Blog FakeTK

某社会学者のブログです。いまは主に読んだ書物の情報をお伝えしています。

われらの子ども

2020年07月12日 21時33分23秒 | 
ロバート・D・パットナム(柴内康文訳),2017,われらの子ども──米国における機会格差の拡大,創元社.(7.12.2020)

 アメリカ合衆国における、半世紀にわたる社会経済的格差の拡大について、統計データを提示しつつ、いくつかの都市、それぞれの分断された階級の詳細な事例の紹介と比較をとおして明らかにした大作。
 親子間での階層間固定のしくみ、乳幼児期にはじまる発達過程上の格差、地域社会の環境による影響、そして、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の格差による、人生の機会不平等の現実。チーム・パットナムによる、膨大な調査データの蓄積が存分に生かされている。
 合衆国における、絶望的なまでの階級的不平等の現実に圧倒されるが、社会調査による知見の水準の高さからも、おおいに参照されるべき作品だ。

目次
第1章 アメリカンドリーム:その神話と現実
第2章 家族
第3章 育児
第4章 学校教育
第5章 コミュニティ
第6章 何をすべきか
コメント

【旧作】大貧困社会【斜め読み】

2020年07月12日 21時31分31秒 | 
駒村康平,2009,大貧困社会,角川SSコミュニケーションズ.(7.12.2020)

 駒村さんが提案する、年金一元化案(最低保障年金+新型厚生年金)には、わたしも大賛成だ。
 「最低生活保障」の底が抜けた状況は、本書が出されて10年余の間、ますます悪化しているが、一縷の望みは捨てるべきではないのだろう。

目次
第1章 小泉改革の功罪
第2章 穴だらけの雇用・所得のセーフティネット
第3章 医療セーフティネットの崩壊
第4章 問題だらけの日本の年金制度
第5章 ここまできた日本の貧困問題
第6章 貧困社会への処方箋―崩壊か、存続か、社会保障改革の選択肢

アメリカ発の金融恐慌の影響で、未曾有の世界的大不況になっている。この影響でバブル経済後に起こった「格差と貧困」が、より一層深刻化することは間違いないだろう。脆弱な社会保障政策の影響で、今や大貧困国になってしまった日本は、今後どのような道を進むべきなのか?福祉・社会保障の専門家である著者が、暮らしやすい国・日本にするための処方箋を説く。
コメント

ドキュメント しくじり世代

2020年07月11日 19時14分46秒 | 
日野百草,2020,ドキュメント しくじり世代──団塊ジュニア・氷河期中年15人の失敗白書,第三書館.(7.11.2020)

 「団塊ジュニア」という過剰人口集団における過酷な競争、バブル経済崩壊、アジア通貨危機等による就職難、これらが生んだ不幸の数々が、15人の人物群像から浮かび上がる。
 彼ら、彼女らには、子ども部屋おじさん、ネトウヨ、貧困女子等が多い。絶望的な不幸がもたらすサディズム、権威主義には、心底、戦慄する。
 何も得られかなった失われた世代、せめて、老後だけは、しっかり生活保護を受けて、穏やかに暮らしてほしいものだ。

