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誰も知らない認知症;脳のはたらき(知的機能)からみた老人性認知症の予防と介護

老人性認知症の確実な予防方法と認知症高齢者の適切な介護方法をシリーズで解説します。

60 しばらくお休みします

2019-02-28 09:17:59 | 日記

 明日から「春」ですね。昨年の4月中旬に思い付きで始めたこのブログ「誰も知らない認知症」への投稿も既に60回を超えました。誰も知らない「一方通行の勝手気儘なブログ」ではありますが、今後も懲りずに続けようと思っています。しかし、今回をもちまして、ブログ「誰も知らない認知症」をしばらくお休みさせていただきます。

 実は、20年間勤務してきた岐阜県垂井町にある「介護老人保健施設あいかわ」を3月末に退職し、4月1日からは北海道帯広市近郊の音更町にある「介護老人保健施設とかち」に勤務することになりました。したがって、当面は残務整理と新しい職場での仕事に専念したいと思っています。



 そして、新たな職場である「介護老人保健施設とかち」での業務が安定すると思われる5月~6月頃には、このブログ「誰も知らない認知症」(実践編)を再開することができればと願っています。

 このブログの賢明で奇特な読者の皆様には、これまで閲覧し続けていただきましたことに心から感謝申し上げます。また、最近このブログを閲覧し始めた皆様には、しばらくの間、特に下記の「本編」を熟読していただければ幸いです。ふちがみ


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「誰も知らない認知症;脳のはたらき(知的機能)からみた老人性認知症の予防と介護」

00 老人性認知症の正しい知識を普及するために ( 2018-04-20 )
01 誰も知らない認知症 ( 2018-04-23 )

【本編】(基本編)

02 知的機能(1) ( 2018-05-01 )
03 知的機能(2) ( 2018-05-07 )
04 知的機能(3) ( 2018-05-09 )
05 知的機能(4) ( 2018-05-15 )
06 老化廃用型認知症(1) ( 2018-05-16 )
07 老化廃用型認知症(2) ( 2018-05-21 )
08 老化廃用型認知症(3) ( 2018-05-23 )
09 老人性認知症の予防(1) ( 2018-05-28 )
10 老人性認知症の予防(2) ( 2018-05-30 )
11 老人性認知症の予防(3) ( 2018-06-04 )
12 老人性認知症の予防(4) ( 2018-06-05 )
13 認知症高齢者の介護(1) ( 2018-06-06 )
14 認知症高齢者の介護(2) ( 2018-06-11 )
15 認知症高齢者の介護(3) ( 2018-06-13 )
16 認知症高齢者の介護(4) ( 2018-06-18 )
17 認知症高齢者の介護(5) ( 2018-06-20 )
18 認知症高齢者の介護(6) ( 2018-06-25 )
19 認知症高齢者の介護(7) ( 2018-06-27 )
20 認知症高齢者の介護(8) ( 2018-07-02 )
21 認知症高齢者の介護(9) ( 2018-07-04 )
22 認知症高齢者の介護(10) ( 2018-07-09 )
23 認知症の「事実」 ( 2018-07-11 )
24 REVIEW/02~23 ( 2018-07-18 )
25 認知症川柳(再掲) ( 2018-07-23 )

【続編】(応用編)

