Last Updated : April 22,2024
II.情況証拠(Sachverhalt )
1.2009年3月19日、被,告であるGoogleは共同してスイス国内の道路において特殊装置車(筆者注12)による撮影を開始した。これらの撮影の目的は、ユーザーがGoogle マップ((http://maps.google.ch/maps?hl=de&tab=wl))により道路位置の確認およびインターネット上で360度の視界をもってバーチャルな道路歩行を体験できるようにすることである。
2.Googleのストリートビュー・サービスは数州(Ländern)で導入または導入が予定されており、またEUの「EU保護指令第29条専門調査委員会(die Artikel 29 Datenschutzgruppe der Europäischen Union)」 (筆者注13)は2009年6月、その調査の取組みを開始している。
また、Googleは十分な情報に基づく公開の承認および特定される個人情報につき適当な期間は削除が求められるべきである。
Googleは、スイス国内において写真掲載の承認前に十分な情報が提供されるべきとする保護委員会の意見に反対した。すでに新サービスに関し意見が分かれている時点で写真を公開しようとしたため、2009年9月14日本委員は第1回目の削除要求書面を用意した。
3.2009年8月17および18日の夜、グーグルはスイスでのストリートビュー・サービスのウェブページを立ち上げた。グーグルのデータによると公開した写真は2千万枚以上であった。保護委員に対し不特定性が不十分な写真や私道、私有財産の写真に関する多くの苦情が寄せられた。
4. これら問題の解決を目指した保護委員とグーグルの数回の議論の結果、2009
年9月4日付けの手紙で2009年9月2日の交渉の場でグーグルはぼかしの次期使用ソフトにおいて非特定性を図るという提案を行った。しかしながら、この提案の実現には組織化と計画が必要であるというものであった。
さらにグーグルは今後スイス国内では新たな写真は撮影しないとした。
5.2009年9月11日に保護委員はグーグルに対する勧告を発したが、グーグルは10月14日付けで拒否する旨およびストリート・ビューについては2009年末までのみ新しい写真は撮影しないという旨の回答書を送ってきた。
IV. 争点の要旨(Formelles)
訴状内容については長くなるので項目のみ以下紹介する。それぞれ重要な意味があるので研究者はさらに読み込んで欲しい。特にDSGの第4条の諸原則はわが国の個人情報保護法の第17条や第18条の規定をさらに保護面で明確化した内容であり、EU保護指令(95/46/EC)第6条等にも準拠した内容である。
わが国が今後あらたに「プライバシー保護法」を策定する際のメルクマールといえる内容と考える。
・個人情報の処理内容(Bearbeitung von Personendaten)
・連邦情報保護法の適用可能性(Anwendbarkeit des DSG)
・米国とスイス間の個人情報保護に関するセーフ・ハーバー協定の適用問題
(Anwendbarkeit des U.S. – Swiss Safe Harbor Framework und DSG)
・Zuständigkeit des EDÖB 連邦情報保護委員の裁判管轄権(Zuständigkeit des EDÖB)
V.法的考察(Erwägungen)
・DSG第4条第1項に基づく取扱いの合法的手段原則(その1)(Zum Rechtmässigkeitsprinzip gemäss Art. 4 Abs. 1 DSG (1))
・優先的課題:DSGの視点からみた米国Googleの個人情報の取扱いについての分析(Vorfrage: Untersuchung der Datenbearbeitung durch Google, Inc. in den USA im Lichte des DSG)
・DSG第13条第2項e号に基づく法律に定める非特定性の配慮(Rechtfertigungsgrund gemäss Art. 13 Abs. 2 lit. e DSG)
・個人の識別・特定不可性のレベル問題(Grad der Unkenntlichmachung )
・潜在的な個人プライバシーの侵害についての考察(Erwägungen zu einer möglichen Persönlichkeitsverletzung)
・連邦情報保護委員による事前の検査結果の要旨(Zusammenfassung der Vorprüfung)
・DSG第4条第1項に基づく取扱いの法的節度(合法的手段)原則(その2)( Verhältnismässigkeitsprinzip Art. 4 Abs. 2 DSG)
・DSG第4条第2項の個人情報処理にあたっての節度性原則(信義誠実や行き過ぎた行為の禁止原則)(Ihre Bearbeitung hat nach Treu und Glauben zu erfolgen und muss verhältnismässig sein.)
