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本と音楽とねこと

〈未来〉との連帯は可能である。しかし、どのような意味で?

大澤真幸,2013,〈未来〉との連帯は可能である。しかし、どのような意味で?
,弦書房.(8.2.24)

3.11後をどう生きる…福岡ユネスコ・トークライブ。

 本書は、講演録であるが、話があっちゃこっちゃ飛んでしまっており、読みにくい。

 はるか昔、この大澤さんと宮台さんが論壇デビューしていたころ、この両者はそのエキセントリックさで際立っていた。
 日本社会学会の大会で、両者がマシンガントークを炸裂させていたのに、何度か遭遇した。
 喋るスピードがすさまじく速く、息つく間もなく延々と喋り続ける。
 宮台さんの言うことはわかったが、この大澤さんがくせ者で、なにを言いたいのか意味不明のことがしばしばあった。

 こうしたクセは終生続くのだな。

 で、本書。
 最後の部分だけはなるほどと了解できた。

 こういうぼくの仮説を補強する証拠の一つを、若者には社会志向性・政治志向性があるのかどう か、という論点を使って挙げておきます。先ほど、現代日本の若者は、社会志向性・政治志向性 あるようにも見えるし、まったくないようにも見える、そういうデータや事実を指摘しましたね。 いったいどちらが若者の真実なのか。まったく両極端のイメージが出てきてしまう。
 オタクというものの典型的なイメージを思い浮かべてください。社会的・政治的な現実に背を向 け、ごく特殊な趣味に没頭し、そうした趣味によって親密に交流しうる範囲の仲間や友人にしか関 心をもたない。たとえば、ロボットアニメには異様に詳しいが、現在の社会問題や政治問題につい て真剣に考えようとしない。 AKB48の選挙には夢中になるけれども、国政選挙でも、自治体の選 挙でも投票に行かない。こうした事実に目をつけるなら、彼らは、まったく社会志向性がない、と いうことになります。
 しかし、こうした親密圏への閉じこもり、特殊な趣味への埋没といったものが、どんなメカニズ ム、どんな論理に媒介されて出てきたのか。この点に注目する必要がある、というのがぼくの考え です。ぼくが提起してきた仮説は、こうです。Pという特異な趣味への没入は、自分たちの特殊な社会的現実Aが「すべてではない」、ここには余剰Xがあるという直観に媒介されている、と。こ の点、つまり、閉じられた特殊な社会的現実Aを越えていこうとする志向性があるという点を考慮 に入れるならば、若者には、社会志向性や政治志向性がある、と見なすこともできるはずです。つ まり、ぼくの仮説をもとにすると、一方では、若者には社会志向性・政治志向性が欠けているよう に見え、他方では、若者たちは強い社会志向性や政治志向性をもっているようにも見える、という 社会調査の結果の大きな振幅を説明できるのです。
 簡単に言えば、こういうことです。若者たちには、全体社会や政治への志向性が確かにあるので す(それが、Xへの志向性です)。しかし、実際には、彼らには、いや彼らにも、何を求めればよい のかわからない。つまり、何を求めたら、何を目的として、その全体社会や政治にかかわる価値を 実現したことになるのか、わからないのです。しかし、ときに、こうした志向性を満たしてくれる 現実に出会うことがある。たとえばカンボジアでの学校建設とか、東北の津波の被害者の救済とか、 です。このとき、普段は潜在していた社会志向性が表面に浮上し、外からも検出されるようになり ます。
(pp.65-66)

 大澤さんのここんところの関心は、「未来の他者」のためのソーシャルデザインは可能か、というところにあるんだろうが、この講演時は、まだ暗中模索の段階であったように思える。

目次
『テルマエ・ロマエ』の面白さ
古代ローマと現代日本
幸福な(?)現代の若者たち
希望がないから幸せ
政治的有効性感覚の問題
分裂する若者イメージ
「未来の他者」との連帯とは
カントがいう「不可解な謎」
オタクの共同体
「社会関係資本」と「互酬性」
あるオタクの活動から
特殊なものの背後にあるもの
「予感による剽窃」
フランス革命の「始まり」
二つの近代的時間
写真と歴史
「余剰的同一性」の感覚
「未来の他者」への呼びかけ
若者が実際に言っていること


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