想い 想って
想い 伝えて
私はあなたの後を 追い続ける
ただそれだけでも―心満ちるの
Ep.XVII かおすで~と
「でも本当は。本当は,心満ちなどしないのよ」
「それはまた何故です古手君」
「本当は,相手してほしいのよ。自分を見てほしいのよ。自分だけを見てほしいのよ。だからその願いを叶えてくれる代償物が目の前にくると,ころっと行っちゃったりするのよねえ」
夏も翳り始めた頃。私はボスに空のバスケットをもたせて土手に出た。
といっても,それはデートってわけじゃない。私だってデートするなら,もうちょっといいところを考えますよ―学校のグラウンドの周りなんかじゃなく。
でもここは,待ち合わせ場所としてはちょっと良いかも。
どぎまぎ学園には池がある。大きな池で,都会の中のオアシス。水鳥が遊ぶ素敵な池。そのすぐ脇にはグラウンドがあり―その境には並木が木陰を作ってる。一本だけ大きめの木があって,実は待ち合わせ場所として有名だったり。
「…へえ。詳しいんですね古手君」
「一応チェックしてますから! …本当はねえ,もっと素敵サイトになる予定だったんですけどねえ…」
「ああ事務部が」
…グラウンドと池とを見下ろす位置に新築校舎がありまして。ガラス張りで,渡り鳥たちの水面のシュプールを見ながら紅茶を楽しむカフェなんかできる予定だったんですけど…やり手の事務部がさくっと自分たち用に確保しちゃいましてねー…。
「…いいんですかね」
「でもカフェにするには,アクセスが悪いですからね,あそこ」
いや本気でアレ,アクセス悪いですよどうにかなりませんか***(※検閲)。
「…まあ,そうですか。それに,衆人環視となったら,あの並木もデートスポットにはならなかったでしょうしね…」
すい,と視線を向ければ。
火焔猫(人間形態)がうつむき加減で伝説の木(笑)に背中を預けていたり。
「あれが古手君の友人ですか」
「ええ。無記名のラブレターにちょっとだけ期待しちゃった傷つき加減の乙女ちゃんです」
「…どーゆー紹介文です…」
「『大好きな彼にアタックし続けてきたけど気持ちは理解してもらえてるのに優しい言葉は掛けて貰えてるのにそれ以上に進まない。きっとこれ以上の関係にはなれないって理性では理解してるけどもしかしたらこのラブレターは彼の秘密の誘惑かもしれないなって思って待ち合わせに乗ってみた私揺れる乙女心』」
「それもどーでしょう」
「はいオペラグラス」
「何をしろと」
「『彼が来てくれたら最高だけどでも私だけを思ってくれるっていう別の人が素敵な人だったりしたらちょっとイイかも。いえダメよ私,彼に一途! でもふにゃー』な乙女の表情を楽しんでは如何でしょうか」
「ンな悪趣味な」
「割とみんなに売れたんですけどねー」
周囲には,私たちと同じようにバスケットを抱えてオペラグラスを構えたひとたちが。
「…あれ,大丈夫か?」
「問題ない。あの猫めは揺れる乙女心でいっぱいいっぱいで,周りなんか見えてませんよ」
お燐は不安げな表情をつくったり,ふにゃあと緩んでみたり,ひとりでに顔をあからめてみたり。彼が来るかもって期待しちゃったりでもきっと彼はこないんだからって期待する自分を責めちゃったりでもでもふにゃあー。と,くにくねにゅるんと身をよじらせながら,だんだん体温を上げていっているのです。
「いやそうじゃなく」
「売上だったらご心配なく」
「そうじゃないですよプライバシー的な意味ですよ」
「仕入れは別々ですから『私物のオペラグラスを偶然持ち合わせてました』って言い逃れはできます」
「保身だけじゃないですか,それ」
「あと大好精も都合つけときました」
と,ボスが空を見上げるとそこには大好精。なんかピンク色の好気圧を発生中。
「いい仕事です,古手君」
「おほめにあずかり恐悦至極」
ぐるぐるぐるぐる。大好精は桃色台風形成中。
「…そろそろかな」
「もうちょっと,かな」
言葉が違っても,意図する内容は同じ。そう,火炎猫めが,あんなふうに温度を上げていくと…。
ぽむっ。
ぽむっ。
ぽむっ。
お燐のまわりで,焼きあがって地面から飛び上がるメロンパンズ。
「にゃにゃっ?!」
「「「まった?」」」にぱー。
「なんでめろんー?!」
「「「お手紙書いたの私なのなのなの」」」
ちょっとエコー。
「をう。いい具合に焼きあがりましたね」
「ふふふ。所詮お燐めは猫。属性は炎。その温度はいろいろ素敵に焼きあげる程度。そしてめろすけの本地は太歳。あるいはクトゥーニアン。大地にあまねくはびこり熱をもって変性する」
数多のメロンパンに囲まれて,お燐が立ち尽くすなか。
「「「ここにいることがお返事と理解ー」」」
「「「拒絶の言葉もないのもお返事と理解ー」」」
「「「いただきまーす」」」
「にゃーっ?!」
走り出すお燐。
温度の高いまま走り出すお燐。
ぽむぽむぽむ。次々焼きあがるメロンパンず。お燐の走る先に道はない。走ったあとに道ができる(メロンパンの)。ああ高村光太郎の詩のようね。
「「「「「「まってー」」」」」」
「にゃーっ! にゃあああああーっ!!」
グラウンドをあちこち走り回る火炎猫。あっちこっちの地面を熱してぽむぽむぽむ,焼き上がるメロンパンず。
「「「めざめてしまったー」」」
「「「このおもいー」」」
「にゃああああーっ?!」
火炎猫の行く手,行く手にメロンパン。ついに猫めは追い詰められて,立ち止まってしまったのです…。
「「「「「「お話,しよー」」」」」」
…一か所に―熱を集中してしまったのです!
