住宅新報社・月刊「不動産受験新報」2008年1月号
(毎月1日発売 定価910円)
平成19年度 本試験問題その1
法 令 等
[問題1~問題40は択一式(5肢択一式)]
問題1 各種の裁判所や裁判官に関する次の記述のうち,妥当でないものはどれか。
1 高等裁判所長官,判事,判事補および簡易裁判所判事は,いずれも最高裁判所の指名した者の名簿によって,内閣が任命する。
2 高等裁判所,地方裁判所および家庭裁判所の裁判官については65歳の定年制が施行されているが,最高裁判所および簡易裁判所の裁判官については定年の定めが存在しない。
3 地方裁判所や家庭裁判所の裁判は,事案の性質に応じて,三人の裁判官による合議制で行われる場合を除き,原則として一人の裁判官によって行われるが,高等裁判所の裁判は,法律に特別の定めがある場合を除き,複数の裁判官による合議制で行われることになっている。
4 簡易裁判所は軽微な事件の処理のために設けられた下級裁判所であり,訴訟の目的の価額が一定額を超えない請求に関する民事事件,罰金以下の刑にあたる罪など一定の軽微な犯罪についての刑事事件の第一審を担当する。
5 最高裁判所は,大法廷または小法廷で審理を行うが,法令等の憲法違反の判断や最高裁判所の判例を変更する判断をするときは,大法廷で裁判しなければならない。
問題2 法格言に関する次のア~オの記述のうち,空欄A~Eに当てはまる語句として,最も適切な組合せはどれか。
ア 法実証主義の考え方によれば,「Aもまた法である。」が,自然法思想によれば,「Aは法ではない。」ことになる。
イ 時効の制度は,「Bの上に眠る者は,保護されない。」という法格言から説明することもできる。
ウ 「Cは証拠の女王である。」という法格言があるが,刑事訴訟において,Cが被告人に不利益な唯一の証拠である場合には,有罪とすることはできない。
エ 「事実の不知は許されるが,Dの不知は許されない。」という法格言があるが,責任主義の観点から,この法格言がそのまま通用する訳ではない。
オ 「Eは遵守されなければならない。」という法格言は,Eの拘束力の根拠とされることがある。
A B C D E
1 道徳 法 物証 倫理 法
2 悪法 権利 自白 常識 慣習
3 道徳 権利 物証 倫理 契約
4 悪法 権利 自白 法 契約
5 倫理 法 証言 法 慣習
問題3 次の文章は,ある最高裁判所判決の一節である。文章中の空欄のどれにも当てはまらないものは,1~5のうちどれか。
「憲法84条は,課税要件及び租税の賦課徴収の手続がで明確に定められるべきことを規定するものであり,直接的には,租税についてによる規律の在り方を定めるものであるが,同条は,国民に対してを課し又はを制限するにはの根拠を要するという法原則を租税について厳格化した形で明文化したものというべきである。したがって,国,地方公共団体等が賦課徴収する租税以外の公課であっても,その性質に応じて,又はの範囲内で制定された条例によって適正な規律がされるべきものと解すべきであり,憲法84条に規定する租税ではないという理由だけから,そのすべてが当然に同条に現れた上記のような法原則のらち外にあると判断することは相当ではない。そして,租税以外の公課であっても,賦課徴収のの度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては,憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきである……。」
(最大判平成18年3月1日民集60巻2号587頁以下)
1 法律 2 予算 3 強制
4 権利 5 義務
問題4 国家公務員法102条1項が,その禁止対象とする「政治的行為」の範囲の確定を,独立行政委員会である人事院にゆだねていることの是非をめぐっては,次のようにさまざまな意見があり得る。それらのうち,内閣が行う高度に政治的な統治の作用と,一般の国家公務員による行政の作用とは質的に異なるという見地に基づく意見は,どれか。
1 憲法が「行政権はすべて内閣に属する」と規定しているにもかかわらず,公務員の人事管理を内閣のコントロールが及ばない独立行政委員会にゆだねるのは,違憲である。
2 公務員の政治的中立性を担保するためには,「政治的行為」の確定それ自体を政治問題にしないことが重要で,これを議会でなく人事院にゆだねるのは適切な立法政策である。
3 人事院の定める「政治的行為」の範囲は,同時に国家公務員法による処罰の範囲を定める構成要件にもなるため,憲法が予定する立法の委任の範囲を超えており,違憲である。
4 国家公務員法で人事官の弾劾訴追が国会の権限とされていることから,国会のコントロールが及んでおり,人事院規則は法律の忠実な具体化であるといえる。
5 行政各部の政治的中立性と内閣の議会に対する政治責任の問題は別であり,内閣の所轄する人事院に対して国会による民主的統制が及ばなくても,合憲である。
問題5 司法権の限界に関する次の記述のうち,最高裁判所の判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。