・DSG第4条第3項に基づく取扱目的の節度性(収集目的、状況から明確または法の規定内)原則(Personendaten dürfen nur zu dem Zweck bearbeitet werden, der bei der Beschaffung angegeben wurde, aus den Umständen ersichtlich oder
gesetzlich vorgesehen ist.)
・DSG第4条第4項に基づく本人の要認識性原則(Erkennbarkeitsprinzip gemäss Art. 4 Abs. 4 DSG)
VI. Googleの見解(Zu den Anmerkungen von Google, Inc.)
VII. 結論(Fazit)
1-2行政裁判所判決および連邦裁判所の判決
MLL Legalの レポートを仮訳する。なお、MLL Legal は、チューリッヒ、ジュネーブ、ツーク、ローザンヌ、ロンドン、マドリッドに事務所を構えるスイス有数の法律事務所である。
Googleマップには、街路や広場を仮想的に巡ることができる「ストリートビュー」という機能がある。 この目的のために、Google Inc. は Google Schweiz GmbH (以下「Google」という) を使用してスイスの街路の画像を撮影している。 画像は、高さ約 3 メートルの車両に取り付けられた特殊なカメラで撮影される。 これらの画像は、さらに処理するためにハードドライブ上でベルギーに送信される。 編集された録音は、米国の本社からオンラインで投稿される。 人物や車のナンバープレートは、特殊なソフトウェアを使用して自動的にぼかし(ピクセル化)される。 自動ピクセル化のエラー率は約 0.9 ~ 2.5% である。
2009 年 9 月 11 日、連邦情報保護委員 (EDÖB/PFPDT) は、人格が侵害されたと感じた人々が EDÖB に連絡したことを受け、Google に勧告を出した。 GoogleはEDÖBのこの勧告の大部分を拒否した。
EDÖBは2009年11月連邦行政裁判所に提訴した。2011 年 3 月 30 日の判決 (A-7040/2009) により、訴訟は大部分が承認された 。 連邦行政裁判所によると、Googleのデータ処理はスイス情報保護法(以下、「DSG」という)の処理原則に違反しており、私的利益や公共の利益を無効にして正当化することはできないとした。 これに基づいて、裁判所はGoogleに対し、画像がインターネット上に公開される前に、Googleストリートビュー上のすべての顔と車両のナンバープレートを完全に隠すよう厳しい要件を課した。 その後、Google Inc. と Google Schweiz GmbH は、この判決に対して連邦裁判所に上訴状を提出した。
(1)連邦裁判所の判決: 個人データの存在(Urteil des Bundesgerichts: Vorliegen von Personendaten)
スイスのDSG が適用されるための中心的な要件は、個人データの存在である。 個人データには、特定の個人または識別可能な個人に関連するすべての情報が含まれる (DSG 第 3 条)。 2012 年 3 月 31 日の判決 (1C_230/2011)において、連邦裁判所はロジステップ(Logistep)事件の判決で明記された対応する原則を確認した 。 根拠のある判決は、個人を識別するには、識別に客観的に必要な労力だけでなく、データ処理者または第三者が識別に対して持つ利益も考慮に入れなければならないことを強調した。
今回の訴訟において、連邦裁判所は、人物の生の画像、つまり録画中に作成され、まだ自動的に匿名化されていない画像、および自動処理後に人物を認識できる画像を個人データとして認定した。 連邦裁判所によると、例えば、家や車両の画像が特定の人の自宅の住所に割り当てられ、住民の特定の生活状況についての結論が導き出される場合など、人物が写っていない画像でも家の所有者または車の所有者(ナンバープレートが見える場合は個人データを表す可能性があるとのことである。 したがって、連邦裁判所は、居住エリアを考慮した個人の庭、中庭、バルコニー、または家の建物の概観(ファサード)の画像も個人データとして説示した。
(2)連邦裁判所の判決: 個人の権利の侵害とデータ処理原則の違反(Urteil des Bundesgerichts: Persönlichkeitsverletzungen und Verstoss gegen Datenbearbeitungsgrundsätze)