目次
十五人の「しくじり」
テレビディレクター 出身:埼玉県 学歴:関東の中堅私大卒 家庭:独身、実家住まい 経歴:元テレビ制作会社社員(ディレクター) 現在:ニート 将来:テレビ屋以外に何かしたい
エリート 出身:東北 学歴:名門公立高校、国立大学卒 家庭:独身、都内賃貸マンション住まい 経歴:大手損害保険会社社員 現在:同上 将来:結婚したい
お笑い 出身:滋賀県 学歴:底辺公立高校卒 家庭:独身、都内アパート住まい 経歴:芸人養成学校卒業後、芸能事務所を転々とする 現在:日雇い派遣で生活費を稼ぐ、フリーランスの芸人 将来:売れたい
ネトウヨ 出身:東北 学歴:私立大学卒 家庭:独身、実家住まい 経歴:信用金庫職員 現在:子会社出向、個人的にアフィリエイト 将来:特亜を何とかしたい、大和撫子の嫁が欲しい
バンドマン 出身:宮崎県 学歴:田舎の底辺高校卒 家庭:独身、期間工向けの寮住まい 経歴:アマチュアバンドマン 現在:自動車工場の期間工 将来:生活保護で暮らしたい
ブス 出身:東北 学歴:名門公立高校、国立大学卒 家庭:独身、賃貸マンション住まい 経歴:イラストレーター、漫画家 現在:漫画家(主にデジタルコミック) 将来:これからも素敵な作品を描きたい
元ヤン 出身:茨城県 学歴:底辺私立高校卒 家庭:独身、関東近郊の賃貸アパート住まい 経歴:運送会社、派遣など転々 現在:リサイクルショップスタッフ 将来:自分の店を持ちたい
ゲームライター 出身:関東 学歴:専門学校卒 家庭:独身、賃貸アパート住まい 経歴:出版社の契約社員、ライター 現在:フリーライター(開店休業状態) 将来:安定した仕事に就きたい
劇団員 出身:福島県 学歴:女子大卒 家庭:既婚子なし 経歴:一般職をしながら劇団員 現在:専業主婦 将来:できれば子供は欲しい
元銀行マン 出身:北海道 学歴:札幌の名門公立高校卒から北大卒 家庭:独身、実家住まい 経歴:拓銀入行、破綻後信販会社 現在:地元の農協勤務 将来:二十代の女性限定で結婚したい
高卒 出身:中国地方 学歴:地方の工業高校卒 家庭:独身、実家住まい 経歴:大手電機メーカーの工場勤務 現在:工場のライン責任者 将来:親の面倒を見てくれる若い子と結婚
子供部屋おじさん 出身:茨城県 学歴:名門公立高校卒 家庭:独身、実家住まい 経歴:大手商工ローン勤務 現在:自宅警備員 将来:ゲーム会社とか面白い仕事がしたい
自称漫画家 出身:北関東 学歴:底辺高校中退 家庭:独身、実家住まい 経歴:中退後引きこもり 現在:漫画執筆(完成したことはなし) 将来:バカにした連中を見返したい
ネット民 出身:埼玉県 学歴:ゲーム専門学校中退 家庭:独身、実家住まい 経歴:ゲームセンターのアルバイト店員 現在:ニート 将来:彼女が欲しい、エッチがしたい
自営業 出身:東北 学歴:都内の中堅私立大学卒 家庭:独身、自宅兼事務所のワンルーム住まい 経歴:中小の広告代理店を経て独立 現在:広告業 将来:地元に戻ってノマド暮らしをしたい
しくじり座談会 日野百草 1972年生まれ 矢野新一(仮名)1973年生まれ、会社員 ※本書「エリート」の語り手 田中清美(仮名)1973年生まれ、漫画家 ※本書「ブス」の語り手
団塊ジュニア文化解説 コミック ゲーム アニメーション パソコン(インターネット) スポーツ その他カルチャー アダルト 偏差値 政治
おわりに――何者にもなれなかった私ち

私達は、仲間は、どこで「しくじった」のだろうか。本書は15人の団塊ジュニアおよびポスト団塊ジュニア(氷河期世代)から聞き取り、そのしくじりを赤裸々に語ってもらったドキュメントである。
コメント

【旧作】ニッケル・アンド・ダイムド【斜め読み】

2020年07月10日 18時56分37秒 | 
バーバラ・エーレンライク(曽田和子訳),2006,ニッケル・アンド・ダイムド,東洋経済新報社.(7.10.2020)

