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欧州首脳会議 銀行監督一元化で合意(2012年)

2012-12-30 23:41:48 | Economics
欧州首脳会議 銀行監督一元化で合意(2012年10月18日―19日 12月13日ー14日)
2012年12月
12月18日 S&Pがギリシャの長期債格付けを 従来の投機的水準から シングルBマイナスに引き上げ
12月18日 イタリアのモンティ首相がナポリターノ大統領に辞表を提出 辞任した。21日に下院が13年度予算案を可決したことを受けて辞任。
 来年2月に総選挙。景気後退下での緊縮財政政策(増税 失業増)に国民の不満強かった。
12月13日-14日 欧州(EU)首脳会議 銀行監督の一元化など欧州統合の深化で合意(しかし成長戦略は不在 景気は低迷へ)
 ギリシャへの491億ユーロの融資再開
 銀行監督の一元化 早ければ2014年3月から導入
 銀行への資本直接注入 2013年3月までにESMが実施可能な枠組み案をまとめる
 銀行の破たん処理制度の統一 2013年6月までに基準統一で合意
 ユーロ圏予算の一部共通化 ユーロ共同債 → 議論は先送り  
12月12日―13日 ユーロ圏財務相会議
 ギリシャへの支援 来年3月末までに491億ユーロを承認 このうち343億ユーロを数日内に実行 
 銀行監督についてはECBが域内の大手150行 残りの中小銀行は引き続き各国の監督当局が担うという妥協が成立

(12月12日 米国では米FOMCが失業率が6.5%程度に落ち着くまでは事実上ゼロ金利政策を続けることを決定した。)
12月3日 ギリシャ 民間投資家が保有する国債の買戻しを発表 購入価格は額面の30.2-40.1%に設定。
    現在の市場価格は10年もので41%強(先週末の37%から急上昇)
12月3日 スペイン財務相 同国の銀行部門への支援 第一弾の資金支援395億ユーロを正式に申請 

2012年11月
11月30日 ムーデイズ 欧州安定メカニズムの長期格付けをAaaからAa1に格下げ フランス格下げを反映
11月27日 ユーロ圏財務相会議 ギリシャへの追加支援で合意
     凍結分437億ユーロの実行 既存融資の金利の引き下げ 返済延期など 市場予想上回る内容だが 8月の失業率が25.4%など実体経済     の悪化にはどめかからない 現在170%の債務残高を2020年に124%に引き下げる計画で合意 26日に協議 27日未明に合意
     すでに財政赤字削減策(GDP比3%以下に削減)達成期限を2014年から2年延長は承認
 
11月23日 S&P フランス国債の格付けダブルAプラスに据え置く 見通しはネガテブ(13年中に格下げする可能性が3分の1以上)
11月20日ー21日 ユーロ圏財務相会議 ギリシャ支援 結論出せず持越し
     IMFが 債務減免を各国政府や欧州中央銀行を含む公的部門に拡大するよう求めているとも
11月19日 ムーデイズがフランス国債の格付けをAaa(トリプルA)からAa1(ダブルA)へ1段階引き下げ
11月15日 7-9月 ユーロ圏GDP 前期比-0.1%減 2期連続マイナス成長 ドイツも成長鈍化 けん引役不在
11月14日 スペインで反緊縮のゼネスト
11月12日 ギリシャ議会 公務員給与削減や年金のカット含む 2013年度予算案可決
     凍結されている315億ユーロの融資再開を期待
11月12日 ユーロ圏財務相会議 ギリシャの予算案可決を受けて財政再建の達成期限2012年から2年延長を了承
11月8日 ギリシャ議会 緊縮財政策や構造改革の関連法案可決
11月7日 欧州委員会による実質経済成長率見通し  2012と2013各年見通し
    ドイツ    0.8%  0.8%
    フランス   0.2%  0.4%  
    イタリア  -2.3% -0.5%
    スペイン  -1.4% -1.4%
    ギリシャ  -6.0% -4.2%
    ユーロ圏  -0.4%  0.1%
    EU全体   -0.3%  0.4%

2012年10月
10月31日 欧州連合統計局による失業率 2012年9月
    オーストラリア 4.4%
    ドイツ     5.4%
    オランダ    5.4%
    フィンランド  7.9%
    イタリア   10.8%
    ポルトガル  15.7%
    ギリシャ   25.1%
    スペイン   25.8%
    ユーロ圏   11.6%(17ケ国)前月比0.1ポイント上昇
10月18-19日 欧州首脳会議 銀行監督一元化(銀行同盟ともいわれる 不良債権処理で各国政府の財政悪化を避ける直接資本注入の条件)を2013年から段階的に導入で合意 年内に法的枠組みを固め 2013年中に段階的に導入 2014年には圏内約6000行をすべて監督下に入れる。

10月10日 S&Pがスペインの長期債格付けをトリプルBプラスからトリプルBマイナスに2段階引き下げたことで欧州問題の懸念が再燃。投資適格では最も低い水準。見通しはネガテブ。高失業率と緊縮財政が社会不安を高め、中央政府と地方政府の対立を招く可能性高い。ユーロ圏諸国の一部がスペインの民間銀行に注入する支援資金の分担を拒否する可能性もある。
スペインがいつESMに対して支援を要請するか。いつ欧州中央銀行が無制限の購入を字句とする新たな債券買取プログラム活用に踏み切るか。
スペインは厳しい緊縮財政の条件を課せられることを懸念している(9月27日に中央政府の支出を前年比7.3%削減した予算案を発表)。

