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不動産業界に影響が大きい宅建業法改正案ーー殿岡秀秋

2006-06-13 09:42:18 | Weblog
不動産受験新報   7月号/2006  6月1日発売 定価910円(税込み)より 

業界に影響が大きい
宅建業法改正案
住宅ローンアドバイザー 殿岡秀秋

 建築基準法改正案が国会へ
 内閣は,平成18年3月31日に「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部改正法律案」を通常国会に上程しました。法案は4月28日に国土交通委員会に付託されました。この法案には同時に宅地建物取引業法の改正案を含んでいます。
 この改正案が今開かれている通常国会で成立するかどうかは不明です。成立したとしても今年の宅建試験には影響はありません。
 しかし,成立すれば宅建業の実務に大きく影響する内容を含んでいますので,改正案について分かっている範囲で解説を試みることにします。
 重要事項の説明で改正案
 宅建業法35条は「重要事項の説明」について定めています。その内容は,宅建業者は宅地・建物の売買,交換,貸借の相手方,もしくは代理を依頼した者,または媒介での売買,交換,貸借の各当事者に対し,その者が取得し,または借りようとしている宅地・建物について契約が成立するまでの間に重要事項を記載した書面を交付して取引主任者をして説明しなければならない,となっています。
 改正案で追加されるのは,35条1項十三号で「宅地・建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関する保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令で定めるものを講ずるかどうか。そしてその措置を講ずる場合におけるその措置の概要」を書面を交付して説明しなければならなくなるのです。
 これは保証保険契約に入ることを宅建業者に義務付けたものではありません。宅建業者が売買または媒介する不動産の瑕疵を担保する保証保険契約に入っているかどうかを,相手方に説明しなければならないという定めです。保証保険契約に入っている場合には,その内容も説明しなければなりません。
 この改正案の狙いは,宅建業者が保証保険制度に未加入であることを説明すれば,買い手や借主の気持ちがなえて,購入や借入れを躊躇することがありえます。それをいやがる宅建業者が保証保険契約に入るという効果を狙ったものです。しかし,効果が間接的であることは否定できません。
 契約書面でも改正案
 宅建業者は自らまたは代理または媒介により契約を結ぶときは,相手方または当事者に書面を交付しなければなりません(契約書の交付義務)。それは宅建業法37条に定められています。その第1項第十一号を次のように変えようとしています。
「当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任についての定めがあるときは,その内容」(現行法)
「当該宅地若しくは建物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置ついての定めがあるときは,その内容」(改正法案)となっています。重要事項で説明したことを契約書にも反映させる形になっています。
 国土交通省は保険義務化に動く
 国会提出中の建築基準法改正案の中で行われる宅建業法改正では,宅建業者に保険等の義務付けを行わないで,保険等の措置を行っているか否かについて説明することにしています。しかし,国土交通省は新築住宅事業者に瑕疵保険制度の加入を義務付けることを検討しています。
 北側国土交通大臣の私的諮問機関である「住宅瑕疵担保責任研究会(座長=松本光平・元明海大学教授)が4月18日に初会合を開きました。そこで新築住宅の売主などに課せられた瑕疵担保責任履行の実効性を確保するための仕組み作りの検討を開始しました。2006年7月にも方向性を出すことにしています。
 これからの検討事項として,(1)通常の瑕疵による損害に対する保険制度について(保険制度統一の必要性など),(2)故意・重過失に起因する瑕疵による損害に対する仕組みについて(政府関与の必要性とその仕組みの検討など),(3)保険以外の賠償資力確保に活用可能な仕組みについて(供託,信託,債務保証など),(4)これらの仕組みが円滑に運用されるための環境整備(保険等の引受け主体の倒産等への対応など),以上4項目が挙がりました。
 今後の検討内容は,次のとおりです。
 (1)の保険制度については,①優良な住宅事業者に限定することなく,加入を希望する住宅事業者が加入できるなど,公平で安定した保険制度にすること,②住宅事業者が倒産した場合などに被害者が救済されたり,瑕疵による不具合が発生したときに保険金額が支払われる仕組みにすること,③保険加入の条件が住宅事業者の事故来歴,対象住宅の瑕疵による不具合発生の可能性などを反映したものにすること。
 (2)の故意・重過失に起因する瑕疵などは保険では実質的に対応していません。その場合に国がどのように関与するのか,関与する場合の仕組みについて検討すること。
