売れない作家ハリー・ブロックのもとに死刑執行が確定した連続猟奇殺人犯ダリアン・クレイから、ある条件の下に、生い立ちをはじめとする独占的に告白聴取録を出版することを認めるという旨の手紙が届いた。
部屋代の支払いのために始めた家庭教師先の教え子クレアは、ハリーのマネージャーとして、この申し出を承諾すべきだと言う。
とりあえず面会に行ったもののハリーはこの仕事を請けたくないと思った。そこに、被害者遺族たちが押しかけて、出版を許さないと抗議してきたが、双子の姉を殺されたダニエラだけは、ぜひ、その仕事を請けてほしいと申し出る。
結局、ハリーはこの仕事を引き受けることになり、ダリアンの元に寄せられたファンレターの差出人たちを訪問して話を聞いてまわることになるのだが・・・。
合間合間に、ハリーが手がける探偵小説、バンパイヤ小説、SF小説の一部が紹介され、当代の有名作家たちについての論評がさしはさまれる。あるいは、現代社会批判のようなものも散見されるが、それはそれで面白い。
小説の本筋よりは、そういう脱線のほうが、実は、主食なのではないかと思えるほどだが、それらは最後の最後の大逆転の布石にもなっていて、つくりとしてはややあざとすぎる気もするが、それが二流の二流たるゆえんでもあり、メビウスの輪のような円環構造になっている。
この本の読みやすさは、翻訳者のおかげではないかと思う。
下手な訳者に当たると、日本でのこれほどの評価は得られなかったかもしれない。