 低賃金サービス労働者として働くということ、このことの意味を、深く理解させてくれる名著だ。
 普通のアパートさえ家賃が高すぎて入居できず、居住環境劣悪なモーテル暮らしを余儀なくされ、低賃金で買い叩かれた身体を酷使する。
 こういう本を読めば、身近に見かけるサービス労働者に無関心ではいられなくなるだろう。

目次
序章 中流との決別―私はこうして低賃金で働くことになった
第1章 フロリダ州でウェイトレスとして働く
第2章 メイン州で掃除婦として働く
第3章 ミネソタ州でスーパーの店員として働く
終章 自分への通知表―格差社会で働くということ
コメント

ロスジェネのすべて

2020年07月09日 19時23分11秒 | 
雨宮処凛編著,2020,ロスジェネのすべて──格差、貧困、「戦争論」,あけび書房.(7.9.2020)

 バブル経済崩壊以降、増え続けてきたロストジェネレーション。
 雇用の劣化は、現在まで引き続き継続しており、コロナウィルス禍で、貧困層がさらに増加するのはまちがいない。企業のみならず、病院や社会福祉事業者も倒産、廃業を余儀なくされていく。大学の専門職養成課程はその存在価値を喪失する。
 社会経済的弱者、およびその予備軍が、さらなる社会経済的弱者を叩く、「抑圧の移譲」は、韓国や中国へのヘイト、「日本スゴイおれスゴイ」の事大主義につながり(「歴史修正主義」)、日本の前近代社会にあった「施しを受ける者の差別と排除」を復活させる。
 いまなにが起こっているのか、ロスジェネの経験は過去のものではなく、現在ある、これから深刻化していく問題だ。
 対談を文字起こしした論考なので、とてもわかりやすい。ぜひおすすめしたい。

目次
まえがき
序章 ロスジェネをめぐるこの十数年 (雨宮処凛)
第1章 ロスジェネと『戦争論』、そして歴史修正主義 (倉橋耕平×雨宮処凛)
第2章 ロスジェネ女性、私たちの身に起きたこと (貴戸理恵×雨宮処凛)
第3章 「自己責任」と江戸時代 (木下光生×雨宮処凛)
第4章 貧乏だけど世界中に友達がいるロスジェネ (松本哉×雨宮処凛)
あとがき

失われた世代、就職氷河期世代、貧乏くじ世代、非正規第一世代、自己責任呪縛世代、そして「戦争論」世代…。ロスジェネをめぐるすべてを、ロスジェネ5人が徹底的に語り合った、あまりにも刺激的な対話の記録。
コメント

社会喪失の時代

2020年07月08日 18時43分37秒 | 
ロベール・カステル(北垣徹訳),2015,社会喪失の時代──プレカリテの社会学,明石書店.(7.8.2020)

 前著、『社会問題の変容──賃金労働の年代記』ほどではないが、けっこうボリュームがある。
 ちょっと内容が冗長すぎるのではないかと思うが、ところどころなるほどと思わされるところがあり、やはり読んでおくにこしたことはない本なのだろう。
 本書では、アンダークラスに支給される公的扶助として、社会参入最低所得手当(RMI=Revenu Minimum d'Insertion)が挙げられているが、現在では、これは、積極的連帯手当(RSA=revenu de solidarite active) なるものに変わっている。フランスの下層、「働く貧困層」が、公的扶助受給者に憎悪をつのらせているさまは、イギリス、そして日本でも同様であり、社会保障大国、フランスにおいてさえこのさまとは、ちょっと驚いた。

目次
第1部 労働の規制緩和
隷属と自由のあいだの労働―法の位置
労働にはいかなる中核的重要性があるのか
労働法―手直しか、つくり直しか ほか
第2部 保障の再編成
社会国家の名において
変転する社会国家のなかの社会事業
守られるとはどういうことか―社会保障の社会人間学的次元 ほか
第3部 社会喪失への道のり
社会喪失の物語―トリスタンとイズーについて
歴史のなかの周縁人
排除、罠の概念 ほか