 (3)の保険以外の仕組みでは,供託制度,信託制度,債務保証制度などを検討することにしています。
 同日の初会合では,(財)住宅保証機構が運用している住宅性能保証制度を取り上げて,これまで国交省が損害保険業界と行った議論で出された「保険を義務化するために必要となる条件整備に関する主な論点」を中心に議論しました。年間住宅供給戸数に対して13%程度の活用にとどまっている住宅性能保証機構による住宅性能保証制度への加入を義務化した場合,支払限度額(1棟当たり・1事故当たり・1事業者当たりなど)の設定や,保険プールの設置など「保険キャパシティーの確保」が必要であり,保険加入審査や損害査定などに関する第三者機関の活用が不可欠であるといった指摘がなされました。
 また,自動車の自賠責保険や原子力保険,タンカー油濁賠償保障契約など現在運用されている強制保険の仕組みを事例に挙げ,住宅性能保証制度への活用の可能性などを検討しました。
 保険義務付けの問題点
 保険義務付けは消費者を救済するのが目的です。新築住宅の売主などが倒産した場合に,買主を救済できることになります。
 しかし,問題点も多いのです。優良な業者ばかりならいいのですが,そうでない業者もいるわけですから,すべての事業者が保険に加入することになれば,保険会社はより多くのリスクを抱え込みます。これが保険料の高額化を招く恐れがあります。年間多くの住宅を供給する業者の負担は増してきます。価格に転嫁すれば住宅の価格アップ要因になるし,転嫁できなければ,企業の負担が増大します。
 また,故意・重過失の場合は保険での対応はしないという保険会社の姿勢に変化はありません。
 しかし,今回の耐震偽装事件の場合では,消費者にしてみれば故意・重過失こそ救済してほしいところです。これに対して,制度的にどこまで救済措置を作れるか,住宅瑕疵担保責任研究会で検討します。
 影響が大きい宅建業法47条改正
 今回の改正法案において宅建業者にとって最も影響が大きいのは,宅建業法47条の「業務に関する禁止事項」での改正内容です。
 現行法は,いたってシンプルです。
「第47条 宅地建物取引業者は,その業務に関して,宅地建物取引業者の相手方等に対し,次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 重要な事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為
二 不当に高額の報酬を要求する行為
三 手附について貸付けその他信用の供与をす ることにより契約の締結を誘引する行為」となっています。
 そして同法第80条で「第47条の規定に違反して同条第一号または第二号に掲げる行為をした者は,1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する」と定められています。
 現在,国会で審議されている改正案では,それらが次のように変わります。
「第47条 宅地建物取引業者は,その業務に関して,宅地建物取引業者の相手方等に対し,次に掲げる行為をしてはならない。
一 宅地若しくは建物の売買,交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し,又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため,次のいずれかに該当する事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為
イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項
ロ 第35条の2各号に掲げる事項
ハ 第37条第1項各号又は第2項各号(第一号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか,宅地若しくは建物の所在,規模,形質,現在若しくは将来の利用の制限,環境,交通等の利便,代金,借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて,宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの
二 不当に高額の報酬を要求する行為
三 手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為」
というように改正案が出ています。
 これまで罰則規定がなかった35条の重要事項説明違反が,47条違反になるかもしれないのです。そして同時に罰則が強化されることになっています。
 法人は1億円の罰金も
 新たに第79条の2を設けて,「第47条の規定に違反して同条第一号に掲げる行為をした者は,2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する」と罰則が重くなりました。
「第84条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関し次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは,その行為者を罰するほか,その法人に対して当該各号に定める罰金刑を科する。