26 今後の予定について ( 2018-07-25 )
27 かなひろいテストの集計方法 ( 2018-08-01 )
28 脳リハビリの本(日記) ( 2018-08-08 )
29 高槻さんのブログ ( 2018-08-15 )
30 「認知」という言葉 ( 2018-08-22 )
31 アミロイドβの蓄積 ( 2018-08-29 )
32 海馬の萎縮 ( 2018-09-05 )
33 こんな時にボケやすい ( 2018-09-12 )
34 こんな人がボケやすい ( 2018-09-19 )
35 人は年老いて3度死ぬ ( 2018-09-26 )
36 生きがいの成り立ち ( 2018-10-03 )
37 MMSとMMSE ( 2018-10-10 )
38 日付の確認(難解) ( 2018-10-17 )
39 かなひろいテスト不合格(1) ( 2018-10-24 )
40 かなひろいテスト不合格(2) ( 2018-10-31 )
41 脳は「1つの脳」(重要) ( 2018-11-07 )
42 再び「知的機能」(重要) ( 2018-11-09 )
43 前頭葉と「心」「意」「気」 ( 2018-11-10 )
44 こころの知能指数 ( 2018-11-12 )
45 左脳と右脳 ( 2018-11-21 )
46 長谷川先生が認知症? ( 2018-11-28 )
47 理性と感性 ( 2018-12-05 )
48 大脳辺縁系/情動機能 (2018-12-12 )
49 情動/感情/気分 ( 2018-12-19 )
50 快の情動/不快の情動 ( 2018-12-26 )
51 謹賀新年/今年の予定 ( 2019-01-02 )
52 知的機能からみた介護のポイント ( 2019-01-09 )
53 知 からみた介護のポイント ( 2019-01-16 )
54 情 からみた介護のポイント ( 2019-01-23 )
55 意 からみた介護のポイント ( 2019-01-30 )
56 知情意 からみた介護のポイント ( 2019-02-06 )
57 Q&A 01 認知症の予防 ( 2019-02-13 )
58 脳の老化にご用心(1) ( 2019-02-20 )
59 脳の老化にご用心(2) ( 2019-02-27 )
60 しばらくお休みします

【実践編】(新しい職場での実践を通じて)

61~ 5月中旬頃から再開させていただく予定です。


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59 脳の老化にご用心(2)

2019-02-27 11:29:46 | 日記

(お知らせ)
 2月22日(金)に岐阜県老人保健施設協会が主催する「介護老人保健施設職員現任研修会」が開催され、「脳のはたらき(知的機能)からみた認知症」というテーマで講演させていただきました。その際に使用したプレゼンテーション(パワーポイント)のファイルをご希望の方は、このブログの連絡先( fuchi@hakuaikai.jp )まで、必ず「メール」でご請求下さい。無料で返送させていただきます。
 また、昨年4月まで毎年続けていた岐阜大学医学部看護学科の選択講義「認知症と看護」のプレゼンテーション(パワーポイント)のファイル(①脳のはたらきからみた認知症/概論、②認知症高齢者の介護、③老人性認知症の予防)についても、ご希望があれば添付させていただきます。


 今回は、前回の「58 脳の老化にご用心(1)〔2019/02/20〕」に引き続き、老人性認知症の原因疾患の大多数を占めていると考えられる「老化廃用型認知症」の予防を理解していただくために、岐阜県垂井町で毎年6回定期的に開催している「公民館等での講演会」で用いている資料をご紹介したいと思います。

〔 脳の老化にご用心!;ボケの始まりはチェックできます 〕(2)

脳(前頭葉)の老化を反映する「かなひろいテスト」
 「かなひろいテスト」は前頭葉の機能を評価するために開発された検査で「脳の老化度」を調べることができます。「かなひろいテスト」の内容や実施方法については「脳の老化にご用心(1)」でご紹介したとおりですが、「かなひろいテスト」の成績(正答数)は加齢とともに直線的に低下していくことが知られています【資料3】。
 「かなひろいテスト」の成績の低下は「脳(前頭葉)の老化現象」を反映するもので、誰でも齢を重ねるごとに「もの忘れ」や「うっかり」が増え「意欲」や「集中力」などが低下していくことを裏付けています。また、加齢による影響だけでなく、脳(前頭葉)を使わなくなるような生活を続けている場合(長期の入院生活など)にも「かなひろいテスト」の成績は低下していきます(廃用性変化)。
 【資料3】には年代別の平均値が示されていますが、実際には個人ごとに「脳の老化度」を判断していく必要があります。例えば75歳の方の成績が20個の場合、65歳の時の成績が30個であれば老化は急速に進んでいると考えられ、逆に、65歳の時の成績が20個であれば「脳の老化はほとんど進んでいない」と判断することができます。このように「かなひろいテスト」は「その人の脳の老化現象」をチェックするための指標として用いられています。