この不安と閉塞感はどこからくるのか?雇用の劣化、社会保障の崩壊。歴史的大転換のなか荒れ狂う資本主義にさらされる持たざる者には社会的所有の再構築しかない。カステル社会学のエッセンス。
コメント

介護職がいなくなる

2020年07月06日 19時28分43秒 | 
結城康博,2019,介護職がいなくなる──ケアの現場で何が起きているのか,岩波書店.(7.7.2020)

 介護職の労働環境の劣悪さをあからさまにすれば、さらに人手不足が深刻化し、状況はとめどなく悪化していく。そんな懸念があるのだろう、抑制された内容、筆致となっている。
 いつも同じこと言ってるが、所得税・住民税の累進課税、資産課税、相続税、法人所得税の強化、環境税の導入等により、介護職従事者の待遇改善のための補助金を増額していくほかないだろう。

目次
第1章 介護保険サービスが受けられない
第2章 どうして介護職は敬遠されるのか―介護職養成の難しさ
第3章 なぜ辞めてしまうのか
第4章 外国人介護職の可能性と限界
第5章 まだ先の介護ロボットとAI技術
終章 介護職不足を解決するために

超高齢社会が進む中で介護人材を増やしていかなければ、介護サービスの質の低下を招き、利用する高齢者やその家族は安心して暮らしていくことはできない。ブラック化する介護労働の実態、介護施設内での虐待、利用者からのセクハラ・パワハラ、管理職の指導力・養成力の欠如、外国人介護職の受け入れなど、介護現場の課題を明らかにし、解決策を提示する。
コメント

ペスト

2020年07月06日 19時28分43秒 | 
カミュ(宮崎嶺雄訳),1969,ペスト,新潮社.(7.6.2020)

 コロナウィルス禍でベストセラーになっているので、あらためて読んでみた。
 複雑な構文の、鬼のようなレトリック。つくづく、自分は「文学」には向いてないな、と思った。
 作風としては、カフカの未完の小説、『審判』に近いと思う。パニック小説ではなく、不条理をこれでもかというくらい突きつけてくる作品だ。大雨とコロナで、ステイホームの時間をやり過ごすには、最適だろう。

アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。
コメント

労働法入門 新版

2020年07月05日 20時08分43秒 | 
水町勇一郎,2019,労働法入門 新版,岩波書店.(7.5.2020)

 定評ある労働法の概説書、入門書が、改訂された。
 労基法、労働契約法、民法等の「法律」(強行法規)が「労働協約」に優越し、さらに、「就業規則」、「労働契約」と続く。
 また、法規が効力をもつ範囲は、狭い順から、「労働基準法」、「労働契約法」、「労働組合法」となる。たとえば、プロのサッカー選手は、このうち、「労働組合法」のみが適用される。
 そもそも、「使用者」と「労働者」はどういう基準で区別されるべきかという基本的な問題も含めて、「働く」者なら知っておきたい、理解しておきたい事柄が、過不足なく、理路整然と解説されている。
 改訂されても、本書のゆるぎない価値は変わらない。

目次
第1章 労働法はどのようにして生まれたか―労働法の歴史
第2章 労働法はどのような枠組みからなっているか―労働法の法源
第3章 採用、人事、解雇は会社の自由なのか―雇用関係の展開と法
第4章 労働者の人権はどのようにして守られるのか―労働者の人権と法
第5章 賃金、労働時間、健康はどのようにして守られているのか―労働条件の内容と法
第6章 労働組合はなぜ必要なのか―労使関係をめぐる法
第7章 労働力の取引はなぜ自由に委ねられないのか―労働市場をめぐる法
第8章 「労働者」「使用者」とは誰か―労働関係の多様化・複雑化と法
第9章 労働法はどのようにして守られるのか―労働紛争解決のための法
第10章 労働法はどこへいくのか―労働法の背景にある変化とこれからの改革に向けて

