for Remote Sensing, Air, and Space Law:Unmanned Aircraft Systems in U.S. National Airspace:Selected Document」も併せ参照されたい。

(1)2010年9月13日の上院「商務・科学・運輸委員会(Committee on Commerce,Science,and Transportation)」「航空事業の安全性小委員会(Subcommittee on Aviation Operation, Safety, and Security)」における専門分野別公聴会:(FIELD HEARING:委員長:ジョン D.ロックフェラー(John D. Rockefeller Ⅳ:ウェストヴァーニア州・民主党))

Senator John D. Rockefeller IV氏

①証人は次のとおり。(なお、4名の各証人の証言内容は同委員会サイトでダウンロードにより確認できる)

・Representative Earl Pomeroy , Congressman from North Dakota(2011年4月14日、管制官の居眠り問題の責任を取って辞任
Hank Krakowski , CFO, Air Traffic Organization; Accompanied by John Allen,Director, Flight Standards Service, Office of Aviation Safety, Federal Aviation Administration   
David Ahern , Director, Portfolio Systems Acquisition, Office of the Under Secretary of Defense (Acquisition, Technology and logistics
・Major General(少将) Marke Gibson , Director of Operations, Deputy Chief of Staff for Operations, Plans and Requirements, Headquarters U.S. Air Force
・Brigadier General L. Scott Rice , Co-Chairman, USAF/ANG National Airspace and Range Executive Council, National Guard Bureau

②目的:小委員会での委員長の冒頭主旨発言(原文が口語的英文なため一部意訳した)
 本公聴会は特に無人航空機(Unmanned Aerial Vehicles:UAVs)の訓練および運用問題を扱う。ノースダコタのグランド・フォークス空軍基地の領域が主要なUAVセンターになる予定である。我々は、無人偵察機プレデター(Predators)



およびグローバル・ホークス(Grobal Hawks)



(筆者注5)の一団を配置させる予定である。 我々はUAVsを飛行させることが米国の国土安全保障つながると考える。また、 ノースダコタ大学の航空宇宙科学センターを関係法およびUAV研究・調査のための研究センターとして国防総省の記述に基づき指定した。私は、一部委員会メンバーとともに空軍基地やノースダコタ大学を訪れ、実際にいかなる天候下でも無人航空機を安全に操縦、運用できていることを確認した。そこでは、真に無人航空機が有人機の隣り合せ領空で決まりきって操作するのを許容するのに必要な規則と手順を完成・開発することが優先的課題である。
 私が、この公聴会を必要と判断した理由の1つが、どこがこの問題のワーキンググループとして適格かにつき、われわれで理解しようとすることであり、また我々が欲するところから始めるために時間的なリミットまたは時代の敏感な需要を満たしうるかである。 そして、もしそうでないとしたら我々はどのようにそれらの必要条件を満たし始めるべきかである。
 FAAは特定の責任を有し、また空軍には別の責任がある。同時に我々がUAVsに関する訓練・運用能力についての統合化策を提供することで、米国の航空領空の安全性をいかに保証することである。
 これらが、2009年2月以来、何が起こっているかを理解しようとすることが本公聴会の目的である。我々が進みつつある中で、空軍とFAAがUAVsの能力と訓練について合意に達すること、またプレデターとグローバル・ホークスの一団をいつ確保できるかなどについて予想することにある。

(2)2014月1月15日の上院・商務・科学・運輸委員会での公聴会「Future of Unmanned Aviation in the U.S. Economy: Safety and Privacy Considerations」 
 内容は略す。連邦議会の動画サイトC-SPANで証言内容、記録を確認されたい。

(3)2014年1月15日の上院・商務・科学・運輸委員会の動画サイトC-SPAN「Unmanned Aerial Drones in The U.S 」上院・情報委員会委員長フェインスタイン氏証言
 内容は略す。なお、連邦議会の動画サイトC-SPANで証言内容、公式記録を確認されたい。

C-SPANから抜粋

(4)2014年12月10日、 連邦議会下院・航空小委員会公聴会: “U.S. Unmanned Aircraft Systems: Integration, Oversight, and Competitiveness”の動画
 内容は略す。標記連邦議会の動画サイトC-SPANで証言内容、公式記録を確認されたい。

