最高気温は34℃。夜になっても蒸し暑さの残るその日、東京・国立競技場の貴賓席「プレジデンシャル・ボックス」で、天皇陛下は約4時間、東京五輪の開会式を見守られていた。冷房もないボックスの中、御椅子の背もたれから体を離し、ピンと背筋を伸ばされていた。そのお隣に雅子さまはいらっしゃらない。隣に座ったのは、菅義偉首相だ。“事件”が起きたのは、開会式の終盤、陛下が開会宣言をされたとき。
IOCのバッハ会長の紹介を受け、マイクの前に立った陛下が宣言を始めても、隣の菅首相はぼんやりと陛下とは別の方向を見やったまま。その奥の小池百合子都知事が目配せしながら席を立つと、それに気づいた菅首相も慌てたように立ち上がった。その様子は日本全国、いや、全世界に生中継された。
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