1 大学は,国公立であると私立であるとを問わず,自律的な法規範を有する特殊な部分社会を形成しているから,大学における法律上の紛争は,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,その自主的・自律的な解決にゆだねられる。
2 法律が,国会の両議院によって議決を経たものとされ,適法な手続によって公布されている場合,裁判所は両院の自主性を尊重して,法律制定の際の議事手続の瑕疵について審理しその有効無効を判断するべきではない。
3 政党の結社としての自主性にかんがみれば,政党の内部的自律権に属する行為は,法律に特別の定めのない限り尊重すべきであり,政党が党員に対してした処分は,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,裁判所の審判は及ばない。
4 衆議院の解散がいかなる場合に許されるかは,裁判所の判断すべき法的問題であるのに対して,これを行うために憲法上必要とされる助言と承認の手続に瑕疵があったか否かは,国家統治の基本に関する政治的な問題であるため,裁判所の審査権は及ばない。
5 具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても,宗教上の教義に関する判断などが必要で,事柄の性質上法令の適用により解決するのに適しないものは,裁判所の審判の対象となりえない。
問題6 外国人の憲法上の権利に関する次の記述のうち,最高裁判所の判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。
1 国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押なつを強制することは,憲法13条の趣旨に反して許されず,また,この自由の保障は我が国に在留する外国人にも等しく及ぶと解される。
2 日本に在留する外国人のうちでも,永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特に緊密な関係を持っている者に,法律によって地方公共団体の長,その議会の議員等に対する選挙権を付与することは,憲法上禁止されない。
3 普通地方公共団体は,条例等の定めるところによりその職員に在留外国人を採用することを認められているが,この際に,その処遇について合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることは許される。
4 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては,国はその政治的判断によって決定することができ,限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たって,自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される。
5 外国人は,憲法上日本に入国する自由を保障されてはいないが,憲法22条1項は,居住・移転の自由の一部として海外渡航の自由も保障していると解されるため,日本に在留する外国人が一時的に海外旅行のため出国し再入国する自由も認められる。
問題7 次の憲法の条文について一般に行われている説明として,妥当なものはどれか。
第31条 何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪はれ,又はその他の刑罰を科せられない。
1 「法律の定める手続」とあるので,条例によって刑罰その他についての手続を定めることは,許されていない。
2 日本国憲法は別に罪刑法定主義の条文をもっているので,本条においては,戦前にないがしろにされた刑事手続について,これを法律で定めることが要請されている。
3 この条文は刑事手続を念頭においており,行政手続などの非刑事手続については,その趣旨が適用されることはない。
4 刑事手続については,ただ単にこれを法律で定めればよいと規定しているのではなく,その手続が適正なものであることを要求している。
5 この条文は,ニューディール期のアメリカ連邦最高裁判所で猛威を振るった,手続的デュープロセス論を否定したものである。
問題8 次のア~オに挙げる行政行為のうち,私人の法律行為の法的効果を完成させる効果を有するもので,行政行為の分類上,「認可」とされるものはいくつあるか。
ア 電気事業法に基づいて経済産業大臣が行う電気事業の「許可」
イ ガス事業法に基づいて経済産業大臣が一般ガス事業者に対して行う供給約款の「認可」
ウ 銀行法に基づいて内閣総理大臣が行う銀行どうしの合併の「認可」
エ 建築基準法に基づいて建築主事が行う建築「確認」
オ 農地法に基づいて農業委員会が行う農地の所有権移転の「許可」
1 一つ 2 二つ 3 三つ
4 四つ 5 五つ
問題9 行政上の義務履行確保に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。
1 不作為義務,非代替的作為義務の履行にかかる直接強制,執行罰の仕組みについては,一般法の根拠はないので,法律もしくは条例による個別の根拠が必要である。