【資料3】



「不安」や「心配」は「脳の老化現象の悪循環」
 個人差はありますが、一般的に脳の老化現象は70歳以降に急速に進んでいくようです。この時期には「いきがい」や「なかま」「やくわり」を失っていく場合が多く、また「目や耳、足腰の衰え」や「病気や怪我による長期の入院」「家庭での孤立や過保護」などにより「脳(前頭葉)を使わない生活」が徐々に忍び寄ってきます。「もう歳だから仕方ない」と溜息をつく日々が増えてくるかもしれません。
 身体に自信がある人でも「もの忘れ」や「うっかり」が多くなると「ボケが始まったのではないだろうか」という「不安」や「心配」が増えてくるようです。このような「不安」や「心配」は「脳(前頭葉)の老化現象」をさらに加速して「能の老化現象の悪循環」が始まることも決して少なくありません。

毎年1回「かなひろいテスト」で「脳の老化度のチェック」を
 誰もが経験する高齢期の拠りどころのない不安や心配を避けるためには「脳の老化度をチェックすること」をお薦めします。毎年1~2回「かなひろいテスト」を実施して脳の老化度をチェックし、「合格」すなわち「まだ大丈夫」であることを確認し、自信と余裕のある生活を楽しんでいただきたいと思います。
 意外にも「かなひろいテスト」が「不合格」であった場合でも、今日の日付(年月日)が言えるうちは「まだ大丈夫」。ただし、何かご自分にあった楽しい「脳リハビリ」を見つけ、日々の生活習慣に必ず取り入れてください。
 【資料4】には、毎年1回の「かなひろいテスト」を続けながら「脳の老化度」をチェックしている高齢者のモデルが示されています。

【資料4】



おわりに
 「かなひろいテスト」による「脳の老化度のチェック」は家庭内や老人会などでも気軽にできる方法です。全国の先駆的な市町村では、この方法を用いてボケ予防のための健康診断や健康教室を実施しています。
 最近「もの忘れ」や「うっかり」が増え「一人でこっそりと調べたい」と思われる方は「浜松2段階方式」を採用している「もの忘れ外来」を受診されるようお勧めしておきたいと思います。





58 脳の老化にご用心(1)

2019-02-20 10:29:53 | 日記

 老人性認知症の原因疾患の大多数を占めていると考えられる「老化廃用型認知症」の予防を理解していただくために、岐阜県垂井町で毎年6回定期的に開催している「認知症がわかる会;脳の老化と認知症の予防」(地域住民の方々を対象とした公民館等での講演会)で用いている資料を2回シリーズでご紹介したいと思います。

〔 脳の老化にご用心!;ボケの始まりはチェックできます 〕(1)

 脳のはたらき(知的機能)は「前頭葉」と「左脳」「右脳」「大脳辺縁系」によって維持されています。そして、「前頭葉」と「左脳」の機能を検査することによって「老化現象」から「認知症」へと進行していく段階を調べることができます。

「小ボケ」から「中ボケ」「大ボケ」へ

 前頭葉の機能は加齢に伴って低下していきます(正常老化)。しかし、病的な低下がみられるようになった段階が「小ボケ」(初発期)です。また、「左脳」の機能が障害され始める段階が「中ボケ」(境界期)と呼ばれる段階で、さらに障害が進行していくと「大ボケ」(進行期;世間一般に言われる認知症)と呼ばれる段階になります。
 老人性認知症の原因については様々な考え方がありますが高齢期における認知症の大多数が「小ボケ」から「中ボケ」「大ボケ」へ進行していく老化廃用型認知症(頭の寝たきり)であると考えられます。そして、早期発見と早期対応による「認知症の予防」だけでなく、「脳の老化防止」も十分可能であることを理解していただきたいと思います。