スイスのDSGには、個人データを処理する際に遵守しなければならないさまざまな要件が含まれている。 特に、関係者の人格は不法に侵害されていないことが前提となる(DSG 第 12 条第 1 項参照)。 DSG 第 13 条第 1 項によれば、個人の権利の侵害は、被害者の同意または優先される私的利益または公共の利益によって正当化されない場合には違法となる。
これに関連して連邦裁判所は、Googleの行為が多数の人格侵害につながったと認定した。 この結論は、プライバシーの権利への干渉に加えて、特に「自分自身の肖像権」の侵害(Verletzung des „Rechts am eigenen Bild)によって裏付けられた。 原則として、描画、絵画、写真、映画、または同様のプロセスを通じて、本人の(事前または事後の)同意なしに人物を描写することはできない。 さらに、この権利には、自分の画像の公開に関する自己決定権も含まれる。 これらの人々が自分のイメージに対して持つ権利は、たとえ彼らがいわゆる「アクセサリー」や「スタッフ」として偶然に画像に現れただけであっても、侵害される可能性がある。 さらに、連邦裁判所によると、気まずい状況や不快な状況が記録され、大勢の聴衆に向けて公開されたり、機密施設のエリアで写真に人物や車両が写ったりすることがある。 このことから、誤った、または個人を傷つける結論が導き出される可能性は否定できない。 庭園や囲まれた庭にも同じことが当てはまる。
したがって、連邦裁判所によると、Google の行為は、個人データの処理は合法でなければならないという原則 (DSG 第 4 条第 1 項)に違反し、さらに、目的制限の原則(DSG第4条第3項)およびデータ取得の検出可能性(DSG第4条第4項)の違反も確認した。
(3)連邦裁判所の判決の要点: すべての顔を完全に隠す義務は正当化されない
これに続き、連邦裁判所は、利益を優先することによって人格侵害が正当化されるかどうかを審理した。 連邦裁判所は、Google が掲げる私的および公共の利益と、人格を侵害された人々の利益を対比させた。 自動的に十分にぼかされていない画像を手動でぼかすために金銭的な(追加の)努力をする必要がないという Google の利益に加えて、連邦裁判所は、連邦行政裁判所とは異なり、ストリートから利益を得ている第三者の利益も考慮に入れた。情報を入手しやすくして表示し、活用します。 連邦裁判所によると、ストリートビューの導入以来、人口のかなりの部分が公共スペースに関する情報を簡単に検索できるようになったのは明らかであり、したがって、たとえば不動産物件を探したり、未知の場所を探索したり、あるいは旅行を計画する際などに歓迎される正当なツールとなっている。
さらに連邦裁判所は、Googleが自動ぼかし技術を利用してストリートビュー内の人物や車両のナンバープレートのほとんどの画像をインターネット上で「匿名化」して表示することを許可することで、プライバシー侵害やその他の悪影響を防止していると指摘した。 さまざまな状況と Google が講じた措置により、連邦裁判所は最終的に、インターネット上で公開する前に自動匿名化に加えて、ストリートビューですべての顔と車両のナンバープレートを完全に隠すことを Google に要求するのは正当ではないという結論に達した。 利益のバランスをとる一環として、Google がストリートビューで画像を公開する際のさまざまな要件を満たしている場合、自動匿名化では約 1% の「小さい」エラー率が許容されることが判明した。
連邦裁判所によると、これらには次のものが含まれるとした。
①影響を受ける人々に異議を申し立てる機会を提供する Google の義務。 つまり、ストリートビューのボタンを介して報告するだけで、必要な改善を行うことができる。 しかし、連邦裁判所は、現在のかろうじて認識できるボタンでは不十分であると述べた。
②機密性の高い施設(特に学校、病院、老人ホーム、女性保護施設、裁判所、刑務所)の領域で顔とナンバープレートを匿名化するだけでなく、肌の色などの特徴をさらに個別化するさらなるぼかし処理を実行する義務、衣服、身体障害者の補助具などが含まれる。
③Google は、ストリートビュー カメラの高さが約 2.80 メートルであるため、一般の通行人が立ち入ることができない私有地(囲まれた中庭、庭園など)を映す画像のみを、影響を受ける者の同意を得て公開する義務を負う。 すでに公開されている対応する画像は、関係者が反対した場合には、さかのぼって 3 年以内に削除する必要がある。 新しい画像の有効化に関して、Google はカメラの高さを 2 メートルに制限する必要もある。
④ぼかし技術を継続的に改善する義務。
