1999

~外れた予言~

忍者の少女封印(7)

2007-03-09 02:35:29 | Weblog

少女は交差点で信号が変わるのを待ちながら、
じっと立っていた。

多くの自動車が少女の目の前を走り、
多くの歩行者が歩道を歩き、
そして少女の近くには、
信号待ちの人たちが数多く立っていた。

少女は街の風景を見ながら、
同時に別のものを凝視していた。
脳の中の残像。
道に倒れている男。そして母親と男の子。


少女は最近、寝不足だった。
眠ってしまうと夢でうなされてしまうので、
眠るのを避けていた。

それでも毎晩数時間は眠ってしまう。
そうすると、いつも同じような夢を見てしまう。
倒れてぐったり動かない男や、
号泣する親子の夢を。

日中もそれらの残像が、
脳に焼き付いて離れない。


信号待ちの少女の目の前が、
急に光に包まれた。

周囲の風景はすべて一瞬で消え、
一面、目も眩むような光だけになった。

獅子髪の男が、そこにいた。


(気にするな)

獅子髪の男は少女に話しかけた。

(君にはもっと大事なことがある)

獅子髪の男は強い光を発していた。
声が、まるで引き込まれるかのように響く。


(あなたは・・・誰?)

少女は獅子髪の男に、
思い切って話しかけてみた。

(私は、導きを役割とする者だ)

(導き?)

(そうだ、人類を明るい光へと導く者だ)

(人類?)

(そうだ、己の欲望に囚われた未熟な人類を・・・)

(・・・・・・)

(破壊と再生を通じて導かなくてはならない)

(・・・・・・)

(君も同じ意志を持つ同士だ、私はそれを知っている)

(・・・・・・)

(そうだろう?)

(は・・・い・・・)

(私には、いや我々には多くの同士がいる)

(・・・・・・)

(長い年月をかけて世界を救うための努力をしてきた)

(・・・・・・)

(闇に沈んでいる人類を光へと導くための努力だ)

(・・・・・・)

(しかし、その定められていたはずの導きへの道が・・・)

(・・・・・・)

(近年、大きく揺らいでいる)

(・・・・・・)

(我々を妨害する邪悪な愚か者の集団がいるのだ)

(・・・・・・)

(すでに多くの同士が倒され・・・)

(・・・・・・)

(世界を救うための大きな手立てを奪われてしまった)

(・・・・・・)

(このままでは約束された計画が崩れてしまう)

(・・・・・・)

(君の力をぜひ借りたい)

(え?)

(我々同士には君の力が必要だ)

(私が?)

(そうだ、君はまだ自分の力の大きさに気付いていない)

(・・・・・・)

(君には信じられないような大きな力が秘められている)

(・・・・・・)

(君の中に眠っている大きな力を目覚めさせ・・・)

(・・・・・・)

(愚か者共に奪われた手立ての代わりとしたい)

(・・・・・・)

(予定通りに世界が救われるかどうかは・・・)

(・・・・・・)

(これからの君にかかっている)

(そ、そんな・・・)

(本当だ、私を信じてほしい)

(・・・・・・)

(私と一緒に人類を真実の光へと導こう)

(・・・・・・)

(私を信じるんだ)


獅子髪の男は消えた。一面の光も消えた。
街の風景が戻った。

信号が変わった。
少女は軽快な足取りで横断歩道を渡り始めた。