どごおおおおおおんんっっ!!!
「ふみゃああーぁあああっ!?」
「「「「わー」」」」
足元から巨大なモノリスが飛び出して,弾き飛ばされるお燐とメロンパンず!
「―おぅ。焼き上がりましたね」
「そうですね―」
くるりん,とお燐が着地すると,また,
どごおおおおおおんんっっ!!!
「ふみゃああーぁあああっ!?」
「「「「あーれー」」」」
またモノリスが爆発的に盛り上がる。
よく見ると,そのモノリスはどうも美味しそうなクッキー色をしている。
「―素晴らしいカロメです」
「しかも大量のカロメです」
「じゃあ古手君。そろそろカロメを刈り取りますか」
「そうしましょうか」
そう。どぎまぎ学園大学部では,自生するカロメを非常食にしているのです。
焼き上げ方はいくつかあるんですが,今回は火炎猫の体温を利用しました。
「…あ。中高生や学部生はメロンパンを中心に回収してますねえ」
「若い奴らよ。メロンパンは保存がきかないというのに」
ぽん,ぽぽんっ!!
「にゃああああ…」
めろんぱんにまみれるお燐と,これを取り囲むカロメのモノリス。一部刈り取られたり回収されたり食べられたりして身を埋めるメロンパンが減ったり,カロメの山が途切れて外界がみえたりすると,お燐はそっちへ逃げようとして身じろぎし,
ぽんぽんぽぽぽんっ!!!
「うにゃあああ…っ…!」
手を伸ばした先・足を延ばした先・身をよじった結果,新たなメロンパンを焼きあげたり新たなカロメを焼き上げたり。
「…古手君。そろそろあの猫娘は限界じゃないでしょうか」
「えーどれどれ…? …ああ,そろそろまとわりつくメロンパンをはね飛ばす,尻尾の動きも鈍いですねえ」
猫だけに,しぺん,しぺんっと動くんですが。
そろそろたゆたゆ動くだけになって…ついにめろんに尻尾が挟み込まれると…「うにゃああああぁああああああっ☆♪」
ばふんっ!
