ファミリー メンタル クリニック

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産婦人科・小児科医だけでなく精神科医も不足!

2007年09月04日 | 精神保健・医療行政
たまたま本日配送されてきた精神神経学雑誌に目を通した。巻頭言「精神科医も足りない」という一文が目に入ってきた。
その文章を紹介しながらすすめると、
医師が増えると医療費が増えるので、厚生労働省は医師を減らし、医師過剰を抑制するため医学部の定員を10%削減した。しかし今はその政策が破綻し再度医学部定員を増員している。厚生労働省の政策を批判している。
一方著者は、駅前メンタルクリニックが増えて、精神科医は増えているかのような錯覚があるし、心療内科・精神科へのアクセスもしやすくなっているかのように感じているかもしれないが、実際はそうでないと指摘している。

精神科外来患者数は増加、自殺関連の報道で精神科外来がクローズアップされている。
しかし、逆に精神科病院入院患者数は減少している。

一つの原因は(先日ボクも不満たらたらの)指定医業務が多忙すぎる点もあるかもしれないと指摘する。
病院を退職し開業をする。時間的にも拘束されないし、病棟での書類の煩わしさからも解放される。

指定医の資格を取っている者は最低でも精神科医を5年以上行っている。
ボクらのように10年から15年の医者の経歴で退職し開業する者が近くでも増えている。
これはどうも全国的な流れのようだ。

精神科開業医が増え精神科外来を受診する患者さんは増えている。
しかし、夜間救急や緊急入院の対応は当然クリニックでは出来ない。
結果、夜間や緊急入院は精神科病院の医師が診察せざるをえない。
・・・で忙しくなる。の悪循環。
(本来は精神科病院で診た方が良いような患者さんもクリニックで診ているという構造上の問題もあるので、一概に精神病院の医師がクリニックの医師を責めることも出来ないだろう。)

精神保健指定医も数は11500人いるはずだが、ボクも含め全員が精神科病院に勤務しているわけではない。
そこが問題だろう。
精神科病院で常勤医は3300人と、著者は数字を出している。
パートの医師を入れても2倍になることはないだろう。

厚生省は、自殺対策をあげているが、入院先の精神科病院の医師がいないのなら、産婦人科と同じくたらい回しの事故が起きるのも時間の問題かもしれない。

高校では優秀な生徒が進路指導で医学部を薦められる傾向が強いらしい。
しかし、彼ら彼女らが医学部に進学し、各科の研修をして、精神医学に興味を持ち精神科医になってくれるだろうか。
著者は小児科や産婦人科医のように実りがない上に医療訴訟が増えそうな科から学生が逃げていく現状を精神医療にイメージしているようだ。

産婦人科医はいるがお産を診てくれる病院の医師がいない。婦人科クリニックは大繁盛・・・そんな構造が精神医療でも起きてくる危惧がある。

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1 Comments

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実は私も迷ったクチでして…… (kaetzchen)
2007-09-04 21:47:15
もともと西洋哲学大好き少年だったので,精神科にはあこがれがあったんですね.だけど,自分自身が「てんかん」患者だという事実に,もしかして患者さんを主観的に診てしまう可能性はないだろうか,と思って,結局発生生物学・分子生物学の基礎の方へ逃げてしまいました(だから表向きは化学者かも).

儲かる・儲からないというのはあくまで開業段階の話だから,よほど金銭欲にこだわるロクデナシでなければ,医者が如何に儲からないかは皆んな知っているんじゃないかしらん? よっぽどの悪徳で院内薬局処方していれば別だけど.

医療訴訟のことは確かに怖いです.あれで有能な外科系・小児科の若い医者が潰されていく.だから,自分は「天才だ!」というモーソーに浸らないとやっていけないのかな,と,「俺は天才!」と叫ぶ若者を観察していて思ったことがあります(暑さでネジが数本抜けたのか……).
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