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情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦政府、関係州政府や連邦規制・監督機関等の対応(第1回-2・完)

2010-06-24 15:34:13 | 国際政策立案戦略

4.連邦エネルギー省の対応
 連邦エネルギー省のチュウ長官(Steven Chu)は「Deepwater Horizon」専用サイトの冒頭で、「透明性原則は公益面だけでなく科学的な対応過程の一部である。我々は独立性をもった科学者、技術者およびその他の専門家が、この事故情報につき見直しかつ自らの結論を下すべくあらゆる機会を確認すべきである。」と述べている。

 また、同省は「オバマ政権のBP社時原油流失に関する透明性をもった現下の取組機関として、現地原油流失の図解(schematics)へのオンラインアクセス、加圧試験(pressure test)、診断結果および誤作動している噴出防止装置(blowout preventer)やその他のデータを提供している」と説明している。

 同省のサイトでは、全面的にBP社の直接的提供データに基づき極めて専門的な図解解説を行っている。しかし、皮肉にもBP社は、司法省の言明を待つまでもなく環境保護面だけでなく労務管理なども含め適切な対応を取ってこなかった「地球を壊す穴掘り企業」の代表になった。この点につきエネルギー政策全体の監督庁であるエネルギー省長官や連邦内務省の下部機関で石油やガス施設の掘削認可・監督機関である「海洋エネルギー管理、規制・執行局(Bureau of Ocean Energy Management, Regulation,and Enforcement:BOE)(同局は6月17日即日施行で従来の「鉱物資源管理局(Minerals Management Service)」の責任者である内務省長官ケン・サラザール(Ken Salazar)氏は、6月16日のBP社との協議の場には出席していない(筆者にはその辺の背景までは推測できない)。これらの対応のアンバランスさはオバマ政権の「エネルギー政策の脆弱性のあらわれ(energy vulnerability )」といえるかもしれない。

5.連邦環境保護庁の対応
 連邦環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency:EPA)は「メキシコ湾原油流失に対するEPA対応」サイトを立ち上げている。同サイトでは、まず「BP社による分散化剤(dispesants)の安全性、環境面から見た解説」に重点が置かれている。
 ここでは6月14日時点のサイトの内容に基づきその要旨のみ紹介するが、この問題に関し専門家でない地元住民等にも理解できるよう電話会議の内容も含めリリース内容が全面的に公開されている。これらの公開の確保が「風評防止」に役立つことは言うまでもない。

(1)原油流失に伴う分散剤の使用許可と環境、水質など安全性検査結果(記者会見、声明発表、電話会議録写し)
 今回の原油流失危機が発生した際に、沿岸警備隊とEPAはBP社に対し流失の影響を削減させるため水面上の現有原油への「許可された分散剤(2-Butoxyethanol および2-Ethylhexyl Alcohol)」の使用許可を与えた。
 この使用許可は、環境保護および影響を受ける地域住民の健康を保証するための一定の条件を含むものである。現在BP社は水面における分散剤の使用を継続することが認められている。近隣住民への情報提供とその健康保護を保証するため、EPAは継続的に航空機による大気のモニタリング、常設および移動式飛行場を使い湾岸地区の大気質(air quality)のモニタリングを行っている。

 ・EPAおよびUSCGはBP社に対し、Deepwater Horizonの原油流失源における水中での分散剤の使用を許可した。予備検査結果では水面下の分散剤の使用により表面に達する原油量の削減効果があることを示した。
 BP社が水面下での分散剤の散布を行っている間、連邦政府はその効果、環境・水、大気質ならびに厳密なモニタリング・プログラムに基づく人間の健康への影響に関する定期的な分析の実行を要求する。このためEPA指示命令は、BP社が環境保護および国民の健康を保証するために厳格に遵守すべき監視計画を含んでおり、EPAは分散剤の使用がもし環境への効果以上にマイナスの影響を与えると判断するときは、ただちにその使用を停止させる権限を留保する。

・具体的に分散剤の使用による環境への影響へのモニタリングの各カテゴリー別結果概要
①空気データ:2010年6月12日までの間にEPAが行ったモニタリング結果においてオゾンおよび微粒子物質(particulates)の大気中の濃度は、この時期の通常の海岸線地区の数値としては正常値内にある。EPAは低レベルの海岸線における石油製品が関連してにおいが引き起こす汚染物質につき観測した。これらの化学物質は頭痛、目や鼻やのどの炎症、吐き気を引き起こすものであり、同地域は通常低レベルであることから住民は短期的に臭いのため健康上の問題を引き起こすことがありうる。

②沈殿物(sediment)データ:6月1日までに海岸線で収集された沈殿物サンプルでは通常、石油中に含まれる化学物質の上昇値は見られなかった。

③石油廃棄物(waste)管理データ:EPAはメキシコ湾に沿って石油残骸物(oil debris)、原油の塊(tar balls)、ムース・オイル(mousse oil)(重質油が時間の経過により固めのグリース化したもの)およびその他の石油廃棄物(other petroleum waste products)の収集のための専門家チームを配置した。その予備検査では通常、石油製品にみられる化学成分のみが検出され典型的な健康保護を取るべきというものであった。
 なお、EPAの沿岸水質検査(Coastal Water Sampling)として5月22日~23日にかけて ルイジアナ州の海岸10箇所で採取した権検査の結果では、BPが使用許可された「分散剤(2-Butoxyethanol および2-Ethylhexyl Alcohol)」は検出されなかったと報告されている。

6.連邦司法省の取組み
 これまで述べた州や連邦機関に比べると腰が引けているというか連邦議会等政治的問題との調整について意識過剰なところが鮮明にうかがえる。とはいえ、6月1日、ホルダー司法長官は記者会見において現地視察結果を踏まえ司法省の取り組み方針につき以下のとおり言明している。
①本日の朝に我々が見たものは何マイルにもわたる原油であった。我々が見た原油は海岸線に沿ってすでに植物や動物の生態系に悪影響を与え、かつこの地域の人々の日々の生活に多くの影響を与えている。今回の災害は悲劇(tragedy)そのものである。
 私自身、この事故で忘れられない点が1つある。我々の環境やガルフコーストのコミュニティが被った莫大な費用に加え、4月20日の爆発と火災により11名のrig作業員の貴重な命が失われたことである。

 我々は爆発とその後の原油の流失の原因を調査することで、これらの貴重な命の価値を決して忘れないことをアメリカ国民に確約する。

②今回の事故対応の早期の段階において、我々はニューオリンズでの活動すなわちガルフコーストの近くで働いたり住んでいる人だけでなく、アメリカの納税者や同地域の環境や野生生物の保護するため、連邦司法省の環境・天然資源部長(Environment and Natural Resources Division)であるイグナシア・モレノ(Ignacia Moreno)市民権部長(Civil Division)であるトニー・ウェスト(Tony West)を含む連邦検事グループを派遣した。彼らはそのとき以降、事実の収集と政府の法的対処策を調整すべく誠実に働いている。

③我々は納税者の税金を1セントたりとも無駄なく取り返し、環境と野生生物が被った損害を取り戻すことを確約する。すなわち、我々は責任を持つ者が大混乱(mess)を整理し、悲劇で失われまた傷ついた天然資源を回復したり置き換えるべくことを確実にするつもりである。そして法律の範囲内の最大範囲でいかなる違法行為を起訴に持ち込むつもりである。

④それらの適用に関し、司法省の検事等が取組んでいる具体的な法律は次の通りである。(筆者注5)
「水質汚濁防止法(Clean Water Act:CWA)」(民事罰および刑事罰を定める)
「1990年油濁法( Oil Pollution Act of 1990:OPA)」
「1918年渡り鳥保護条約法( Migratory Bird Treaty Act)」
「1973年絶滅保護種法(Endangered Species Act)」(同法は絶滅の危機に瀕した種の動物につき怪我をさせたり死なせた場合には刑事罰を科す)
その他伝統的な犯罪処罰法


(筆者注5)読者は気づかれると思うが、多くのセグメント立法を有する米国で環境規制法はこれだけと思うであろう。今回適用の中心となっている「1990年油濁法( Oil Pollution Act of 1990:OPA)」が1989年「エクソン・バルディス号」の流失事故を背景に成立したことから考え、その規制強化に向けた改正法案は連邦議会下院や上院ですでに出されている。その概要を述べておく。
〔上院〕S.3305 「Big Oil Bailout Prevention Liability Act of 2010」(2010年5月4日上程:「1990年油濁法につき沖合原油掘削施設(offshore facility)に関し責任を持つ企業の責任強化に関する改正法案」(提出議員:民主党Bill Nelson(Fla.),Frank Lautenberg(N.J.),Robert Menendez(N.J.)他6名):共同提案議員は23名。
公式法案要旨は、「2010年4月15日施行の本法にもとづき、深海港(deepwater port: 沖合のLNG受入基地については、LNG基地建設促進を目的として2002年に改正された深海港法(Deepwater Port Act)に基づき、米国運輸省(DOT)(沿岸警備隊、海事局)の規制下に位置付けられることになった(沖合3マイル以遠のプロジェクト)を除く航行可能水域や海岸線隣接地域での原油掘削施設からの石油排出につき責任を負うものは、撤去にかかる総費用に加え100億ドル(現行7,500万ドル)の賠償金を科すというもの。 」

〔下院〕H.R.5214「Big Oil Bailout Prevention Act of 2010」(2010年5月5日上程:「1990年油濁法につき沖合原油掘削施設(offshore facility)に関し責任を持つ企業の責任強化に関する改正法案」(提出議員:共和党Holt Rush他72名が提案)。
公式法案要旨はS.3305の内容のほかに、(2)として州や地方政府が原油流失被害の準備および被害の緩和措置のため、大統領に「重油流失責任信託基金(Oil Spill Liability Fund)」からの事前支払を行う命令を発布できる規定を盛り込むというものである。
なお、同様の内容の法案が上院ではS.3472 、下院ではH.R.5355 が上程されている。

 米国は議員立法が最優先される国であるが、行政機関も適用法の限界には敏感で、下院や上院の関係委員会の委員長との二人三脚立法はごく一般的である。司法省等政府
関係者の発言等から見て当然現行法の適用の限界は承知しており、オバマ政権は適切な立法措置のために議会幹部との水面下の調整を行っていると見るのが常識であろう。

 

[参照URL]

*筆者追加注2021.2.25

2010年6月現在の本ブログ執筆時の参照すべきBP社、連邦政府のデープホライズン対策専門サイト、連邦環境保護庁、地元州の環境保護機関のサイトは一部リンクが不可となってる。これだけの原油流失事故であるのにかかわらず、問題意識の低さか?