「あれ? 古手君? 猫娘が消えましたよ?」
「え? …ああ。いますよ,ほら。メロンパンの山の中に」
「…猫が一匹,だらんとしてますが…」
「あの化け猫めは,水にぬれると猫形態になるって設定があるんですが。イヤまさか,自分由来の水でも「そぅ」なるとは」
「ヲイ待て。何の水だと?」
「さて?」にぱー。
なんかもぅ,そっちの方で猫が「にゃふっ」「ふにゃあ…」「にゃにゃ…」とか息も絶え絶えに骨抜きになってるんですが,果たしてそんな情景が求められていたものなのやらどうやら。
「しかしまあ。不用意ですよねえ,あの猫ちゃんも」
「まあ不用意ではありますよねえ,あの猫ちゃんは」
「なんで好き好きな彼氏のものと確信できない,どころか5割以上の確率で他の人のらしいラブレターにひっかかりますか」
「乙女心ってのがわかってませんね,ボス」
「その乙女心の産物を嬉々として収穫している君に言われたくありませんがいったいその言葉はどういう意味です古手君」
問われたので,私はちょっと手を休めて解説する。
「あのねボス。
想い,想って。
伝えて,理解されて。
でも受け入れられなくて。
でも逢えなくなるよりお友達を続けてくれるだけでも嬉しくって。
でも,ふと,心に隙間風のように,寂しさが沁みることがあるのよ。背負い籠いっぱいになっちゃったから収穫,もう終わりでいいよね?」
「おい乙女心」
「本当は,相手してほしいのよ。自分を見てほしいのよ。自分だけを見てほしいのよ。だからその願いを叶えてくれる,自分だけを見てくれる代償物が目の前にくると,ころっと行っちゃったりするのよねえ」
「そんなものかねえ。じゃあ帰って,このカロメをパッキングする作業に戻りましょうか」
「そんなものなんですよ。私にだって,ふとそんな気になることだってあります」
「ええt?!? 古手君がッッ!!??」
「オイ待てボス。今の間は何だ,今の間は」
「っていうかんじで みんなせいしゅんしているってかんじかしらー」
小高く池とグラウンドを見下ろす旧カフェ予定地・現事務室で課長は実況生中継。
「課長…ちょっと休憩しませんか?」
「きゅうけいならわたしがしてあげてるわー。ことりちゃんはおしごとがんばってねー」
無駄に一等地を確保してしまった結果。その「無駄」の分の事務処理会計処理が山と来て。で,しわ寄せが,そんなお茶目しちゃった人に集中していたりする。
「ぶかがやりてだと らくができるわ ね?」
微妙に目が笑ってなさそうで。
ブラウスの襟と髪のセットの乱れ具合からみて完徹っぽいわね課長はとか。
何か空気を読まざるを得なくて,小鳥は「あははー」と乾いた笑みを漏らして,書類仕事に没入した。
想い 伝えて
私はあなたの後を 追い続ける
ただそれだけでも―心満ちるの
Ep.XVII かおすで~と
「でも本当は。本当は,心満ちなどしないのよ」
「それはまた何故です古手君」
「本当は,相手してほしいのよ。自分を見てほしいのよ。自分だけを見てほしいのよ。だからその願いを叶えてくれる代償物が目の前にくると,ころっと行っちゃったりするのよねえ」
夏も翳り始めた頃。私はボスに空のバスケットをもたせて土手に出た。
といっても,それはデートってわけじゃない。私だってデートするなら,もうちょっといいところを考えますよ―学校のグラウンドの周りなんかじゃなく。
でもここは,待ち合わせ場所としてはちょっと良いかも。
どぎまぎ学園には池がある。大きな池で,都会の中のオアシス。水鳥が遊ぶ素敵な池。そのすぐ脇にはグラウンドがあり―その境には並木が木陰を作ってる。一本だけ大きめの木があって,実は待ち合わせ場所として有名だったり。
「…へえ。詳しいんですね古手君」
「一応チェックしてますから! …本当はねえ,もっと素敵サイトになる予定だったんですけどねえ…」
「ああ事務部が」
…グラウンドと池とを見下ろす位置に新築校舎がありまして。ガラス張りで,渡り鳥たちの水面のシュプールを見ながら紅茶を楽しむカフェなんかできる予定だったんですけど…やり手の事務部がさくっと自分たち用に確保しちゃいましてねー…。
「…いいんですかね」
「でもカフェにするには,アクセスが悪いですからね,あそこ」
いや本気でアレ,アクセス悪いですよどうにかなりませんか***(※検閲)。
「…まあ,そうですか。それに,衆人環視となったら,あの並木もデートスポットにはならなかったでしょうしね…」
すい,と視線を向ければ。
火焔猫(人間形態)がうつむき加減で伝説の木(笑)に背中を預けていたり。
「あれが古手君の友人ですか」
「ええ。無記名のラブレターにちょっとだけ期待しちゃった傷つき加減の乙女ちゃんです」
「…どーゆー紹介文です…」