「戦後の労働三法制定以来の大改革」とされる働き方改革関連法の施行開始を受け、労働法の基礎知識をわかりやすく提供し、好評を博した初版を八年ぶりに改訂。「働き方改革」の内容はもちろん、初版刊行以後に生じたその他の法改正や判例の展開を盛り込み、大きく発展し続ける労働法の骨格とその背景を描き出す。
コメント

【旧作】日本の雇用と労働法【斜め読み】

2020年07月04日 18時51分42秒 | 
濱口桂一郎,2011,日本の雇用と労働法,日本経済新聞出版社.(7.4.2020)

 豊富な判例法理から、日本社会における労働法理が、「ジョブ型雇用契約」ではなく、「メンバーシップ型雇用契約」のそれとして確立してきたことがわかる好著。
 非正規労働を、メンバーシップ型雇用に包摂していくこと、あるいは、ジョブ型雇用として、最低賃金を大幅に引き上げていくことが、労働問題、喫緊の課題だろう。

目次
1 日本型雇用システムと労働法制
2 雇用管理システムと法制度
3 報酬管理システムと法制度
4 労使関係システムと法制度
5 日本型雇用システムの周辺と外部
6 日本型雇用システムの今後

働く現実と法の関係をトータルに理解する。雇用管理、人事・賃金制度、労使関係など日本の特質と問題点を丁寧に解説した画期的入門書。
コメント

教育格差

2020年07月03日 20時09分46秒 | 
松岡亮二,2019,教育格差──階層・地域・学歴,筑摩書房.(7.3.2020)

 SSM(Social Stratification and Mobility)調査等で得られたデータを駆使した、計量研究の労作。
 中心となる操作的概念は、もちろん、SES(Socioeconomic Status=社会経済的地位)だ。親子間SES移動、家庭SES、学校SES、地域SES等々、不平等の指標となる変数の相関関係が、多数のクロス集計表とグラフとで、明瞭に示されている。
 ピエール・ブルデューのいう「文化資本」と、これらSESとの連関も深く究明されている。(もっとも、SES指標の一つ、「学歴」は「制度化された形態の文化資本」そのものであるが。)
 わたしは、階層研究には、学生時代にSSM調査のタダ働きをしたことがある(KO大のK又が謝金を支払わなかった)ものの、どうしてもなじめなかった。地位の高低を「職業威信スコア」で数量化する、でも、それって職業差別を再生産することだわな、反発してた理由はそういうことだ。
 松岡さんは、階層研究が、不平等における「予言の自己成就」につながるリスクをしっかりわきまえたうえで、教育格差の現状をつぶさに明らかにしている。「学(校)歴」じゃない、「実力」だよ、そう思いはするが、だれしも、「学(校)歴」の下駄をはかせてもらってはじめて地位達成を実現できた、あるいはできなかったのだ。この重みは大きい。
 「だれをも落ちこぼらせない」という思いを基底にした結論部分は、とても読みごたえがあった。ぜひ一読することをおすすめしたい。

目次
第1章 終わらない教育格差
第2章 幼児教育―目に見えにくい格差のはじまり
第3章 小学校―不十分な格差縮小機能
第4章 中学校―「選抜」前夜の教育格差
第5章 高校―間接的に「生まれ」で隔離する制度
第6章 凡庸な教育格差社会―国際比較で浮かび上がる日本の特徴
第7章 わたしたちはどのような社会を生きたいのか

出身家庭と地域という本人にはどうしようもない初期条件によって子供の最終学歴は異なり、それは収入・職業・健康など様々な格差の基盤となる。つまり日本は、「生まれ」で人生の選択肢・可能性が大きく制限される「緩やかな身分社会」なのだ。本書は、戦後から現在までの動向、就学前~高校までの各教育段階、国際比較と、教育格差の実態を圧倒的なデータ量で検証。その上で、すべての人が自分の可能性を活かせる社会をつくるために、採るべき現実的な対策を提案する。
コメント