 しかし、筆者なりに正確な情報入手にタレンジした結果、連邦エネルギー省科学技術情報局(OSTI.gov)の報告書にたどり着いた。表題は

「Sandia National Laboratory Support of the BP Deep p water Horizon Oil Spill Accident:Kenneth Gwinn Solid Mechanics Department, Engineering Sciences Center:Sandia National Laboratories Sandia National Laboratories Albuquerque, NM:January 25, 2011」(全14頁)

その前文でこのプレゼンテーションの情報は、具体的には、 2010年9月8日、BP社のディープウォーターホライズンの事故調査報告書(http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813)にBPの数値等に依っているとある。

・BP社のディープウォーター・ホライズン対応専門サイト:
http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813
・連邦政府のディープウォーター・ホライズン対策専門サイト“Water Horizon Response”:
http://www.deepwaterhorizonresponse.com/go/doc/2931/578227
・フロリダ州環境保護庁の被害状況専門サイト:http://www.dep.state.fl.us/deepwaterhorizon/
・連邦エネルギー省長官のサイト:
http://www.energy.gov/organization/dr_steven_chu.htm
・連邦環境保護庁(EPA)の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」の専門サイト:

・EPAのCase and Settlement InformationとAdditional Information on the Deepwater Horizon Oil Spillの解説サイト

https://www.epa.gov/enforcement/deepwater-horizon-bp-gulf-mexico-oil-spill
・6月1日の連邦司法省ホルダー長官の記者会見:http://www.justice.gov/ag/speeches/2010/ag-speech-100601.html
・6月16日のホワイトハウスのBP社会長他との損失補償合意内容声明:
http://www.whitehouse.gov/blog/2010/06/16/important-step-towards-making-people-gulf-coast-whole-again
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Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

 

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米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦政府、関係州政府や連邦規制・監督機関等の対応(第1回-1)

2010-06-24 15:33:31 | 国際政策立案戦略

 
 4月17日付けの本ブログで、3月30日にフランスのパリ控訴院(Cour d’appel de Paris)は1999年12月12日に発生した老朽タンカー「エリカ号(Erika)」の沈没とそれに伴うフランス史上最悪というブルターニュ海岸の重油汚染問題につき、2008年1月16日に出された第一審のパリ大審裁判所(Tribunal de grande instance)刑事法廷の判決を支持し、エリカの依頼主である「トタル(Total.S.A.)および航行性・安全性認定につき十分な検査義務懈怠につきイタリア国際船級認定協会会員会社リナ(RINA)に各37万5,000ユーロ(約4,613万円)の過失・注意義務違反による「罰金刑」を言い渡した旨の情報を紹介した。

 皮肉にも、その約1か月半後に米国いや世界史上最大の原油流失事故が発生した。

 米国ルイジアナ州沖のメキシコ湾(Gulf Coast)で国際石油資本である英国BP社(旧社名: British Petrolerum )が操業する(掘削作業自体はトランスオーシャン(Transocean)が受託)石油掘削基地「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)」 の半潜水型海洋掘削装置(rig)
(筆者注1)で4月20日夜に大爆発が発生、作業員126名中11人が行方不明、17名が負傷したと報じられた。(筆者注2)

 正確な原油流出量が把握できないまま、4月30日までにメキシコ湾に隣接する4州(ルイジアナ、ミシシッピー、アラバマ、フロリダ)が非常事態宣言を公布している。なお、BPは当初1日あたり流失量が1,000バレル(16万リットル)と公表したが、4月28日国土安全保障省合衆国沿岸警備隊(USCG)は1日5,000バレル(80万リットル)と公式に公表した。しかし、6月13日現在のフロリダ州環境保護省によると1日当り12,000~40,000バレル(192万リットル~640万リットル)とされ、その後6月17日時点では連邦政府の公表(6月15日)とおり35,000~60,000バレル(560万リットル~960万キロリットル)に修正されている。

 今回のブログは関係州、連邦政府機関である連邦環境保護庁、エネルギー省、司法省、環境保護団体さらに「1990年油濁法につき沖合原油掘削施設(offshore facility)に関し責任を持つ企業の責任強化に関する改正法案」等の対応を中心に述べる。

 単に米英等のメディアが報じている政治面や環境保護面以上に海洋国であるわが国にとって重要な海洋の危機管理対策の任に当たる連邦商務省・海洋大気保全庁(National Ocean and Atmospheric Administaration: NOAA)の下部機関である海洋局(National Ocean Service:NOS)に属している危険物流出対策室( Office of Response and Restoration:OR&R)やUSCGといった関係機関の対応さらに食品医薬品局の対応等については次回以降で解説する予定である。さらに米国メディアでもほとんど報じていない連邦内務省の下部機関で石油やガス施設の掘削認可・監督機関である「海洋エネルギー管理、規制・執行局(Bureau of Ocean Energy Management, Regulation,and Enforcement:BOE)」(旧MMS)の深海海洋掘削の監督権限の強化を巡るための人事や改組・改革についても言及する。

 また、現下の最大の課題は、BP社等当該企業の公開性遵守に基づく正確な情報公開義務は当然ながら、USCGによる被害の拡大阻止、連邦環境保護庁(EPA)等環境保護機関、州や司法機関等の協力体制の下で米国がこのオバマ政権の基本を揺るがすような「オバマのカトリーナ」にならないための迅速かつ緻密な対応が望まれよう。このような状況下でオバマ政権は
(筆者注3) 、BP社のカール・ヘンリック・スバンベリ(Carl-Henric Svanberg((スェーデン人))会長等幹部は16日、メキシコ湾の原油流出事故に関してホワイトハウスで会談し、BPが被害者への賠償として預託口座に4年間で合計200億ドル(約1兆8,000億円)を拠出することで合意したと報じた。

Carl-Henric Svanberg 氏(現volvo会長)


 この問題に限られたことではないが、最近時のわが国のメディアもやっと取り上げ始めたが人類史上最大規模の海洋汚染危機に対し、あまりにも米国連邦政府や英国系のメジャーの経営戦略の無責任さは明らかである
(筆者注4)

 なお、BP社の原油流失事故の関する英国「エネルギー・気候変動省(DECC)」のクリス・ハフニー(Secretary of State for Energy and Climate Change)閣内大臣のリリース:ディープウォーター・ホライゾンの大惨事を受けて北海の石油リグ(rig)の検査強化策等や「2004年環境破壊賠償責任に関するEU指令(Environmental Liability Directive :ELD)」から見た問題や欧州議会や欧州委員会の動きについても別途まとめたい。

  今回は、3回に分けて掲載する


1.BP社の原油流失への対応を巡る最新情報
 BP社の原油流失事故の対応を巡る最新情報サイトを見ておく。後述するエネルギー省の報道もそうであるが、専門家向けのみでなく国民に正確な事故原因や世界中で行われている海底油田やLPGガス掘削作業に伴うリスクとその安全の対策が世界中の市民が理解できるレベルが求められているといえる。

2.大統領行政命令第13543号に基づく「BP社 ディープウォーター・ホライズン原油流出および沖合い掘削に関する全国委員会(National Commissioner on the BP Deepwater Oil Spill and Offshore Drilling )」の設置と今後の予定
(1)設置目的
 同委員会は、ディープウォーター・ホライズン爆発事故の根本原因に関する事実と状況を検証し、また将来における米国沿岸での原油掘削への影響を明らかにすることを目的とする。委員会の大統領への最終報告期限は2011年1月12日である。
 この目的に沿い連邦法、連邦規則や企業の実務慣行の見直しに関する勧告等を行う。
委員会に対する検討要請項目は以下の項目である。
①マコンダ原油噴出口の爆発(Maconda Well Explosion)と掘削作業の安全性
②米国の国内エネルギー政策における沖合い原油掘削の役割
③行き会い掘削事業の監督・規制の在り方
④原油流出対策
⑤流出の影響と調査
⑥復旧に向けた取組みと選択肢

(2)委員
 共同委員長は連邦議会元上院議員ダニエル・ロバート・グラハム(Daniel Robert Graham:一般的には、“Senator Bob Graham”)、元連邦環境保護庁長官ウィリアム・k・ライリー(William K.Reilly) である。

Daniel Robert Graham氏

William K. Reilly 氏

 その他の委員は次のとおりである。なお、これら委員の略歴のホワイトハウスの公式発表は6月14日であった。
・環境保護NPO団体である「天然資源保全協会(Natural Resources Defense Council :NRDC)代表フランシス・G・ベイネック(frances G.Beinecke)
・メリーランド大学環境科学センター所長・教授ドナルド・ボッシュ(Donald Boesch)
・全米地理学協会(National Geographic Society:米国ワシントンD.C.に本部を置く、世界最大の非営利の科学・教育団体。日本版もある)執行副会長のテリー・ガルシア(Terry Garcia)
・ハーバード大学のエンジニアリングおよび応用科学(SEAS)学部長チェリー・ミューレイ(Cherry A. Murray)
・アラスカ・アンカレッジ大学学長のフランシス・ウルマー(Frances Ulmer)

3.関係州や連邦司法省の対応
(1)関係5州の対応
各州の専用サイトによる対応状況は次のとおりである。
前述したとおり、ルイジアナ州等4州は非常事態宣言の発出とともに州民への情報開示を目的とするウェブサイトを構築している。概観した限り、その内容については差異があるものの連邦関係機関との情報連携を極めて重要視していることはいうまでもない。
また、テキサス州リック・ペリー(Rick Perry)知事サイトを見ると「非常事態宣言」は行っていないが、原油流失に係るあらゆる可能性に対応するための連邦や州の関係機関と会議・調整を行い、 毎日ホワイトハウス、USCG、国土安全保障省、NOAAおよびメキシコ湾に面した州知事と電話会議を行っていると述べている。

ルイジアナ州「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト(連邦政府機関であるUSCG、USCG統合部隊および連邦環境保護庁の専門サイトとリンク)

ミシシッピー州「ミシシッピー州環境保全省「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト」
同州環境保全省の「海岸線の水泳安全監視情報」

アラバマ州「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト
同州環境保護省(ADEM)の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト

フロリダ州:環境保護省の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」サイト
同州保健省の地域別保健影響情報等の専門サイト
同州の例で「非常事態宣言」について補足しておく。2010年4月30日に州知事が「群別非常事態宣言(州知事の行政命令(Executive order Number 10-99))を公布、また、2010年5月3日に「追加群別非常事態宣言(行政命令(Executive order Number 10-100))を公布した。

⑤テキサス州:テキサス州総合土地管理局(general land office:GLO)の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)の原油流失阻止および対応プログラム(Oil Spill Prevention and Response Program)」サイト:GLOは州法“The Oil Spill Prevention and Response Act of 1991 (OSPRA)”に基づく州の監督責任機関である。

(2) ディープウォーター・ホライズン問題に関する前記5州以外の州の対応例
カリフォルニア州知事は、5月3日、州の財政再建の一環として同州サンタバーバラ(Santa Barbara)沖で計画されていた原油開発拡大計画の中止を決めたと報じられている。

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(筆者注1) 石油リグ(rig)は石油プラットフォームとも呼び、海底から石油や天然ガスを掘削・生産するために必要な労働者や機械類を収容する、海上に設置される大きな構造物をいう。(三菱東京UFJ銀行のワシントンDC・レポートから引用)

(筆者注2) わが国で、独自に今回のメキシコ湾原油流失事故に関する詳細な記事は皆無といってよい。その最大の理由は情報源が大手メディアに限られていることである。その中で損保ジャパン・リスクマネジメントの解説「メキシコ湾沖 石油掘削基地 爆発炎上・原油流失事故」は唯一、各種情報を収集し冷静に情報を整理している。また、オバマ政権や議会のエネルギー政策の見直し課題については5月14日付の三菱東京UFJ銀行のワシントンDC・レポート「 Obama政権にとってタイミングの悪いメキシコ湾石油流出事故」がポイントを簡潔にまとめている。これら以外にまともな情報がないこと自体が、わが国の海外情報の偏りの証左といえる。 

(筆者注3)ちなみに、カール・ヘンリック・スバンベリ(Carl-Henric Svanbergの年間総報酬はいくらくらいと思うか。Bloomberg Businessweek で見れる。2008年度で見ると2億4,500万円(20,423,391スェーデン・クローネ)である。米国のウォールストリートの金融経営者の場合と比べていかがか。

(筆者注4) これらの点を明確に指摘したユニークなブログを見つけた。5月6日から6月5日までの間に計8回連載している。図解や動画を駆使して前後して読めるので是非参考にされたい。ただし、情報源が限られており、内容面の信頼性は保証しかねる。
連載第1回目( 5月6日投稿)のURL: http://nappi10.spaces.live.com/blog/cns!39E8451829AE7F4!21549.entry
連載8回目(6月5日投稿)のURL: http://nappi10.spaces.live.com/blog/cns!39E8451829AE7F4!22220.entry

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[参照URL]

*筆者追加注2021.2.25

2010年6月現在の本ブログ執筆時の参照すべきBP社、連邦政府のデープホライズン対策専門サイト、連邦環境保護庁、地元州の環境保護機関のサイトは一部リンクが不可となってる。これだけの原油流失事故であるのにかかわらず、問題意識の低さか?

