能登半島地震発生から1カ月となった1日、大規模火災で大きな被害を受けた石川県輪島市の観光名所「輪島朝市」では男性ががれきの撤去作業などに取り組んでいた(桐原正道撮影)
能登半島地震は1日、発生から1カ月となった。厚い雲に覆われ、厳しい寒さに見舞われた被災地。発生時間の午後4時10分には各地で黙禱(もくとう)が行われ、被災者らは犠牲者を悼み、不安や苦悩、復興に向けた期待など、さまざまな思いが交錯した。
「避難所の人たちはもっと大変。ストレスをためないようにしてほしい」。1カ月を経ても広範囲で断水が続く中、在宅避難する珠洲(すず)市の介護職員、坂本伸互さん(62)はポリタンクに水をくみながら、不自由な避難所で過ごす被災者らを気遣った。
今後が見通せない不安や地震への恐怖が尽きない被災者は多く、自宅が全壊した同市の元介護施設職員の女性(73)は同県白山市の長女宅に避難。「夫が生まれ育った場所なので離れたくない。最近、よく涙が出てくる」と表情を曇らせた。
七尾市南ヶ丘町、飲食店店員の男性(43)は家が傾き、避難所生活が続く。余震があるたび「また大きな地震が来るかもしれない」とおびえ、「(避難所は)寒くて寝れず、疲労がたまる」とため息をついた。
大規模な火災に見舞われた輪島市の観光名所「輪島朝市」。近くで寝具店を営む森谷英一さん(58)は、「途方に暮れている」と肩を落としながらも「3日は近くの神社で行われる還暦の豆まきに参加する。裃(かみしも)は着られないが、同級生たちと会えることを楽しみにしている」と話した。 自宅こそ難を逃れたものの、経営する会社の事務所と倉庫がつぶれた同市長井町の建設会社役員の男性(73)は、「従業員のためにも会社をやめるわけにはいかない。プレハブ小屋を借りて、仮事務所にした。やれる限りやるしかない」と力を込めた。
産経新聞