2. 「2012年連邦航空局の近代化・改革法(FMRA:FAA Modernization and Reform Act of 2012)」の成立とFAAの新たな取組課題
 この問題に関し、米国ジョージ・メイソン大学のMercatus Center の解説によると、FMRAに基づき連邦議会は2015年9月までに時宜にあわせ無人航空機と呼ばれる無人機システム(UASs)を全米航空システムと統合するため連邦航空局(FAA)にその任務を課した。 その成果の一部として、議会は統合試験計画として機能するように6つの試験範囲を確立するようFAAに指示した。 2013年2月22日に、FAAはサイトと要求の選択のための「実験場プログラムの中で無人機システムの操作に関して国民と議会によって起こされたプライバシーへの懸念を記述するための提案されたアプローチ」のパブリック・コメントに関する過程を発表しつつ、連邦官報で通知を発した」とある。

3.2008年5月15日、2012年1月3日のGAO連邦議会行政監査局(GAO)報告および9月18日のGAO報告の概要

(1)2008年5月15日のGAO報告・勧告(全73頁)
 ハイライト部分を仮訳する。なお、本文を読まれて気がつくと思うがこの報告がなされたのは7年前である。わが国が今取り組むべき課題の多くが明確な解説とともに取りあげられている。

「UASsは、現在、国境警備、科学的研究とその他目的のために連邦機関によって使われている。地方自治体では法執行または消防活動等において潜在的用途を見ることができ、また民間部門では潜在的用途(例えば不動産の写真撮影)を見ることができる。関係業界の調査では、UASの生産高はそのような政府や民間部門の用途に対処するために将来的に増加すると見込んでいる。専門家は、UASsがより少ない雑音とより少ない環境への影響という観点から、ある程度有人航空機の飛行の代替的機能を果たすことができると予測する。
 UASsは、技術面、法規制面、作業負担等について国家空域システムにおいて通常の機能する能力に影響を及ぼすという調整難問を引き起こす。 UASsは、航空の安全条件(他の航空機を見て、避けることのようなこと)を満たすことができない。 UASsは、UASsが増加する潜在的挑戦が日常的な空域アクセスを得た後に予想できるセキュリティ保護の欠如をもたらす。 UASsに関するFAA規則の欠如は、FAAによるUASsの活動を個別的な承認によるという制限を課す。 UASsを運営する要請の予想された増加は、FAAのために作業負担難問を起こすことができよう。これらの挑戦について述べる複数の努力を調整することが、さらなる再挑戦である。
 FAAと国防総省(DOD)は、技術的挑戦について述べている。また DHSは、日常的なUASのアクセス問題につき空域の国家の安全保障問題に取り組んでいない。 FAAは、UAS安全な規制規則を完成することは10年以上かかると見込んでいるが、まだなお、その日常的なUASのアクセスを提供するために要求されるステップを伝えるプログラム計画や時間枠は発行されていない。 FAAは小さなUASsが空域アクセスをするのを許すことに取り組んでいて、特定の空域をUASテストに指定した。 それは、規則を作成するためにこのテストから始まり、またDODからのデータを使う予定であるが、すでに集めたデータはまだ分析していない。 その作業負担挑戦について述べるために、FAAはより多くのオートメーションを使っている。 航空投資家と専門家は、全てにかかわる事業者が連邦、アカデミックや民間部門の努力を調整して、促進するのを助けることができるように提案した。 2003年、連邦議会は、複数の連邦機関と民間部門の間で次世代航空運輸システムのために計画を調整するために、FAAと類似の事業体を創設した。」

(2)2012年1月3日のGAO報告 「U.S. Unmanned Aerial Systems:Jeremiah Ger1tler,Specialist in Military Aviation January 3, 2012」(全55頁)
 内容は逐一解説せずに項目のみあげる。しかし、読んで分かるとおり、米国の世界戦略上、UASの軍事的重要性は明らかである、かつ軍事面から取り上げるべき課題の広さが理解できよう。なお、GAOは同報告の中でDHSのTSA(運輸保安局)に対し、非軍事用UASの安全面の意味合いにつき精査するよう勧告した。