 しかし、筆者なりに正確な情報入手にタレンジした結果、連邦エネルギー省科学技術情報局(OSTI.gov)の報告書にたどり着いた。表題は

「Sandia National Laboratory Support of the BP Deep p water Horizon Oil Spill Accident:Kenneth Gwinn Solid Mechanics Department, Engineering Sciences Center:Sandia National Laboratories Sandia National Laboratories Albuquerque, NM:January 25, 2011」(全14頁)

その前文でこのプレゼンテーションの情報は、具体的には、 2010年9月8日、BP社のディープウォーターホライズンの事故調査報告書(http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813)にBPの数値等に依っているとある。

・BP社のディープウォーター・ホライズン対応専門サイト:
http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813
・連邦政府のディープウォーター・ホライズン対策専門サイト“Water Horizon Response”:
http://www.deepwaterhorizonresponse.com/go/doc/2931/578227
・フロリダ州環境保護庁の被害状況専門サイト:http://www.dep.state.fl.us/deepwaterhorizon/
・連邦エネルギー省長官のサイト:
http://www.energy.gov/organization/dr_steven_chu.htm
・連邦環境保護庁(EPA)の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」の専門サイト:

・EPAのCase and Settlement InformationとAdditional Information on the Deepwater Horizon Oil Spillの解説サイト

https://www.epa.gov/enforcement/deepwater-horizon-bp-gulf-mexico-oil-spill
・6月1日の連邦司法省ホルダー長官の記者会見:http://www.justice.gov/ag/speeches/2010/ag-speech-100601.html
・6月16日のホワイトハウスのBP社会長他との損失補償合意内容声明:
http://www.whitehouse.gov/blog/2010/06/16/important-step-towards-making-people-gulf-coast-whole-again
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Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

 

 

 

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米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦政府、関係州政府や連邦規制・監督機関等の対応(第1回-3完)

2010-06-20 15:33:44 | 国際政策立案戦略

7.環境保護団体の取組み事例紹介
 米国に本拠を持つ環境保護NPO団体“Food & Water Watch”の代表(executive director)であるウエノア・ハウター氏(Wenonah Hauter)は6月8日、英国エネルギー・気候変動省(DECC)のクリス・ハフニー(Secretary of State for Energy and Climate Change)閣内大臣がディープウォーター・ホライゾンの大惨事を受けてオイル検査者を増員した件を取り上げている。

Wenonah Hauter 氏

8.オバマ政権とカール・ヘンリック・スバンベリBP会長等との合意内容
 6月16日のホワイトハウスの声明 (筆者注6)によると、BP社は今年を含めた4年間で計200億ドル(年50億ドル)を政府やBP社がコントロールするのではなく補償専用口座(エスクロー勘定(escrow account):この用語は「プロジェクト・ファイナンスの返済原資となるキャッシュフローをプロジェクトの破綻等の非常事態に備え、プロジェクト事業体から隔離しておくための口座。返済の確実性を高める。」という意味である)に拠出する。同口座は原油流出で被害を受けた個人や企業への補償を目的とし、弁護士のケネス・ファインバーグ(Kenneth Feinberg)氏の監視下に置かれる。

 同氏は、2001年の「9.11米同時多発テロ」の犠牲者向け補償基金を管理して名をはせ、その後、不良資産救済プログラム(TARP)の適用を受けている企業の役員や高報酬従業員の報酬規制に関する報酬基準およびコーポレート・ガバナンスの暫定最終規則の制定および連邦財務省のTARP担当特別報酬監督官(Special Master)として任命され、さらに今回BP補償基金の管財人となったのである。(筆者注7)

 ホワイトハウスの声明では、次のような点を強調している。
①200億ドルの補償金額は上限キャップではない。メキシコ湾岸で生活や仕事を行う人々や企業等に対しBP社は彼らの請求を遵守することを公に明言した。今回のオバマ政権がBPとの間で合意した内容は金銭面および法的な枠組みの確立することにある。
②200億ドルの補償基金は原油流失のより住民自身や漁業等事業において経済的損失が生じたときは、この200億ドルの一部に対する請求訴訟を起こす原告適格が認められる。この基金は、裁判所における現存の個人的請求または州による裁判請求を無効とするものではない。
③BP社は原因となる環境破壊に関する責任を引続き持つし、政府はその活動を支援することを継続するつもりである。

 また、補償請求手続の独立・中立性を保証するための「請求手続機関」および「エスクロー勘定の内容」について次のとおり明記する。
〔独立性のある請求手続機関〕
①手続の独立性を保証するため独立請求監督官(independent claims administrator)としてケネス・ファインバーグ(Kenneth Feinberg)氏を任命する
②同機関は、被害回復請求に関する標準を作成する予定である。
③3名の裁判官からなる合議体は、監督官の決定に対する上告の際に利用可能となる。
④同機関は、原油流失により損害を被った個人や事業者すなわち地方、州、部族および連邦といった各政府による請求のために設計される。
⑤同機関の決定に不同意な請求権者は、引き続き法律の下で裁判所に訴えたり、「重油流失責任信託基金(Oil Spill Liability Fund)」 (筆者注8)への請求が認められる。
⑥独立請求監督官による現行法の下での決定は、BP社を法的に拘束する。
⑦同機関が下したあらゆる請求内容につき、支払のためエスクロー勘定に求めることができる。
〔エスクロー勘定〕
BP社は2010年の50億ドルを含む4年間に合計200億ドル提供する(contribute)することに合意した。BP社はこの責任を果たすため米国にある同社資産200億ドルを預託することとする。
・BP社は責任ある当事者として被害の撤去や損害の回復にかかる支払につき確約した。そのことは、責任を回避するため1990年油濁法(OPA)に基づく補償支払額のキャップを適用することを主張しないことを意味する。
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(筆者注6) 6月16日のオバマ政権幹部とBP社幹部の会合の出席者名は次の通りである。
政府側(6名):President Barack Obama, Vice President Joe Biden ,Senior Advisor(大統領上級顧問)Valerie Jarrett,Labor Secretary(労働省長官)Hilda Solis,司法長官Eric Holder,国土安全保障省長官Janet Napolitano
BP社側(4名):会長Carl-Henric Svanberg,CEOのTony Hayward,法律顧問Rupert Bondy,sen専務取締役Robert Dudley

(筆者注7) 2009年9月17日付けの本ブログで米国やEU加盟国における金融機関の役職員の高額報酬問題につき解説した。米国の金融危機を発端とする緊急経営支援策の裏腹の問題としての高額報酬規制の取組みにつき述べたが、ここでその後の財務省や特別監督官の具体的な報酬規制の主な決定内容について時間をおって補足説明しておく。

・2009年6月10日、連邦財務省が” Interim Final Rule on TARP Standards for Compensation and Corporate Governance”を公布。すなわち、不良資産救済プログラム(TARP)の適用を受けている企業の役員や高報酬従業員の報酬規制に関する報酬基準およびコーポレートガバナンスの暫定最終規則の制定および連邦財務省の不良資産救済プログラム(TARP)特別報酬監督官(Special Master)としてケネス・ファインバーグ(Kenneth Feinberg)氏を任命した。

・2009年10月22日、ケネス・ファインバーグが高額の公的資金の注入を受けた米国企業(AIG, Citigroup, Bank of America, Chrysler, GM, GMAC and Chrysler Financial)の役員等上位高所得者計175人(トップから25名×7社)の現金報酬(cash compensation)につき90%以上削減、またボーナスを含む総報酬を平均50%以上削減および現金報酬の上限を50万ドル(約4,500万円)とする第1次強制決定(first rulings)のリリースした。

・2009年12月11日、ケネス・ファインバーグはAIG, Citigroup, GM, and GMACの4社の上位26位~100位従業員に対する第2次強制報酬額決定(second rulings)をリリースした。

・2010年3月24日、 ケネス・ファインバーグはAIG, Chrysler, Chrysler Financial, GM, and GMAC.の5社計119人(Bank of America および Citigroupは特別支援金を全額返済済のため適用除外)に対する2010年度の現金報酬は2009年度比平均33%削減、総報酬額は15%近くまで削減すること、および「2009 年アメリカ再生・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act(H.R.1)」に基づき2009年2月17日以前に支援を受けた企業411社に対しトップ25位の報酬額の報告を特別監督官に30日以内に提出のうえ納税者に適切な返済を促すよう交渉する旨リリースした。

(筆者注8) 1990年油濁法( Oil Pollution Act of 1990:OPA) は、1989年3月24日にアラスカ州プリンスウィリアムサウンドで「エクソン・バルディス号」が座礁し、約37,000トンの原油が流出し、船主は流出油の清掃費用(expeditious oil removal ) 、汚染による被害者への損害賠償及び罰金等で多大な支払いを強いられた。一方、アメリカ合衆国政府は当時の連邦法と州法を見直し、油濁に関する責任及び補償に関する包括的な法体系の確立・整備を実施し、1990年8月18日に新連邦法として制定された。OPA の主な内容は、①油濁損害に関する責任や賠償について、各州独自の立法権の優先(州法優先)。②連邦政府以外の州や第三者に責任当事者(船主)への損害賠償請求権を与えており、船主は厳格責任(無過失責任)を負う。③責任限度額として、3,000トン以下のタンカー:トン当り$1,200、最低$2,000,000、3,000トン超のタンカー:トン当り$1,200、最低$10,000,000、その他の船舶:トン当り$600、最低$5000,000、但し、重過失、故意、連邦の安全基準に対する違反がある場合は責任の制限はない。④汚染除去費用及び損害補償のための基金制度(OSLTF:補償限度額10億ドル)を設置、その後「2005年エネルギー政策法(The Energy Policy Act of 2005)」に基づき基金限度額は27億ドルに引上げられ、また「2006年デラウェア河川保護法( Delaware River Protection Act of 2006)」 および「2006年海岸線保護および沿岸警備法第4編( Coast Guard and Maritime Transportation Act of 2006)」に基づき責任限度額が引上げられた。基金の財源は国内産原油と輸入石油製品1バレル(約159リットル)当り5セントの税金からであり、基金制度は、原因者が不明、支払能力がない、責任限度額の超過分、支払拒否の場合、適用される。⑤すべての油輸送船及び300トン超のその他の船舶は、米国の国土安全保障省合衆国沿岸警備隊(USCG)が発行する賠償資力証明書(Certificate of Financial Responsibility:COFR)を取得して船内に備え置かなければならない。⑥米国水域内で油の輸送を行う船舶の所有者及び運航者は、事故対応として船舶油濁事故対応計画書(Vessel Response Plan:VRP)を作成し、コーストガードの承認を受け船内に備え置かなければならない。なお、油濁事故による損害には、私的財産だけではなく、自然資源の損害(natural resource damages:NRDs)も含まれることが明記されている。(谷川久監修、東京海上火災保険株式会社船舶損害部編:『アメリカ合衆国油濁法の解説』、 U.S. Coast Guard’s National Pollution Funds Center :NPFC): http://www.uscg.mil/npfc/About_NPFC/opa.asp)に基づき筆者が各法律原典とのリンクなど補筆した)

