私はまたいつぞやの中年女性の家にいた。
脳出血後遺症で寝たきりのままの、
ひとことも話せない、発語さえできない例の女性だ。
中年女性は眠っていた。
女性の夫さんは、
私のためのコーヒーを用意するために台所にいた。
私と女性のほかには、
インコと熱帯魚とプーさんのぬいぐるみだけだった。
(あなたを倒したのは獅子髪の男ですね)
私は尋ねた。返答はなかった。
女性は眠ったままだ。
(草薙は力で監督から実権を奪いましたね)
私は半ば独り言のように話していた。
心の声で。
(1999年が無事に済んだあとも争いは終わらなかった)
女性に声が届いているのかどうかは定かではない。
インコや熱帯魚には届いているかもしれない。
(たしか2006年にも何かの予言がありましたね)
プーさんのぬいぐるみは、
今日も寝たきり女性の拘縮した腕の中で、
ヘッドロックをかけられたままだ。
(2006年をめぐる争いが2001年から繰り広げられた)
夫さんがコーヒーを持ってきてくれた。
私はそれをお茶のように、
またもやガブガブと何杯も飲んだ。
(違いますか?)