10月8日 常設機関として欧州安定メカニズム(レグリング総裁 支援枠7000億ユーロ)が発足した。
     2013年7月以降 EFSMの機能を完全に引き継ぐ ESM自身の資金規模は5000億ユーロ

10月4日 欧州中央銀行理事会は政策金利0.75%据え置きを決定
10月4日 イングランド銀行は政策金利を念0.5%据え置きを決定 量的緩和枠3750億£(7月に引き上げ)は据え置き

2020年までに政府債務の対GDP比を120%以内にする(ギリシャに対する支援計画)
財政赤字を国内総生産のGDP比3%以内にする時期を2014年にする→2年延長が検討されている。
反対の意見あり。ギリシャの国庫は11月16日に底をつく。315億ユーロの次回融資待ち。
追加支援でEUやIMFが合意できるか。

2012年9月
9月20日 一時78円ちょうどまでドルが売られ円が買われた(円高に振れた ドル 円双方に売り戻し ドルに売り圧力強い 投資家のリスクのリスク回避姿勢後退を反映 今後再度 投資家がリスク回避姿勢強めれば再びドルと円が買われることも)
2012年9月19日(水) 日銀は金融政策決定会合で追加の金融緩和を決めた(金融政策決定会合9月18日ー19日 4月以来5ケ月ぶりの追加金融緩和)。
資産買入基金(2010年10月に35兆円で開始)の総額を10兆円増額して80兆円とすること。買入終了の時期を2013年6月から2013年末に延長すること。など。
同時に長期国債と社債を買い入れる際の下限金利を撤廃した。
日銀はすでに物価上昇率1%を目指す事実上のインフレ目標を採用(7月の消費者物価上昇率は前年同月比0.3%マイナス)。
日銀が緩和を見送れば失望から円高に向かう恐れがあった。しかし日銀内部には見送り論もあったとのこと。日銀のこの決定に
より日米欧の金融緩和策がでそろった。

19日 一時79円23銭までドルが買われた(円安に振れた)
18円 円は78円台 ユーロに対しても一時103円台(リスクマネーの逃避先としての円から資金流出 株式では内需株から輸出株に資金回帰)
17日 円は欧米で78円台後半。ユーロに対しても一時103円台後半。
14日 東京株式市場 約3週間ぶりに日経平均株価が9100円台回復
14日 NY株式市場 4日続伸 終値は1万3593ドル37セント。前日比53ドル51セント高。2007年12月10日以来4年9ケ月ぶりの高値。QE3による余剰マネー流入期待。
2012年9月13日(木) 米国は米FRBはFOMCで量的緩和第3弾(QE3)を決定した(FOMC 9月12-13日 かつてのQE2 2010/11-2011/06 デフレ防止に照準に合わせていた) ⇒ 日米金利差縮小 ⇒ 円高懸念
 今回のQE3 米FRBは雇用に照準
 ゼロ金利(誘導金利であるFF金利を0-0.25%とする)を約束する期間の延長 2015年半ばまで続ける(これまでは4月の決定で2014年終盤まで)
 住宅ローン担保証券の購入額(追加購入)に期限 総枠設けず。毎月400億ドルずつ購入する
 米国債購入は避ける(財政規律緩むとの批判)
 ツイストオペ(長期を買い短期を売る 2011年9月に実施発表 6月20日に延長決める)などこれまでの緩和策も継続
 背景に年末に大型減税等が失効する財政の崖 秋口から消費に影響

長引く不況で働くことをあきらめる人の増加 生産年齢人口に占める就業率58%台 リーマンショック前は平均63%
12日東京市場1ドル77円74-94銭の3ケ月半ぶりの円高 円77円台後半 一時77円70銭 6月1日以来3ケ月ぶりの円高
13日決定直後 一時77円13銭の円高(77円台前半まで強含む) その後介入懸念から78円台に戻す。
  債券市場は一時0.835%まで上昇(3週間ぶりの高水準 欧州の信用不安後退 投資家のリスク回避姿勢弱まる 米国の長期金利上昇基調に転じる 5年物も一時0.220%と3週間ぶりの高水準 10年ものは0.9%前後まで調整余地)

9月12日 ドイツ憲法裁判所が欧州安定メカニズムで合憲判断
    米国債10年物利回り1.7%台半ばまで回復(7月に1.3%の過去最低水準まで下落 国内投資家は利回り差があるので外債を大きく買い越し)⇒ 日本の長期金利に対して調整圧力? 

9月11日 米株式市場 ダウ工業株30種平均終値 前日比69ドル07セント高0.5%高の1万3323ドル36セントの高値更新 2007年12月28日以来約4年8ケ月ぶりの高水準
9月7日 東京株式市場 日経平均株価急伸 終値 前日比191円08銭高 8871円65銭 ECBによる南欧国債購入大筋合意を好感

2012年9月6日(木) 欧州中央銀行は理事会で南欧国債の買い入れで合意した(2012年3月まで2000億ユーロ約20兆円買い入れ ドイツ連銀などの反発で4月以降購入停止していた 2011年12月には期間3年の長期資金を大量供給)。
償還までの期間が1-3年の国債を集中購入する
購入額に上限を設けず、流通市場から無制限に買い取る
資金繰り難に陥った国がESM(2010年12月の欧州首脳会議で設立決まる まだ稼働していないが9月に発足の予定)に支援を要請すること(=財政再建の公約が必要 しかしその内容の詰めは今後)が条件
財政再建を怠れば(あるいは構造改革を後退させた場合)購入停止
2013年の実質成長率見通しを年0.5%に下方修正
政策金利は年0.75%で据え置き
財政再建などを条件に無制限買入 しかしドイツ連銀ワイトマンは反対(メルケルは支持表明)。
この決定を受けて7日 南欧の国債の利回りが低下
⇒ 対ユーロ 円安進む
リスク回避の巻き戻しで国内長期金利は反発
ユーロ圏失業率は11%以上 4-6月ハマイナス成長 7-9月もマイナス成長の見込み
経済成長率を1.5%程度まで上げないと失業率が改善しない(分岐点:オークンの法則)

