<カンザスは北米のど真ん中にあるど田舎である>
高層ビルに囲まれて見晴らしがきかない空間に身を置いていると、閉塞感に駆られて、空を見上げたくなる。
が、
どこまでも平坦な世界に暮らしていると、これも人格を崩壊させ、あるいは平衡感覚を失わせるものらしい。
宇宙空間にまで進出することは出来るが、そこで生活することはできない。
アメリカは人口国家であるという指摘は観念的なものとばかりは限らない。
西部に乗り出したが、そこには平坦な土地がどこまでもひらがる世界で、人間はどこかで山や森やらを必要としているのだった。
砂漠に建物を作って視界を遮れたのは、まだしも沿岸地域から少しばかり内陸に入った立地で、それがラスベガスだった。
ど真ん中は穀倉地帯であるが、居住するには難があり、それはどこか宇宙空間に似て、方向感覚を失わせるのだろうか。
道があれば踏み外せるが、道のない広がりの中では踏み外したのかどうかわからなうなる。
強く硬い原理主義が生ずるのは、こういう世界なのではないか。
共和党の牙城は、中西部4州であるのとも妙に符合する。
一方、都市空間の神は気まぐれである。
神は内面にはなくて、架空世界の決め事は外からやってきて、あるとき突然、すべてが塗り替えられてしまう。
神という美徳を身につけるものは没落し、その都度、神を裏切る罪悪を重ねる者が立身する。
君子は豹変するのである。
1993年の作品だが、古典古代の中国の作品を読んでいるような気がしてくる。
話は長いが、登場人物の行動にどこか必然性やつながりといったものがない。
それが現実の写しなのかもしれない。
『三国志』の登場人物たちと似ている。
(敵味方が入り乱れるばかりか敵が味方に味方が敵にとめまぐるしく入れ替わる)
「なぜ」にはあまり立ち入らないのであるが、それは作者が女性であることと関係があるのかもしれない。
読みどころは、
①年老いた女性たちの物語の世界
②都会と田舎、人工世界と手付かずの自然あるいは手入れされた自然
③法廷は全体真実を探求する場ではありえない
④読み書きができないということで捉まえられる事象、読み書きが出来るがゆえに見えない世界
⑤法廷小説における法廷描写の位置づけの逆転
⑥暴力の意味(これが通奏低音かな)
とりとめのない紹介だな・・・
本筋はこうだ。
カンザスで農場経営のかたわら作家を志望するオーウェン・バーンのもとにチャンスが転がり込む。
ニュー・ヨークで起きた有名アーティストの焼死事件で、その未亡人リノーアに嫌疑がかけられていて、この裁判の傍聴記を書かないかというものだった。
被害者に着眼しなければ記録に生彩が欠けることに気がついたオーウェンは、その複雑な背景(一部は自分と重なる)を追求していくうちに思いもよらぬ真相へと近づいていく。
文庫上・下巻890ページの回想録的作品に仕上がっている。
法廷での時間が、過去から現在そして未来へと進行する(結論へと収斂していく)一方で、作家オーウェンの探求は過去へと遡行して(空間的広がりを持って)いく。
このコントラストの妙はなかなかうまくできていると思う。
---------------------------------------
高層ビルに囲まれて見晴らしがきかない空間に身を置いていると、閉塞感に駆られて、空を見上げたくなる。
が、
どこまでも平坦な世界に暮らしていると、これも人格を崩壊させ、あるいは平衡感覚を失わせるものらしい。
宇宙空間にまで進出することは出来るが、そこで生活することはできない。
アメリカは人口国家であるという指摘は観念的なものとばかりは限らない。
西部に乗り出したが、そこには平坦な土地がどこまでもひらがる世界で、人間はどこかで山や森やらを必要としているのだった。
砂漠に建物を作って視界を遮れたのは、まだしも沿岸地域から少しばかり内陸に入った立地で、それがラスベガスだった。
ど真ん中は穀倉地帯であるが、居住するには難があり、それはどこか宇宙空間に似て、方向感覚を失わせるのだろうか。
道があれば踏み外せるが、道のない広がりの中では踏み外したのかどうかわからなうなる。
強く硬い原理主義が生ずるのは、こういう世界なのではないか。
共和党の牙城は、中西部4州であるのとも妙に符合する。
一方、都市空間の神は気まぐれである。
神は内面にはなくて、架空世界の決め事は外からやってきて、あるとき突然、すべてが塗り替えられてしまう。
神という美徳を身につけるものは没落し、その都度、神を裏切る罪悪を重ねる者が立身する。
君子は豹変するのである。
1993年の作品だが、古典古代の中国の作品を読んでいるような気がしてくる。
話は長いが、登場人物の行動にどこか必然性やつながりといったものがない。
それが現実の写しなのかもしれない。
『三国志』の登場人物たちと似ている。
(敵味方が入り乱れるばかりか敵が味方に味方が敵にとめまぐるしく入れ替わる)
「なぜ」にはあまり立ち入らないのであるが、それは作者が女性であることと関係があるのかもしれない。
読みどころは、
①年老いた女性たちの物語の世界
②都会と田舎、人工世界と手付かずの自然あるいは手入れされた自然
③法廷は全体真実を探求する場ではありえない
④読み書きができないということで捉まえられる事象、読み書きが出来るがゆえに見えない世界
⑤法廷小説における法廷描写の位置づけの逆転
⑥暴力の意味(これが通奏低音かな)
とりとめのない紹介だな・・・
本筋はこうだ。
カンザスで農場経営のかたわら作家を志望するオーウェン・バーンのもとにチャンスが転がり込む。
ニュー・ヨークで起きた有名アーティストの焼死事件で、その未亡人リノーアに嫌疑がかけられていて、この裁判の傍聴記を書かないかというものだった。
被害者に着眼しなければ記録に生彩が欠けることに気がついたオーウェンは、その複雑な背景(一部は自分と重なる)を追求していくうちに思いもよらぬ真相へと近づいていく。
文庫上・下巻890ページの回想録的作品に仕上がっている。
法廷での時間が、過去から現在そして未来へと進行する(結論へと収斂していく)一方で、作家オーウェンの探求は過去へと遡行して(空間的広がりを持って)いく。
このコントラストの妙はなかなかうまくできていると思う。
---------------------------------------