1999

~外れた予言~

忍者の少女封印(22)

2007-04-01 23:07:36 | Weblog

忍者と猫丸が、
例のショーパブの二階席に並んで座っていた。
まだショーが始まる前の時間帯である。

(忍ちゃん、少女が精神科に入院したんだって?)

(うん、そうらしいね)

(これでしばらくは少女は立ち直れないだろうね)

(多分そうだろうな、きっと数年くらいはムリだろう)

(やったね、忍ちゃん、見事だよ)

(いや、手柄は俺のもんじゃないよ)

(え?)

(少女の心を封じたのは・・・)

(・・・・・・)

(死神の妻子、念仏、中将、そのほかの死んだ仲間たちだ)

(・・・・・・)


忍者はそれほど嬉しくなさそうな顔をしていた。
猫丸は、
少なくない犠牲者や戦死者の存在のせいだと理解した。

(しかし仲間が相当減ってしまったね、忍ちゃん)

(うん、200人以上いたのに今では・・・)

(・・・・・・)

(たった17人になってしまった)

(無傷で生き残ってるのって誰?)

(んーとね、ちょっと待って、猫さん)

(・・・・・・)

(監督、草薙、鉄人、魔女、百目、巫女・・・)

(うんうん)

(神父に僧正・・・)

(うん)

(軍曹、歌姫、毒盛、女王、若頭、関取、奥様・・・)

(ふむふむ)

(あとは俺と猫さん)

(ふむ)

(この17人だね)

(忍ちゃん、神父と僧正の二人以外はみんな・・・)

(・・・・・・)

(監督を生身の人間だと知ってる者ばかりじゃないの)

(そうだね)

(というか監督を神とか天だと思ってた仲間は・・・)

(・・・・・・)

(みんな中将が指揮してたんだっけ)

(・・・・・・)

(死んだ連中は本望かね)

(・・・・・・)

(俺たちも監督の正体なんて知らない方がよかったね)

(かもな、ウンコだからな)


監督は自分の正体を配下に知られた場合、
まずその配下を封じようとしてきた。

自分のことをただの人間だと知られると、
それまで従順に指示を受けていた者であっても、
手の平を返すように反抗してくる傾向がみられるからだ。

監督の正体を知って監督に逆らったが故に、
監督に封じられて消えていった仲間たちも実は多い。


(忍ちゃん、今夜は誰がここに集まるの?)

(えーとね、誰だっけ)

(・・・・・・)

(監督、草薙、鉄人、あとは魔女あたりかな)

(そっかそっか)

(・・・・・・)

(しかしさ、草薙がいってた例の獅子髪の男だけど・・・)

(・・・・・・)

(草薙と鉄人の二人がかりでも取り逃がしたんだって?)

(そうらしいね)

(それってマズくない?)

(うん、まあ、マズイね)

(いつかまた出てきてなんかやるでしょ)

(猫さん、そうなんだ、それが問題だ)

(巫女はなんかイメージ見てないの?)

(それがね、獅子髪の男はね・・・)

(・・・・・・)

(近い将来、日本の表舞台に立つらしいんだ)

(え?)

(驚くほど目立つところに君臨するらしい)

(マジ?)

(日本の国民の誰もが知る存在になるそうだよ)

(・・・・・・)

(だから猫さん、超マズイんだよ、雰囲気的には)

(・・・・・・)

忍者は思わずタメ息をついた。


(次は逃がさない)

後ろから草薙の声がした。

忍者と猫丸が後ろを振り向くと、
そこには草薙と鉄人の二人がいた。

(猫さん、久しぶりだね)

草薙は猫丸に話しかけた。
二人は席に座った。

(魔女はまだ来てないのか?)

鉄人があたりを見回しながらいった。

(きっとまた旦那とケンカでもしてるんだろ)

草薙が笑いながら魔女をコケにした。

(露出狂の変態が何いってんのよ、スカポンタン!!)

魔女が現れた。

(あら、監督はまだなの? ショーが始まっちゃうじゃない)

魔女は監督が珍しくショーの開演前にいないことをつついた。

(私がここのショーに遅刻するはずがないだろう)

監督が現れた。


集まった全員が座った。

(しかしさ、みんな野球観てる?)

猫丸が唐突に話題を変えた。

(野茂もイチローもすごいよね)

猫丸は野球好きだ。
監督もそうだ。監督は思わず頬を緩ませた。


ショーパブの場内が暗くなった。
もうすぐ、今夜も華やかなショーが始まる。
1995年の夏。