前々回のブログ「45 左脳と右脳〔18/11/21〕」では左脳(優位脳)と右脳(非優位脳/劣位脳)が担う認知機能の特性について解説しました。今回のブログでは左脳が担う「理性」と右脳が担う「感性」について整理しておきたいと思います。
前回のブログで言及した「左脳と右脳の協同」に関して、左脳と右脳における知覚情報の入出力のパターンに注目し、下図に示されるように、左脳と右脳の協同のパターンを「ささ脳」「さう脳」「うさ脳」「うう脳」の4つに分類して知的機能の特性を分析する考え方を紹介しておきます。興味深いことは、その真偽はともかく、前記の4つのパターンは「指の組み方」と「腕の組み方」の組み合わせによって決定されるようです。
〔 左脳と右脳のおける知覚情報の入出力に基づいた4つの脳 〕
(1)ささ脳(入力;左脳、出力;左脳)
・論理的にとらえ、論理的に処理
・物事を筋立ててマジメに考えるタイプ
・几帳面で努力家
(2)さう脳(入力;左脳、出力;右脳)
・論理的にとらえ、感覚的に処理
・理想と現実のギャップに苦しむ自己矛盾型
・その反面、細かいことは気にしないタイプ
(3)うさ脳(入力;右脳、出力;左脳)
・直感的にとらえ、論理的に処理
・完璧主義
・何事も自分で決めたい個性派タイプ
(4)うう脳(入力;右脳、出力;右脳)
・直感的にとらえ、感覚的に処理
・楽天的でマイペース
・直感とひらめき重視の感覚人間タイプ
次に、今回のブログのテーマである左脳と右脳が担う「理性」と「感性」のうち、このブログの読者の方々に「感性」を具体的にイメージしていただくために、老化廃用型認知症(本態性老年認知症)の提唱者である金子満雄博士が記述している「感性のない人の特徴」(30項目)を列記したいと思います。
〔 感性のない男性の特徴;家庭 〕
① 話がいつも理屈っぽく、くだけた話ができない
② 笑顔が少なく、いつも怒ったような顔をしている
③ 生活がワンパターン、着る服、通る道順も一定である
④ 地位や名誉を自慢し、それに固執する傾向が強い
⑤ 音楽や絵画には無関心、ゲームも賭け事と言い蔑視する
⑥ 家族の通俗的な話題には、まったく乗ってこない
⑦ 相談にも「○○は△△に決まっている」と怒りだす
⑧ 家族との休日の外出にも、背広とネクタイをする
⑨ 犬や猫、小鳥などを可愛いとは思わない
⑩ 外聞や面子をひどく気にする
〔 感性のない男性の特徴;職場 〕
① 会社の仲間ともあまり親しく付き合うことがない
② 上役には絶対服従で、部下には居丈高に振る舞う
③ 盆暮れの付け届けには、大変熱心である
④ 計算が細かく、ケチくさい
⑤ 仕事はキチンとするが、創意工夫や改善はしない
⑥ 仲間の昇進や栄転には、きわめて過敏に反応する
⑦ 部下の殊勲は自分の殊勲、自分の失敗は部下の所為にする
⑧ スポーツや麻雀など、職場対抗戦には付き合わない
⑨ 同僚や部下から好かれず、本人はそれに気付かない
⑩ 新しい職場や機器などに慣れることが苦手である
〔 感性のない女性の特徴 〕
① 心からの笑顔が少なく、ユーモアもうまく言えない
② 融通がきかず、決められた事を頑固に守ろうとする
③ 必要な時に、夫や子供に厳しい忠告が言えない
④ 子供に優しい言葉を掛けられず、小言や注文が多い
⑤ 子供には勉強だけを強制、教育ママと呼ばれている
⑥ PTAなどの役職を、極端に名誉に思う傾向にある
⑦ 外聞や体裁を過度に気にする、いつも見栄を張る
⑧ 人の噂をしたり陰口をたたくのが大好きである
⑨ 音楽やゲーム、スポーツを楽しむことを知らない
⑩ 衣装や装飾品のセンスが悪くブランド品にとびつく
上記の30項目を「感性のない人」への悪口のように受け止める方もおられるのではないかと心配していますが、これらの30項目の多くに自分が該当し憤慨されている方は「感性のない人」は「理性が優れている人」であると解釈していただければ幸いです。一方、何事にも無頓着で逞しく生きている「ワイルド」(野性的)な人は、ある意味では「理性と感性」(知性)に乏しい人と思われてしまうかも知れません。
左脳(理性)と右脳(感性)に関連する様々な考え方を紹介してきましたが、このブログの読者の方々に最も理解していただきたいことは、単なる老化現象から老化廃用型認知症に移行する過程において、まず前頭葉機能が病的に低下し(障害され)、これに伴って左脳が担う認知機能(理性)が病的に低下する(障害される)という事実です。また、右脳が担う認知機能(感性)や大脳辺縁系が担う情動機能(野性;本能/習性)は老人性認知症の終末期まで残存しているという事実です。
そして、分からない(認知できない)ことが徐々に増えてくるために適応障害や関係障害に苛まれている認知症高齢者においても、右脳が担う認知機能(感性)はいわゆる「認知障害」(左脳が担う認知機能の障害)が進行した段階でも残存していることを十分に認識しておいていただきたいのです。
つまり。本質的な問題(障害)は前頭葉機能の障害ではあるにせよ、左脳では認知できない(分からない、記憶できない)ことが知的機能の障害の進行に伴って増加する一方、特に「感性優位(残存)型」の認知症高齢者においては。右脳で認知できる(分かる、記憶できる)知的機能はそれなりに残っているという事実を理論と実践の両面から十分に理解して、老人性認知症の確実な予防と認知症高齢者の適切な介護に活用していただきたいと願っています。
【参照】 ・02 知的機能(1)〔18/05/01〕
・41 脳は「1つの脳」(重要)〔2018/11/07〕
・45 左脳と右脳 〔18/11/21〕