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本と音楽とねこと

夫に死んでほしい妻たち

小林美希,2016,夫に死んでほしい妻たち,朝日新聞出版.(8.6.24)

家事や育児で、妻の“してほしい”と夫の“しているつもり”の差は、あなたが想像しているよりもはるかに大きい。毎朝子どもを保育園に送る。週に一度は料理をつくる。それだけで自信満々な夫を、妻はどう感じているか?やがて、怒りを爆発させることにも疲れた妻は、一人つぶやく。「死ねばいいのに…」世の中たちを戦慄させる、衝撃のルポルタージュ!

 むかしから、安直に結婚や家族を称揚する人たちの気が知れなかった。

 所詮は、自己と自己以外(の他者)のつながり、関係性。
 千石イエスの隣人愛──自己以外を他者化しないという態度を貫かない限り、夫婦にしろ、親子にしろ、うまくいくわけがない。

 「死んでほしい」と願うくらいならさっさと別れればいいのにと思うが、そこは、いまだに出産を機に仕事を辞める(辞めざるを得ない)女性が多数を占めるなか、いくら離婚時に年金受給権が分割されるようになったからといって、女性が単独で生計を維持していくのは難しい。
 経済的理由から離婚を思いとどまる女性は、育児、家事をしない夫やモラハラ夫に、日々殺意を募らせ、死んでくれることを願う。
 死んでくれたら、保険金、遺族年金が手に入る。

 専業主婦の友人は、コツコツお金を貯めてへそくりを作っていた。夫が定年退職すると、「子どもも独立して家が広いから、マンションを買いましょう」と言い、実は賃貸マンションに夫を住まわせ、自分は家を売ったお金を持って逃げた。「死ねと言っているほうがまだ可愛いかもしれない」。葉子さんは身の毛のよだつ思いがした。「無一文にしてあげるわ」と言って、生命保険を解約して資産をあるだけ持って逃げた知人もいる。60歳を過ぎると、女も怖いものがなくなるのかもしれない。
 また、ある知人は夫が高収入だった。80歳になっても体を求めてきて、70代半ばのその女性が拒否すると夫は外に愛人を作り、「お前も(愛人に会うか」と堂々と言う始末。その夫は暴君で、気に入らないことがあると階段の上から水の入ったバケツを蹴り飛ばすという。そんな話を聞きながら、葉子さんが「私だったら、ダンナの味噌汁に雑巾の絞り汁を入れてやるのに」と励ますと、その女性はケラケラと笑って元気を取り戻してくれた。実は葉子さんは、強烈に「死ね」と思った時には、夫の歯ブラシでトイレ掃除をして、そのまま歯ブラシ置き場に戻していたのだ。それを知らずに歯を磨いている夫を見ると、葉子さんは胸がスーッとした。ことあるごとに、このささやかな復讐を友達にも勧めている。
(pp.179-180)

 「死んでほしい」と願う者と同居し続けるなど、地獄だ。

 非婚化が進んでいるが、悪いことではない。

 結婚と家族への幻想は、徹底して解体されれば良い。

目次
第1章 子育てという試練!そして愛は殺意に変わる
育児休業という罠―38歳・会社員
ほどよく良い夫―41歳・システムエンジニア
リビングルームで芽生える殺意―45歳・会社員
第2章 「寿退社」は地獄の扉!専業主婦の呪いの日常
キャリアを断絶させられた妻の恨み―46歳・一部上場企業管理職
娘の病いから始まった危機―46歳・パート
夢追い夫との家庭内戦争―39歳・主婦
二世帯住居という牢獄―34歳・主婦
セレブ主婦の仮面の裏側―39歳・主婦
欲しがる妻と欲しがらない夫―47歳・主婦/35歳・正社員
第3章 もう夫はいらない!団塊妻の恨みは骨髄
部活未亡人の嘆き―40代・教師
2番目に好きな人との結婚―58歳・看護師
ある昭和妻の40年目の復讐―70歳・主婦
団塊妻の憂鬱―68歳・主婦
「髪結いの亭主」の末路―65歳・美容師
第4章 これが夫の生きる道?“イクメン”たちの現実と理想
第5章 離婚するよりおトク!?だから妻は夫の死を願う


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