2 市水道局による水道サービスの料金を滞納している私人に対し,市は地方自治法に基づき,行政上の強制徴収の仕組みを用いて徴収することができる。
3 即時強制は法令により個別に根拠づけられている場合にのみ認められるが,いわゆる成田新法*による建物の実力封鎖,警察官職務執行法による武器の行使がその例である。
4 路上駐車禁止は,それ自体は不作為義務であるが,警察官等は,過失なくして移動を命じる相手方を知ることができない時には,移動命令を発することなく,当該駐車車両を移動することができる。
5 執行罰は行政上の義務履行確保の手法であるが,処罰としての実質を有するため,二重処罰禁止の法理から,刑事罰との併用ができないことが,その活用の障害となっている。
(注) *成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法
問題10 自動車の運転免許制度に関連した次の記述のうち,妥当なものはどれか。
1 自動車の運転免許は,免許を受けた者に対し,公道上で自動車を運転することができるという新たな法律上の地位を付与するものであるから,行政行為の分類理論でいうところの「特許」に該当する。
2 自動車の運転免許を交付する事務は,都道府県公安委員会が処理しているが,これは本来国の事務であり,国家公安委員会から都道府県公安委員会に対して機関委任されているところの「国の機関委任事務」に該当する。
3 自動車の運転免許の期限として,免許証に記載されている「○年○月○日まで有効」という条件は,行政行為の付款理論でいうところの「期限」に該当する。
4 自動車を運転する者は,運転中は必ず免許証を携帯しなければならないものとされているため,免許証を携帯せずに運転し,警察官の求めに対して直ちに免許証を提示できなかった場合は,無免許運転として扱われることになる。
5 道路交通法違反行為をしたことを理由として,公安委員会から運転免許停止処分を受けた者が,その取消しを求めて出訴している間に免許停止期間が終了した場合は,その行為による違反点数が残っていたとしても訴えの利益は消滅する。
問題11 行政手続法の定める聴聞に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 聴聞の主宰者の決定は,不利益処分の名あて人となるべき者(当事者)が聴聞の通知を受けた後,当事者と行政庁との合議によってなされる。
2 不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合には,行政庁は聴聞の通知や掲示を省略することができる。
3 文書閲覧請求権に基づき,当事者が行政庁に資料の閲覧を求めた場合であっても,正当な理由が認められる場合には,行政庁はその閲覧を拒むことができる。
4 聴聞の主宰者が聴聞の結果作成される報告書に当事者等の主張に理由があるとの意見を記載した場合には,行政庁が報告書の記載に反して不利益処分をすることは許されない。
5 聴聞を経て行政庁が行った不利益処分について,聴聞に参加した当事者は,当該処分について行政不服審査法による異議申立てをすることができる。
問題12 行政手続法による審査基準に関する次のア~オの記述のうち,妥当なものはいくつあるか。
ア 審査基準の設定は,行政手続法の委任に基づくものであり,申請者の権利にかかわるものであるから,審査基準も法規命令の一種である。
イ 不利益処分についての処分基準の設定が努力義務にとどまるのに対して,申請に対する処分についての審査基準の設定は,法的な義務であるとされている。
ウ 審査基準に違反して申請を拒否する処分をしても,その理由だけで処分が違法となることはないが,他の申請者と異なる取扱いをすることとなるため,比例原則違反として,違法となることがある。
エ 審査基準の設定には,意見公募手続の実施が義務付けられており,それに対しては,所定の期間内であれば,何人も意見を提出することができる。
オ 国の法律に基づいて地方公共団体の行政庁がする処分については,その法律を所管する主務大臣が審査基準を設定することとなる。
1 一つ 2 二つ 3 三つ
4 四つ 5 五つ
問題13 地方公共団体の活動への行政手続法の適用に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。
1 地方公共団体の職員がする行政指導であっても,法律に基づくものについては,行政手続法の行政指導に関する規定が適用される。
2 地方公共団体の制定する命令等であっても,法律の委任によって制定されるものについては,行政手続法の意見公募手続に関する規定が適用される。
3 地方公共団体の機関がする不利益処分については,それが自治事務に該当する場合には,行政手続法の不利益処分に関する規定は適用されない。
4 地方公共団体の条例にその根拠となる規定が置かれている届出の処理については,行政手続法の届出に関する規定は適用されない。
5 地方公共団体の機関がする「申請に対する処分」については,それが国の法定受託事務に該当する場合に限り,行政手続法の「申請に対する処分」の規定が適用される。