7日 東京株式市場 一時8800円台回復(4日以来3日ぶり) 国債利回りは0.8%近辺
6日 ダウ工業株30種平均 大幅続伸 2007年12月以来の高水準。終値4年8ケ月ぶりの高水準 1万3292ドル 前日比244ドル高。ナスダック株価指数は3135.81.前日比66.54ポイント高 2000年11月以来の高値。
   補正予算や来年度予算での国債増発懸念から超長期国債の入札が低調(30年物の応札倍率4.46倍 前回7月は4.09倍)
4日 FRBが量的緩和第3弾に踏み切るとの観測から一時78円20銭の円高
4日 数ケ月続いた内需株(通信 電鉄 小売など)物色に一服感(景気回復シナリオの陰りも一因)
2日 一時8800円割れ 
9月1日 NY株式市場 前日より90ドル高 1万3090ドル 追加金融緩和期待。

2012年8月
31日 FRBバーナンキ議長 各国の中央銀行トップを前にした講演(ワイオミング州 ジャクソンホール)で追加緩和を強く示唆
(7月の雇用統計 失業率8%台に高止まり 2009年10月の10%超えのピークからは下がったものの)
米経済成長率は1.5-2%程度
29日 新発10年物国債利回り(今年の4月以降1%割れ)
 前日比0.010%低い0.795%で取引終える 0.8%割れは14日以来週間ぶり
(日本の金利の低さは潜在成長率の低さ0%台の反映:人口減少、高齢化、労働人口の減少反映)

16日 終値で1ケ月半ぶりに9000円台回復
15日 米長期金利が1.7%台後半(5月以来3ケ月半ぶりの水準 7月25日に過去最低の1.381%) 日本の長期金利0.820% 前日比0.030%上昇 7月4日以来の水準(7月下旬の0.720%が底)
14日 新発10年物国債利回り0.790% シカゴオプション取引所VIX指数が13.70(5月末の24程度から大幅に低下 08年のリーマンショック以降では最低水準)

originally appeared in Sept.21, 2012
corrected and reposted in Dec.30, 2012

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エルピーダの米マイクロン子会社化決まる(2012年7月2日)

2012-12-30 15:05:15 | Economics
買収合意発表(2012年7月2日) 公的資金の失敗例といえるかどうか
エルピーダメモリ(坂本幸雄社長) 2009年に公的資金が投入されながらも結果として 2012年2月 会社更生法を申請 2012年7月 米マイクロンに買収合意が発表される。2009年に公的資金投入を受けたことから、公的資金投入の失敗例のようにも報道される。しかし経緯をみると、不安定なDRAM価格と円高に翻弄されたことが見える。

 2012年7月2日 買収で両社が合意したことを米マイクロン・テクノロジー(マーク・ダーカンCEO)が発表。2013年前半にエルピーダの全株式を600億円でマイクロンが取得(2013年春までに完全子会社化)。マイクロンはエルピーダにDRAM製造を委託し、その対価として2019年にかけて1400億円を払う(負債返済にあてられる)。買収総額は2000億円。
 別にマイクロンはモバイル用DRAMの増産に向けて広島工場などに1000億円を投資する。総支援額は3000億円。
 2011年のDRAMのシェアでマイクロンは11.6%世界4位。エルピーダは13.1%で世界3位。買収により韓国SKハイニックス(22.9%)を抜き2位に(なおトップはサムソン電子でそのシェアは42%ほど)。買収後はDRAM事業をエルピーダに統合。経営を効率化する。
約4200億円の債権の約7割がカットされる。8月21日までに更生計画が東京地裁に提出される。
 無担保債権の弁済率は1割程度で調整。
 従業員は解雇しない。
 エルピーダはDRAMに集中(強みはモバイルDRAMでパソコン用に比べて収益性がよい しかしパソコン用は苦境にある 2012年8月にはモバイル向けがパソコン向けを出荷で上回る 米アップルへも供給 小型省電力メモリーが好調)。
 マイクロン(主力はNAND型フラッシュメモリー スマホの記憶装置に使う この価格は2011年10月までは安定していたが、その後急落。2012年5月まで急落した。背景には各社の増産があると考えられる)は多角化で経営が安定した。
後述するようにDRAMとNANDを合わせてもつことで韓国メーカーは経営を安定させている。マイクロンーエルピーダは、そうした経営に入ることになる。

安定しないDRAM価格と円高が背景
 DRAM価格は実はエルピーダが更生法適用を申請した場面では上昇局面にあった。2011年夏から急落したが20011年末に底値。そこから上昇して2012年6月末をピークに下落に転じた。DRAM価格はその後11月末にかけてなお低下(過去最低 2012年9月前半に6ケ月半ぶりに主力のDDR3型2ギガで1ドル割れになった)。しかし12月に入って再び上昇。背景には秋に入って韓国サムソン電子などがパソコン用DRAMの出荷量を抑制していることが大きい(メーカーはパソコン用の生産ラインを、スマホやタブレット用のモバイルDRAMの生産に振り向けて、パソコン用の生産を抑制している。しかし世界市場全体でモバイル用のシェアは2割程度。2012:1-3月で14.1% 2013年10-12月で26.7%の見込み。パソコン用の過剰感が市場全体を抑えているがDRAMに占めるパソコン向けシェア:世界も急速に低下しているとのこと。2008年1-3月55% 2012年1-3月50.2% 2013年10-12月には42.8%の見込み)。台湾の南亜科技では秋に入り2割、2013年末までにパソコン用DRAMからの撤退を表明。大きな理由はパソコン販売の不振である。
 DRAM価格の反転には、生産抑制で大手の在庫調整が進んだことも大きい。しかしパソコン向け需要は依然弱い。マイクロンによるエルピーダ子会社化で大手が3社に集約されても、市場が大きく伸びる可能性はなさそうだ。 