一 第79条又は第79条の2 1億円以下の罰金刑
二 第80条又は第81条から第83条まで(同条第1項第三号を除く。)各本条の罰金刑」
となります。 
 法人には1億円の罰金刑が科されることになるのです。
 47条改正の問題点
 改正法案(宅建業法47条一号ニ)では,「宅地若しくは建物の所在,規模,形質,現在若しくは将来の利用の制限,環境,交通等の利便,代金,借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件」について対象になります。
 交通等の利便で,確定していない鉄道の開通などを,さも近い将来にありそうなことをいう場合などは47条違反になるでしょう。しかし,環境となると何を指しているのか分かりにくいのです。地球環境でしょうか。室内環境でしょうか。漠然としすぎています。
 条文の解釈次第では,どんなことでも問題になりかねません。不動産取引に関するあらゆる事項を対象にしている条文になっています。
 しかも後段を見ていくと,次のようになっています。
「又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて,宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」
「相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」が特に問題です。何が重要な影響かというと,相手方の判断だというのです。取引の相手方の主観的な判断に影響を及ぼすことが何であるかは,とても想定しにくいのではないでしょうか。特にリスクを避けようとする良心的な宅建業者ほど思い悩むことになるのではないでしょうか。
 成立すれば年内施行も
 建築基準法改正法案が成立した場合には,公布の日から1年以内に施行されます。
 ただし,宅建業法関連は公布の日から起算して6カ月を超えない範囲内で政令で定める日となっていますから,早ければ年内施行もありえます。
 通常国会の行方を注視していきたいと思います。
 超高層マンション,全国で501棟計画
 終わりに,超高層マンションの今後の動向を見ておきましょう。
 不動産経済研究所の調べによりますと,全国で2006年以降に完成を予定している超高層マンション(20階建て以上)は501棟,戸数にして15万7,110戸になることが判明しました。これは2005年3月末の前回調査に比べて1万7,227戸の増加となりました。
 首都圏では2006年以降に建設される超高層マンションは337棟・12万145戸,そのうち東京23区内は227棟・8万4,650戸となっています。これは首都圏全体の70.5%です。
 近畿圏は94棟・2万4,560戸で,そのうち大阪市内は52棟・1万4,070戸となっています。
 福岡県では17棟・2,864戸,札幌市8棟・1,701戸,愛知県7棟・1,371戸,宮城県5棟・931戸となっています。
 増加の原因は①都心部で大規模用地(工場,公的セクターなど)が放出されていること,②各地で駅前再開発が盛んに行われていること,③超高層マンションの販売が好調であること―を挙げています。
 さらに都心部志向の高まり,都市再生政策効果による「緊急整備地区」での大規模超高層事業,大規模工場跡地の複合再開発,また地方都市での中心市街地活性化のシンボルタワーとして,今後も超高層マンションの建設・計画は増加する見込みであると同研究所はみています。


有望民間不動産資格を取ろう 住宅ローンアドバイザーーー吉岡達也

2006-06-01 09:33:52 | Weblog
特 集1 有望民間不動産
資格を取ろう!
住宅ローンアドバイザー
住宅新報編集長 吉岡達也

はじめに
「一生の買い物」である住宅を取得しようとしている一般消費者にとって,自分に合った住宅ローンを選ぶことは,最重要テーマの1つといえるだろう。
 住宅ローン商品は近年,ますます多様化・複雑化していることから,その選択は難しくなっているというのが実態だ。こうした住宅取得予定者に対して,住宅ローン商品に関する情報を適切に助言する資格が,「住宅ローンアドバイザー」だ。(財)住宅金融普及協会が認定する住宅ローンアドバイザー講座(基礎コース・応用コース)がこのほど修了,4月から第1期生が登場した。平成17年2月の初の養成講座基礎コース開催から1年余。同年11月から平成18年1月にかけて全国で開催された同講座応用コース「効果測定」に合格した受講者が,同協会の登録を経て,資格者としての第一歩を踏み出した。住宅・不動産営業現場での新しい必須資格として注目を浴びている住宅ローンアドバイザー制度を紹介する。
「基礎・応用」両コース修了で資格者に
 (財)住宅金融普及協会が認定する住宅ローンアドバイザー養成講座は,基礎コースと応用コースの2コースで構成されている(いずれも1日コース)。
 講義の終了後に「効果測定」が実施され,2つのコースで一定以上の得点を取得した受講者に対して,修了証が交付される。
 養成講座のプログラムは,