問題14 行政不服審査法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 処分についての審査請求は,処分庁以外の行政庁に対して行うものであるが,審査請求書を処分庁に提出して,処分庁を経由する形で行うこともできる。
2 行政不服審査法は,不服申立ての対象となる「行政庁の処分」につき,いわゆる一般概括主義をとっており,不服申立てをすることができない処分を,同法は列挙していない。
3 再審査請求は,処分についての審査請求の裁決により権利を害された第三者で,自己の責めに帰することができない理由により手続に参加できなかった者が行うものであるから,再審査請求期間についての規定はない。
4 行政不服審査法は,行政の適正な運営の確保も目的としているので,裁決で処分を変更する場合,審査庁は,審査請求人の不利益に当該処分を変更することを命じることもできる。
5 審査請求人の地位は,一身専属的な法的地位であるので,審査請求人が死亡した場合には,相続人等に承継されることはなく,当該審査請求は,却下裁決をもって終結する。
問題15 次の文章の空欄ア~キのうち空欄Aと同じ言葉が入るものはいくつあるか。
行政不服審査法に基づき審査請求がなされたとき,処分の効力,処分の執行,手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置を行うか行わないかに関して,行政不服審査法34条1項は,行政事件訴訟法と同様,A原則を選択している。私人の権利利益救済の観点からはア原則が望ましく,公益を重視する観点からはイ原則が望ましいといえる。
行政不服審査法の下においては,処分庁の上級行政庁である審査庁は職権によりウをすることができる。これに対して,処分庁の上級行政庁以外の審査庁は,審査請求人の申立てによりエとすることができるのみであり,裁判所と同様,職権によりオとすることはできない。これは,処分庁の上級行政庁である審査庁は,処分庁に対して一般的指揮監督権を有するから,職権に基づくカも一般的指揮権の発動として正当化されるという認識による。
なお,国税通則法105条1項のように,個別法においてキ原則に修正が加えられている場合もある。
1 一つ 2 二つ 3 三つ
4 四つ 5 五つ
(参考)国税通則法105条1項 「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立ては,その目的となった処分の効力,処分の執行又は
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平成19年度 本試験問題その1
法 令 等
[問題1~問題40は択一式(5肢択一式)]
問題1 各種の裁判所や裁判官に関する次の記述のうち,妥当でないものはどれか。
1 高等裁判所長官,判事,判事補および簡易裁判所判事は,いずれも最高裁判所の指名した者の名簿によって,内閣が任命する。
2 高等裁判所,地方裁判所および家庭裁判所の裁判官については65歳の定年制が施行されているが,最高裁判所および簡易裁判所の裁判官については定年の定めが存在しない。
3 地方裁判所や家庭裁判所の裁判は,事案の性質に応じて,三人の裁判官による合議制で行われる場合を除き,原則として一人の裁判官によって行われるが,高等裁判所の裁判は,法律に特別の定めがある場合を除き,複数の裁判官による合議制で行われることになっている。
4 簡易裁判所は軽微な事件の処理のために設けられた下級裁判所であり,訴訟の目的の価額が一定額を超えない請求に関する民事事件,罰金以下の刑にあたる罪など一定の軽微な犯罪についての刑事事件の第一審を担当する。
5 最高裁判所は,大法廷または小法廷で審理を行うが,法令等の憲法違反の判断や最高裁判所の判例を変更する判断をするときは,大法廷で裁判しなければならない。
問題2 法格言に関する次のア~オの記述のうち,空欄A~Eに当てはまる語句として,最も適切な組合せはどれか。
ア 法実証主義の考え方によれば,「Aもまた法である。」が,自然法思想によれば,「Aは法ではない。」ことになる。
イ 時効の制度は,「Bの上に眠る者は,保護されない。」という法格言から説明することもできる。
ウ 「Cは証拠の女王である。」という法格言があるが,刑事訴訟において,Cが被告人に不利益な唯一の証拠である場合には,有罪とすることはできない。
エ 「事実の不知は許されるが,Dの不知は許されない。」という法格言があるが,責任主義の観点から,この法格言がそのまま通用する訳ではない。
オ 「Eは遵守されなければならない。」という法格言は,Eの拘束力の根拠とされることがある。
A B C D E
1 道徳 法 物証 倫理 法
2 悪法 権利 自白 常識 慣習
3 道徳 権利 物証 倫理 契約
4 悪法 権利 自白 法 契約
5 倫理 法 証言 法 慣習
問題3 次の文章は,ある最高裁判所判決の一節である。文章中の空欄のどれにも当てはまらないものは,1~5のうちどれか。