⑤Google は、どのコミュニティが記録され、どのコミュニティが新たに公開されるかについて、少なくとも 1 週間前に Google マップのホームページおよび地元のプレス リリースで情報を提供することを約束しる。 これは、広く普及しているローカルなメディア製品、特に報道機関において、公開された画像に対して少なくとも 3 年ごとに異議を唱えるためのオプションを発表するという Google の更なる義務にも関連している。
【当事務所の付則意見】
たとえGoogleがこの判決を勝利とみなしたとしても、機密性の高い施設を完全に匿名化し、プライベートエリアを示す画像を削除する義務は依然としてかなりの努力を必要とする可能性があることに注意すべきである。 連邦裁判所がこれらの要件を確認したという事実は、データ保護の観点から歓迎されるべきである。 たとえストリート ビュー ユーザーの利益が正当に考慮されていたとしても、これらの利益や Google の(経済的)利益によって、これらの分野における人格侵害がどの程度正当化されるのかを理解することは困難であったであろう。 連邦裁判所は最終的に、スイスでGoogleストリートビューがオフになるのを防ぐ方法を見つけた。 しかし、この判決は、現在のデータ保護法が技術開発の可能性にいかに対応するのに苦労しているかを明らかにする疑問を提起している。
これは、「約 1 秒」のエラー率を事前に考慮している。この 1%は、自動匿名化中に Google に付与される。 一見すると、この解決策は合理的な妥協策であるように見える。 しかし、法的に理解するのは難しい。 まず、しきい値を「約1000万円」に設定します。 1%」という数字はどこにも正当化されておらず、したがってやや恣意的であるように思える。 この価値は、遅かれ早かれ完全な匿名化を目指すべきであり、比例原則に基づいてサービスの即時停止は避けるべきであるという事実の観点からのみ説明できる。 また、Google がこのしきい値を超えた場合にどのような結果が生じるのか、また、誰がこのしきい値の遵守を評価または管理するのかという疑問も生じる。 たとえ連邦裁判所がEDÖBにぼかし技術の進歩に関する情報を得る権利を認めたとしても、実際にこの制御を行使できるかどうかは疑問である。
さらに、連邦裁判所の判決が、ストリートビュー上の人格を侵害する画像に対する民法上の評価(民法第28条4/22(40)参照)(注13-2)にどのような影響を与えるかは興味深いところである。 このような訴訟手続きにおいては、人格侵害があったかどうか、また、これが優先的な利益によって正当化され得るかどうか、具体的な状況に基づいて評価されなければならない。 連邦裁判所は、多くの場合人格侵害があり、影響を受けた者はそれに対して法的措置を講じることができると明確に述べている。 しかし、さまざまな利益のバランスをとるための連邦裁判所の考慮事項が、特定の個別の事件の民法評価においてどの程度考慮されるのかは、完全には明らかではない。 残念ながら、この点に関する連邦裁判所の声明は必要な明確さを提供していない。
判決の最後では、民事訴訟における人格侵害の違法性は、本件に関連するデータ保護の側面に従って評価することはできないと指摘されている。 また、これは二者間の民事訴訟ではなく、多数の人々を守ることを目的としており、最終的には公共の利益にかなうFDPICによって起こされた訴訟であるとも前述しました。 DSG 第 13 条第 1 項に従って利益を検討する際には、これを考慮する必要があります。
このような背景から、この判決で Google に認められた許容範囲のしきい値 1%は、民法上の評価においていかなる役割も果たせない。 影響を受ける人の人格侵害は、Google が公開する際に全体として関連するしきい値を超えたかどうかに関係なく、どのケースでも同じ重大度である。 さらに、Google がエラー率を十分に認識した上で画像を公開しているという事実は、多数の個人的な違反を容認しているように見える。 この意味で、民事訴訟においては、過失の存在、したがって損害が証明された場合には損害賠償請求の存在を裏付ける重要な議論が行われる可能性が高い。
2.スイス以外の国々における“watchdog”によるGoogleの規制強化や住民等による撮影等の直接的反対運動
(1)カナダのプライバシー委員のGoogleのデータ保存期間に関する説明内容に対する意見書や連邦議会関係常任委員会での審議
A.カナダのプライバシー委員