最低賃金

2020年07月03日 20時09分04秒 | 
日本弁護士連合会貧困問題対策本部編,2019,最低賃金──生活保障の基盤,岩波書店.(7.3.2020)

 OECD諸国中、最低レベルにある、日本の最低賃金。
 賃金は「生活給」(living wage)であるとの認識、これは先進産業国全般に広がっており、一日8時間、週40時間働けば、少なくとも貧困線を上回るはずなのに、貧困線以下で生活を余儀なくされる「働く貧困層」が増え続けているのが、日本社会の現状だ。
 最低時間給は全国どこでも1,500円、これを実現しなくては、貧困の負のスパイラルは止まらない。

目次
1 最低賃金というセーフティネット
2 あなたの地域の最低賃金―日弁連全国調査より
3 外国の最低賃金システム―日弁連海外調査より
4 大幅引き上げを実現するために

一日に8時間、週に5日、きっちりと働いて、生活できる。それをアタリマエの社会にするために。格差社会への処方箋=最低賃金の入門書。
コメント

「非正規労働」を考える

2020年07月02日 19時36分56秒 | 
小池和男,2016,「非正規労働」を考える,名古屋大学出版会.(7.2.2020)

 故小池和男さん。労働経済学の重鎮だった人。
 小池さん、中間層崩壊の時代にあって、「非正規労働」の「雇用調整機能」および「低技能分野担当機能」ばかりが問題視され、その「人材選別機能」が評価されないことに、どうも納得がいかなくて、本書を書いたようだ。
 時代は変わったんだよ。東大の社研調査が行われた高度経済成長前期は、「男性働き手モデル」の確立期であり、社外工や臨時工が「選別」的に正社員として採用されることも多々あった。しかし、1980年代以降の「非正規労働」は、まず家計補助のための主婦パートの急増にはじまり、1990年代、バブル経済崩壊以降は、「雇用の調節弁」、「低賃金ルーティンワーカーのプール」としての、未婚女性、シングルマザー、そして就職氷河期世代全般のそれが増加していくことになったのだ。
 「雇用のミスマッチ」を防ぐためにも、「人材選別機能」に限った「非正規労働」はわたしはあってよいと考える。しかし、だからといって、時代錯誤としか言いようがない知見をもちだして、「非正規労働」を論じてもらったら困る。「女性の貧困」に敏感な人からは怒りをかうだろう。

目次
序章 非正規労働を考えるために 他国も専門職もみる
1 問題と方法
2 構成 他国もみる
第1章 社外工と臨時工 1950年代初めの造船業
1 資料の性質
2 臨時工から本工への昇格
3 仕事の分業
4 社外工の多い職場
5 鉄鋼職場の分業
第2章 アメリカの非正規、正規労働者
1 ホワイトカラー層の観察から
2 アメリカの一般企業のホワイトカラー
3 アメリカのブルーカラーのばあい
第3章 製造業の生産職場
1 1960年代半ばの臨時工
2 非正規労働者がきわめて多い事例 2000年前後
3 山本[2004]調査
4 電機産業の職場
第4章 三次産業の非正規労働者
1 「就業構造基本調査」による概観
2 外食産業
3 チェーンストアのパートタイマー
4 ふたつの途 仮説
第5章 設計技術者
1 1960年代のアメリカ
2 日本の非正規製品設計技術者
終章 ひとつの提案 人材選別機能の重視
1 中下位職のばあい
2 仕事表の働き
3 中堅上位層や技術者に仕事表は適さない
4 労働組合の役割

自動車工場や外食チェーン店から米国の保険会社まで、終身雇用崩壊が叫ばれる以前から非正規労働は幅広く存在してきた。合理性があるから存続する、ならばその根拠は何なのか。職場まで下りた貴重な調査資料をもとに実像を描き、改善策を提案。
コメント