「憲法84条は,課税要件及び租税の賦課徴収の手続がで明確に定められるべきことを規定するものであり,直接的には,租税についてによる規律の在り方を定めるものであるが,同条は,国民に対してを課し又はを制限するにはの根拠を要するという法原則を租税について厳格化した形で明文化したものというべきである。したがって,国,地方公共団体等が賦課徴収する租税以外の公課であっても,その性質に応じて,又はの範囲内で制定された条例によって適正な規律がされるべきものと解すべきであり,憲法84条に規定する租税ではないという理由だけから,そのすべてが当然に同条に現れた上記のような法原則のらち外にあると判断することは相当ではない。そして,租税以外の公課であっても,賦課徴収のの度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては,憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきである……。」
(最大判平成18年3月1日民集60巻2号587頁以下)
1 法律 2 予算 3 強制
4 権利 5 義務
問題4 国家公務員法102条1項が,その禁止対象とする「政治的行為」の範囲の確定を,独立行政委員会である人事院にゆだねていることの是非をめぐっては,次のようにさまざまな意見があり得る。それらのうち,内閣が行う高度に政治的な統治の作用と,一般の国家公務員による行政の作用とは質的に異なるという見地に基づく意見は,どれか。
1 憲法が「行政権はすべて内閣に属する」と規定しているにもかかわらず,公務員の人事管理を内閣のコントロールが及ばない独立行政委員会にゆだねるのは,違憲である。
2 公務員の政治的中立性を担保するためには,「政治的行為」の確定それ自体を政治問題にしないことが重要で,これを議会でなく人事院にゆだねるのは適切な立法政策である。
3 人事院の定める「政治的行為」の範囲は,同時に国家公務員法による処罰の範囲を定める構成要件にもなるため,憲法が予定する立法の委任の範囲を超えており,違憲である。
4 国家公務員法で人事官の弾劾訴追が国会の権限とされていることから,国会のコントロールが及んでおり,人事院規則は法律の忠実な具体化であるといえる。
5 行政各部の政治的中立性と内閣の議会に対する政治責任の問題は別であり,内閣の所轄する人事院に対して国会による民主的統制が及ばなくても,合憲である。
問題5 司法権の限界に関する次の記述のうち,最高裁判所の判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。
1 大学は,国公立であると私立であるとを問わず,自律的な法規範を有する特殊な部分社会を形成しているから,大学における法律上の紛争は,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,その自主的・自律的な解決にゆだねられる。
2 法律が,国会の両議院によって議決を経たものとされ,適法な手続によって公布されている場合,裁判所は両院の自主性を尊重して,法律制定の際の議事手続の瑕疵について審理しその有効無効を判断するべきではない。
3 政党の結社としての自主性にかんがみれば,政党の内部的自律権に属する行為は,法律に特別の定めのない限り尊重すべきであり,政党が党員に対してした処分は,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,裁判所の審判は及ばない。
4 衆議院の解散がいかなる場合に許されるかは,裁判所の判断すべき法的問題であるのに対して,これを行うために憲法上必要とされる助言と承認の手続に瑕疵があったか否かは,国家統治の基本に関する政治的な問題であるため,裁判所の審査権は及ばない。
5 具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても,宗教上の教義に関する判断などが必要で,事柄の性質上法令の適用により解決するのに適しないものは,裁判所の審判の対象となりえない。
問題6 外国人の憲法上の権利に関する次の記述のうち,最高裁判所の判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。
1 国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押なつを強制することは,憲法13条の趣旨に反して許されず,また,この自由の保障は我が国に在留する外国人にも等しく及ぶと解される。
2 日本に在留する外国人のうちでも,永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特に緊密な関係を持っている者に,法律によって地方公共団体の長,その議会の議員等に対する選挙権を付与することは,憲法上禁止されない。
3 普通地方公共団体は,条例等の定めるところによりその職員に在留外国人を採用することを認められているが,この際に,その処遇について合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることは許される。