「かなひろいテスト」が「不合格」なら ・・・ 「小ボケ」

 誰にでもみられる脳の老化現象(正常老化)と「小ボケ」(初発期)とを見分けるためには、前頭葉の機能を検査する「かなひろいテスト」【資料1】が必要不可欠です。話の内容を覚えていて少なくとも10個以上「あ・い・う・え・お」が正しく拾えていれば「合格」と判断され、「小ボケ」の段階までは進んでいないと考えられます。徐々に進んでいく脳の老化現象をチェックするために、毎年1~2回「かなひろいテスト」にチャレンジしていただくようお勧めします。

【資料1】



「日」と「年」が思い出せなくなったら ・・・ 「中ボケ」

 「中ボケ」は認知症の始まりです。認知症が始まったのではと心配するような症状がみられなくても要注意です。「中ボケ」にまで進んでいるかどうかを日常生活の様子でチェックする方法は「日付(年月日)の確認」です。「月」は言えても「日」や「年」が思い出せないような状態であれば、すでに「中ボケ」の段階まで進み「左脳」の障害(認知障害)が始まっていると考えられます。
 「大ボケ」の段階への進行を防ぐために、できれば「日付(年月日)」が言える「小ボケ」や「正常老化」の段階にまで回復するためには、「脳リハビリ」を意識した生活内容の改善に早急に取り組む必要があります。

「頭の寝たきり」防ぎましょう!

 「頭の寝たきり」(老化廃用型認知症)の進行度は「30項目問診表」【資料2】である程度は推測できます。しかし、「かなひろいテスト」と「日付(年月日)の確認」によって「小ボケ」の段階で、「中ボケ」の段階に進行する前に確実にチェックしておくことが大切です。
 「小ボケ」「中ボケ」へと進行していく高齢者の日常生活の大きな問題点は、無為無欲の生活、つまり「頭の寝たきり」です。脳の老化を防ぐためにも、認知症への進行を防ぐためにも、脳への刺激を意識して「頭の寝たきり」を防ぐことが大変重要です。
 特に後期高齢期においては「いきがい、なかま、やくわり」や「すきなこと、したいこと、できること」を十分意識しながら「か;感動、き;興味、く;工夫、け;計画、こ;恋」のある日常生活を心掛け、「元気で」「楽しく」「逞しく」充実した人生を過ごせるよう、日々の生活習慣を見直していただきたいと思います。

【資料2】



( 次回の「59 脳の老化にご用心(2)〔2019/02/27〕」に続く )





57 Q&A 01 認知症の予防

2019-02-13 11:16:24 | 日記

 今回のブログは「Q&A」シリーズの第1回目で「認知症の予防」に関するご質問への回答です。今年の初めに「テニス半兵衛さん」から「最近、人の名前が出にくくなっています。今年は具体的な予防法が聞けるとのこと、是非お願いします。」というご質問(ご要望?)をいただきました。しかし、その時には「認知症高齢者の介護」の5回シリーズを予定していましたので、5回シリーズの終了後に回答させていたくことをお約束していました。

 「(認知症の)具体的な予防法」という(単刀直入すぎる?)ご質問に対して、どのように回答すれば良いのか、実はしばらく考え込み、得られた結論は「最も大切な事を単純明快に回答すること」でした。そのような経緯で、今回のご質問に対しては〔元気な時から、少なくとも毎年1回は「かなひろいテスト」で「脳の老化度」をチェックすること〕と回答させていただきたいと思います。