①Background,②Why Does the Military Want UAS? ,③What Missions Do UAS Currently Perform?,④Intelligence, Surveillance and Reconnaissance,⑤Strike ,⑥What Other Missions Might UAS Undertake in the Future?,⑦Resupply,⑧Combat Search and Rescue Refueling,⑨Air Combat,⑩Why Are There So Many Different UAS?,⑪Does the Department of Defense Have an Integrated UAS Development Policy?,⑫UAS Management Issues ,⑬Cost Management Issues,⑭Organizational Management Issues,⑮UAS and Investment Prioritie,⑯Interoperability,⑰Reliability/Safety,⑱Force Multiplication/Autonomy,⑲Engine Systems,⑳Duplication(複製) of Capability ,㉑Other Potential Missions,㉒The Issue of Airspace,㉓Recruitment and Retention,㉔Industrial Base Considerations,㉕Congressional Considerations,㉖Funding,㉗Trade-Offs,㉘Measures of Effectiveness,㉙Pace of Effort、㉚Management ,㉛Operators,㉜R&D Priorities,㉝Development Facilities,㉞Other Issues,㉟In Summation, ㊱Current Major DOD UAS Programs :
MQ-1 Predator;MQ-1C Grey Eagle MQ-9 Reaper ;RQ-4 Global Hawk;BAMSMQ-8B Fire Scout FIRE-X/MQ-8C RQ-170 Sentinel 、㊳Other Current UAS Programs

(3)2012年9月18日のGAOのUASに関する連邦議会の検討と連邦関係機関への勧告の概要
①GAO報告「UASの手段的進捗と潜在的プライバシー侵害に向けた検討は全米航空システムへの統合を容易にする」リリース概要
 このGAO報告は、2015年12月を規則制定の期限とする従来の航空域安全性や技術的課題という観点からプライバシー問題に一歩進めた検討を行っている。
 その該当要旨部のみ仮訳する。
「UASの国家安全保障、プライバシーおよびGPS信号への障害等への懸念は解決されておらず全米における通常の領域航空システムへのアクセスに影響するかもしれない。TSAには非軍事も含め、輸送のすべての手段につき安全面の規制を実施する権限を持つ。FAAおよび他の連邦機関は、ともにロナルド・レーガン・ナショナル空港への出入りにかかる限定的飛行制限等セキュリティ手順を実行すべきである。
 利害関係者のプライバシー問題は、UAS技術を用いた政府による監視、すなわそれらの個人情報の収集や使用における理由なき捜査や差押え等の合衆国憲法修正第4違反問題の可能性も引き起こす。
 現在、すべての連邦機関においてUASの利用に関し、連邦機関全体にわたるプライバシー問題を法規制する機関はない。利害関係者の中にはUASの政府による監視や法執行目的での使用のいうことから見て、DHSや司法省が扱うべきという見解も見られた。」

GAO報告全文(全49頁) 内容は略す。 

4.米国EPICのUASレポートの概要と州立法の全体像
(1)米国の人権擁護団体EPIC(Electronic Privacy Information Center)は2014年10月にDroneにおける官民の関係機関におけるプライバシー侵害問題をとりあげ「Spotlight on Surveillance - October 2014:DRONES: Eyes in the Sky」を公表した。NPOとしての本格的なものであり、主たる項目のみ引用する。
I. Introduction
II. Drone Surveillance Technology
III. Government Use of Drones
IV. Private Drone Use
V. Federal Regulation of Drones
VI. State Regulation of Drones
VII. EPIC’s Work

(2)主な州におけるUAS飛行にかかるプライバシー規制法の立法動向
カリフォルニア州
アイダホ州
インデイアナ州 
ルイジアナ州
ノースカロライナ州

 なお、上記も含め連邦や州の最新立法については全米州議会議員連盟(National Conference of State Legislatures:NCSL)のレポート、前記EPICのサイトや全米刑事被告弁護士会(NACDL)の”NACDL’s Domestic Drone Information Center”の連邦および州の法案一覧検索サイトを参照されたい。

NCSLレポートから抜粋

  州におけるドローン規制問題の論議で最近時、興味深いテキサス州弁護士会のブログ記事を読んだ。米国の女性弁護士で連邦政府の立案政策提言実績等で有名なリサ・エルマン(Lisa Ellman) (筆者注6)がテキサス州オーステインで3月13日~22日の間に開催された娯楽対話イベント「SXSW Interactive 2015」においてプレゼントした内容に関する記事である。