[参照URL]
・BP社のディープウォーター・ホライズン対応専門サイト:
http://www.bp.com/extendedsectiongenericarticle.do?categoryId=40&contentId=7061813
・連邦政府のディープウォーター・ホライズン対策専門サイト“Water Horizon Response”:
http://www.deepwaterhorizonresponse.com/go/doc/2931/578227
・フロリダ州環境保護庁の被害状況専門サイト:http://www.dep.state.fl.us/deepwaterhorizon/
・連邦エネルギー省長官のサイト:
http://www.energy.gov/organization/dr_steven_chu.htm
・連邦環境保護庁の「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)事故対応」の専門サイト:
http://www.epa.gov/bpspill/index.html
・6月1日の連邦司法省ホルダー長官の記者会見:http://www.justice.gov/ag/speeches/2010/ag-speech-100601.html
・6月16日のホワイトハウスのBP社会長他との損失補償合意内容声明:
http://www.whitehouse.gov/blog/2010/06/16/important-step-towards-making-people-gulf-coast-whole-again

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米国ボイス・オブ・アメリカの「2009年米国の健康問題を振返って」

2010-01-03 12:12:08 | 国際政策立案戦略

Last Updated :May 2, 2021

 2009年12月25日、筆者の手元に届いたボイス・オブ・アメリカ(VOA)の年末ニュースの中から2009年の「米国の健康問題」に関するトピックスを紹介する。
 2009年春以降、筆者はまったく畑違いのブログを書き始めた。いわゆる“2009 H1N1”問題である。筆者の専門はプライバシー法や情報セキュリティ問題、eGovernmentや金融監督法等の“Watchdog”である。従来から多少これらの専門ジャンルを飛び越えたブログを書きとめたこともあったが、おおよそカテゴリーを大きく踏むはずしたことはなかった。

 しかし、2009年はパンデミック問題で180度変わった。まさにその原稿執筆は試行錯誤の世界であった。日本語の医学論文さえまともに読みこなせないにも拘らずあえて海外の最新情報の解説にチャレンジした。インターネットがあってこそ実現できたといえるが、おかげで主要国の保健監督機関や疫学研究機関等の“2009 H1N1”の取組み方の差異を改めて理解できたことは筆者にとって極めてプラスになったことは言うまでもない。(秋以降は息切れしてしまったが、今回のブログ作成は2009年に筆者が取り上げてきた話題とボイス・オブ・アメリカの注目点との共通性を検証することでもある)

 本題に戻る。VOAの12月25日の記事は、この1年を総括する話題をまとめているが、その中で「健康問題」をピックアップして、米国の4つの重要テーマについて極めて簡潔に要約している。
 今回のブログはその紹介が主たるものであるが、実はもう1点従来から筆者が強い関心をもっている「パブリック・デプロマシー(Public Diplomacy)」の役割を解説することも狙いである。

 わが国は2009年秋に政権交代が行われ、極めて厳しい2010年度政府予算案がまとまって2010年1月を迎えることとなった。2010年の政治課題はおそらく国内問題を中心に動くであろう。しかし、国内問題だけに固執していると世界の動きに遅れを取ることは間違いない。

 例えば、筆者自身まだ書きかけであるが、米国の「大きすぎて破綻させられない金融機関問題(Too Big to Fail)」を発端とする金融安定化に向けた金融規制監督機関制度の抜本改革法案の審議が連邦議会下院で可決されたが、2010年早々に上院「銀行・住宅・都市委員会(委員長:クリス・J・ドッド議員)」で関連法案の審議が始まる。この金融制度改革は、オバマ政権の最重要課題であることは間違いなく、おそらく与野党が連邦監督機関と連携を取りながら審議を進める中で国民の支持と理解を確保するためメディアを効果的に活用しながら進めるであろうことは筆者の経験からみても間違いない。

 「パブリック・デプロマシー」はわが国では定訳がない。あえて言えば「政府の対外的な方針を、内外の世論が支持する状態を作り出すために行う戦略」といえよう。そうであるなら余計にわが国の政府や行政機関は「パブリック・デプロマシー」のあり方についてより専門的に広く研究し、実現向けた努力を行うことを期待するものである。

 
1.ボイス・オブ・アメリカの「米国の2009年健康問題の総括」
 4つのテーマにつき説明する。なお、筆者の責任で注記や関連するURLを加えた。
(1)新型インフルエンザ・パンデミック
 2009年の早期、メキシコは神秘的ともいえる感染症の震源地となった。季節性インフルエンザがしばしば高齢に重症感染するのに対し、このインフルエンザは重症呼吸器疾患(severe respiratory illness)により若者を狙い暴れた。
 メキシコや米国の保健機関は豚、鳥および人間のインフルエンザ感染といった複合ウィルスに困惑した。最初は「豚インフルエンザ(Swine Flu)」と呼んでいたが、数ヶ月後には公衆衛生機関の専門家は正しいインフルエンザ名“H1N1”と呼び始めた。メキシコは世界的な観光地であり、豚インフルエンザは北アメリカを越えヨーロッパやアジアの一部に急速に感染拡大した。

 世界保健機関(WHO)事務局長のマーガレット・チャン博士(Dr.Mergaret Chan)はH1N1の世界中の感染拡大にあわせ毎日その一連の関連情報ブリーフィングを開始した。
 6月11日、WHOは新型インフルエンザが世界的な大流行に入った(パンデミック:フェーズ6)旨の宣言を行った。チャン事務局長は、本ウィルスは緊密かつ注意深い監視下で拡がっている、すなわち、過去のパンデミックでは経験したことのない感染拡大のはじめから早期に緊密なかたちでリアルタイムの検出が行われたと述べた。

 WHOはワクチンメーカーによる接種可能なワクチンの製造を承認し、その1か月後には最初の人による治験を承認した。

 10月までにワクチンの接種が保健機関、妊婦や持病も持つ若者に対し実施された。

 米国疾病対策センター(CDC)の主席副所長であるアン・シュケット(Anne Schuchat)博士は「ワクチンの供給増加とともに我々はワクチン接種に対するアクセスの容易さ、信頼性および希望が増加している」と述べた。

Anne Schychat 氏

 12月下旬にWHOはH1N1により世界で1万人以上が死亡した旨報告した。これらの死亡のほとんどは北米で起きたものである。WHOは緩やかな感染の国々で感染者数のカウントを停止した国があると述べている。

 新型インフルエンザ・ウィルスは年末までに北米や欧州では小康状態になると思われるが、しかし一部専門家は2010年の早い時期に第三の波が戻ってくると述べている。

(2) マンモグラム検査(mammograms)の開始年令に関するUSPSTF勧告
 2009年、米国は「乳癌(breast cancer)およびその阻止に関する政府指名専門家グループによるマンモグラム(乳房X線)検査に関する勧告書(ガイドライン)」が論議を増加させた。この数10年間米国の女性は乳癌検査の一環として40歳から始まる早期のマンモグラム検査の受診が唱えられてきた。

 しかし、米国連邦保健福祉省(HHS)は、11月に「予防医療サービス専門作業部会(U.S.Preventive Services Task Force:USPSTF)」(筆者注1)は最初の女性の乳房X線撮影検査年齢を40歳から50歳に延長し、その実施は1年おきとするとの勧告を行った。11月末には、多くの米国の医師や女性はこのガイドラインの内容は不満であると述べた。

 ニューヨークのセイント・ルカ・ルーズベルト病院(St.Luke’s Roosevelt Hospital)のシャロン・ローゼンバウム・スミス(Sharon Rosenbaum Smith)博士等の医師は、患者に対しこの勧告を無視するよう助言するであろうと述べている。
同博士は米国の女性は40 歳でマンモグラム検査を開始すべきである、すなわちそのことにより癌腫瘍が比較的小さいうちに発見できると指摘した。

 これらの反発に応じ、連邦保健福祉省のキャサリン・シベリウス( Kathleen Sebelius)長官は患者に平静を保ち主治医と良く話すよう助言している。すなわち、患者は医者とともに自分の症状や家族の関連病歴等の解明を行うべきであり、これらは極めて重要な判断要素であると述べた。

Kathleen Sebelius 氏

(3)自殺軍人の増加
 2009年の米国陸軍(U.S.Army)における自殺者数は記録的水準に達した。米国陸軍人事管理局(U.S.Army personell)は自殺率が2008年の総合計より上回ると予想しており、陸軍はその潜在的原因追及の研究を開始した。陸軍副参謀総長ペーター・チアレリ(Vice Chief of Staff,General Peter Chiarelli)は、軍の人事管理部門は精神疾患の軍人の扱いについてより積極的になるべきであると述べた。

 すなわち、ナーバスな彼らは仲間や上司が自分を笑いものにし、さらに悪いことに自分のキャリアにマイナスになると考え、軍人個人が沈黙の中に閉じこもることは絶対に受け入れられないことであると述べている。(筆者注2)

(4)子供の死亡者数の減少
 2009年には希望が持てるニュースがあった。9月10日に国連ユニセフは5歳以下の子供の死亡数が2008年を下回るであろうとする予想を発表した。子供の死亡数が900万人を下回るとする国連の報告は初めてであると述べた。

 予防接種の拡大、マラリア阻止のための殺虫剤の活用、母乳推進、下痢や肺炎への的確な措置がその理由としてあげられている。(筆者注3)

2.米国の「パブリック・デプロマシー」
(1)変遷の整理
 連邦議会調査局(CRS)がまとめた米国情報庁(U.S. Information Agency)の歴史要約資料に基づき以下説明する。

 「米国政府は、ウッドロー・ウィルソン大統領(President Woodrow Wilson)が広報委員会を創設した20世紀の初期の時代のパブリック・ディプロマシー活動の使用が第一次世界大戦の間、海外での情報を広めると初めて公式に認めた。

 第二次世界大戦が突発した1941年、ルーズヴェルト大統領は、防諜活動とプロパガンダを行うために対外情報局(Foreign Information Service:FIS)を設立した。ルーズヴェルト大統領は、1942年2月24日にヨーロッパでプログラムする最初のボイス・オブ・アメリカ(VOA)プログラムを放送するため戦時情報局(Office of War Information:OWI)を創設した。これらの活動は議会により提供された何らの権限や承認なしで行われた。

 それらは、1940年代にすでに運用を始めていたが、米国の放送および文化活動の認可に関する最初の包括法「1948年米国情報・教育交流法(U.S.Information and Educational Exchange) (P.L.80-402) (22 U.S.C. 1461)は、一般的にはスミス・ムント法(Smith- Mundt Act)と呼ばれる。