カナダの連邦個人情報保護法は、「1985年プライバシー法(Privacy Act :Act(R.S., 1985, c. P-21)」>、「2000年個人情報保護および電子文書法(Personal Information Protection and Electronic Documents Act:PIPEDA) (2000, c. 5) )」の2法からなる。州の保護法との関係でやや複雑である。 (筆者注14)
2009年8月21日、カナダのプライバシー保護監視機関である「カナダ・プライバシー委員事務局(the Office of the Privacy Commissioner)」は、Googleのカナダ政策担当弁護士(policy counsel) (筆者注15)に対し次のような内容の意見書を再度送っている。
「我々は8月5日にGoogleが提示した原画像の保存期間および原画像の破棄に関する提案内容につき、1年間の保管経過後に完全にぼかしを行い、その結果、再度原画像を見るという逆作業はありえないと理解した。
全体として我々はGoogleがカナダの民間部門の保護法の責務を果たしている限りにおいて業務目的から見て一定期間の原画像データの保存は合理的であると考える。
また、我々は原画像が適切かつ安全な手段により保護されるべきと述べてきた。連邦議会下院の「情報公開法改正、プライバシーおよび内閣等の政治倫理に関する常任委員会」(The House of Commons Standing Committee on Access to Information, Privacy and Ethics)」におけるGoogleの証言時の説明にあるとおり確実に保護するという発言を信頼する。
さらに我々は、再度データ主体の撮影や公開に関する情報提供や同意が必要な点を強調する。すなわち、Googleはデータ主体に対し、「いつ」、「なぜ」写真が撮影され、また当該写真の削除方法に関する情報の提供義務があると考える。また、我々はGoogleが撮影対象とする地域に関して住民が敏感になるよう働きかけることになろう。
最近の本委員への説明において、Googleはいくつかの点で原画像の保存期間の短縮について言及しているが、その点は歓迎するとともにその完全破棄を含め更なる改善を求めたい。」
B.連邦議会下院「情報公開法改正、プライバシーおよび内閣等の政治倫理に関する常任委員会」 (筆者注16)の研究報告に見るGoogle問題
”Study: Privacy Implications of Camera Surveillance (Google, Canpages (筆者注17) , etc.)”と報告されている。問題の政治的な機微性かどうかは不明であるが、Googleの証言内容も含めその内容は非公開である。 今後の議論の展開によっては公開されるであろうし、筆者自身同委員会サイトの情報を直接入手する手段はあるので機会を見て分析したい。
なお、同常任委員会の重要な研究テーマである「情報公開法(1980 Access to Information Act)」の改正問題やカナダの情報公開Watchdogである「情報公開委員事務局(the Office of the Information Commissioner of Canada)」(臨時委員Suzanne Legault氏)である(2018年3月以降の委員はカロリーン・メイナード(Caroline Maynard )氏(2018年3月1日から任期は7年である)。(筆者注17-2)
Caroline Maynard 氏
さらには「利益衝突倫理委員(the Conflict of Interest and Ethics Commissioner)」(筆者注18)の取組みはわが国としても重要な研究テーマであるが今回は省略する。
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(筆者注20)ドイツ連邦データ保護・自由化委員(BfDI)や州(land) データ保護・自由化委員の法的根拠も含む任務や権限についてわが国ではまとまった解説が少ないのでここで簡単に説明しておく(詳細な内容は最新の保護法やBfDIサイトで確認して欲しいが、BfDIのサイトの情報の正確さの順位は当然ながら独語、仏語、英語等である)。
また、以下のとおりBfDIの組織図を確認し、仮訳した。人員体制が小規模な割りには守備範囲が広いといえる。
ところで、ドイツ連邦情報保護法では“Bundesbeauftragten”という用語が出てくる。その意味するところは情報保護に関する「連邦政府・議会の全権委任(選挙)を得た連邦機関・準連邦機関に対する独立監査委員」ということである。海外で一般的に第三者機関として官民を問わず保護機能を持つとされる「コミッショナー」との相違の有無があるのか具体的権限や法的地位等を調べてみたが、特にドイツが特殊とは思えない。また、ドイツ保護委員事務局の保護法の公式英文訳も“Bundesbeauftragten”を「コミッショナー」としている。