 2012年2月29日 債権者集会(都内)東証 制限値幅撤廃 前日比249円安5円 裁判所から弁済禁止の保全処分が発令され、当面支払ができない。債権の弁済ができるのは6ケ月以上先。
 債務弁済の割合は10%程度。広島工場の操業など事業継続に必要な支払はする方針。27日以降の新たな発生債権は全額支払う。また総額が100万以下など少額の場合は取引継続を条件に支払う。
 
エルピーダ(1999年日立製作所、NECの統合事業で発足。2002年三菱電機のDRAM事業が合流、これを引き継いだ 同年 東芝がDRAM事業撤退 日本で唯一のDRAMメーカーになる)の歩み
 1990年代前半までDRAM市場はNEC 日立 東芝など日本勢がシェア上位 日本勢でシェア8割のこともあったが韓国の興隆で凋落
 09年3月期 1788億円の最終赤字 政府による公的資金300億円(ほかにメガバンクなどが1100億円の協調融資) 2009年6月改正改正産業活力再生法の認定 2012年3月末で期限切れ 政府や金融機関は支援継続の条件として提携含む抜本的な事業計画提出求めていた 
 2009年8月ー9月 日本政府による公的資金300億円注入(優先株):日本政策投資銀行、主取引銀行4行が約1000億円の協調融資で息吹き返す 台湾勢との提携 スマホ向けDRAM開発技術で優位 資金不足で増産投資に入れず⇔製造装置は高額)
 産業再生法の適用 産業再生法による公的資金投入の第一号。政策投資銀行が優先株を引き受ける形。2009年6月末に適用の認定。
 経営が不安定になれば、半導体供給にも悪影響。政府は産業界の国際競争力を維持する観点から経営基盤の強化が必要と判断。
 日本政策投資銀行への優先株式の発行 2009年8月31日 政策投資銀行を引受先とする第三者割当増資 優先株300万株
 普通株への転換請求は2011年2月以降。
 金融機関からも計1100億円の融資
 なお 経済産業省の幹部がこのエルピーダ救済に絡んでインサイダー取引を行い、私腹を肥やしていたことが明らかになっている。

 2011年 DRAM市場シェア(エルピーダの売上の8割はDRAM)
 サムソン電子42%がトップ サムソン、ハイニックス合わせると韓国勢の世界シェアは7割(ウオン安を追い風 2010年モバイルサーバー用DRAMに主軸を入れ替える投資の注力 2010年の投資額は前年の2倍 エルピーダの8倍)  
 エルピーダ 13.1%
 マイクロン 11.6%
 韓国SKハイニックス 23%

 エルピーダは2011年シェアは10%台だった。エルピーダは今回の2012年5月に確定した米マイクロンによる買収で海外企業軍門下に入り、DRAMにおける日本勢の時代は終焉したとも伝えられた(しかし日本の工場は残っており、しぶとく残ったともいえる)。公的資金投入の失敗例ともされるが、その評価は正しいだろうか。

買収劇の推移(2011年秋から2012年春)
 2011年10月 4月ー9月で568億円の最終赤字
 2011年秋パソコン減産でDRAM価格下落圧力
 2011年12月 銀行団から事業再構築要求(2012年4月2日 協調融資のうち未返済の770億円満期日 借換の条件として再建策求める)
       ⇒産活法の再認定(政策投資銀行や経済産業省が再建計画を承認できるか 金融機関や経済産業省が説得できる再建計画策定できるか 提携交渉前進できるか) 公的資金の継続
       2012年3月末までに450億円の社債償還
       2011年度下期返済借入金が500億円
 2011年12月 台湾大手南亜科技(業績不振 DRAMで世界5位)と資本提携交渉

2012年
 1月 2011年4月ー12月 営業損益で900億円の赤字が明らかに(その後 989億円の最終損益赤字 昨年は102億円の黒字)
 2月3日 マイクロン(DRAMで世界4位)CEO アップルトンが飛行機事故で死亡 マイクロンとの提携交渉(2011年末から資本業務提携交渉)が中断(中旬に再開)
 米グローバルファウンドリーズへの広島工場売却交渉開始(中国企業に売る案もあった システムLSIにラインは変更できる) 

 2012年2月23日(木) エリピーダと金融機関(政策投資銀行など4行)との会合 4月期限1070億円(4行分)の借換交渉
           再建計画を主導する政策投資銀行は強硬に交渉案件の3月末決着を主張(実質的に破たんを導く)
 2012年2月24日(金)  預金250億円を「りそな銀行」に移す 
 2012年2月27日(月) 午後2時半臨時取締役会 午後3時適用申請決定(マイクロンなどから資本業務提携オファー届かず) 東京地方裁判所へ会社更生法適用申請受理(なお100%子会社の秋田エルビータも東京地裁に更生法申請) 支援先選定アドバイザーは野村証券
 2012年2月28日 社長ら金融機関 顧客に謝罪説明に回る 東証前日比80円安254円
 2012年2月29日 債権者集会(都内)東証 制限値幅撤廃 前日比249円安5円

