今回のブログでは、認知症高齢者の「意思能力の程度」を判断した場合に「本人の意思」にどのように対応すれば良いのか、「意思能力の程度に応じた対応」について考えてみたいと思います。また、介護の現場において認知症高齢者の「意思能力の程度」を簡便かつ的確に判断する「超簡易判定」を提示したいと思います。
成年後見制度における後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)の選定は、その判断の根拠はともかく、認知症高齢者の「判断能力の程度」によって決定されます。また、成年後見制度は主に財産管理などに関する法律行為を定めたもので、介護に関連する行為としては「身上監護」(入退所に関する手続きなど、生活や療養に関する事務行為)が明記されているものの、介護に必要な様々な行為(直接行為)、入退所そのものに関する行為、身体拘束に関する行為、選挙(不在者投票)に関する行為などについては定められていません。
しかしながら、今回のブログのテーマである認知症高齢者の「意思能力の程度に応じた対応」については、成年後見制度における後見人等に与えられている代理権や同意権、取消権などの権限やその権限に応じた職務を参考にしながら考えてみたいと思います。このブログでは、これらの権限や職務の一部である代理権と同意権に着目したいと思いますが、成年後見人には代理権が与えられ、本人の意思(同意)はともかく、成年後見人の意思が認められます。一方、保佐人には同意権が与えられ、本人の意思に加えて保佐人の意思が認められます。そして、補助人には、特定の行為に限定した範囲で、本人の意思に加えて補助人の意思も認められます。ただし、これらの代理権や同意権は「重要な財産行為に限られた権利」についての同意であり「日常生活における様々な行為」についての同意ではありません。また、後見人等の権限や職務に関しては、全ての法律行為ではなく、意思表示の対象ごとに判断しなければならないと定められています。このような背景を念頭に置きながら、介護に必要な様々な行為(直接行為)などについては「成年後見制度に定められている権限や職務に準じて「本人の意思」を尊重しながら実施することが適切ではないかと思われます。
前回のブログにおいて、このブログでは認知症高齢者(老化廃用型認知症)における知的機能の障害の進行度を「正常;年齢相応」を含めて「初発期;小ボケ」「境界期;中ボケ」「進行期;大ボケ」の4段階に分類し、成年後見人の選定の指標を提示するとともに「生活年齢」や「生活実態」などから「意思能力の程度」を判断しても支障がないと解説してきました。
したがって、「進行期」(成年後見人の選定に相当するレベル)の認知症高齢者の本人の意思については「尊重しすぎずに」、「境界期」(保佐人の選定に相当するレベル)の認知症高齢者の本人の意思については「ある程度は尊重して」、「初発期」(補助人の選定に相当するレベル)の認知症高齢者の本人の意思については「基本的には尊重して」、それぞれに応じた「一定の説明と同意」を前提として、介護に必要な様々な行為(直接行為)などを実施することが適切ではないかと考えています。
「尊重しすぎずに」「ある程度は尊重して」「基本的には尊重して」という表現が具体性に欠けていることは十分承知していますが、乳幼児を託児所や保育園に預ける場合や日常の育児において、乳幼児の「本人の意思」をどの程度まで尊重するのか、ということを想定してみればイメージしやすいのではないかと思います。ちなみに、一般的には10歳未満の幼児には「意思能力」がないとされているようです。当然のことながら、認知症高齢者と乳幼児の「意思能力」が同じレベルであるとしても、認知症高齢者には知識や経験、プライドなどが残されていることを忘れてはいけません。しかし、残された知識や経験、プライドなどが「意思能力」を補う場合もあれば、「意思能力」を損なう場合も決して少なくないという、悩ましい現実を知っておくべきです。また「一定の説明と同意」という表現も具体性に欠けていると思いますが、「意思能力の程度に応じた説明と同意」、つまり「知的機能の障害の程度に応じた説明と同意」については別の機会に書き述べたいと思います。