 同法案の率先提出者である連邦議会のアレキサンダー・スミス上院議員(共和党・ニュージャージー州選出(Alexander Smith:Republican from New jersey )は、法案の主旨につき次のとおり説明している。(もう1人は下院議員 カール・E・ムント・サウス・ダコタ州選出(Karl E. Mundt:South Dakota)である)。
「この法案は、国務省第二次世界大戦戦争終結以来運用されてきた活動への法的権限を与えるという試みである。 それは実際に国務省の「文化交流部(State Department’s Division of Cultural Relations)、米州局(Office of Inter-American Affairs)、および「戦時情報局(Office of War Information)」の活動の強化が目的である。

 米国政府はヨーロッパでの自国の理解がいかに不十分であったかを主張して、第二次世界戦争の後に合衆国に対してロシアの敵対的な情報キャンペーンに対抗する際に、スミス議員は同法案提出に関し提案者の意図を次のとおり説明した: 「本法案は、自慢げなプロパガンダを意味しない。真実を語る(telling the truth)ことを単に意味するのみである」。

 その後の数年間、数次にわたり行われたパブリック・ディプロマシーの再組織化と政策変更は、主にコスト削減または効率性を増加させるという2つの理由に基づくものである。
 1953年に、アイゼンハワー大統領は、1948年のスミス・ムント法によって承認された機関として「米国再組織化計画第8号(Reorganization Plan No.8)」に基づき「米国情報機関Information Agency(USIA)」を創設した。 創設時点のUSIAの役割は、主として放送と情報プログラム(当時いくつかで、「プロパガンダ活動」と言われる)を管理することであった。フルブライト上院議員の勧告にしたがい(彼自身、文化交流の確立法案を提出していた) 教育的な交流事業は、プロパガンダの意図とするいかなる責務も避けるために国務省に残された。

 ほぼ同時期に「自由欧州放送/自由放送(Radio Free Europe/Radio Liberty:(RFE/RL) )は、1947年12月に創設された中央情報局(CIA)の秘密裡の援助の下で1950年に放送を開始した。国際放送委員会(Board for International Broadcasting:BIB)は、1973年にRFE/RLの運営に資金を供給するとともに、監督機関として創設された。 その結果、RFE/RLはBIBを通して政府の認可を受ける民間かつ非営利放送となった。 BIBの設立目的は、東欧と旧ソ連への米国政府(CIA)とRFE/RLの代理放送の間にファイアウォールを提供することであり、この考えは、米国政府から分離した形でRFE/RLを保つことによって、信頼性を増加させることであった。

 1977年「米国再組織化計画第2号(Reorganization Plan No.2)」は「各州の教育と文化問題事務局(State’s Bureau of Educational Cultural Affairs)」とUSIAの国際情報・放送に関するすべての機能を「国際通信庁(International Communication Agency:ICA)に統合した。
 ついで1982年にはP.L.97-241の303条(b)項に基づき、ICAは「米国情報庁(U.S.Information Agency:USIA)」に再度改名された。

 1994年、議会はUSIAから国際放送部門を除き、USIA内に「独立政府放送管理局(independent Broadcasting Board of Governors:BBG)」を設置するとともに、国際放送委員会(Board of International Broadcasting)の廃止を認可した。
 BBGの監督下で53か国語によるVoice of America のラジオ放送、WORLDNET television and Film Serviceのテレビ放送(1983年開始)、キューバ向けRadio MartiとTV Marti(1985年開始)、中欧と旧ソ連向けのRadio Free Europe/Radio lberty、中国・チベット・ビルマ・ベトナム・北朝鮮・カンボジア向け7か国語で流されたRadio Free Asia といった非軍事の政府国際放送が統合され、国際放送局(International Broadcasting Bureau:IBB)が組成された。

 しかし、財政健全化や外交機能の見直しを求める議会の駆け引きの中でUSIAは1995年頃から大幅な人員削減が行われ、1998年10月1日の上院外交政委員会委員長のヘルムズ議員による外交政策の再組織化(無駄をなくし予算節減目的のため)により支持した「外交問題改革・再構築法(Foreign Affairs Reform and Restructuring Act of 1998 )にもとづき1999年10月1日にUSIAは廃止された。これによりUSIAのスタッフ4,025人は国務省に移管され、残された機能(情報プログラムと教育・文化交流は1977年の時と同様国務省に統合され、USIAの国際放送部門(International Broadcasting Bureau)は切り離され、国務省傘下の独立連邦機関となった「政府放送管理局」(Broadcasting Board of Governors)」の監督下におかれた。

(2) 米国「パブリック・デプロマシー」の持つ意義と国務省へのUSIAの統合の評価
 米国で「パブリック・デプロマシー」と言う用語が使用され始めた時期は1965年で、その定義は①非政府(non-governmental)の個人や組織に主として関わる、②政府の公式見解に加えて個人や組織の私的見解も提供するという2点において、国家対国家の関係で展開されてきた「伝統的外交(traditional diplomacy)」と異なるし、また虚実に基づいても成立しうる「プロパガンダ」とも異なり、信頼の鉄則が求められる。
 USIAを統合した国務省は教育文化事業局を新設しUSIAが担当していた教育文化交流事業プログラム(Exchanges)を継続させるとともに、国際情報プログラム部(Office of International Information Program:IIP)を新設しUSIAのInformation Bureauが担った情報プログラム(Information)を継続させた。

 これら2部門に加え、従来から国務省にあった国内広報局(Bureau of Public Affirs:PA)の3部門全体を統合管理するPublic Diplomacy/Public Affires担当国務次官(Under Secretary for Public Diplomacy and Public Affires:PDPA)
を新設した。

 ここでは“Public Diplomacy” は「国際的に鍵となる人々を関与させ、情報を提供し、影響を与えること(engaging,information ,and influencing key international audiences)」また“public affairs”とは「米国民への働きかけ(outreach to Americans)」と極めて簡単な定義がなされている。要するに国際にかかわるpublic diplomacy と国内に関わるpublic affairsを密接不可分に推進するという米国の政治戦略が明示されている。(筆者注4)

(3)ボイス・オブ・アメリカの強化論
 米国のPublic Diplomacyについては、1999年の国務省への統合により弱体化したという見方があるが2001年の同時多発テロ以降、「パブリック・ディプロマシー諮問委員会(U.S.Advisory Commission on Public Diplomacy)」や政府筋から
Public Diplomacyの強化を指示する意見があり、VOA等米国の国際放送は強化されている。(筆者注5)

 

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(筆者注1) USPSTFは、連邦保健福祉省の下部機関である「保健医療研究・品質向上局(Agency for Healthcare Research and Quality:AHRQ)」の諮問機関である。米国では、元々は1989年に保健医療政策・研究局(Agency for Healthcare Policy and Research :AHCPA)が設立されていたが、「1999年保健医療研究・品質向上法(Healthcare Research and Quality Act of 1999) 」が12月6日にクリントン大統領の署名を得て成立したことを受けて、「ヘルスケアに関する研究と質の向上」を活動目的とする「保健医療研究・品質向上局(Agency for Healthcare Research and Quality:AHRQ)が米国連邦保健福祉省(HHS)の下部機関として新たに機能を拡大し設立された.その活動目的とは,患者や現場の医師,医療界のリーダーや政策立案者に対して,証拠に基づいた科学的な情報を提供するとともに,患者の安全と質の向上にとって、何が有効で何が無効なのかについて科学的な情報を集積すること等である。

(筆者注2) 軍事機密と言う性格のためかVOAの記事の取材源は確認できなかったが、おそらく2009年7月29日に連邦議会下院陸軍軍事委員会人事管理小委員会(House Armed Services Committee Subcommittee on Military Personnel )証言ではないかと思う。

(筆者注3) このような米国の楽観論の一方で、英国BBC が報じるとおり、死亡者数の減少が予想以上に遅いという指摘もある。

(筆者注3-2) 本ブログの内容の点検時に2010年当時の司法長官府のプレスリリースURLは無効であった。筆者はあらためて現在の司法長官の検索サイトで年月とキーワード「scam」で検索、以下の2件が出てきた。ビッグデータ時代の公的記録の効果的な検索機能は絶対的である。この問題は今回の本ブログの更新作業を通じ感じた点であり、また、筆者は別ブログで論じている。

(筆者注4) カリフォルニア州司法長官府サイトの説明によると「公益信託登録(Registry of Charitable Trusts)の検索(Registry Search)サイト」では、慈善団体(charities), charity fundraising professionals(慈善基金調達専門家), および raffle registrants(慈善くじ発行登録者)の確認が出来る.

(筆者注5) 慈善贈与年金(charitable gift annuities):
この年金は、恒久基金の1つで、年齢50歳以上の人が米貨1万ドル以上を年金として申し込むと、生涯、一定利率の年金を受け取ることができる。
具体的にいうと「公益寄付」と「個人年金」の合体型商品である。その特徴は、①チャリタブル・リメインダー・トラストやチャリタブル・リード・トラストに比べ低い金額設定で寄付が可能、②個人財産を寄付した後の確実な定期収入、③広い税制上の恩恵であり、近年、高齢化の進むアメリカで人気が高まっている商品である。その基本は、寄付者と公益団体の間に交わされる契約関係でまず寄付者が現金他の個人資産を公益団体に寄付し、同契約に基づき公益団体は将来の寄付の確約を得ることが出来ると共に、契約上の約束事項を遂行する義務が発生する。すなわち寄付者あるいはその法的受益者に対し、生涯に渡り、決められた年金額(life income)を支払う事に同意するものである。また、税制上の恩恵としては、所得税上、キャピタル・ゲイン課税上や遺産税上でのメリットが指摘できるほか、所得税上では、寄付された金額のうち公益的利益に使われると想定される金額分に対して控除が可能な点等である。

  (筆者注6) FEMAが災害支援プログラムに基づき発行した「デビット・カード」は、わが国でいう「即時口座引落し決済カード(デビットカード)」ではないので要注意である。

(筆者注7) “Court-Ordered Restitution”とは米国の裁判所による「損害賠償命令」をいう。「裁判所は,すべての刑事事件につき,刑罰の一つとして,被告人に対し,被害者への損害回復を命ずることができる。また,暴力犯罪,財産に対する犯罪その他所定の犯罪によって,特定の被害者が身体的又は財産的損害を受けた場合には,原則として,損害回復命令が必要的であるとされている。裁判所は,命令額及びその支払方法の決定に際し,被害者が被った損害額のほか,被告人の資力,稼働能力,扶養家族等を考慮しなければならない。損害回復命令のために必要な情報は, 量刑手続の中で, プロべーション・オフィサーが判決前報告書を作成して提供するが,命令の基礎となる事実に争いがあれば,ヒアリングが開かれ,被害事実及び損害額については検察官が,支払能力については被告人が立証することになり,証拠の優越の程度の証証明で認定される。英国では賠償命令(compensation order)、ドイツやフランスでは「付帯私訴」がこれにあたる」法務省法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会第1回会議(平成18年10月3日開催)配布資料18「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度に関する外国法制の概要」より一部引用。
 ここで、わが国の「損害賠償命令制度」(「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律」平成20年法律第19号に基づく)の創設経緯や具体的な問題点等につき論じたいが、それ自身大きな問題であり、今回は省略する。ただし、関係者によりほとんど整理されていない「審議経緯」やわが国の「損害賠償命令制度」、また関連する裁判所規則や行政窓口の整備状況についてはそのポイントのみ説明するので、関心のある読者は各サイトで確認して欲しい。