 2012年3月 東芝(2002年にDRAMから撤退 マイクロンに米国工場譲渡 デジカメなどに使われるNAND型フラッシュ(音楽 写真などの保存に使われている)に経営資源集中(教科書通りだが 資金力のなさを反映) 
 携帯情報端末用のNANDとDRAMをともに供給できる韓国メーカーと競争力で落差 値下げ受注の原因)が入札に意向示す(3月中にはハイニックスとエルピーダ買収で連携できず すでに2011年フラッシュではハイニックスと次世代メモリーで提携済み 背景には東芝にはエルピーダ買収に回すお金を抑制したい考えがある 東芝は社会インフラとフラッシュを中核事業としてなお資源の集中にこだわる しかしフラッシュではすでにサムソンが巨額投資で東芝を引き離す戦略) NANDで東芝はサムソン電子に次いで世界2位。3位がハイニックス(2012年2月 韓国SKグループ入り)、4位がマイクロン。

 3月23日 破たん後 現経営陣の一部が残るDIP型会社更生へ
 3月28日 上場廃止
 3月30日 一次入札締め切り(マイクロン 東芝 韓国SKハイニックス 米グロ-バルファウンドリーズ:半導体受託製造大手など マイクロンが1500億円超を提示 東芝の提示額が大幅に低く脱落)⇒東芝が早くも脱落

 歴史的な円高 DRAM価格急落(2012年4月上旬のDRAM価格は前年同期の4-5割安)
 脱落した東芝は韓国ハイニックスSKと共同入札検討したとされる

 4月27日 第二次入札の締め切りを 1週間程度伸ばす
 
 5月4日 支援事業決める2次入札
 米半導体大手マイクロンテクノロジー
 米TPGキャピタルと中ホニーキャピタルの米中投資ファンド連合(提示買収金額2000億円超):ホニーの後ろにいるのはレノボグループ
 ⇒韓国半導体大手ハイニックスは応札せず(パソコン用DRAMは競争激しく採算性悪い 東芝 グローバルファウンドリーズとの協議も終了)

 5月6日経営会議でマイクロン・テクノロジーを支援企業に選定(米中ファンド連合案より大きな支援額 半導体事業で相乗効果期待できる 当面の従業員削減回避)
 2000億円超で買収。完全子会社化。情報形態端末用DRAMの開発生産。支援総額は3000億円 マイクロンは2位に浮上。サウソン追撃体制整う。
 5月7日管財人が東京地裁に報告
 7月2日 買収の合意発表
 8月21日までに、債権者や取引先の支持をとりつけ、東京地裁に更生計画案提出
(その後 海外投資ファンドなど一部の社債保有権者が対抗案を提出したが東京地裁は10月31日 同社が債権者との決議に入ることを認め、対抗案を退ける決定を下した。これにより債権者の一定数の賛成を条件に更生計画案が正式に認可される見込みとなった)

originally appeared in June 24, 2012
corrected and reposted in Dec.30, 2012

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Area Studies Business Models Business Strategies

政府は日本郵政をどうしたいのか(2012年12月26日)

2012-12-29 12:36:36 | Economics
安倍内閣が2012年12月26日発足した。そこで一つの疑問。
政府保有の日本郵政株の売却処分の方針は民主党政権末期に示された。しかし日本郵政は、経営の自由(手足)を縛られた状態。そのため日本郵政の将来図を自ら明確に描けないでいる。
安倍政権はもしこの売却収入を増やしたいなら、明確な青写真を日本郵政自身が描けるように、環境を整える必要がある。
逆に民間企業との競合しない分野に日本郵政の活動を限定した場合、そもそも日本郵政が民間企業として存続できるか、その限定された分野は民間企業が担って採算が合う分野であるのか、などを検討する必要がある。もうそうした制限をつけるなら売却して高値に売れるはずがないからである。売却そのものが失敗する可能性が高いということだ。
日本郵政の安楽死がいいのなら、実は放置していても、日本郵政は縮小を続けるだろう。しかし株式売却を急ぐなら、話は別である。
それなりのサクセスストーリーを描けるようにする必要がある。

日本郵政は2012年12月19日 斉藤次郎社長(元大蔵次官)の退任と坂篤郎副社長(2009年10月に副社長就任 元大蔵省主計局次長)の昇格人事を発表した(取締役会で決定)。2015年秋の上場が目標。住宅ローンなど新規業務は新政府の判断待ち。
 住宅ローンなどの個人向け融資業務 すでに低金利競争が激しく収益あげられるか疑問も出ているが。
 長期火災保険の募集業務
 企業向け融資 などが政府の判断待ちだが
 認可権限をもつ金融庁 は 判断を急がない方針

政府の郵政民営化委員会 12月18日 ゆうちょ銀行が申請していた融資業務の参入の条件付容認示す
 住宅ローンは直営店に限定。最初の2年は82店。5年経過後に全直営店に拡大。
 住宅ローンの融資上限は2億円 カードローンは300万円 
 融資残高や金利の状況を年2回程度郵政民営化委員会に報告
 法人向け融資は大企業に限定 メーンバンクになるのは禁止 協調融資でも主幹事業務認めず
 中小企業向け融資は見送り 

政府の郵政民営化委員会(西室泰三委員長) 12月14日 ゆうちょ銀行の融資参入を条件付きで認める方針示す
 認可権限もつ金融庁はなお慎重 内部管理体制に問題あるとしている 収益計算体制や内部管理体制の脆弱さを問題にする
 反面 金融2社の業績低迷で過疎地の郵便局網の維持が困難になる事態を憂慮。