「『大好きな彼にアタックし続けてきたけど気持ちは理解してもらえてるのに優しい言葉は掛けて貰えてるのにそれ以上に進まない。きっとこれ以上の関係にはなれないって理性では理解してるけどもしかしたらこのラブレターは彼の秘密の誘惑かもしれないなって思って待ち合わせに乗ってみた私揺れる乙女心』」
「それもどーでしょう」
「はいオペラグラス」
「何をしろと」
「『彼が来てくれたら最高だけどでも私だけを思ってくれるっていう別の人が素敵な人だったりしたらちょっとイイかも。いえダメよ私,彼に一途! でもふにゃー』な乙女の表情を楽しんでは如何でしょうか」
「ンな悪趣味な」
「割とみんなに売れたんですけどねー」
周囲には,私たちと同じようにバスケットを抱えてオペラグラスを構えたひとたちが。
「…あれ,大丈夫か?」
「問題ない。あの猫めは揺れる乙女心でいっぱいいっぱいで,周りなんか見えてませんよ」
お燐は不安げな表情をつくったり,ふにゃあと緩んでみたり,ひとりでに顔をあからめてみたり。彼が来るかもって期待しちゃったりでもきっと彼はこないんだからって期待する自分を責めちゃったりでもでもふにゃあー。と,くにくねにゅるんと身をよじらせながら,だんだん体温を上げていっているのです。
「いやそうじゃなく」
「売上だったらご心配なく」
「そうじゃないですよプライバシー的な意味ですよ」
「仕入れは別々ですから『私物のオペラグラスを偶然持ち合わせてました』って言い逃れはできます」
「保身だけじゃないですか,それ」
「あと大好精も都合つけときました」
と,ボスが空を見上げるとそこには大好精。なんかピンク色の好気圧を発生中。
「いい仕事です,古手君」
「おほめにあずかり恐悦至極」
ぐるぐるぐるぐる。大好精は桃色台風形成中。
「…そろそろかな」
「もうちょっと,かな」
言葉が違っても,意図する内容は同じ。そう,火炎猫めが,あんなふうに温度を上げていくと…。
ぽむっ。
ぽむっ。
ぽむっ。
お燐のまわりで,焼きあがって地面から飛び上がるメロンパンズ。
「にゃにゃっ?!」
「「「まった?」」」にぱー。
「なんでめろんー?!」
「「「お手紙書いたの私なのなのなの」」」
ちょっとエコー。
「をう。いい具合に焼きあがりましたね」
「ふふふ。所詮お燐めは猫。属性は炎。その温度はいろいろ素敵に焼きあげる程度。そしてめろすけの本地は太歳。あるいはクトゥーニアン。大地にあまねくはびこり熱をもって変性する」
数多のメロンパンに囲まれて,お燐が立ち尽くすなか。
「「「ここにいることがお返事と理解ー」」」
「「「拒絶の言葉もないのもお返事と理解ー」」」
「「「いただきまーす」」」
「にゃーっ?!」
走り出すお燐。
温度の高いまま走り出すお燐。
ぽむぽむぽむ。次々焼きあがるメロンパンず。お燐の走る先に道はない。走ったあとに道ができる(メロンパンの)。ああ高村光太郎の詩のようね。
「「「「「「まってー」」」」」」
「にゃーっ! にゃあああああーっ!!」
グラウンドをあちこち走り回る火炎猫。あっちこっちの地面を熱してぽむぽむぽむ,焼き上がるメロンパンず。
「「「めざめてしまったー」」」
「「「このおもいー」」」
「にゃああああーっ?!」
火炎猫の行く手,行く手にメロンパン。ついに猫めは追い詰められて,立ち止まってしまったのです…。
「「「「「「お話,しよー」」」」」」
…一か所に―熱を集中してしまったのです!
どごおおおおおおんんっっ!!!
「ふみゃああーぁあああっ!?」
「「「「わー」」」」
足元から巨大なモノリスが飛び出して,弾き飛ばされるお燐とメロンパンず!
「―おぅ。焼き上がりましたね」
「そうですね―」
くるりん,とお燐が着地すると,また,
どごおおおおおおんんっっ!!!
「ふみゃああーぁあああっ!?」
「「「「あーれー」」」」
またモノリスが爆発的に盛り上がる。
よく見ると,そのモノリスはどうも美味しそうなクッキー色をしている。
「―素晴らしいカロメです」
「しかも大量のカロメです」
「じゃあ古手君。そろそろカロメを刈り取りますか」
「そうしましょうか」
そう。どぎまぎ学園大学部では,自生するカロメを非常食にしているのです。
焼き上げ方はいくつかあるんですが,今回は火炎猫の体温を利用しました。
「…あ。中高生や学部生はメロンパンを中心に回収してますねえ」
「若い奴らよ。メロンパンは保存がきかないというのに」
ぽん,ぽぽんっ!!
「にゃああああ…」
めろんぱんにまみれるお燐と,これを取り囲むカロメのモノリス。一部刈り取られたり回収されたり食べられたりして身を埋めるメロンパンが減ったり,カロメの山が途切れて外界がみえたりすると,お燐はそっちへ逃げようとして身じろぎし,
ぽんぽんぽぽぽんっ!!!