一方、介護施設の職員は、認知症高齢者の保護者ではなく成年後見人や保佐人、補助人でもありません。一定の契約関係の下で介護を中心とした保護業務を委託されているに過ぎません。したがって、認知症高齢者に介護に関する様々な行為(直接行為)などを提供する施設の職員は、予め個々の認知症高齢者の「意思能力の程度」を的確に把握して全ての職員が共有するとともに、認知症高齢者の保護者として位置付けられる家族等に対して「本人の意思をどの程度尊重すべきなのか」あるいは「本人の意思にどのように対応すれば良いのか」ということについて、例えば帰宅行為時の対応や入浴拒否時の対応など、できるだけ具体的な場面を想定して事前に話し合っておく必要があると思われます。
今回のブログでは、認知症高齢者の介護に必要な様々な行為(直接行為)などを実施する際の「意思能力の程度に応じた対応」について解説してきましたが、最後に、介護の現場において認知症高齢者の「意思能力の程度」を簡便かつ的確に判断する「超簡易判定」を、下記のとおり、提示しておきたいと思います(認知症高齢者の日常生活自立度分類も参考にしてください)。
① 日付(日・年・月)の全てが正しく答えられる場合
(認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅱa以上」に相応する場合)
→ 本人の意思を「基本的には尊重して」対応する
② 日付(日・年・月)のうち、「月」だけは正しく答えられる場合
(認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅱb」に相応する場合)
→ 本人の意思を「ある程度は尊重して」対応する
③ 日付(日・年・月)のうち、「月」も正しく答えられない場合
(認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅲa」以下)に相応する場合)
→ 本人の意思を「尊重しすぎずに」対応する

このブログの読者の皆様には、日々の介護の現場で上記の「超簡易判定」を実践していただき、その有用性についてのご感想やご意見、ご批判をいただければ幸いです。
また、認知症高齢者の「本人の意思」に興味や関心を持っていただいた読者の皆様には、厚生労働省の「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(平成30年6月)を紹介させていただきたいと思います。ただし、あまり熟読しないほうが良いと思っていますが ・・・ 。
成年後見制度における後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)の選定は、その判断の根拠はともかく、認知症高齢者の「判断能力の程度」によって決定されます。また、成年後見制度は主に財産管理などに関する法律行為を定めたもので、介護に関連する行為としては「身上監護」(入退所に関する手続きなど、生活や療養に関する事務行為)が明記されているものの、介護に必要な様々な行為(直接行為)、入退所そのものに関する行為、身体拘束に関する行為、選挙(不在者投票)に関する行為などについては定められていません。
しかしながら、今回のブログのテーマである認知症高齢者の「意思能力の程度に応じた対応」については、成年後見制度における後見人等に与えられている代理権や同意権、取消権などの権限やその権限に応じた職務を参考にしながら考えてみたいと思います。このブログでは、これらの権限や職務の一部である代理権と同意権に着目したいと思いますが、成年後見人には代理権が与えられ、本人の意思(同意)はともかく、成年後見人の意思が認められます。一方、保佐人には同意権が与えられ、本人の意思に加えて保佐人の意思が認められます。そして、補助人には、特定の行為に限定した範囲で、本人の意思に加えて補助人の意思も認められます。ただし、これらの代理権や同意権は「重要な財産行為に限られた権利」についての同意であり「日常生活における様々な行為」についての同意ではありません。また、後見人等の権限や職務に関しては、全ての法律行為ではなく、意思表示の対象ごとに判断しなければならないと定められています。このような背景を念頭に置きながら、介護に必要な様々な行為(直接行為)などについては「成年後見制度に定められている権限や職務に準じて「本人の意思」を尊重しながら実施することが適切ではないかと思われます。