2012年11月27日 関係閣僚による郵政フォローアップ会議 
        学資保険の新商品を30日に認可する方針決める かんぽ生命の保険金支払い漏れ問題対策含め8項目の
        停止条件付 4月の発売開始に向けて準備進めることになる   

2012年11月22日 政府の郵政民営化委員会 学資保険の商品内容を容認する意見書をまとめ金融庁と総務省に提出

2012年10月29日 日本郵政の株式上場計画が 郵政民営化委員会に提示された 2015年秋に上場(最終的な売却時期の判断は政府)
上場時期の明示が新規業務認可の前提との議論に対応したもの
金融2社の売却先送りは日本郵政株の高値売却のため。
これに対して金融界は反発している。郵政改革の明確な筋道を示す必要がある。基本的な問題は時代遅れになりつつある
郵便システムをどう再構築してゆくかだ。民間業務との競合が問題であるなら、補完に徹するでもいいのではないか。
発足は2007年 グループの連結純資産は約11兆円 グループ従業員は23万人 うち20万以上が日本郵政
1997年のJR東海以来の大型の国有企業上場になる
・赤字化している郵便事業(信書は事実上の独占が認められているが ネットの普及で毎年3-4%取扱い件数は減少続く)の立て直しが急務
・郵便物引受件数の減少が続き赤字化している
2003年度 250億通
2010年度 200億通を割る
・過疎地の人員維持コストが経営を圧迫している
・不採算局の削減が困難である。
・民間に比べて高い給与体系であり民間との競争が困難である。民間に比べ2割高いとされる
・民業圧迫懸念から新商品導入がむつかしい

2012年10月1日 郵便事業会社と郵便局会社が統合「日本郵便」に 副会長に稲村公望氏
全国2500カ所の集配センターを郵便局に統合するなど

民間金融団体は 暗黙の政府保証が残るうちは競争上不公平として新規業務参入に反対 株式の売却時期明示も求める
2012年9月13日 民間金融団体8団体は ゆうちょ銀行が融資など新規業務に参入することに反対する共同声明を発表
ゆうちょ銀の株式売却など民営化計画の早期公表
経営規模の縮小
郵便事業の損失を金融事業に転嫁しないリスク遮断措置が必要 とする

2012年9月3日 ゆうちょ銀行 金融庁と総務省に 個人・法人向け新規業務の認可申請
              個人事業主 高齢者 サラリーマン向け 住宅ローン 教育・自動車などの無担保ローン
              資金の7割以上を国債で運用する現在の事業モデルは利ザヤが薄く
              金利変動リスクも大きいとして住宅ローンへの進出を強く希望 
              すでに2008年5月からスルガ銀行と提携 住宅ローンの仲介業務始める
              自営事業者 高齢者などを対象に取り組み 仲介実績は2000億円超えた
              預貯金残高は2010年度末で175兆円 ピーク時の3分の2に比べ 90億円減少

       かんぽ生命  学資保険の見直しの認可申請(死亡保障引き下げ保険料引き下げ)
              養老保険(需要が低迷)に偏った契約構成の見直しが課題
              民間が主力とする ガン保険に進出できない  
              養老保険から入院特約切り離し単品で発売 など
              保有契約件数は年金保険のぞき3903万件 過去10年間で半減   

2012年4月12日 郵政民営化改正法案が民自公(自公案に民が乗った形)などの賛成で衆院通過
日本郵政による金融持ち株会社2社の株式完全売却の義務付けを努力規定に改める
2017年9月末までに完全売却の従来方針を撤廃。
郵便事業会社と窓口業務を手掛ける郵便局会社を合併する
グループ5社を4社に再編
→ 政府による日本郵政株売却に狙い
民主党政権成立直後の2009年成立の株式売却凍結法の廃止
政府が100%保有する日本郵政株は3分の1超残して売却可能に
日本郵政が金融2社の株式の半分以上を売却した段階で金融2社による新規事業進出は認可制から届け出制に。
郵便 貯金 保険の3事業に関して日本郵政などに全国一律のサービス提供を義務付け
4月27日 参院本会議も通過。小泉郵政改革を修正した改正郵政民営化法が成立した。民営化路線を後退させるが、この法律の狙いは
震災財源のための政府保有の日本郵政株売却にあるとみるべき。2010年度末で政府の保有は8.4兆円 3分の1で5.5兆円の財源。
しかし成長シナリオを描けなければ、予定した売却益がでないことも。

しかし郵政の経営環境の厳しさは衆目の一致するところだ。

2012年3月7日 政府の郵政民営化委員会(田中直毅委員長)は、日本郵政グループの金融2社について、完全民営化しないのであれば
少額貯金や小口保険に業務は限定されるべき。また郵政株の売却を禁じた株式売却凍結法の早期解除も必要とする意見書を公表した。