 当然のことながら「何故?」「どうして?」「かなひろいテストって何?」などの様々な疑問を感じて詳しい説明を求められる方々も少なくないと思いますが、そのような方々にはこのブログ「誰も知らない認知症」で記述してきたことを読み返していただければ幸いです。どのような人にも共通する「予防のポイント」を敢えて強調するならば、それは〔無為無欲の生活を避けること〕(毎日をボーっと過ごさないこと)に尽きると思います。



 「毎日をボーっと過ごしていないかどうか?」を自分自身でチェックする目安として、下記の「脳リハビリのチェック票」を活用していただければ幸いです。「かなひろいテスト」が「合格」で「脳リハビリのチェック票」で「ぴかぴか」「なかなか」であれば、認知症になる心配は全くありません。安心して「元気で、楽しく、逞しく」毎日を過ごしてください。




56 知情意 からみた介護のポイント

2019-02-06 10:42:22 | 日記

 このブログ「誰も知らない認知症」では「52 知的機能からみた介護のポイント〔2019/01/09〕」以降の5回シリーズで「脳のはたらき(知的機能)からみた認知症高齢者の介護」について詳しく解説してきました。今回はこの5回シリーズのまとめを「知情意からみた介護のポイント」というテーマで総括しておきたいと思います。

 このブログの「22 認知症高齢者の介護(10)〔2018/07/09〕」では「脳のはたらき(知的機能)からみた認知症高齢者の介護」の総括として下図に示される10項目(①~⑩)の「知的機能(知情意)からみた認知症高齢者の介護のポイント」を提示しました。



 そして、この5回シリーズの最初のブログである「52 知的機能からみた介護のポイント〔2018/01/09〕の文末で、このブログの重要なテーマの一つである「認知症高齢者の適切な介護」を展開していくための重要事項として以下の2点を強調しておきました。

 (1)認知症高齢者の「病名」や「症状」に振り回されるのではなく、また「知」の
    一部の障害にすぎない「記憶障害」や「認知障害」に目を奪われることは避け
    ること
 (2)「知」(認知機能)「情」(情動機能)「意」(統合機能)それぞれの視点か
    ら認知症高齢者の知的機能の特性(状態および病態)を分析するとともに「介
    護される側/人」の「知情意」すなわち知的機能全体を把握して「障害と個性
    に応じた適切な介護」を実践すること


 今回のブログのテーマである「知情意からみた介護のポイント」において最も強調しておきたいのは、上記の10項目のポイントの最後の項目として位置付けた「⑩ 人(知情意)と人(知情意)との関係が(介護の)基本」という項目です。説明するまでもないことですが、介護する側(人)と介護される側(人)の人間関係が(それなりに)良好でなければ、どのような介護の知識や技術、経験も役には立ちません。



 「人(知情意)と人(知情意)との関係」とは、分かりやすく表現すれば「心(こころ)と心(こころ)との関係」です。単に「心(こころ)と心(こころ)の関係」と言ってしまえば良さそうなものですが、身体(からだ)とは異なり、心(こころ)は抽象的、感覚的に理解することができても、何が問題でどのように対応すれば良いのかを具体的に理解することが容易ではありません。また、人の「心(こころ)」や「言動や表情などの態度(対応)」にはその人の「知情意」が反映される一方、相手の「知情意」が反映された(相手の)「心(こころ)」や「言動や表情などの態度(対応)」の影響を受けている場合が少なくありません。

 このブログ「誰も知らない認知症」では、心(こころ)とは「脳のはたらき(知的機能)」であり「知情意のネットワーク」から生まれる(創発する)ことを繰り返し説明してきました。知的機能(前頭葉機能が担う統合機能や左脳が担う認知機能)に障害のある認知症高齢者の介護に際しては、単に記憶や計算、理解などの認知機能(理性)の障害に目を向けるのではなく、知的機能(知情意)全体、あるいは知的機能を制御している統合機能(人間性)やその障害を視野に入れることが不可欠です。また、知的機能の基本であり認知障害が進行した段階でも保持されている情動機能の存在を常に意識しておくことが重要です。そのような意味で、IQ(あたまの知能指数)ではなく、EQ(こころの知能指数)を意識した認知症高齢者の介護を展開していくことが重要であることを強調しておきたいと思います。



