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誰も知らない認知症;脳のはたらき(知的機能)からみた老人性認知症の予防と介護

老人性認知症の確実な予防方法と認知症高齢者の適切な介護方法をシリーズで解説します。

39 かなひろいテスト不合格(1)

2018-10-24 11:52:04 | 日記

(お知らせ;予めご了承下さい)
 このブログの「37 MMSとMMSE」〔2018/10/10〕以降は、「MMS」や「かなひろいテスト」を実施している医療/介護関係者を念頭に置いた実務的な内容を「4回シリーズ」で解説しています。一般の読者の方々には難解な内容になると思いますので予めご了承下さい。理屈っぽいことが好きではない読者の方々や「MMS」「かなひろいテスト」を実施した経験がない医療/介護関係者の方々は今回のブログをスルー(素通り)して下さい。


 「かなひろいテスト」は前頭葉機能、特に注意分配機能を評価する神経心理検査ですが、単に「前頭葉機能の障害の有無や程度の評価」や「老化廃用型認知症の進行度の判定」だけに用いる検査ではありません。検査結果から「日常生活における生活内容の変化」や「様々な状況における心理状態の変化」などを推測し、被検者の生活支援や自立支援の必要性の判断や具体的な対応を提案するための重要な検査であることを意識することが大切です。もちろん、老化廃用型認知症の予防(早期発見)に際しては「最も有効かつ不可欠な検査」であることは言うまでもありません。
 一方、当然のことながら、「かなひろいテスト」実施して検査結果を判定(評価)する際には前頭葉機能に関する知識を深めておく必要があります。いわゆる「実行機能/遂行機能」は「1つの物事を実行する機能」で「ワーキングメモリー」は「複数の物事を同時に実行する機能」のことですが、前頭葉機能は「実行機能/遂行機能」や「ワーキングメモリー」だけではなく「こころの働き」(心的機能)を担っていることを見逃してはいけません。したがって「かなひろいテスト」で「不合格」と判定した場合には「残存機能」と「欠落機能」を意識しながら被験者の「日常生活の変化」や「心理状態の変化」などを推測し、生活上の配慮や支援、介護などの必要性の有無や具体的な内容などを判断することが大切です。



 「かなひろいテスト」で「不合格」と判定される被験者の「実行機能/遂行機能、ワーキングメモリーの障害」「日常生活の変化」「心理状態の変化」の具体例を以下に列記しておきたいと思います。

A.実行機能/遂行機能、ワーキングメモリーの障害
   ① 銀行のATMを操作できない、カードの利用方法がわからない
   ② 処方された通りに服薬できない、薬の飲み忘れが増える
   ③ 買物では複数の物品を正しく買えない、ポイントカードを利用できない
   ④ 仕事の段取りが悪くなるが自覚していない、複数の仕事をこなせない
   ⑤ 自分で計画を立てて外出や旅行などをすることができなくなる
   ⑦ 携帯電話やリモコンの操作方法がわからない
   ⑧ 自動車運転で不注意な事故が増える
   ⑨ 部屋や冷蔵庫、タンスなどの整理整頓ができない
   ⑩ 振り込め詐欺や悪徳訪問販売の被害者になりやすい など

B.30項目問診票(浜松2段階方式)でチェックする日常生活の変化(1)
   (下記の①~⑩のうち4項目以上の状態が目立つようになる)
   ① 無表情・無感動の傾向がみられる
   ② ぼんやりしていることが多い
   ③ 生きがいを覚えているふうがない
   ④ 根気がまったく続かない
   ⑤ 発想が乏しく、画一的になる
   ⑥ 1日や1週間の計画が、自分で立てられない
   ⑦ 3つ以上の用事を、同時に並行して片づけられない
   ⑧ 反応がおそく、動作がモタモタしている
   ⑨ 同じことを繰り返し話したり、尋ねたりする
   ⑩ 相手の意見を聞かない

C.30項目問診票(浜松2段階方式)でチェックする日常生活の変化(2)
   (下記の⑪~⑳のうち4項目以上の状態が目立つようになる)
     ⇔ 上記の①~⑩の4項目以上の状態に加え、認知機能の障害が顕在化しやすい
   ⑪ 何度教えても日付があやふやになる(特に重要)
   ⑫ 身だしなみに無頓着になる
   ⑬ 今までできていた、家庭内の簡単な用事ができない(洗濯物の整理、草取りなど)
   ⑭ ガス、風呂の火、電気の消し忘れ、水道の締め忘れが目立つ
   ⑮ 料理がうまくできず、味付けが変になる(おかずの種類が減る)
   ⑯ 薬を自分でキチンと飲めないので、家族が注意する必要がある
   ⑰ 季節や目的に合った洋服を選べない
   ⑱ 昨日のできごとをすっかり忘れてしまう
   ⑲ お金や持ち物のしまい場所を忘れて「盗まれた」と騒ぐ
   ⑳ 簡単な計算もできない

D.心理状態の変化(心理症状から精神症状へと悪化する場合もある)
 ( 陽性的な心理傾向の出現、尖鋭化 )
   ① 攻撃的;相手を追い詰め、それに執着する
   ② 易怒的;些細なことに対して急に怒り出す
   ③ 独善的;他人の言葉には耳を貸さなくなる
   ④ 衝動的;思いついたままに行動してしまう
   ⑤ 猜疑的;説明や説得に対して疑い深くなる
   ⑥ 妄想的;事実でないことを頑固に言い張る
 ( 陰性的な心理傾向の出現、尖鋭化 )
   ① 心気的;様々な心身の不調の訴えが増える
   ② 依存的;他人に頼る「指示待ち人」になる
   ③ 悲観的;何事に対しても悪く解釈して嘆く
   ④ 抑鬱的;様々な「うつ症状」が増えてくる
   ⑤ 自閉的;家や部屋に閉じ篭もりがちになる
   ⑥ 逃避的;周囲の働きかけに逃れようとする

 このブログの「02 知的機能(1)」〔2018/05/01〕で述べたとおり、前頭葉は「知的機能全体の司令塔」の役割を果たし、意志、意欲、興味、好奇心、注意集中、注意分配、記憶(記銘)、学習、見当識、推理、決断、自発性、計画性、工夫、創造、ユーモア、倫理、羞恥、忍耐、根気、感情抑制などの多種多彩な機能を担っています。これらの機能は人間において特に発達し「人間らしさ」や「その人らしさ」を表出する人格や性格を形成する一方、環境や社会に適応するための機能を担っています。そして、右脳が「感性の脳」、左脳が「理性の脳」と表現されるのに対し、前頭葉は「人間性の脳」と表現され、私たち人間において最も発達している「心(こころ)の機能」(心的機能)を担っているのです。
 前頭葉機能を評価する「かなひろいテスト」を実施して被験者を「不合格」と判定した場合には、被験者の前頭葉機能のどのような機能が低下し(障害され)、そのためにどのような日常生活能力に支障をもたらしているのかということを具体的に把握し、その支障を軽減、緩和するための対応(配慮、支援、介護)を提案、助言することが最も大切なことであると考えられます。

【参照】 ・02 知的機能(1)〔2018/05/01〕
     ・03 知的機能(2)〔2018/05/07〕
     ・04 知的機能(3)〔2018/05/09〕
     ・05 知的機能(4)〔2018/05/15〕
     ・07 老化廃用型認知症(3)〔2018/05/21〕
     ・29 高槻さんのブログ 〔2018/08/15〕




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