西川辞任
 日本郵政の西川善文社長の辞任表明が2009年10月20日に行われたがこれは当然だ。新たな政府の方針に反する発言を繰り返す人間が国有企業のトップの職に留まることはもともとおかしな話だ。西川氏はもと三井住友銀行頭取。頭取まで登り詰め進退をわきまえたはずの年齢の人物が、9月16日の連立政権発足後なお最後の最後まで職にしがみついた。西川辞任の当日、政府(鳩山内閣)は、郵政事業の基本的なあり方を閣議決定、さらに時を経て2010年4月30日に郵政改革法案を閣議決定した。
 こうした鳩山内閣の動きに対して、郵貯事業の縮小という流れに反するものとの批判がでている。確かにネットの普及で郵便事業の縮小は時の流れである。しかし他方で、郵便局網を維持するのであれば、収益源がなくてはならない。郵貯の預入限度額引き上げや新規事業はそこからでてきた議論である。もうひとつの背景は、景気対策などの財源問題。国債や財投機関債などの消化の役割が郵貯に対して改めて期待されている。
 これを歴史の流れを覆すものとの批判がある。しかしそうではなくて、小泉改革が郵便事業の将来ビジョンを明確に示さなかったことが、こうした事態を招いたといってよい。
 西川氏とのからみで、09年10月に予定されていた日本通運との宅配便事業の統合が宙に浮いた(この統合は2010年7月に行われるがお中元の時期と重なったことでトラブルを生み、客離れを招いた)。前政権下でさえ、「かんぽの宿」のオリックスへの譲渡契約(08年12月)が鳩山邦夫総務相(当時)の疑義表明で白紙撤回されている(09年2月)。日本郵政の経営はたびたび、政治に翻弄されている。
 郵便局には全国2万4000のネットワークという財産がある反面、郵便事業は存続の危機にある。電子メールの増加に対して郵便物の取り扱い量は減少を続けているし、郵便小包は宅急便に明らかに客を奪われている。この矛盾があるなか、金融業務も民間金融機関に対して明確な優位性はなく、縮小を続けている。きちんとした将来ビジョンを描かせて、民営化するのが筋だろう。
 私は郵便局は競争力がない現状を素直に受け入れて、民間組織と競合するものとしてではなく(また特定事業者との提携は避けて)、社会的なインフラとしてベーシックなサービス(郵便や金融サービス)を社会的弱者(地方にいる人、老人や障害者など)を中心にすべての国民に等しく提供する組織として、つまり半官半民の公的組織として生き残りを考えてはどうかと考える。
 端的にいえば、郵政民営化そして政府保有郵政株の売却は郵便局の生き残り策としてそもそも誤っているのではないか(無駄な努力をさせているのではないか)。
2009年10月22日から労働組合(CWU)がストライキに入った英国郵政事業(Royal Mail)の状況は、電子メールの増加の一方で郵便が毎年減っていること、民間事業者の参入が郵政事業を脅かしていることなど(cf."On the brink", Economist, Oct.17, 2009, 55;"Postal services, sort it out", Economist, Oct.31, 2009, 14, 16;"The world ailing postal services, dead letter", Economist, Oct.31, 2009, 67-68)日本の郵政事情と似ている面がある。このような郵便事業縮小は、世界的な歴史的な変化でもあり避けようがない。その中で郵便局網をどうするかの判断が問われている。

郵政事業の今後 ネットワークの活用
 政府は2009年10月20日に郵政事業見直しに関する基本方針を閣議決定した。郵便局ネットワークを活用して、郵便、郵便貯金、簡易生命保険の基本的なサービスを郵便局で一体的に提供することがうたわれている。
 日本郵政の取締役会は、2009年10月28日、西川社長の後任として元大蔵事務次官の斉藤次郎氏を正式に選んだ。斉藤氏は小沢一郎氏と盟友関係にあるとされ、小沢氏の信頼が厚い。そこで亀井氏が小沢氏に配慮したのだとの観測記事(「小沢幹事長に媚びを売った亀井氏の戦略」『エコノミスト』2009年11月3日p.13)は、間違ってはいないのではないか。
西川氏とともに高木祥吉副社長は退任。社外取締役は、牛尾治朗氏、丹羽宇一郎氏、奥谷礼子氏など5人が退任。しかし奥田碩氏、西岡喬氏は留任した。なお6人の退任で、同社の指名委員会の5人のうち奥田氏を除く4名が退任。指名委員会は機能しなくなった。国有企業で、選挙で選ばれた政府の方針に反旗を掲げる西川氏が速やかに辞任しなかったことにすべての原因はあり、混乱の責任は西川氏にある。
 副社長に、官僚から旧大蔵、旧郵政から一人ずつの二人、民間からは銀行、経済界から一人ずつの二人。計4人とした。このほか社外取締役は、各分野から12名が任命された。人選は幅広い分野から公益性、公共性を重視した布陣となった。

郵便局をベーシックサービスとして再生する
 2010年度の郵便物取扱数は24年ぶりに200億通を割り込み、郵便事業会社は営業赤字に陥る見込み。なんらかの収益対策なくして2万4000局を維持できるか。約20万の雇用を維持できるだろうか。一定の業務のスリム化はいずれにせよ不可避だ。
 しかしよく考えてみる郵便局の機能・存在は、地方社会や高齢化社会にはやさしい。民業圧迫というが、もともとは民業がいないところで先行して活動していたので、本来は棲み分けがあった。歴史的には民業があとから出てきたというべきだろう。とはいえ民間の輸送業者による小荷物取扱との競合に加えて、電子メールの登場もあり、郵便取扱の縮小は、大きなトレンドとしては変えようがない。赤字を避けるには業務のスリム化は不可避。しかし収益事業の強化も考える必要がある。
 ここで2万4000局のネットワークを通じた窓口での人手による対応という旧時代的なシステムの是非を考えたい。このシステムで郵便局は、顔がたがいにわかる地域のネットワークの結節点になっており、地方社会や高齢化社会に対応しているという意味では時代遅れではなく時代の先端にある側面もある。これを残す一つの方法が金融のベーシックサービスの提供を郵便局に負わせるという考え方である。だとすれば、金融業務の強化(そこからの収益)は郵政の生き残り策として検討に値する。過疎地では郵便局が金融を含めたライフラインになっている現実がある。
 鳩山民主党政権は、国民党の亀井静香郵政・金融担当相に押し切られる形で2010年3月30日の閣僚懇談会で郵便貯金の預入限度額を1000万円から2000万円に引き上げ、簡易保険の加入限度額を1300万円から2500万円に引き上げることを決めた。民間金融機関は預金保険料の支払い負担を考え預金保険の保証額を2000万円に引き上げることには反対した。そこで預金保険料引き下げでの決着が模索されている。この方針は2010年3月23日までに固まっていたがその後閣内の異論が表面化。閣僚懇談会で決着が図られた。(この預入限度額の問題はその後、民主党政権の迷走のなかで実現されないままになる)。