 このブログ「43 こころの知能指数〔2018/11/12〕」で解説したEQ(こころの知能指数)は上図に示されるような様々な10項目の「EQファクター」で構成されているので、或る意味では抽象的な指標のように受け止められるかもしれません。しかし、評価の視点は具体的な内容(EQテストに用いられる60項目)で設定されているので、それぞれの視点からの評価を総合することによって「介護される側/人」のEQだけでなく「介護する側/人」のEQを把握することができます。また、大切なことは「EQのプロフィール」を実際に評価することではなく、EQのイメージ(プロフィール)を念頭に置いて「介護される側/人」や「介護する側/人」の「個性」を把握することだと思われます。
 障害福祉の領域では「障害」も「個性」の1つとみる考え方もあるようですが、「個性」を形成している代表的な要素として「性格」「生活歴」「知的機能」を挙げることができると考えられます。そして、「性格」は「知的機能(知情意)の使われ方の傾向」、「生活歴」は「知的機能(知情意)が使われてきた実績」、「知的機能」は「知的機能(知情意)の現在の状態/障害」であると捉え、これらの3要素を的確に把握することによって「障害と個性に応じた適切な介護」を具体的に展開することができます。つまり、EQは「個性を反映する指標」であり、EQを介した人間関係や介護を重視することが大切であることを強調しておきたいと思います。

 いずれにせよ、感情や気分に振り回されるような介護(言動や表情など)は出来るだけ制御すべき(慎しむようにすべき)です。そして、どのような理由や事情がある場合でも、情動に振り回されるような介護(言動や表情など)は絶対に許されないことを肝に銘じておく必要があります。また、情動の暴走だけではなく、理性の暴走による介護の逆効果や悪循環(不快のサイクル)も避けることが必要です。
 これとは逆に「EQ(こころの知能指数)で介護する」具体的な方法の1つとして「好いとこ取り」の介護(快のサイクル)を提示しておきたいと思います。例えば、個性(人間性や性格など)は多種多様であることから「良い」とか「悪い(良くない)」と言う視点ではなく、どのような個性にも「良い部分」と「悪い(良くない)部分」が必ずあるという視点で個性を捉え、「介護される側/人」の個性の「良い部分」を重視する(好いとこ取りをする)介護を実践することです(例え演技であっても)。
 そして、このような介護の視点を「知っておくこと」(気付いておくこと、意識しておくこと)と「知らないこと」(気付かないこと、意識しないこと)とでは特に認知症高齢者の介護においては「介護の質や手間などに大きな差異」がみられることを、介護施設などで実際に介護に携わっている職員の方々には必ず実感していただけると思います。さらに、前述した「好いとこ取り」のアプローチを実践しない(試みない)ことは「介護される側/人」や「介護する側/人」の両方にとって大変残念なことであり、不幸なことでもあるように思わざるを得ません。



 どのような時も、どのような状態でも、そして「介護される側/人」も「介護する側/人」も、誰もが「より良く、上手く、逞しく」生活していきたいと願っていると思います。今回の「脳のはたらき(知的機能/知情意)からみた認知症高齢者の介護」すなわち「知(認知機能)情(情動機能)意(統合機能)からみた認知症高齢者の介護」の5回シリーズの結論として、知的機能の基本である情動機能に注目して「不快のサイクル」は可能な限り封印し、「快のサイクル」を常に意識しながら「障害と個性に応じた適切な介護」を展開していただきたいと願っています。

 【参照】 ・52 知的機能からみた介護のポイント〔2019/01/09〕
      ・53 知 からみた介護のポイント〔2019/01/16〕
      ・54 情 からみた介護のポイント〔2019/01/23〕
      ・55 意 からみた介護のポイント〔2019/01/30〕