4 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては,国はその政治的判断によって決定することができ,限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たって,自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される。
5 外国人は,憲法上日本に入国する自由を保障されてはいないが,憲法22条1項は,居住・移転の自由の一部として海外渡航の自由も保障していると解されるため,日本に在留する外国人が一時的に海外旅行のため出国し再入国する自由も認められる。
問題7 次の憲法の条文について一般に行われている説明として,妥当なものはどれか。
第31条 何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪はれ,又はその他の刑罰を科せられない。
1 「法律の定める手続」とあるので,条例によって刑罰その他についての手続を定めることは,許されていない。
2 日本国憲法は別に罪刑法定主義の条文をもっているので,本条においては,戦前にないがしろにされた刑事手続について,これを法律で定めることが要請されている。
3 この条文は刑事手続を念頭においており,行政手続などの非刑事手続については,その趣旨が適用されることはない。
4 刑事手続については,ただ単にこれを法律で定めればよいと規定しているのではなく,その手続が適正なものであることを要求している。
5 この条文は,ニューディール期のアメリカ連邦最高裁判所で猛威を振るった,手続的デュープロセス論を否定したものである。
問題8 次のア~オに挙げる行政行為のうち,私人の法律行為の法的効果を完成させる効果を有するもので,行政行為の分類上,「認可」とされるものはいくつあるか。
ア 電気事業法に基づいて経済産業大臣が行う電気事業の「許可」
イ ガス事業法に基づいて経済産業大臣が一般ガス事業者に対して行う供給約款の「認可」
ウ 銀行法に基づいて内閣総理大臣が行う銀行どうしの合併の「認可」
エ 建築基準法に基づいて建築主事が行う建築「確認」
オ 農地法に基づいて農業委員会が行う農地の所有権移転の「許可」
1 一つ 2 二つ 3 三つ
4 四つ 5 五つ
問題9 行政上の義務履行確保に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。
1 不作為義務,非代替的作為義務の履行にかかる直接強制,執行罰の仕組みについては,一般法の根拠はないので,法律もしくは条例による個別の根拠が必要である。
2 市水道局による水道サービスの料金を滞納している私人に対し,市は地方自治法に基づき,行政上の強制徴収の仕組みを用いて徴収することができる。
3 即時強制は法令により個別に根拠づけられている場合にのみ認められるが,いわゆる成田新法*による建物の実力封鎖,警察官職務執行法による武器の行使がその例である。
4 路上駐車禁止は,それ自体は不作為義務であるが,警察官等は,過失なくして移動を命じる相手方を知ることができない時には,移動命令を発することなく,当該駐車車両を移動することができる。
5 執行罰は行政上の義務履行確保の手法であるが,処罰としての実質を有するため,二重処罰禁止の法理から,刑事罰との併用ができないことが,その活用の障害となっている。
(注) *成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法
問題10 自動車の運転免許制度に関連した次の記述のうち,妥当なものはどれか。
1 自動車の運転免許は,免許を受けた者に対し,公道上で自動車を運転することができるという新たな法律上の地位を付与するものであるから,行政行為の分類理論でいうところの「特許」に該当する。
2 自動車の運転免許を交付する事務は,都道府県公安委員会が処理しているが,これは本来国の事務であり,国家公安委員会から都道府県公安委員会に対して機関委任されているところの「国の機関委任事務」に該当する。
3 自動車の運転免許の期限として,免許証に記載されている「○年○月○日まで有効」という条件は,行政行為の付款理論でいうところの「期限」に該当する。
4 自動車を運転する者は,運転中は必ず免許証を携帯しなければならないものとされているため,免許証を携帯せずに運転し,警察官の求めに対して直ちに免許証を提示できなかった場合は,無免許運転として扱われることになる。
5 道路交通法違反行為をしたことを理由として,公安委員会から運転免許停止処分を受けた者が,その取消しを求めて出訴している間に免許停止期間が終了した場合は,その行為による違反点数が残っていたとしても訴えの利益は消滅する。
問題11 行政手続法の定める聴聞に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 聴聞の主宰者の決定は,不利益処分の名あて人となるべき者(当事者)が聴聞の通知を受けた後,当事者と行政庁との合議によってなされる。
2 不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合には,行政庁は聴聞の通知や掲示を省略することができる。