 要するに、インターネットの普及により、郵便事業の採算性が失われるなか、民間との競合を避けるために置かれている規制で、郵便貯金、簡易生命保険とも、縮小を続けている。ユニバーサルサービスの提供という足かせも採算性悪化の要因。現在の政府は、日本郵政の手足を縛った状態で日本郵政の上場を急いでおり、日本郵政株でできれば多額の財政収入を得ようとしている。どう考えてもそれは矛盾している。

0riginlly appeared in Oct.21, 2009.
Corrected and reposted in May 3, 2010 and Dec.29, 2012.

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2012年12月19日の韓国大統領選挙を控えて

2012-12-08 23:02:37 | Area Studies
 韓国の大統領選挙(2012年12月19日投開票 11月27日選挙戦開始)は与党セヌリ等のパク・クンヘ(朴槿恵)候補と、野党民主統合党のムン・ジェイン(文在寅)候補(ノムヒョン前大統領の盟友 盧武鉉政権では主席秘書官 秘書室長)の事実上の一騎打ち。争点は財閥改革のあり方だとされる。文氏は循環出資構造(中核企業を先端に系列企業の出資関係がA-B-C-Aというように循環構造となっているとのこと)の3年以内解消(新規は禁止 既存は3年で解消)を主張している。

 なお現職の李明博大統領の評判は竹島上陸強行移行、日本では下がる一方だが、韓国内では、野党がウオン安誘導政策など大企業を念頭に置いた政治を展開したなどの批判をしているようだ。ウオン安政策については、急激な変動を回避するスムージングオペレーション(過度な評価を適正ラインに戻すものの範囲内)との主張が政権側にはあるとされる。また企業よりとされる規制改革にしても、雇用拡大を意図したものとの弁明があるようだ。
 とはいえ実兄など側近が不正資金をめぐる疑惑で逮捕された点は弁明の余地がない。実兄逮捕から1ケ月後の2012年8月10日 現職大統領として初めて竹島上陸を強行して日韓関係を意図的に悪化(緊張)させた行為は、政治的窮地に陥った自分を救うために禁断の外交カードを切った疑問が残る。竹島に自筆の石碑を残したことにも、政治的窮地にあった自分を国民的支持の高い「竹島(ドクト)上陸」で転換し、さらに自分の名を残そうという売名(政治的打算)の匂いを感じ、評価はできない。竹島問題については、両国国民とも妥協を望んではいないが、同時に緊張を高めることも望んでいない。
 李明博政権下では所得格差は拡大したとの批判もある。李明博は2007年の大統領選挙で就任。任期は2013年2月までに迫った。彼が廃止した出資総額規制(出資に使える金額を純資産の一定割合に抑えるもの)を、野党大統領候補のムン氏は復活させると主張している。

 これに対して与党候補の朴氏は財閥を正面から規制するのではなく、独占禁止当局の独立性強化(公正取引関連法の強化 循環出資については新規出資の禁止)、商店街や中小企業の保護を主張している。
 対北朝鮮政策では対話再開で両候補は一致するも、ムン氏の方が融和姿勢が強いとのこと。
 対日関係では韓国内では、1965年の日韓国交正常化交渉は、軍事政権の朴正煕大統領のもとであったとして、経済協力を得るために十分な過去の清算が行われなかったとの批判が韓国内では強く(なお1998年 金大中大統領と小渕敬三首相との間で日韓共同宣言 過去の歴史への反省とお詫びが記されている)、誰が大統領になってもこうした国民感情から離れた対応はむつかしいようだ。
 第二次大戦後の日韓関係は、朝鮮戦争直後の1952年に、李承晩ラインの設定の一方で国交回復交渉が始まったが、韓国側から損害賠償請求が行われたのに対して、日本側が没収財産の返還を求めて難航した。1961年に朴正煕はクーデターを起こし、1963年に大統領に就任した。朴は、近代化資金を得るため対日交渉を進め、1965年日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約を締結した。これにより3億ドルの無償供与 2億ドルの有償供与を日本政府が韓国政府に行い、別に日本企業が3億ドルの資金協力を行った。これに対して韓国政府は対日請求権を放棄した。条約には明白な謝罪の言葉を含まれていなかったので、これらの無償有償の資金協力の「性格」には曖昧さが残された。この1965年当時、朴正煕が進めた対日交渉について、韓国民の間では不満が強いとされる。
 そのお詫びの言葉はその後1998年 金大中大統領と小渕敬三首相との間で日韓共同宣言で過去の歴史への反省とお詫びが記されるなど繰り返されているものの、この1965年条約で、過去の清算をあいまいに決着した歪みは、対日関係で本当の意味での清算が終わっていないという、わだかまりを多くの韓国人に残す結果になっている。先ほども述べたが誰が大統領になってもこうした国民感情から離れた対応はむつかしいようだ。

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