① 住宅ローンアドバイザーの必要性
② コンプライアンス
③ 個人情報保護法
④ 住宅ローンの説明責任
⑤ 各種住宅ローンの仕組み
⑥ 住宅金融公庫「フラット35」の内容
⑦ 住宅に関する税金
――などの項目で構成されている。
 特に応用コースでは,基礎コースで学んだ個人情報保護法の内容や住宅に関する税金の知識などをベースに,一歩踏み込んだ形で最新の知識を学ぶ。
 具体的には,
① コンプライアンス
② 住宅ローン相談の流れ
③ 借入額決定までのプロセス
④ 住宅ローン商品と手続の流れ
⑤ 繰上返済と借換え
⑥ ライフプランと家計から見た金利タイプの選び方と返し方
⑦ 住宅ローンの計算
――など。
 このうちコンプライアンスの講義では,コンプライアンスの今日的な必要性をはじめ,倫理・行為規範の遵守などについて解説。また,住宅ローンアドバイザーとして住宅購入希望者にアドバイスを行う際の,個人情報保護に関する承諾を取り付ける「事前ヒアリングシート」の雛型(ひながた)などを確認しながら,より実践的なアドバイス業務を学んでいく。
 17年2~3月にかけて東京,大阪,名古屋の3都市で開かれた第1回の基礎コースには,2,000人の定員をはるかに上回る応募が殺到。多数のキャンセル待ちも出て,同制度への関心の高さがうかがえる結果となった。また同年7月の2回目の基礎コースでも,3,000人の募集に対して短期間のうちに各会場で定員を超えた。
 初の住宅ローンアドバイザー応用コースは,17年11月から今年1月に開催された。基礎コースを修了した5,232人が申し込み,受講者数は4,967人。効果測定で26問中20問以上正解かつ計算問題6問中4問以上を正解した4,192人が2月15日に発表され,修了した。
 効果測定に合格したうえで住宅ローンアドバイザー登録を行うと,住宅金融普及協会認定の住宅ローンアドバイザーとしてローンアドバイスを行うことができるほか,登録者証が渡される。また,年5回の情報紙『住宅ローンアドバイザー通信』やオリジナル住宅ローン計算ソフト(CD-ROM)が送られる。
男性が8割以上 目立つ建設工事業
 両講座修了者の属性としては,男女別では男性が85.9%,女性14.1%と圧倒的に男性が多い。
 業種別に見ると,木造住宅建設工事業が最も多く全体の35.4%を占めており,不動産代理業・仲介業(19.5%),プレハブ住宅建築業(10.7%),マンション建築業(10.4%)と続く。その他,銀行,政府系金融機関といった金融関係や,経営コンサルタント,税理士といった,いわゆる独立開業者の受講も目立つ。
 住宅ローンアドバイザー養成講座を受講したきっかけとして,最も多かったのは,「勤務先から指示されたため」(38.6%)で,以下,「自分自身のスキルアップのため」(29.6%),「顧客の住宅ローンについての質問に的確に回答するため」(21.3%),「住宅ローンアドバイザーが話題になっていたため」(8.1%)と続いている。
 また,保有資格としては,宅地建物取引主任者が1,903人,全体の45.4%を占めている。その他には,建築士(9.9%),2級ファイナンシャル・プランニング技能士(7.3%),AFP(7.0%),CFP(2.6%)。不動産鑑定士資格者も58人となっている。
 保有資格のなかで建築士が多い点について,住宅金融普及協会では「従来の家を建築する人,家を販売する人,といった,いわゆる分業的な流れから,トータル的に住宅を売っていくという,近年の傾向が表れているのではないか」と分析している。
金利への興味が制度への関心に
「ここ数カ月,景気回復を背景に金利上昇の動きが見えてきているなか,改めて住宅ローンへの関心が高まりつつある。これを受けた形で,新制度である住宅ローンアドバイザー制度に関する問い合わせも日を追って増加傾向だ」(住宅金融普及協会)。
 住宅金融公庫が平成19年4月に独立行政法人住宅金融支援機構となり,住宅ローンの証券化に特化していく。こうした流れのなかで民間金融機関のローンの比重がさらに高まっており,商品がより多様化している。
 現在,住宅ローンを取り扱う機関は,民間金融機関のほか,ノンバンク,財形住宅融資などが挙げられる。
 このうち民間金融機関の最大の特徴は,金利タイプが豊富であるということだ。物件購入やリフォームだけでなく,「借換え」にも対応する。しかし,借入時の要件が厳しいという性質も指摘されてきた。またノンバンクの特徴としては,民間金融機関のように給与引落口座などの指定がなく,借り入れる本人への要件は柔軟だ。
 さらに,サラリーマンのみを対象とする財形住宅融資は,5年ごとに変動する固定金利だ。「フラット35」と併せて融資を受けることができ,またローン申込時に住宅ローン金利を決定することが可能だ。
 今年に入ってからも,住宅ローンの話題は連日紙面をにぎわしている。一例を挙げれば,みずほ銀行では1月から「長期固定金利キャンペーン」をスタート,15年固定金利の新商品で2.65%の金利を提示するなど,低金利のメリットを打ち出している。
 三菱東京UFJ銀行が3月に打ち出したのは,7大疾病補償付きの「ビッグ&セブン」。がんなどのいわゆる3大疾病に加え,生活習慣病にも対応。契約者が該当する病気で1カ月以上休んだ際には,翌月以降の住宅ローン返済を損害保険会社が肩代わりするというものだ。
