ファミリー メンタル クリニック

児童精神医学,サッカー,時にテレビや映画、Macのネタ。
要するにひとりごと・・・

「発達障害」の「問題」。年末、こんな話題で失礼します。

2008年12月31日 | 児童精神医学
ここ数日、発達障害に関するコメントがあります。
保護者の方の夢も希望もないような現実を述べるかもしれません。しかし、現実です。

まず、医学教育。
児童精神医学を専門としている教授が全国で10人はいない。
医師になって、個人的に研修するなり、全国でも少ない児童精神科の病院などで勤務することになります。
従って、医学部を出たからと言って、精神科医だからといって、児童精神医学の細かなニュアンスを診察で鑑別することは困難なことがあります。医師の個人的な児童精神医学への興味と関心と日々のお勉強に依るところが大きいのです。
DSMやICDなどの診断基準だけではASDの診断は出来ません。

次に、発達障害と直接関連する特別支援教育。
教師が特別支援教育対象児童についてどの程度教育学的な技能があるのかという問題。
文科省は6%が特別支援教育対象児童とデータを出していますが、軽度精神遅滞児童など含めると、実際は10%近くが「特別支援教育」が必要かと思われます。(あくまでも個人的な印象として)
これは教育学部での教育や、教師になるために教育学部以外からも教師となることの出来る日本の制度など、大学教育自体の根深い問題があります。
小学校では、それぞれの学校単位で理解の程度は大きく違うように思われます。
ましてや中学では更に差が大きいように思われます。
もしかしたら、いまだにウチの中学校には発達障害児童は一人もいません、と言っている校長がいるかもしれません。

高校や大学になると発達障害の生徒がいない前提でカリキュラムも考えられており、変更される可能性などはボクには分かりません。
さらには、教育委員会がどのようなビジョンを持っているのかという問題。

他に、乳幼児からのスクリーニングや療育や保健の問題。
今回、沖縄県が児童精神科医を慰留することが出来なかった問題と直結する部分かもしれません。(詳細はボクには分かりませんが)
身体的な(内科外科的)問題は、遺伝的な事も含め早い時期から疾患がないかどうか、査定されます。
また、予防接種も含め疾病へ対応準備もなされています。
重度な精神遅滞や自閉症児童は3歳までには発見され、療育が検討されていることでしょう。
(ただし、それも小学校に入学するまでは医療・保健的な対応がなされるが、高等学校・高等部を卒業するまで医療と教育の連携が不十分で医療が必要でありながら、学校で家族への医学的な教育(心理教育)が行われていない問題があるようです)

身体的に明らかな問題はなく、知的にも社会発達にも大きな支障のない子は健常な児童と見なされる訳ですが、実はADHD、ASD(Autistic Spectrum Disorders)の児童などが無視されている可能性があります。
この部分に早急に光を当てることが、重要な分野なのです。・・・が、沖縄県は不採算部門と思っているのかもしれません。
医師が地域に出て、病院で患者を診ないことはけしからんとでもいわんばかりの狭い了見でしかないのかもしれません。(あくまでも推測の域を出ないのですが)

単に暴れている児童なのかADHDなのかASDなのか。この子の行動パターンを親も周囲も理解しておくことは早過ぎても困ることはありません。(まだ、不勉強なボクは1歳でADHD、ASDの診断をしろと言われても出来ませんが。)

最後に日本の医療保険上の問題。
親は自分の子どものことなのでたっぷりと時間をとって医師に話を聞いて欲しいのは分かります。
しかし、学校の先生がどうこうとか2時間も話しをされた日には個人のクリニックは潰れてしまいます。
教育・医療・福祉・ケースワークなど分節化・および総合化のどちらもされていません。
子どもだけを1日8人診察し、医師とスタッフ4,5人が生活できるだけの収入は残念ながら現在の医療保険制度では期待できません。
(初診の患児に1日8時間かけて診断・療育方針をたてるクリニックもあるようです。しかし初診料が20万円ほどかかるのかな?そして、3年待ちだったりします。これは日本の児童精神医学の根本的な問題を提起しているように思われます。おそらく他の国では正攻法なのだと思います。)

「発達障害」に関する「問題」は単純ではありません。
縦割り行政を改善しないと先に進まない面があります。

そこから私は何を考えるのか・・・・



追記)
児童精神科を診る 新聞の記事です 3日連続で掲載されていたようです



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