(1)「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(法律第75号)は、平成12年5月19日に公布していたのであるが、関係法の一部改正作業などにより施行日は平成20年12月1日となるなど、その具体的な内容である法整備の検討は大きく遅れた。平成18年(2006年)9月6日、法務大臣から法制審議会へ具体的な法整備に向けた諮問を受け、これら外国の法制等を参考に法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会や民事訴訟法部会において立法化の検討が始まったのである。その結果は以下の法改正が行われた。
・「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」平成19年法律第95号(平成19年6月27日公布、平成20年12月1日施行)
・「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律」平成20年法律第19号(平成20年4月23日公布、平成20年12月1日施行)

(2)「わが国の『損害賠償命令制度』は、刑事裁判所が、犯罪被害者等から被告人に対する損害賠償請求の申立てがあったときは、刑事事件について有罪の言い渡しをした後、当該賠償請求についての審理・決定をすることのできる制度である。
 具体的には、殺人、傷害などの故意の犯罪行為により人を死傷させた罪に係る事件などの犯罪被害者等は、刑事裁判所に対し、刑事事件の訴因を原因とする不法行為に基づく損害賠償を被告人に命ずる旨の申立てをすることが可能であり、当該申立てについての審理は、有罪の言い渡しがあった後、最初の期日に刑事訴訟記録を取り調べた上、原則として4回以内の期日において終結しなければならない。当該申立てについての裁判は、決定によるものとし、これに対して異議が申し立てられた場合には、通常の民事裁判所で審理を行うこととなる。」「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律について」法務省の立法審議経緯の説明資料より引用。

(3) 最高裁判所規則「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する規則」(平成12年9月27日最高裁判所規則第13号)制定

(4) 警察庁「犯罪被害者等施策」サイトでの具体的運用の解説

 なお、簡単な説明内容であるが、米国の解説サイトの説明を補足しておく。
 「“Court-Ordered Restitution”とは、裁判所による成人または未成年者の犯罪者に対し被害者への賠償支払命令を言う。 それは、犯罪者に対する判決文の一部であり、犯罪行為による犠牲者の損失と犯罪者の支払能力に基づく。 なお、この裁判所賠償支払命令は犯罪者の支払いそのものを保証するものではない。」

(筆者注8) 米国刑事司法でよくでてくる条文がU.S.C.§1343(wire fraud)である。より法体系に即して正確に言うと次のとおりとなる。
連邦現行法律集(U.S.C.)第18編犯罪および刑事訴訟手続(Crimes and Criminal Procedure)>パートⅠ犯罪(Crime)>第63章(郵便詐欺および他の詐欺犯罪(Mail Fraud and Other Fraud Offenses)>第1343条電子通信、ラジオおよびテレビジョンを使用した詐欺(Fraud by wire, radio, or television)

 一般人向けに補足すると、米国の場合、連邦法執行機関である連邦司法省やFBI等は連邦法違反の犯罪にしか介入できないのが原則である。しかし、それでは州際の広域犯罪に対応できないため、連邦法執行機関が犯罪を取締るための手段として活用しているのが連邦現行法律集第18編(犯罪および刑事訴訟手続)>パートⅠ(犯罪)>第63章(郵便詐欺およびその他詐欺犯罪:Mail Fraud and Other Fraud Offense)である。つまり、米国の憲法では,郵便局を設置することが連邦の権限とされているので,郵便制度を使って,詐欺などの悪事をはたらくことはすべて“mail fraud”であり連邦法上の犯罪としたのである。この“mail fraud”をIT化に対応して再構成したのが”wire fraud”であり,州や国境をまたいで電話、インターネット等の不正行為を行う場合、連邦法違反と定めている。ちなみにU.S.C.§1343は極めて広範囲に適用されており、サイバー犯罪だけでなくホワイトカラー犯罪等に広く適用されている、例えば、わが国はあまりなじみのないが海外進出する米国企業にとって極めて重要な法律である「1977年海外贈収賄行為防止法 (The Foreign Corrupt Practices Act:FCPA(1998年に大幅改正されている) 」にも企業は州法による規制だけでなく連邦法(mail fraud やwire fraud)による規制(違法な贈賄行為を実行するのに米国内の郵便,電話,インターネット等を使用すると連邦法であるFCPAの贈賄条項が適用)が行われる(連邦司法省のFCPAの解説サイト参照。なお、DOJ解説サイトは日本語を含む同法の翻訳を行っている)。
 なお、「『1977年海外贈賄賄行為防止法(FCPA)』 は、米国その他に国の企業による外国の官吏等(公務員だけでなく議員、王室や国有企業等を含む)に対する贈賄行為を罰する連邦法である。現在まで、ほとんどのFCPA に基づく訴追は、米国で上場されている企業または外国で事業を行っている米国の企業に対するものであった。しかし、多くの日本企業を含む外国企業もFCPA の対象となる可能性があり、また、米国当局(連邦司法省や証券取引委員会)は今後FCPA をより広範に運用するという方針を打ち出している。FCPAは「贈賄禁止条項 (Anti-bribery Provisions)」および「社内文書・内部統制条項 (Company Record and Internal Control Provisions)」からなる。贈賄禁止条項の違反は、企業の場合は200万ドル(約1億8千万円)の罰金、個人の場合最高5年の拘禁刑および最高10万ドル(約900万円)の罰金に処せられる。(2009年5月12日付けLegal Wireレポート(Pillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP))「日本企業等がForeign Corrupt Practices Act(米国海外不正行為防止法)の対象となる可能性」から一部引用(罰則内容等は法律の規定に基づき一部補足した)。
(なお、わが国の代表的な 税理士法人財務コンサルティング会社および外国法律事務所が総じて“FCPA”を「連邦海外腐敗行為防止法」や「海外腐敗防止法」と訳している。これらは法律の内容を無視した明らかな誤訳である。)

(筆者注9) ルイジアナ州住宅再建プログラム(Louisiana Road Home Program:LRHP) :連邦政府の資金を源に、被災者に対して住宅再建のための支援を2006年7月より開始 。住宅の再建資金として最高15万ドルを交付)。対象は所有者本人が住む家のみで、被害額が5,200ドル以上。FEMAの定義する洪水危険区域内で洪水保険に加入していない場合は30%減額され。賃貸住宅への支援プログラムも実施された。


[参照URL]

https://www.voanews.com/archive/swine-flu-tops-list-2009-health-issues
http://www.archives.gov/research/guide-fed-records/groups/306.html
http://www.jpf.go.jp/j/about/survey/advanced/pdf/02.pdf
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_999760_po_067409.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

清水直樹「平和構築にためのメディア支援」国立国会図書館

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第3回米中戦略経済対話(SED)が共同文書を採択、閉幕

2008-01-05 14:52:40 | 国際政策立案戦略

 

 Last Updated :November 24,2015

 北京郊外中信国安第一城(Grand Epoch City)で12月12日、13日の2日間米国(美国)と中国の政府代表が共同議長を務める第3回米中戦略経済対話(The Third U.S.-China Strategic Economic Dialogue:SED Ⅲ、第三次中美战略经济对话)が開催され、13日に共同文書を採択して閉幕した。

 SED自体は2006年にブッシュ大統領と胡錦濤国家主席が創設したもので、財政、金融、貿易、環境、厚生、農業等の閣僚級が一堂に会する経済協議の枠組みであり、半年に1度のペースで米中交互で開催され、今回が3回目。ポールソン(長鮑爾森)財務長官と呉儀国務院副總理(Vice Premier Wu Yi)が共同議長を務める。短期的成果を目指す交渉とは異なり、長期的視野に立って中国の貿易黒字の元凶である輸出主導の経済構造を内需主導に転換することを目指す。ただし、米議会の関心が高い人民元(RMB)の柔軟化等は遅れており、米国内では戦略経済対話を基軸とするポールソン長官の対話路線は目に見える成果を上げていないとの批判は根強い。(筆者注1)

 一般的にわが国の経済専門家・メディアの見方は、今回の対話は中国ベースで進んだとの評価が多い。(筆者注2) 。その理由には、米国が従来から強調してきた①人民元改革(米国の対中貿易の赤字解消)、②知的財産権保護強化、③繊維製品をめぐる輸入摩擦問題、④中国の金融市場開放、⑤エネルギー・環境分野の協力、⑤航空の自由化といった重要課題において著しい成果があったとはいえないからである。(筆者注3) 国際政治の世界において2国間の間では公表されない具体的な交渉内容があるとは予想されるが、本文で述べるとおり米国民の期待(=議会)に応えるものになっていないといえよう。

 米国内の議会等の論調は保護主義強化を求めており、次回(2008年6月)ワシントンで開かれる第4回SEDまでの間にこれら未解決の課題について進展が見られないとブッシュ政権自体の支持率等にも大きな影響が出ることは間違いなかろう。

 今回のブログは、財務省の米中共同記者発表資料(Joint Fact Sheet)、通商代表部(U.S. Trade Representative)や商務省(U.S. Department of Commerce)および中国政府の発表等を中心として議会やステーク・ホルダーを中心とする国際経済や外交問題の取組み情報に弱いわが国のメディアの情報を、米国や中国の具体的なオリジナル情報に基づき補完するという目的でまとめたものである。

 今回の米国政府のファクト・シートの両国の署名や合意に関する公表内容は国際公法の観点からも、微妙な内容を含んでいる。法解釈上、正確な訳に努めたつもりであるが専門家による補完を期待したい。

1.保護主義化をすすめる米国連邦議会の動き
 米国議会・上院財政委員会(Senate Finance Committee:Max Baucus委員長(民主党モンタナ州))では2007年7月26日、中国を念頭に置いたと思われる「通貨為替監視改革法案(Currency Exchange Rate Oversight Reform Act of 2007)(S.1607)」を、20対1の圧倒的賛成多数で可決した。内容は不当に為替操作を行う国を財務省が指定し、IMF(国際通貨基金)やWTO(世界貿易機関)への提訴、介入による是正、反ダンピング(不当廉売)関税の適用などの是正措置を米政府に求めるというものである。さらに8月1日には上院銀行・住宅および都市問題委員会(Banking,Housing,and Urban Affaires Committee:Chris Dodd委員長(民主党コネチカット州))がさらに相殺関税の導入を盛り込んだ「通貨改革および金融市場法案(Currency Reform and Financial Markets Act of 2007)(S.1677)」を可決した。 (筆者注4) (筆者注5)

2.米国商工会議所(U.S.Chamber of Commerce)の保護法案反対の主張Letter 
 同会議所は2007年9月24日に連邦議会下院議員に対し、上院の前記2法案(S.1607,S.1677)について提案の趣旨自体は評価するもののこれらの法律は輸入問題だけでなく、米国にとって急激に伸びている輸出相手国である中国の経済・金融制度改革を遅らせ、ひいては米国自体の経済的地位を弱めるとの懸念を示している。

 そういう意味で、市場決定型為替レートへの移行の必要性は強く認識するものの政府のポールソン長官を中心とするSEDの継続的活動を支持し、また米国の貿易関係法やWTOルールとの整合性の取れた二国間の相互的かつ多面的な手段を用いるべきであると述べている(筆者注6)
 しかし、一方で米国の小売事業者経営者団体であるRILA(Retail Industry Leaders Association)は、中国元とドルとの為替レートの不均衡や両国の貿易にかかわる諸問題に対する強い姿勢を議会や政府に求めている。