一方、わが国で従来から使われているドイツのみ「データ保護・情報自由監察官」 (例1) 、(例2) と言う訳語がどこから来ているのか良く分からない。(Bundesdatenschutzgesetz :BDSG) 第22条第4項で連邦政府との関係では公法上の官吏と定められていることや連邦政府や内務省の監督下におかれることがその理由か否かは不明である)。
しかし、連邦議会の定数の過半数による投票で信認されるということつまり国民代表の委任に基づく法的地位と独立性をもつ点が重要である。
このBfDIの独立性・権限強化に関し、ドイツでは欧州司法裁判所判決等に伴い、連邦保護法の改正を行った。以下、”BfDIの解説文”等から一部抜粋し、仮訳する。
「2014年12月18日にドイツ連邦議会は、2015年3月3日付けの「ドイツ連邦法令公報(Bundesgesetzblatt)」に公布された法律案を可決した。この法律案は、「連邦情報のデータ保護と自由のための監査委員(Bundesbeauftragte für den Datenschutz und die Informationsfreiheit:BfDI)」は、完全に独立性を持ち、独立した最高位の連邦政府の監督機関に移行した。同時に既存の連邦政府による法的監督や連邦内務省監督局(Dienstaufsicht des Bundesministeriums des Innern)の監督は廃止された。この結果、BfDIは、2016年1月1日から「連邦議会」および「裁判所」のみの監督下に置かれる。
すなわち、1978年のBfDIの設立以来、その内務省による監督は、連邦政府の法的監督と同様に行われてきた。連邦政府の独立委員であるBfDIは、今後、連邦議会に責任を負うことになり、またその決定は、司法審査の対象となる。」
上記の理由からも、わが国の公式資料の訳語も見直すべき時期にあるといえる。
なお、連邦議会の定数の過半数による投票で信認されるということつまり国民代表の委任に基づく法的地位と独立性をもつ点が重要である。「コミッショナー(保護委員)」と呼ぶにつき、例えば2007年9月25~28日にカナダで開催された「第29回国際プライバシーおよび情報保護監督者会議」のメンバーリストの表示を見て欲しい。(わが国は従来から不参加)
Germany: Federal Data Protection Commissioner (Bundesbeauftragten für
den Datenschutz) International Conference of Privacy and Data Protection Authorities ACCREDITED AUTHORITIES(公認監督機関)(As of the 29th Conference held in Montreal, Canada—September 25-28, 2007)
また、連邦の準監督機関として州の保護委員も参加(バイエルン州の例:Bavaria: Privacy Commissioner (Bayerische Landesbeauftragte für den Datenschutz)と表示されている。第30回の同会議参加者は60カ国、570名である。なお、過去の会議の一覧はオーストラリアのサイトで確認できる。
ところで第30回会議はドイツのストラスブルグで開催されており、その会議の模様はビデオなどでも詳細に確認できる。( “opening speeches”を行っているのが連邦情報保護委員のPeter Schaar氏である。
(ちなみに2009年11月4~6日に第31回会議がスペインのマドリッドで開催されている。)
(筆者注12) 撮影用カメラつき撮影専用車は自動車とは限らない。パリや米国の場合、三輪自転車(tricycle)も使われている。
(筆者注13) EUの「保護指令29条専門調査委員会」は、1995年EU保護指令(95/46/EC)に基づき設置された機関で情報保護とプライバシーに関する独立諮問機関である。業務内容は同 指令第30条および「個人情報の処理と電子通信部門におけるプライバシーの保護に関する欧州議会及び理事会(2002年7月12日)指令(2002/58/EC)」第15条に規定する。
(注13-2)スイス連邦民法第28条を仮訳する。
第1項 人格を不法に侵害された人はいかなるものも、侵害に加担する者から身を守るために裁判所に訴えることができる。