「うにゃあああ…っ…!」
手を伸ばした先・足を延ばした先・身をよじった結果,新たなメロンパンを焼きあげたり新たなカロメを焼き上げたり。
「…古手君。そろそろあの猫娘は限界じゃないでしょうか」
「えーどれどれ…? …ああ,そろそろまとわりつくメロンパンをはね飛ばす,尻尾の動きも鈍いですねえ」
猫だけに,しぺん,しぺんっと動くんですが。
そろそろたゆたゆ動くだけになって…ついにめろんに尻尾が挟み込まれると…「うにゃああああぁああああああっ☆♪」
ばふんっ!
「あれ? 古手君? 猫娘が消えましたよ?」
「え? …ああ。いますよ,ほら。メロンパンの山の中に」
「…猫が一匹,だらんとしてますが…」
「あの化け猫めは,水にぬれると猫形態になるって設定があるんですが。イヤまさか,自分由来の水でも「そぅ」なるとは」
「ヲイ待て。何の水だと?」
「さて?」にぱー。
なんかもぅ,そっちの方で猫が「にゃふっ」「ふにゃあ…」「にゃにゃ…」とか息も絶え絶えに骨抜きになってるんですが,果たしてそんな情景が求められていたものなのやらどうやら。
「しかしまあ。不用意ですよねえ,あの猫ちゃんも」
「まあ不用意ではありますよねえ,あの猫ちゃんは」
「なんで好き好きな彼氏のものと確信できない,どころか5割以上の確率で他の人のらしいラブレターにひっかかりますか」
「乙女心ってのがわかってませんね,ボス」
「その乙女心の産物を嬉々として収穫している君に言われたくありませんがいったいその言葉はどういう意味です古手君」
問われたので,私はちょっと手を休めて解説する。
「あのねボス。
想い,想って。
伝えて,理解されて。
でも受け入れられなくて。
でも逢えなくなるよりお友達を続けてくれるだけでも嬉しくって。
でも,ふと,心に隙間風のように,寂しさが沁みることがあるのよ。背負い籠いっぱいになっちゃったから収穫,もう終わりでいいよね?」
「おい乙女心」
「本当は,相手してほしいのよ。自分を見てほしいのよ。自分だけを見てほしいのよ。だからその願いを叶えてくれる,自分だけを見てくれる代償物が目の前にくると,ころっと行っちゃったりするのよねえ」
「そんなものかねえ。じゃあ帰って,このカロメをパッキングする作業に戻りましょうか」
「そんなものなんですよ。私にだって,ふとそんな気になることだってあります」
「ええt?!? 古手君がッッ!!??」
「オイ待てボス。今の間は何だ,今の間は」
「っていうかんじで みんなせいしゅんしているってかんじかしらー」
小高く池とグラウンドを見下ろす旧カフェ予定地・現事務室で課長は実況生中継。
「課長…ちょっと休憩しませんか?」
「きゅうけいならわたしがしてあげてるわー。ことりちゃんはおしごとがんばってねー」
無駄に一等地を確保してしまった結果。その「無駄」の分の事務処理会計処理が山と来て。で,しわ寄せが,そんなお茶目しちゃった人に集中していたりする。
「ぶかがやりてだと らくができるわ ね?」
微妙に目が笑ってなさそうで。
ブラウスの襟と髪のセットの乱れ具合からみて完徹っぽいわね課長はとか。
何か空気を読まざるを得なくて,小鳥は「あははー」と乾いた笑みを漏らして,書類仕事に没入した。
そんななぜか最後に出番があったひと
足もとにわやわやいてくれると可愛いと思います
お掃除ロボ・ルンバちゃんはもっとかわいくなったら購入を検討したい
>そんななぜか最後に出番があったひと
見通しの良い場所に席を確保したら,その分忙しくなってしまった不思議。
それ以外はわりとご要望にお応えしてみましたー
えらい懐かしい気分になりましたやすしきよし
頭ぶん殴られたり頭ぶん殴られたり大変だなおr…誰かさんは
資料読んだりしたらさらに進まない…。
頭部が大変なことになる係:げ
精神的にひどい目にあわされる係:超獣
セット扱い?:めろ&かれー
そんなわけで
「めろんヴィング王朝史話」
「かれりんぐ王朝勃興史」
なんて単語が思いついたり。けど誰得。
「きゅうさいやけど じょしこうせいやん?」
プリティな容姿と真っ黒策略。いつのまにか主家を乗っ取ります。
「私はただ寝ていたいのにっ?!」
「ひめは ゆっくりねているですよ? なにもかもこの きゅうさいにおまかせやん?」