ジャズとボサノヴァの日々

Days of Jazz and Bossa Nova

Sandalia Dela performed by Stan Getz and Flora Purim

2015-01-22 20:18:11 | Flora Purim & Airto
私がまだ十代だった頃、海外の音楽シーンを知るには音楽雑誌、レコード店、ラジオが主な経路だったと思う。友人のお兄さんというチャネルもあったが、そのお兄さんにしても、これらの経路から情報を仕入れていたはずだ。

時代の変化というのは渦中にいると実感できず、後になって「あぁ、そこが分岐点だったのか」と思い知ることが多い。特に情報が簡単に入手できなかった40年前は、音楽のトレンドやアーティストの情報などリアルタイムに入手できるはずもなく、聞きかじりの知識を頭の中で膨らませて楽しんでいたように思う。

1960年代の後半から70年代にかけて、背伸びしたい子供は洋楽のロックを聴いていた(はずだ)。私もラジオから流れてくる洋楽をチェックしては限りあるお小遣いをやりくりしてレコードを買ったり、友達と交換したりして楽しんでいた。

ところが73年から74年にかけて、好きで聴いていたアーティスト達の作品にちょっとづつ違和感を感じ始めた時期があった。ロックとジャズがお互いのフィールドから歩み寄ってジャズロックとかフュージョンと新しいジャンルが話題になってきた頃だ。

音楽雑誌もラジオも、デオダートやマハビシュヌ・オーケストラを特集し始めたので、一応私もレコードも買ってみたが、正直なところ何が良いのかさっぱり分からなかった。

そんな中、当時西ドイツのECMというレーベルに所属しているアーティスト達のサンプラーレコードECM SPECIALが廉価で発売されたので買ってみた。その1曲目がChick Corea & Return to ForeverのCaptain Marvelという曲であり、一聴してこんな世界があるのかと驚いた。そして直ぐにReturn to Foreverのレコードを買いに走った。


そのReturn to Foreverにボーカルで参加しているのがFlora Purimだ。このアルバムは収録曲の高いクオリティや斬新なアレンジ、参加ミュージシャンの飛びぬけた演奏力に加え、ECMレーベル(というかオーナーのマンフレッド・アイヒャー)の音へのこだわが生み出す独特な空気感やクリアな音の重なりの中で、Flora Purimの可憐な歌声がひときわ素晴らしかった。買った翌日から学校から帰ってくると毎日ターンテーブルに乗せて異世界の音楽を楽しんだ。


多分このアルバムに出会ったことが、その後の音楽の聴き方に多大な影響を与えていると思う。一体、Flora Purimって誰だ、から始まり、ブラジル人だけどBossa Novaの系列ではないし・・・妄想が膨らんでは、実態を掴まえる手立てを考える毎日。

そこから私のブラジル音楽探索が始まった。Flora Purimという名前がクレジットされていると、とりあえずレコード屋で試聴させてもらう(熊本の某有名レコード店は丸刈り坊主頭の私にも自由に試聴させてくれた)。レコードをヘッドフォンで聴きながら日本語の解説をむさぼり読み、Flora Purimがセッションで参加しているレコード全てを片っ端から聴いてみた。すると夫のAirtoの経歴が分かってきて、彼が参加していた電化時代のMiles Davisも聴いてみた。

1人のアーティストを軸に音楽を追っかけていくと、音楽はジャンルではないことが分かってくる。それはレコード会社やジャーナリズムが作り出した区分けにしか過ぎない。音楽には良い音楽と、普通の音楽の二種類しかなく、良い音楽を聴いていると、更に良い音楽がやってくるという法則も分かった。

今日の映像は、多分Return to Forever前のFlora Purimの若々しいライブ映像。ここで歌っているSandalia Delaは1970年に発売されたDuke PearsonのHow Insensitiveに入っている曲で、Return to foreverの発売が1972年だから、70年から71年頃のライブだろうか。じっくり調べてみたい。





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