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本と音楽とねこと

こんな世の中に誰がした?──ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために

上野千鶴子,2024,こんな世の中に誰がした?──ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために,光文社.(8.3.24)

不均衡な社会に生きるすべての女性の人生に寄り添い、自身の贖罪とともにエールを送る、上野千鶴子渾身の一冊。
“わたしはこれまで何度も「どうせ世の中は変わらない」という諦めの声を聞いてきました。でも、そうでしょうか。(中略)あなたには、ほんの少しでも社会を変える力があります。いまよりちょっとでもマシな社会を、あとから来る人たちに手渡すために。”――序章より

「仕事」「結婚」「教育」「老後」ステージごとに社会と人生を問う全四章。

 上野センセの著作は、マメにフォローしてきたこともあって、本書に新味はなかったが、平易に書かれた文章からは、将来に不安をいだいている若い女性を勇気づけようとする気持ちが伝わってきた。

 労働者としても大きな潜在力をもつ女性を排除してきた日本企業の衰退ぶりは、悲惨でさえある。

 これまで多くの日本企業は、そういう人事管理をしてきませんでした。「言わなくてもわかるだろう」とツーカーで通じる組織文化の好きなオッサンたちが日本企業を維持してきました。それこそが多様性を排除し、今の停滞を招いています。
 ジェンダー平等を推進し、多様性を取り入れることで、企業のパフォーマンスが上がり、業績が向上し、利益率が上がることは、各種のデータからすでに証明されています。今日企業にダイバーシティ推進を勧める説得のディスコースのひとつは、「女を使うと儲かりますよ」ですが、にもかかわらず、日本の企業はいっこうに変化しようとしません。営利企業の存在理由は営利、すなわち「利益の最大化」、それならよりよいパフォーマンスを求めて経済合理性を追求するのが当然ですが、そうならないのはなぜでしょうか?彼らは経済合理性よりもいったい何を優先しているのでしょうか?
 それがわたしには謎でした。わかったのは、これまで日本の企業は労働者の能力ではなく忠誠心を重視してきたということです。それによって彼らが守ったのはホモソーシャルな組織文化の再生産でした。長いあいだその組織文化を維持してきたために、「やめられない止まらない」慣性が働いています。そのうえ、それでかつてはうまくいった成功体験までついています。
(pp.68-69)

 「ホモソーシャルな組織文化」、これこそが年功序列、終身雇用、企業別労働組合を維持してきた元凶だ。

目次
序章
1 仕事
2 結婚
3 教育
4 老後
終章 これからのフェミニズム


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