【旧作】この国は恐ろしい国【斜め読み】

2020年07月01日 19時10分57秒 | 
関千枝子,1988,この国は恐ろしい国──もう一つの老後,農山漁村文化協会.(7.1.2020)

 「シングルマザーの貧困」を本格的に扱った本は、本書が初めてではないだろうか。
 宇都宮市での子殺し、札幌市白石区での餓死、この二つの事件の背景にある、底知れぬ女性の貧困と孤立について考察した部分が秀逸だ。
 本書が書かれて30年以上が経過した。シングルマザーの困窮と不幸は、はたして軽減されたのだろうか。
 たしかに、シンママはもはや珍しい存在ではなくなり、シンママであること、それ自体をもって、差別し、排除する風潮は、薄らいできたといえる。しかし、いまでも、身体的、心理的DVを受けながら、「子どもがかわいそう」、「世間体が悪い」という理由で、家族という生き地獄から逃れられない女性たちが数多くいる。このことは、法律婚のおよそ1/4が「できちゃった婚」であること、婚外子が著しく少ないことからも、容易に類推できる。一世代を経過しても、なお、「戸籍と法律婚の呪縛」から逃れられないなんて、どれだけ進歩がない社会なのだろう。
 『福祉が人を殺すとき』でも取り上げられた、札幌市白石区でのシンママ餓死事件。この女性を殺したといってよい行政、福祉事務所、その生活保護事務は適正化されたのだろうか。いまだに、生活保護のみならず、「児童扶養手当の不正受給」が問題視され、子どもが育つ費用を普遍的、また社会的に分かち合うことのないクソのような世界、それがわたしたちが生きる現実だ。

目次
第1章 もう1つの老後
第2章 “子殺し”に母親を追いつめた低賃金長時間労働(宇都宮)
第3章 母親を“餓死”させる“豊かな国”の福祉(札幌)
第4章 見えない老後―この国は恐ろしい国(広島)
対談“買う福祉”を買える人々・買えない人々(久場嬉子氏と)

生存するのも危ういほどの賃金しかもらえず、その低賃金のために、平均をはるかに下回る年金しかなく、もちろん貯金もない女性たちは、どんな老後をおくれるのでしょうか。私は、まじめに働きつづけてきた人間が、年をとってから生きて行くのが不可能な年金制度で平然としている国はどう考えてもおかしいと思います。その国が世界一のお金持ちというから、いよいよ話はわからなくなります。この国は―恐ろしい国ですね。日本エッセイストクラブ賞受賞(『広島第2県女2年西組―原爆で死んだ級友たち』)の著者による渾身のルポ―。
コメント

【旧作】怒りのソウル【斜め読み】

2020年06月30日 20時26分19秒 | 
雨宮処凛,2008,怒りのソウル──日本以上の「格差社会」を生きる韓国,金曜日.(6.30.2020)

 「88万ウォン」世代の焦燥と怒り、アーティストの空き家占拠運動、学びと助け合いのコミューンづくり、良心的兵役拒否活動等、韓国の若者たちの、棄民政策ゆえに過熱化した文化、運動が、生き生きと描きだされている。
 アジア通貨危機の直撃を受けて、日本以上の緊縮財政と就職・就業難に見舞われてきた韓国の若者たちの苦悩が、日本のロストジェネレーションのそれと幾重にも重なりあう。

目次
1 韓国、恐るべき「使い捨て労働」の実態
2 禹〓(せき)熏(ウ・ソックン)氏インタビュー―『88万ウォン世代』
3 空き家を占拠するアーティストと、コミューンを作る研究者。その豊かな世界
4 「日本の9条の影の部分」韓国で兵役を拒否する若者
5 日韓共通の労働/生存の問題

20代の大半は無職。「ニート」95万人。「未来が見えない」若者たち。なぜ、韓国で、日本と同じ現象が起きているのか?数々の現場を直撃。
コメント