3 文書閲覧請求権に基づき,当事者が行政庁に資料の閲覧を求めた場合であっても,正当な理由が認められる場合には,行政庁はその閲覧を拒むことができる。
4 聴聞の主宰者が聴聞の結果作成される報告書に当事者等の主張に理由があるとの意見を記載した場合には,行政庁が報告書の記載に反して不利益処分をすることは許されない。
5 聴聞を経て行政庁が行った不利益処分について,聴聞に参加した当事者は,当該処分について行政不服審査法による異議申立てをすることができる。
問題12 行政手続法による審査基準に関する次のア~オの記述のうち,妥当なものはいくつあるか。
ア 審査基準の設定は,行政手続法の委任に基づくものであり,申請者の権利にかかわるものであるから,審査基準も法規命令の一種である。
イ 不利益処分についての処分基準の設定が努力義務にとどまるのに対して,申請に対する処分についての審査基準の設定は,法的な義務であるとされている。
ウ 審査基準に違反して申請を拒否する処分をしても,その理由だけで処分が違法となることはないが,他の申請者と異なる取扱いをすることとなるため,比例原則違反として,違法となることがある。
エ 審査基準の設定には,意見公募手続の実施が義務付けられており,それに対しては,所定の期間内であれば,何人も意見を提出することができる。
オ 国の法律に基づいて地方公共団体の行政庁がする処分については,その法律を所管する主務大臣が審査基準を設定することとなる。
1 一つ 2 二つ 3 三つ
4 四つ 5 五つ
問題13 地方公共団体の活動への行政手続法の適用に関する次の記述のうち,妥当なものはどれか。
1 地方公共団体の職員がする行政指導であっても,法律に基づくものについては,行政手続法の行政指導に関する規定が適用される。
2 地方公共団体の制定する命令等であっても,法律の委任によって制定されるものについては,行政手続法の意見公募手続に関する規定が適用される。
3 地方公共団体の機関がする不利益処分については,それが自治事務に該当する場合には,行政手続法の不利益処分に関する規定は適用されない。
4 地方公共団体の条例にその根拠となる規定が置かれている届出の処理については,行政手続法の届出に関する規定は適用されない。
5 地方公共団体の機関がする「申請に対する処分」については,それが国の法定受託事務に該当する場合に限り,行政手続法の「申請に対する処分」の規定が適用される。
問題14 行政不服審査法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 処分についての審査請求は,処分庁以外の行政庁に対して行うものであるが,審査請求書を処分庁に提出して,処分庁を経由する形で行うこともできる。
2 行政不服審査法は,不服申立ての対象となる「行政庁の処分」につき,いわゆる一般概括主義をとっており,不服申立てをすることができない処分を,同法は列挙していない。
3 再審査請求は,処分についての審査請求の裁決により権利を害された第三者で,自己の責めに帰することができない理由により手続に参加できなかった者が行うものであるから,再審査請求期間についての規定はない。
4 行政不服審査法は,行政の適正な運営の確保も目的としているので,裁決で処分を変更する場合,審査庁は,審査請求人の不利益に当該処分を変更することを命じることもできる。
5 審査請求人の地位は,一身専属的な法的地位であるので,審査請求人が死亡した場合には,相続人等に承継されることはなく,当該審査請求は,却下裁決をもって終結する。
問題15 次の文章の空欄ア~キのうち空欄Aと同じ言葉が入るものはいくつあるか。
行政不服審査法に基づき審査請求がなされたとき,処分の効力,処分の執行,手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置を行うか行わないかに関して,行政不服審査法34条1項は,行政事件訴訟法と同様,A原則を選択している。私人の権利利益救済の観点からはア原則が望ましく,公益を重視する観点からはイ原則が望ましいといえる。
行政不服審査法の下においては,処分庁の上級行政庁である審査庁は職権によりウをすることができる。これに対して,処分庁の上級行政庁以外の審査庁は,審査請求人の申立てによりエとすることができるのみであり,裁判所と同様,職権によりオとすることはできない。これは,処分庁の上級行政庁である審査庁は,処分庁に対して一般的指揮監督権を有するから,職権に基づくカも一般的指揮権の発動として正当化されるという認識による。
なお,国税通則法105条1項のように,個別法においてキ原則に修正が加えられている場合もある。
1 一つ 2 二つ 3 三つ
4 四つ 5 五つ
(参考)国税通則法105条1項 「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立ては,その目的となった処分の効力,処分の執行又は
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