 細かな点は省略するが、ビジネスにおける商業用ドローンの利用可能範囲は極めて広いと述べる一方で(日本では農薬の空中散布の85%はドローンが行っていると引用)、プライバシー保護の面からは米国民の慎重な姿勢を有しており、立法政策にあたりそのバランスを十分配慮すべきといった論調である。その中で面白いと感じた指摘は次のとおりである。なお、エルマンのプレゼンテーションは動画サイトでも閲覧可能であり、米国で活躍する女性の例を直接見るのも面白かろう。

・立法論として未来を考えると土地の保有者は鉱山権や石油や天然ガス等に地下にある利益も保護されるべきであると主張するように、その位置の上空についても権利を主張するかもしれない。しかし、その権利は地上から約350フィート(約107メートル)以下とすべきであり、連邦が管理する500フィート(約152メートル)以上と統合管理されるべきと考える。

その他、ドローンの騒音問題も静か過ぎるとスパイ活動に有利になるといった問題も指摘できよう。

******************************************************************************
(筆者1)UAS””UAV””RPAS”および”drone”等の用語が必ずしも厳密な定義がなく使われている。一定の範囲で解説したものとしては、JAXA(宇宙航空研究開発機構)航空本部:航空マガジン 2014年夏号FLIGHT PASS No.6 「無人飛行機特集」文中の説明が分かりやすいが法的な意味での定義とは考えにくい。

(筆者注2) 「近未来技術実証特区検討会」においてドローンの実用化に向けた検討が始まると議事録に記されている。しかし、第1回会合の議事録を読んでこれからの具体的的検討の進め方についてイメージが湧く読者はいかほどいようか。

(筆者注3) 経済産業省の無人航空機の取組みの概要は,例えば「平成2014年9月17日経済産業省・製造産業局・航空機武器宇宙産業課課長補佐 府川秀樹「我が国無人航空機産業への期待」があげられる。ただし、プライバシー問題や法整備等への言及はまったくない。
 また、産業界の取組みとしては、日本産業用無人航空機協会の2014年9月17日の第4回産業用無人航空機の現状と利用に関する研究会の講演会資料等が参考となろう。同資料もプライバシー問題への言及はまったくない。

(筆者注4) 2015年3月19日、連邦航空局(FAA)はAmazon Logistics,Inc.に対し、同社が計画する無人航空機の研究、開発および操縦者の訓練目的での使用につき、試験的耐空証明(Experimental airworthiness certificate)を発行した旨発表した。次の掲げる条件下でのみ認めることから、以下で、その内容を仮訳する。

  なお、本件に関するメディア記事 等も参照されたいが、そこで読み取れる課題はいうまでもないが、(1)ここで規制対象となるUASは明らかに航空機の一種であり、趣味的なおもちゃの延長線上でないこと(operatorとはいわずpilotと言う用語を使用)、(2)米国といった広大な国土を有する国の規制ルールがそのまま狭い国土の日本では適用できない、(3)プライバシー侵害問題等関係規制機関の調整がまったくできていない点などがあげられよう。 

*(1)すべての航空操縦は、400フィート(約122m)以下または昼間の視覚気象条件の下で行うこと。 

(2)UASは常にパイロットと監視者の見通し通信飛行(VLOS: Visual Line of Sigh)で行うこと。 

(3)実際のUASを操縦するパイロットは、自家用操縦士技能証明(private pilot’s certificate)またはFAAが定める現時点の健康証明を持つこと。 

(4)アマゾンは毎月次の内容の報告をFAAに行う。①実施した飛行数、②1飛行あたりのパイロットの勤務時間、③異常なハードウェアやソフトの不具合数、④管制官からの指示の逸脱事例、⑤意図せざる通信状態の途絶

(筆者注5) グローバル・ホーク:主翼幅約40メートル、全長約14.5メートルの大型無人偵察機。米国防産業大手ノースロップ・グラマン製。赤外線センサーで夜間や悪天候下でも目標を捕捉できる。無人偵察機プレデターと異なり攻撃能力はない。米軍はアフガニスタン攻撃やイラク戦争で使用。2010年9月に米領グアムの空軍基地に配備した。気象観測や災害状況の把握でも活用され、東京電力福島第1原発事故後、原子炉建屋の損傷状況を調べるために使われた。

(筆者注6) リサ・エルマン(Lisa Ellman)がパートナーである大手法律事務所「McKenna Long & Aldridge LLPは、UASについて本格的な解説を行っている。

Lisa Ellman 氏
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