3.第18回米中商業・貿易に関する共同委員会の合意内容
 SEDに先立って12月11日に北京で第18回「米中商業・貿易に関する共同委員会(The U.S.-China Joint Commission on Commerce and Trade:JCCT)」が開かれた。同委員会のメンバーは米国側がスーザンC.シュワブ(Susan C. Schwab)通商代表部代表、グティエレス(Carlos M. Gutierrez)商務長官、中国側が呉儀国務院副總理である。

 また、通商代表部は両政府間の署名内容(MUAやMOU)のファクト・シートを公表している。SEDのファクト・シートよりは具体性があり、またMOAとMOUの区分が明確であるので、併せて参照する必要があろう。(筆者注6-2)


 なお、同ファクト・シートに記されている今回米中間で同意された「米中ハイテク・戦略貿易開発に関するガイドライン(Guideline for U.S. High-Technology and Strategic Trade Development)に基づき両国間の民間レベルの障壁撤廃に向けた作業部会(Begin a high-level exchange of investment policies, practices, and climates. Intensify ongoing discussions regarding the prospects for negotiating a Bilateral Investment Treaty. Continue consultations in a cooperative manner on China achieving market economy status. Continue cooperation through the JCCT High Technology and Strategic Trade Working Group by positively implementing "Guidelines for U.S.-China High Technology and Strategic )が今後進む。技術立国のわが国としては重要な研究課題であろう。

4.連邦政府の対応と今回の成果に関する財務省の公表内容
 2007年12月13日の声明発表(The Third U.S. - China Strategic Economic Dialogue December 12 - 13, 2007, Beijing Joint Fact Sheet )でポールソン長官は「米国は経済ナショナリズムや保護貿易主義に反対する」と明言し、中国との対話路線の継続を表明している。しかし、議会との軋轢は残されており、今後の舵取りはさらに困難を増すであろう。

 今回、第3回SEDの結果について財務省の公表内容を詳しく紹介するのは、わが国のメディアではほとんど紹介されていない両国の実務レベルの協議や今後のロードマップが意外と計画的に進んでいる点(中国の経済・社会・文化等のアメリカ化はわが国の比でない点)を見逃すと、わが国自体の対米戦略をも誤ると思えるからである。
 
(1)製品の品質および食品の安全性について
 米国と中国は、(ⅰ)両国の対話の拡大、(ⅱ)食品、薬品および消費財の輸出の政府による効果的監視を認めるため、法律・方針・プログラムおよび動機付けといったインフラ強化のための情報の共有について責任を持つ。これらの目的を達成するため、両国は輸出の安全性に関し、次の8分野についての覚書文書(Memorandum of Agreement:MOA またはMemorandum of understanding:MOU)に署名した。 (筆者注7)

①食品(food and feed):米国保健社会福祉省(U.S.Department of Health and Human Services (DHHS))と中国国家品質監督検査検疫総局(General Administration of Quality Supervision,Inspection, and Quarantine:AQSIQ)
は、2007年12月11日付けの同意覚書(MOA)
②薬品および医療製品(Drugs and Medical products):米国HSSと中国国家食品薬品監督管理局(SFDA)は、2007年12月11日付けの共通理解に関する覚書(MOU)
③環境面に適合した輸出入(Environmentally compliant exports/imports):
 米国環境保護局(U.S.Environmental Protection Agency:EPA)と中国AQSIQ
間の共通理解に関する覚書(MOU)
④食品の安全性(Food safety):米国農務省(U.S.Department of Agriculture)と中国AQSIQ間の食品の安全上の共同活動に関する閣僚級の合意による改善内容についての合意
⑤アルコールとタバコ製品:米国財務省と中国AQSIQは、2007年12月11日付けの共通理解に関する覚書(MOU)
その他署名した分野:⑥おもちゃ・花火・ライターおよび電化製品、⑦自動車の安全性、⑧殺虫剤使用の寛容度と貿易問題

(2)金融分野について
 中国は、第4回SEDまでに次の行動を行うことについて合意した。
①中國證券監督管理委員會(China Securities Regulatory Commission:CSRC)は、(ⅰ)中国の證券会社に外国の投資家が参入することによる中国の証券市場への影響について慎重な調査を行い、また(ⅱ)その調査結果に基づき中国の証券会社に対する外国株を適用する問題について政策勧告(policy recommendation)を行う。
②中國銀行業督管理委員會(China Banking Regulatory Commission:CBRC)は、現在取組んでいる外国の金融部門の中国銀行部門への参入に関する科学的研究を2008年12月31日までに完成させる。また、CBRCはその時までに政策評価結果に基づき外国資本の銀行業務への参入問題について政策勧告を行う。
③中国は関係する監督諸規則に即して、(ⅰ)人民元建の株式(A株)のについて銀行を含む指定を受けた海外の投資家(qualified foreign-invested companies) (筆者注8)の参入、(ⅱ)指定を受けた上場会社による人民元建社債の発行、()指定を受けた合弁設立外国銀行(incorporated foreign bank)による人民元建金融債の発行を認めることに同意する。
④米国政府は、中国の銀行について内国民待遇の適用を引続き維持し、その適用が優れて内国民待遇の原則に合致することを確認する。また米国政府は同様に外国の銀行が(ⅰ)支店や子会社の設立、(ⅱ)既存の米国銀行へ出資することについて監督基準を適用する。
⑤米国は、金融監督に関する規則や手続きを迅速に中国の銀行に対して適用すべきとする中国側の要請を記した(note)。
⑥米国政府は、米国内における中国のブローカー・ディラーや投資アドバイザーの登録や運用について内国民待遇を適用することについても引続き責任を持つ。
⑦中国CBRCと米国証券取引員会(SEC)は、これら監督機関から免許を受けた金融機関が越境的活動に関し情報の共有を行うことについて近い将来文書を取り交わし署名することについて合意する。

(3)エネルギー・環境問題について
米国と中国は、(ⅰ)燃料に替わるバイオマス資源分野への切替、(ⅱ)違法な森林伐採に共同して戦うことおよび適切な森林管理を適切に推進させことについてMOUに署名した。中国は、今後エネルギー部門の全国的SO2排出権取引プログラム(nationwide program on SO2 emission trading )の開発を行い、また米国は同プログラムに関し、基本的水質環境管理や環境にやさしい燃料および車の排出ガス規制と同様に中国に技術的支援を行う。米国と中国はWTOにおける「環境改善に向けた関税および非関税障壁の軽減また適切な場合は撤廃」における両国の責任を再確認した。

(4)行政許可に関する透明性について(筆者注9)
 米国と中国は行政ルールの策定時(in administrative rule-making )の透明性の拡大ならびに一般大衆の参加機会の強化について合意した。
 両国はAPECおよびWTOにおける責任を含む透明性に関する国際的責務として次のことに取組むことにつき合意した。
① 極力(when possible)、(ⅰ)行政手続きの適用・採用に関しWTO協定に基づく責任において扱われる方法案について予め公表し、(ⅱ)提案方法についてコメントする合理的な機会を関係者に提供する。各国は、このWTO責務の遵守について指定した官報への掲載または公的ウェブサイト上での恒久的掲示を行う。
② 行政手続きの適用または執行の前に指定された官報においてWTO協定に基づく責任において扱われる最終的方法について公表する。

(5)米中のバランスの取れた経済成長のあり方について
 米国と中国は、米中合同経済委員会(U.S.-China Joint Economic Committee)の下での議論を含む対話と協議を通じた米中の経済の不均衡に関する方法について話し合う責任がある。両国は貿易および投資に関する保護主義に対し強く反対することに合意した。
  米国と中国は最近時の米国のサブプライム市場および世界的金融市場の混乱によって導かれた米国や国際的な取組みを歓迎する。両国は、引き続き構造的に重要な経済および金融の発展に関し、時宜に応じて話し合いと情報の共有を行うことに合意した。
  両国の金融監督機関は、監督方法について意見交換を行うことについて合意した。2007年12月13日、14日に中国税関局と米国税関国境警備局(CBP)は2008年1月の早い時期に開始する予定の米国関税テロ対策プログラム(C-TPAT) (筆者注10)の中国における共同認定手続きのパイロットプログラムの技術的討議について合意した。

(6)官民一体の改革の促進について
 米国と中国は2007年12月10日に北京で改革会議を共催した。その中で①エコシステムのための改革を成功裡に収めるための要素、改革の育成のための適切な官民の役割および知的財産の創造、保護、普及についていかなる方法で促進させるか等について議論した。その結果、両国は引続き官民改革の議論を合同で開催するとともに第3回改革会議で概要取りまとめ文書に即した共同活動を行うことについて合意した。

5.両国の今後6か月間の優先的取組作業内容
 両国は、次回SEDまでに次の優先課題に取組む。
(1)既存の両国間の共同検討メカニズムを通じて、食品、薬品、医療製品を含む製品および消費財分野における対話と意見交換を一層発展させる。
(2)エネルギーと環境改善に向けた10年以上の広範囲な共同活動に取組む。この10年以上にわたる共同活動において、①技術的改革、②高度に効率的、クリーンなエネルギー技術、③気象の変化、④天然資源の持続の促進をすすめる。このため可及的速やかに計画を進めるため作業部会を設置する。
(3)①2008年の早い時期に会合を開き環境問題が緊急の課題であるという認識の下で、WTOにおいて環境改善に向けた製品やサービスなど環境改善に向けた関税および非関税障壁の軽減また適切な場合は撤廃について共同交渉を推進する。
 ②中国の第12次5ヵ年計画に合わせ、硫黄含有量の50PPM以下への漸次削減とより進んだ自動車汚染の管理技術の共同化の開発のための詳細計画の開発についての共同活動を拡大する。
 ③国際エネルギー機関(IEA)との協調を含め、情報および技術交換を通じて戦略的石油備蓄施設の建設およびその管理に関し共同活動を強化する。
(4)①投資政策、実践および投資環境についてハイレベルの意見交換を開始する。二国間の投資条約(Bilateral Investment Treaty)の交渉見通しに関する現下の議論を活発化する。
 ②中国の市場経済化を成功裡に導くために共同的方法により協議を継続する。
③両国間のハイテク技術と戦略的貿易の拡大と促進に向け「米中ハイテク・戦略貿易開発に関するガイドライン(Guideline for U.S. High-Technology and Strategic Trade Development)」の積極的な適用、適切な建設的方法の採用ならびに行動計画を作りあげる。両国の関係政府機関は原産地規則(rule s of origin)の分野において会合またはデジタルビデオ会議を行うことに合意する。
(5)①行政の透明性に関する各国の国際的な責務の範囲の調査を行う。
 ②行政ルールの策定の間における受け取ったコメントに対する調査および対応につい情報交換を継続する。
 ③米国に対する中国市場の分野および中国に対する米国市場分野において、行政免許を与えることに関し、条件、手続き、時間枠について定期的に両国間で情報交換を行う仕組みを確立する。
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(筆者注1)わが国でSEDについて、第1回からの交渉経緯について詳しく紹介している論文は以外に少ない。その中で参考となるのは、みずほ総合研究所「みずほアジアインサイト」2007年8月3日発行であろう。

