Entrance for Studies in Finance

三井住友トラストHDの発足(2011年4月)

 東日本大震災で世の中が混乱する中、2011年4月 三井住友トラストHが発足した(社長に田辺和夫・中央三井信託銀行社長)。すでに2月からATMの相互開放、商品サービスの相互提供開始。信託財産額、年金受託残高で三菱UFJ信託を抜き首位。不動産収益ではみずほ信託を抜き首位。証券代行管理ではなお三菱UFJ信託の首位は動かず。富裕層中心に個人金融資産の取り込み狙う。これで信託は三菱信託、みずほ信託を合わせた3行体制になる。

 店舗数は152店舗。今後 2012年の傘下銀行(中央三井アセット信託+中央三井信託+住友信託)の統合までに店舗の統廃合に着手。店舗を合理化を予定する一方で都市部の店舗網の充実はかる予定。メガバンクと親密路線をとる、三菱UFJ信託やみずほ信託とは異なり、メガバンクとは距離を置く独立系信託目指す(住友信託の独立路線が影響)という(三菱UFJ信託(岡内欣也社長 2004年夏 旧UFJ信託を三菱UFJ信託と住友信託は取りあう)や、みずほ信託はグループ連携強化による個人顧客獲得目指している)。
 約2000億円の公的資金返済は課題。早期返済には株価上昇が欠かせない。そもそも2009年11月の正式発表から持ち株会社設立までに1年半。傘下信託銀行の統合はさらに1年後というゆっくりしたスピードは、公的資金完済をにらんでのものとされる。しかし2011年3月11日に発生した東日本大地震により、期待していた株価回復を不透明感が強まったのではなかろうか。
 振り返ると統合の合意は2010年8月24日に締結。統合比率は住友信託1.49に対し中央三井が1。統合後の持ち株会社(三井住友トラストHD)会長に住友信託の常陰均氏(1977年大阪大学法学部卒業 2008年より住友信託社長)。社長に中央三井社長の田辺和夫氏(1969年東大経済学部卒業 2006年より中央三井信託社長)。
 なお2012年発足の新銀行ではポストを逆転させて住友信託が社長を出し、実権を握る。
 中央三井に入っている約2000億円の公的資金返済の課題抱える(中央三井は2000年の発足後 選択と集中で収益構造を転換。7000億円超あった公的資金を7割返済したもののなお約2000億円抱える)。国(整理回収機構)が保有していた優先株は2009年8月に普通株に転換(中央三井の議決権の30%)。ところで返済の条件は株価が簿価の400円を超えること。結局、国(整理回収機構)は新会社の筆頭株主に(議決権の12%)になった。

 統合計画の正式発表は2009年11月6日 独立路線を保ちつつ規模拡大で不安定な経済情勢を乗り切る(住友信託の拡大路線 中央三井の選択と集中路線という大きな戦略の違い)。統合後の預かり資産規模は118兆円(2009年3月末)で三菱信託の101兆円を抜き業界首位に。課題は店舗網の薄さから相対的に弱い個人取引。

 両社の間では過去2度の合併機運があり2005年には実際に交渉が行われた。
 1回目は旧住友銀行と旧さくら銀行が合併を決めた1999年10月(中央三井の多額の公的資金もあり機運高まらず)
 2回目はバブル崩壊後の2004-2005年 交渉が行われたものの主導権争いで行き詰まった。

 しかし2009年には、公的資金完済できていないもののリテール路線の中央三井、法人に強いもののその法人の経営悪化に悩む住友という両社の補完性が互いに明確になったこと。
 また三井住友による中央三井信託抱き込みの動き(三井住友は日興コーデを買収 大和を独立に追い込んだ。三井住友が中央三井を抱え込めば住友は孤立に追い込まれる)があり、住友信託が経営統合に積極的になったことなどから、両社の経営統合が固まることになった。

三井住友と大和が合弁を解消(2009年9月10日発表)
三井住友FGによる日興コーディアル買収(2009年5月1日)

originally appeared in April 5, 2011
Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.

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