第2項 侵害行為は、被害者の同意、優先される私的または公共の利益、または法律によって正当化されない場合は違法となる。
(筆者注14) 「カナダ・プライバシー委員事務局」の任務とその根拠となる2つの連邦プライバシー保護法(“Privacy Act”と“PIPEDA”)等について簡単に説明しておく。公式の体系的法解説サイトもある。
(1)「委員」のジェファニー・ストダータ(Jennifer Stoddart)氏を代表とする事務局はカナダ連邦議会(上院・下院)の直属機関であり、副委員はシャルタン・ベルニエ氏とエリザベス・デナム氏の2人である。
Jnnifer Stoddart氏(任期は2003年~2013年)
委員は“Privacy Act”上の監督責任があり、副委員は“PIPEDA”上の監督責任があるという2法に基づく分業体制がとられている。具体的な責任業務内容は次のとおりである。
①プライバシーに関する苦情の調査、監査の指揮および2つの連邦保護法に基づく裁判活動
②官民の機関・団体における個人情報の取扱いの慣行等の報告・公表
③プライバシー問題に関する調査の支援、受託や出版
④プライバシー問題に関する国民の認識や理解についての推進
なお、余談であるがカナダ政府が実施している電子政府の一環としての官報のデジタル・アーカイブは有益である。
「カナダ国立図書館・文書館(LAC)が、官報“Canada Gazette”のバックナンバー(1841~1997年)をデジタル化しています。1998年以後のものは、すでに政府のウェブサイトで公開されていますが、LACはそれ以前のものを対象にしています。2009年にデジタル化完了見込みとのことですが、デジタル化済みのものはすでに検索できるようになっています。
なおこのCanada Gazetteを検索できるウェブサイトは、Canada Gazetteに関する電子展示の一部として、2008年5月に構築されています。」(国立国会図書館カレントアウェアネス・ポータル2008年6月10日より一部抜粋)
この官報の電子化はいろいろな意味でカナダの法令検索の効率化に貢献している。
(2)カナダ「1985年プライバシー法(Privacy Act:Act (R.S., 1985, c. P-21)」
同法は約250の連邦政府部局の個人情報の収集・使用・公開を制限して国民のプライバシー権を保護するものであり、国民はこれら機関に対し個人情報への自身のアクセスや修正権を定める。なお、連邦議会図書館のサイトが同法の内容をわかりやすく解説している。
カナダ「2000年個人情報保護および電子文書法(Personal Information Protection and Electronic Documents Act:PIPEDA) (2000, c. 5) )」
同法は民間機関や団体の商業活動における個人情報の収集・使用・公開に関する基本ルールを定めたものである。プライバシー法と同様、国民はこれら機関に対する個人情報への自身のアクセス権や修正権が定められている。なお、PIPEDAは制定当初は政府の監督下にある銀行、航空会社、電気通信など民間企業の商業活動における個人情報の収集、使用および公開に適用されていたが、現在は、小売業、出版社、製造メーカー、その他地方で事業展開する規制される企業(ただし、その従業員の個人情報には非適用)にも適用される。
特に、同法は州の保護法の実質的内容が連邦“Act”と同様であるとして、連邦政府が適用除外としていないすべての商業活動を行う機関、団体等に適用される(現在、該当する州は、ブリティッシュコロンビア、アルバータ、ケベックの3州のみである)。
一方、カナダでは米国と同様、連邦や州法で分野別保護立法(Sector-Specific Legislation Dealing with Privacy)が存在する。例えば、連邦銀行法(Bank Act)は連邦規制監督機関が保有する個人の取引情報の使用や公開に関する規制条項を含む。また、ほとんどの州では消費者信用報告での個人情報の取扱いに関する法規を持つとともに医師等機微情報を扱う専門家の収集する情報の扱いに関する規定を有している。
(3) プライバシー委員事務局の外部諮問委員会(External Advisory Committee)
機能とメンバー構成について紹介する。無数の公共政策の展望に関するプライバシーや情報保護におけるバランスの取れた考え方を提案し、委員の活動に反映させることである。委員は電話、電子メールや私的会合等を通じ特定の疑問に答えるとともに制度全体のイニシアティブに関する問題については頻繁なる会合を重ねる。委員の顔ぶれを見るとオタワ大学情報工学部助教授、カナダ製造輸入会社のCEO(元連邦内閣閣僚)、ビクトリア大学政治科学部教授、ケベック大学州立行政学院(École nationale d'administration publique)教授、コラグループ(Cora Group)(官民の戦略開発企業グループ)代表、プライバシー問題や情報政策の専門家・コンサルタント(元ブリティシュコロンビア州の情報保護委員)等計16人である。