前回のブログにおいて、このブログでは認知症高齢者(老化廃用型認知症)における知的機能の障害の進行度を「正常;年齢相応」を含めて「初発期;小ボケ」「境界期;中ボケ」「進行期;大ボケ」の4段階に分類し、成年後見人の選定の指標を提示するとともに「生活年齢」や「生活実態」などから「意思能力の程度」を判断しても支障がないと解説してきました。
したがって、「進行期」(成年後見人の選定に相当するレベル)の認知症高齢者の本人の意思については「尊重しすぎずに」、「境界期」(保佐人の選定に相当するレベル)の認知症高齢者の本人の意思については「ある程度は尊重して」、「初発期」(補助人の選定に相当するレベル)の認知症高齢者の本人の意思については「基本的には尊重して」、それぞれに応じた「一定の説明と同意」を前提として、介護に必要な様々な行為(直接行為)などを実施することが適切ではないかと考えています。
「尊重しすぎずに」「ある程度は尊重して」「基本的には尊重して」という表現が具体性に欠けていることは十分承知していますが、乳幼児を託児所や保育園に預ける場合や日常の育児において、乳幼児の「本人の意思」をどの程度まで尊重するのか、ということを想定してみればイメージしやすいのではないかと思います。ちなみに、一般的には10歳未満の幼児には「意思能力」がないとされているようです。当然のことながら、認知症高齢者と乳幼児の「意思能力」が同じレベルであるとしても、認知症高齢者には知識や経験、プライドなどが残されていることを忘れてはいけません。しかし、残された知識や経験、プライドなどが「意思能力」を補う場合もあれば、「意思能力」を損なう場合も決して少なくないという、悩ましい現実を知っておくべきです。また「一定の説明と同意」という表現も具体性に欠けていると思いますが、「意思能力の程度に応じた説明と同意」、つまり「知的機能の障害の程度に応じた説明と同意」については別の機会に書き述べたいと思います。
一方、介護施設の職員は、認知症高齢者の保護者ではなく成年後見人や保佐人、補助人でもありません。一定の契約関係の下で介護を中心とした保護業務を委託されているに過ぎません。したがって、認知症高齢者に介護に関する様々な行為(直接行為)などを提供する施設の職員は、予め個々の認知症高齢者の「意思能力の程度」を的確に把握して全ての職員が共有するとともに、認知症高齢者の保護者として位置付けられる家族等に対して「本人の意思をどの程度尊重すべきなのか」あるいは「本人の意思にどのように対応すれば良いのか」ということについて、例えば帰宅行為時の対応や入浴拒否時の対応など、できるだけ具体的な場面を想定して事前に話し合っておく必要があると思われます。
今回のブログでは、認知症高齢者の介護に必要な様々な行為(直接行為)などを実施する際の「意思能力の程度に応じた対応」について解説してきましたが、最後に、介護の現場において認知症高齢者の「意思能力の程度」を簡便かつ的確に判断する「超簡易判定」を、下記のとおり、提示しておきたいと思います(認知症高齢者の日常生活自立度分類も参考にしてください)。
① 日付(日・年・月)の全てが正しく答えられる場合
(認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅱa以上」に相応する場合)
→ 本人の意思を「基本的には尊重して」対応する
② 日付(日・年・月)のうち、「月」だけは正しく答えられる場合
(認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅱb」に相応する場合)
→ 本人の意思を「ある程度は尊重して」対応する
③ 日付(日・年・月)のうち、「月」も正しく答えられない場合
(認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅲa」以下)に相応する場合)
→ 本人の意思を「尊重しすぎずに」対応する

このブログの読者の皆様には、日々の介護の現場で上記の「超簡易判定」を実践していただき、その有用性についてのご感想やご意見、ご批判をいただければ幸いです。
また、認知症高齢者の「本人の意思」に興味や関心を持っていただいた読者の皆様には、厚生労働省の「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(平成30年6月)を紹介させていただきたいと思います。ただし、あまり熟読しないほうが良いと思っていますが ・・・ 。