(筆者注2このような論調が明確なのはFujiSankei –Business i(2007.12.13) 等であろう。

(筆者注3)前記「みずほアジアインサイト」の解説も、これらの課題について米国国内の主張が十分交渉に生かされていないといった指摘が目立つ。

(筆者注4)美中貿易全国委員会(US-China Business Council:USCBC)」は、米国と中国と取引関係の強い米国企業250社以上が集まった民間のNPO(理事会理事長はボーイング社の会長兼CEOであるW.James McNerney氏、USCBC事務局代表はJohn Frisbie氏)ある。1973年に設立され、30年以上にわたりメンバー企業に対し、貿易障壁の特定とその除去などに努め、また規則に基づく貿易、投資や競争に関し優れた情報、助言、擁護およびプログラム・サービスを行っている。
  同委員会が取りまとめた現連邦議会(第110連邦議会)において提出されている中国関係の法案は下院計61本、上院計41本である。
  その中で注目されている法案が、上院財務委員会が7月26日に可決したS.1607「為替相場監視法案(Currency Exchange Rate Oversight Reform Act of 2007)」 (経済実勢と乖離した為替レートを放置している外国に対抗措置を取ることが中心)と上院銀行委員会が8月1日に可決したS.1677「通貨改革および金融市場介入法案(Currency Reform and Financial Markets Access Act of 2007)」(相殺関税などより強硬な法案)である。

(筆者注5)今回のSEDのホスト役である中国の呉儀国務院副總理は、開会の辞の中で両国の友好関係を尊重しつつも米国の保護貿易主義の立法の動きには厳しい指摘を行っている。

(筆者注6)http://www.uschamber.com/issues/letters/2007/070924_china_house.htm

(筆者注6-2) U.S. -China Joint Commission on Commerce and Trade(JCCT)が開催されたのは2013年までである。最終公開日:2016年7月16日 サイトの概要を仮訳する。

1983年に設立された米中貿易貿易合同委員会(JCCT)は、米国と中国の間の二国間貿易問題に関するハイレベルな対話のためのフォーラムである。 JCCTは、発足から2004年まで、米国商務長官と中国商務大臣が共同議長を務めた。 2003年12月のブッシュ大統領とウェン首相の会合に続いて、双方は、委員会が2人の閣僚(商務長官と米国通商代表部)によって米国側で共同議長を務め、中国側では 外国貿易を担当する副首相が出席した。 JCCTには、知的財産、環境、情報産業、製薬および医療機器、統計、商法、貿易および投資など、さまざまな問題や産業をカバーする16のアクティブなワーキンググループも含まれていた。

(筆者注7)今回のブログの最大の課題は国家間における“MOA”や“MOU”の法的効果である。すでに述べたとおり、筆者は国際公法の専門家ではないが自分なりに海外のサイト情報を集めてみた。
一般契約法上の用語として用語集では契約(contract)と同様の「書面による合意」として法的拘束力(binding)を持つ場合と必ずしも持たない場合があり、またMOUとMOAは用語の違いにかかわらず互換性があり同一の法的効果があるというのが一般的である。
 しかし、より正確な定義について解説したサイトにあたったところ、結構理解しにくい点があった。すなわち、契約と同様の法的効果が得られる場合の要件としては、標準的な契約条件(contract’s terms and conditions)が盛り込まれていなければならない点である(本文5.の内容が国際法上契約上の具体的条件にあたるかどうかは筆者には自信がない)。
一方、しばしばMOAは二者間の単なる共同活動や相互理解や相互の役割や責任の明確化を目的としたものがあるのである。今回の米中の合意文書が後者であるとするなら、米国内の世論に十分応えたものとならないであろう。

(筆者注8) Qualified Foreign Institutional Investors(適格国外機関投資家制度:QFII)とは、2003年5月ごろから試験的に導入され、認定を受けた機関投資家がA株(中国本土には上海、深圳(しんせん)に株式市場があり、A株は中国国内投資家限定で、通貨は人民元での取引をいう。徐々に開放されつつあるが、今のところ中国国内投資家向である)を買える制度。QFIIには機関投資家が認定されるのに厳しい条件があり、QFIIが執行されても認定を受けた機関が少なく影響はほとんどなかったが、機関投資家の認定は徐々に枠が広がり、日本では野村證券、第一生命、日興アセットマネージメント、大和証券が認定されている。2006年3月時点では世界で35社が認められている。

(筆者注9)中国の行政手続きの透明性問題について、富山県貿易・投資アドバイザー梶田 幸雄氏の論文に基づき補足しておく。「透明度の問題とは、中国市場におけるコストやビジネス機会を評価す情報開示の問題である。60%から数年来進展がないと回答し、毎年の主要課題として指摘され続けている問題である。解答の12%は、規制などの情報開示が拒まれることがあり、悪化ないし新たな問題となっていると述べている。中国の行政許可法が2004年7月1日から施行された。この行政許可法は、行政許可の範囲、種類、手続を定め、および行政許可の検査監督、費用徴収などにつき明確な規定をし、政府の行政許可および行政管理人の業務を法制化、規範化するものである。中国国内における企業活動にとっても重要な意味を持つものであるといえる。」
 http://www.near21.jp/center/publication/journal/73/kajita.pdf

(筆者注10)米国C-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism)とは、米国関税テロ対策プログラムのことで、国土安全保障省傘下の米国税関国境警備局(CBP)が実施している一連のテロ対策の中核プログラムである。
①米国に輸入される全貨物に危険物が混入するのを防ぐため、そのサプライチェーンの安全性を確保する官民共同プログラムで米国の輸入品に関係する全企業が対象になる。
②参加企業は自社サプライチェーンの保安計画を提出し、税関の検査・認証を受ける。
③米国税関が国・業種を段階的に指定。任意参加であるが、不参加者には通関時のチェックの増加など不利益が出るので、実質強制参加に近い。
④CBPが示すサプライチェーン・セキュリティ管理ガイドラインに沿って社内セキュリティ管理を実施していると認定した企業に対して、輸入通関時での低い検査率の適用などのベネフィットを提供する。
⑤輸入者、船社、通関業者、倉庫管理者、海外の製造者(メキシコ・カナダ)が対象。 既に6,600社が参加認定されている。日系米国法人も多数参加。⑥認定(validation)後、海外サプライヤーの事業所にも米国税関検査官の実地調査が入る。⑦実地調査により、評価はTier3からTier1まで3段階に区分される。Tier3が最上位。
http://nexus-partners.org/ctpat.aspxより引用。https://jp.usembassy.gov/ja/embassy-consulates-ja/tokyo-ja/sections-offices-ja/cbp-ja/customs-trade-partnership-against-terrorism-ja/


〔参照URL〕
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp732.htm

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ドイツ連邦政府のメルケル首相がウクライナの新首相に送ったメッセージとは?

2006-08-12 17:49:40 | 国際政策立案戦略

 

Last updated: Feburary 21,2022

 わが国のメデイアでも報道されている通り、ウクライナの元首相であったビクトル・フェデロビッチ・ヤヌコービッチ(Viktor Fedorovych Yanukovych:フルネームではそうなる)氏が首相に復帰することとなった。

Віктор Федорович Янукович

 同氏は親露派でありまた最大野党の党首である。ドイツ連邦政府内閣のメルケル首相が8月7日に早速祝電を送った内容は、以下の通り極めて簡単なものであるが、背景を含め細かに読むとまさにドイツが今取り組んでいる多面的国際戦略の一面が読み取れよう。
 さらに、わが国のメディアでは詳しく紹介されていないが、NATOとウクライナの関係強化を巡る旧ロシア連邦の国々を巡る国際戦略の動向もその伏線に見て取れる。(筆者注1)

「わが親愛なるウクライナ国の首相殿
私はあなたがウクライナの首相職を引き継いだことにお祝いの言葉を送ります。あなたに今後待ち受ける各種の任務につき、幸運とその成功が訪れることを期待します。

わが国は、貴国が法律に基づき (筆者注2)独立、安定、かつ民主的なウクライナ国家となることに強い関心をもって見守っています。また、わが国政府は、貴国の改革を支援するとともにNATO機構(Euro-Atlantic Institutions)とのより関係強化(筆者注3)を強く希望するものです。」

ドイツ連邦 首相 アンゲラ・メルケル

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(筆者注1)NATOとウクライナの最近の関係強化の推移を簡単に見ておく。
【2002年11月3日】  NATO・ウクライナ行動計画(プラハ・サミットで採択)であり、この実現化に向けた責任はウクライナにあり、そのための課題は、①民主主義、②法の支配、③人権保護、④市場経済の強化である。最大の優先課題はNATOが支援するのは防衛問題と国家の安全対策である。
具体的な内容は以下の通りである。なお、ウクライナの取組みの進捗状況につき、2年に1回NATOとウクライナの外相級が準備した報告書に基づきNATOで査定会議が開かれている。
第1節 政治および経済問題
1.政治問題と安全問題
(1)国内の政治問題
権力の分離、司法の独立性、民主的選挙、政治的多元性、言論の自由、少数民族や宗教面の廃止である。とりわけ法制度改革の中心は欧州評議会の人権条約への参加である。
(2)安全強化に向けた国際的な政策
 自由なヨーロッパの実現、テロとの戦い、兵器の大幅削減、地域の不安定性や安全面の脆弱性の解決である。
第2節以下省略

 なお、米国ブルッキング研究所の副所長兼外交政策部長のカルロス・パスカル氏(Carlos Pascual:2009年8月、米国連邦議会上院はバラク・オバマ大統領がカルロス・パスクアルを駐メキシコ米国大使に指名したことを承認した)

Carlos Pascual氏

は8月3日付のヘラルド・トリビューン紙において、今回のウクライナの組閣について触れつつ、またオレンジ革命の意義、国民の意識の変化などを踏まえ、ウクライナのNATOへの積極的な加盟の姿勢ならびにロシアとの友好関係強化を呼びかけている。なにせ、同国は、本年5月の調査で年率成長率は8,5%であり、人口4,700万人を擁する国である。
http://www.brookings.edu/views/op-ed/pascual/20060803.htm
また、8月5日の朝日新聞によると、新内閣では、「我々のウクライナ」幹部のタラシュク外相が、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を進めてきたグリツェンコ国防相とともに留任。大統領に近いルツェンコ内相も留任した。安全保障分野は、これまで通り欧米圏への統合を推進できる布陣となったとある。注目すべき旧ソ連邦の国の1つであろう。

【2004年3月22日】NATO・ウクライナの目標計画:2002年の行動計画の枠組みに基づく年次目標計画である。特にNATO参加国はウクライナに対し自由・公正な選挙およびメデイアの自由の実現の必要性について強いメッセージを送った。
【2006年4月7日】NATO・ウクライナの目標計画が公表された。
http://www.nato.int/docu/update/2006/04-april/e0407a.htm

(筆者注2)ここでいう「法律」の意味は、(筆者注1)で述べた民主主義や法の支配を指すことは言うまでもない。

(筆者注3)wikipediaによるとウクライナがNATOの加盟国になるかどうかにつき、2008年に最終決定が行われるとされている。しかし、同国内には加盟反対者も多く大統領の舵取りは今後も難しさが増すであろう。

〔参照URL〕
http://www.bundesreggierung.de (ドイツ連邦政府サイト)
BPA Press Release:Merkel congratulates newUkrainian Prime Minister
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