(筆者注15) わが国の民間企業ではなじみがないであろう“policy counsel”とはいかなる任務を行い資格等が必要か。たまたま、GoogleワシントンD,C地区担当の“privacy policy counsel”の公募要綱を見つけた。土地柄、連邦議会担当(ロビー活動)という特殊性があるのかもしれないが。
The role: Privacy Policy Counsel
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(筆者注16)カナダ連邦議会下院「情報公開法改正、プライバシーおよび内閣等の政治倫理に関する常任委員会 (Standing Committee on Access to Information ,Privacy and Ethics(ETHI)」の正確な役割・権能について理解するため、補足しておく。
まず、連邦議会との関係では2004年12月14日に恒久委員会として承認された。具体的な法案研究機能報告の項目は次のとおりであるが、連邦保護委員との協同作業関係が明らかである。
①1980年情報公開法改正問題
②2008年財政年度情報公開委員年次報告
③2008年財政年度プライバシー委員年次報告
④プライバシー法改正問題
⑤カメラ監視(Google、Canpages等)に関するプライバシー問題とのかかわり
⑥2008年度個人情報保護および電子文書法の適用に関するプライバシー委員報告
⑦大臣や国務大臣ガイドにおける政治倫理基準のレビュー、他
なお、筆者は同員会の模様を確認したところ連邦議会上院・下院の本会議や委員会の審議内容が好きな時間に自宅等で居ながらにして音声等で確認できる専用サイト“ParlVU”を見つけた。そこでは” ParlVU just keeps getting better! At a glance, you can now view and scroll to specific times within an event” と説明されている。主権者である国民が議会の活動が簡易にかつ正確に出来るものである。わが国でも国会審議の放映は一部行われているが「検索性」はまだまだである。時間のあるときにじっくり研究するつもりである。
(筆者注17) カナダ“canpages”はGoogleやYahooと同様の総合検索サイトである。そのHPを見ると「業種」「人物」「逆引き」「交通手段・地図」が利用できる。特定の企業を地図情報で確認してみたが、最大に拡大してもGooglのように写真はない。
(筆者注17-2)コミッショナーは議会に報告し、カナダの情報公開法である「情報アクセス法(Access to Information Act (R.S.C., 1985, c. A-1)」に基づく要請への連邦機関の処理方法や対応方法に関する苦情を調査する。コミッショナーは、連邦政府の情報アクセス慣行を対等な立場で監督し、各機関が同法に基づく義務を確実に履行できるよう各機関と協力する。
またコッミショナーは議会の代理人として、情報へのアクセスに関連する事項について国会議員に情報とアドバイスを提供する。コミッショナーは、カナダ情報コミッショナー事務局によってその仕事を支援される。
メイナード氏は任命される前、軍事苦情外部検討委員会の事務局長、作戦担当、法務顧問を長年務めた後、2017年1月から2018年3月まで軍事苦情外部検討委員会の暫定委員長兼最高経営責任者を務めていた。 キャリアの初期には、司法長官事務所および王立カナダ騎馬警察外部審査委員会の法律顧問を務めていた。 メイナード氏はカナダ歳入庁とも協力し、短期間ですが個人事業の開業も行った。
なお、メイナード女史はシャーブルック大学で法学士号を取得しており、1994 年からケベック弁護士会の会員。
(筆者注18) カナダ「利益衝突倫理コミッショナー(the Conflict of Interest and Ethics Commissioner)」の機能については、齋藤憲司「政治倫理をめぐる各国の動向―アメリカ、英国及びカナダの改革―」(国立国会図書館「レファレンス2008年9月号35頁以下)が詳しく解説している。
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