 また三井住友銀行は17年秋,3大疾病と診断されると,一定条件下で返済免除となる住宅ローン商品を発売し,注目を浴びている。
 さらに,大手銀行などでは金利先高感を反映して,長期固定低利型に注目が集まっており,申込件数を伸ばしている。今後も,商品の種類は,より広がっていくことが予想されるところだ。
ローン情報はインターネットで
 住宅金融公庫が住宅取得予定者および住宅取得者を対象に行った「住宅ローンに関する顧客アンケート」調査結果によると,住宅ローンに関する情報入手先については,住宅ローン利用予定者の場合(複数回答)では,インターネットが66.0%と一番多い結果となっており,次いで金融機関(50.8%),住宅販売会社(46.6%),親族や友人・知人(42.1%),住宅情報誌(35.6%)の順となっている。
 また,住宅ローン利用者の場合は,住宅販売会社が58.1%と最も多く,以下,インターネット(37.5%),金融機関(36.2%),新聞・広告・チラシ(21.5%),親族・友人・知人(19.7%)となっている。
 また,住宅ローン利用予定者および住宅ローン利用者ともに40%以上が,返済中の金利上昇に伴う返済額の増加が気になるとしている一方で,変動・固定期間選択型の民間住宅ローン利用者の20%以上が,「金利変動ルールやリスクについては知らない」と回答しており,住宅ローンに関する商品知識の底辺拡大の必要性を感じさせる結果となっている。
 また,17年5月の国会での国土交通委員会の答弁でも,国の議論として初めて住宅ローンアドバイザーが取り上げられた。
 このなかで政府参考人の国交省・山本繁太郎住宅局長は「住宅の生産者とか不動産事業者とか,取引を応援する方々が住宅ローンについてきちんとした知識を得て,お客さまのニーズに応えられるようにする,住宅ローンアドバイザーというような知識を持った人をきちんと育成していきたい」「住宅金融普及協会で一定の講習を用意していて,その講習を受講した方に対してきちんとアドバイザーとしての知識を身につけられたという位置づけをしたい。そういう方が不動産事業者や住宅供給事業者のなかで仕事をしていくという形になります」と答弁するなど,住宅ローンアドバイザー制度の重要性を明確化した流れとなっている。
資格取得者の期待高まる
 住宅ローンアドバイザー講座修了者からは,今後業務などで積極的に活用していきたいという声は大きい。とりわけ,アドバイザー制度の主な担い手となるのは,住宅メーカーの営業担当者や不動産販売業者となる。
 大手住宅メーカーに勤務している東京都の30歳代男性は「今回は会社から言われて受講することになった。最初は正直言って,それほどの必要性を感じていなかったものの,普段何気なく行っている自分の業務の一端を系統立てて学ぶ機会を得たことは,大きな収穫だった」と振り返る。
「これまでは住宅ローンを住宅購入希望者に説明する場合に,よって立つものがなかった。それだけに今回住宅ローンアドバイザー資格という肩書きを得たことによって顧客の方に安心してもらえ,よりスムーズな営業活動ができることになると思う」と力を込める。
 また,横浜市の不動産会社に勤務する40歳代の男性も,住宅ローンアドバイザーを業務につなげていきたいと将来を見据える。
「何と言っても役立ったのは,住宅ローンの具体的なケーススタディー。こういう機会がなければ,なかなか学ぶ機会がないので,とても参考になった。今回の講座を活かし,名実ともに実力のあるアドバイザーを目指したい」と話す。
「正直言って今まで知らなかったことも多かったし,融資額の計算などの実習も参考になった。最近,よく取り上げられる個人情報保護についても,どこか他人事のように思えていただけに,今回の講座で学んだことを活かして,書物などに当たっていきたい」と意欲をみせる。
 住宅ローンアドバイザーの将来像としては,不動産と金融の融合が叫ばれるなかで,アドバイザー資格を得たファイナンシャル・プランナーや宅地建物取引主任者が,資格者相互の力をクロスオーバーさせていくことがより求められている。それぞれの専門知識を持ち寄りながら,日本の住宅ローン市場を活性化していくことにより,業界全体のレベルアップを図っていこうという考え方だ。
 一方,これまで住宅関係に携わっていなかった層からの流入もポイントとなる。
 今回,養成講座修了者のうち主婦は13人と全体の0.3%,学生は2人にとどまった。住宅金融普及協会では「主婦や学生など,幅広いエンドユーザー層が住宅ローンアドバイザーとして活躍していくことが,ひいては住宅・不動産業界全体の活性化という意味でも非常に重要なことではないか」と話している。
18年度は両コース2回にわたり開催
 住宅金融普及協会によると,18年度は基礎コース,応用コースとも年2回開催される予定だ。会場も47都道府県での開催を見込んでいる。
 6,11月に基礎コース,7,12月に応用コースを実施する。
 (財)住宅金融普及協会のホームページは,
http:/www.sumai‐info.com
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