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不動産受験新報2007年12月号 植杉伸介

2007-12-05 09:00:00 | Weblog
住宅新報社・月刊「不動産受験新報」20007年12月号
       (毎月1日発売 定価910円)


特集2
新傾向に強くなる
行政書士直前対策
記述式
民法
住宅新報社講師 植杉伸介

予想問題1
 親権を行う者(親権者)は,未成年の子の財産を管理する権限を有するが,その管理権を行使する場合に課せられる注意義務の程度は,どのようなものであるか,40字程度で記述しなさい。
 



解 説
 事務処理等を行う場合の注意義務として,民法に定められているものは,「自己のためにするのと同一の注意義務」と「善良な管理者の注意義務(略して,善管注意義務とよばれる)」に大別されます。
「善管注意義務」とは,その人の職業や社会的地位等から考えて普通に要求される程度の注意義務をいいます。
 これに対し,「自己のためにするのと同一の注意義務」とは,自己の財産を管理し,または自己の事務を処理するに当たって用いる程度の注意義務をいい,善管注意義務より注意義務の程度が軽減されています。他人の財産を管理するのですが,自分の財産と同様に少しくらい雑に扱ってもいいですよということです。
 本来,他人のために事務を処理する場合には,「善管注意義務」が課せられるのが原則です(民法644条,852条,869条,1012条など)。
 しかし,親権者が未成年の子の財産を管理する場合については,「自己のためにするのと同一の注意義務」をもってすればよいとされています(827条)。親権者の管理権の内容は,きわめて広範囲にわたるうえ,親子という特別な血縁関係がある間柄においては,注意義務の程度を軽減してよいと考えられたからです。
 なお,親権者の管理権のほか,民法上,「自己のためにするのと同一の注意義務」が課せられている場合としては,無償で寄託を受けた者の保管義務(659条)と相続人による相続財産の管理(918条1項)を押さえておくとよいでしょう。これ以外の場合は,善管注意義務を負うと覚えておいて大丈夫です。
 なお,相続人による相続財産の管理について定める民法918条1項では,「その固有財産におけるのと同一の注意をもって」という表現が用いられていますが,これは「自己のためにするのと同一の注意」と同じ意味であると考えてかまいません。
解答例
 
 親権者は,自己のためにするのと同一の注意をもって,その管理権を行わなければならない。(42字)
予想問題2
 相続は,被相続人の死亡によって開始するが,相続人は,一定期間内であれば,相続の承認(単純承認若しくは限定承認)又は放棄をすることができる。相続人は,原則として,いつまでに相続の承認又は放棄をしなければならないか,40字程度で記述しなさい。
 



解 説
 相続人は,相続の承認・放棄をすることができますが,相続の承認・放棄をすべき期間には一定の制限があります。相続の承認・放棄をしない状態が続くと,相続財産をめぐる法律関係がいつまでも安定せず,妥当ではないからです。
 しかし,相続の承認・放棄をするためには,相続財産を調査する必要があるので,その意思を決定するまでにある程度の猶予期間を与える必要があります。
 そこで,民法は,相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に,相続の承認・放棄をしなければならないものとしています(915条1項)。
 解答に当たっては,「3カ月」という数字を正確に示す必要があることはいうまでもありませんが,その「3カ月」の起算点を示すことも重要です。起算点は,「相続の開始があった時から」ではなく,「相続の開始があったことを知った時から」となっています。
 たとえば,平成19年11月1日に被相続人が死亡したけれど,相続人が海外旅行中であったため,被相続人が死亡した事実を知ったのは,平成19年11月7日であった場合,「3カ月」の期間は平成19年11月7日から計算することになります。
 実際の採点において減点されることはないでしょうが,「相続の開始があったことを知った時」という文言の末尾の「時」は,漢字で書いたほうが無難です。法律の条文等では,一般的に「時」と「とき」を使い分けています。一定の時点をあらわす場合は「時」を用い,「場合」と同じような意味をあらわす場合は「とき」を用いるのです。
 なお,本問には関係ありませんが,「場合」と「とき」は,仮定的条件が2つ重なるときには,大きい条件に「場合」を,小さい条件に「とき」を用いるという使い分けがされています。
解答例
 
 自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内にしなければならない。(40字)
予想問題3
 成年被後見人が,遺言をすることができるのはどのような場合であるか,40字程度で記述しなさい。
 



解 説
 遺言について,制限行為能力者制度をそのまま適用するのは適当ではありません。遺言は,遺言をする本人の意思を尊重する制度なので,法定代理人が代理して遺言したり,保護者の同意を得て遺言したりするのは適切ではないからです。
 それゆえ,未成年者については,15歳になれば自分1人で遺言できますし(961条),被保佐人・被補助人は保護者の同意なく遺言できることとされています(962条)。
 成年被後見人についても,本人による遺言が可能ですが,さすがに意思能力を欠いた状態のままでの遺言を認めることはできません。
 しかし,成年被後見人であっても,病状などによっては,一時的に事理弁識能力を回復することがあるので,成年被後見人の遺言は,そのような時に限って認められています。ただ,事理弁識能力が回復した状態であるかどうかは必ずしも明らかでないので,遺言の際には,医師2人以上が立ち会うことが必要とされています(973条1項)。
解答例
 
 成年被後見人が事理弁識能力を一時回復した時において,医師2人以上の立会いがある場合。(42字)



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不動産受験新報2007年12月号 行政書士直前対策 植杉伸介

2007-12-05 09:00:00 | Weblog
住宅新報社・月刊「不動産受験新報」20007年12月号
       (毎月1日発売 定価910円)


特集2
新傾向に強くなる
行政書士直前対策
こうすれば記述式で点が取れる
住宅新報社講師 植杉伸介

□平成18年度本試験問題
 記述式問題とは,一定の設問に対し40字程度の文章で解答するという形式の問題をいいます。このような出題形式は,平成18年度本試験から新たに導入されたものなので,記述式問題に対する傾向と対策を考えるためには,平成18年度本試験の問題を見ておく必要があります。
 平成18年度本試験では,行政法1問,民法2問という内訳で,次のような記述式問題が3問出題されました。
 なお,問題のあとに示した解答例は,試験機関が公表したものです。
 
平成18年度本試験 問題44
 保健所長がした食品衛生法に基づく飲食店の営業許可について,近隣の飲食店営業者が営業上の利益を害されるとして取消訴訟を提起した場合,裁判所は,どのような理由で,どのような判決をすることとなるか。40字程度で記述しなさい。
 
【解答例】 原告は,法律上の利益を有せず,原告適格を欠くという理由で,却下の判決をする。(38字)
 
平成18年度本試験 問題45
 売買契約において買主が売主に解約手付を交付した場合に,このことによって,買主は,どのような要件のもとであれば,売買契約を解除することができるか。40字程度で記述しなさい。
 
 
【解答例】 相手方が契約の履行に着手するまでに,手付を放棄して,契約解除の意思表示をする。(39字)
 
平成18年度本試験 問題46
 AはBに対して3000万円の貸金債権を有しており,この債権を被担保債権としてB所有の建物に抵当権の設定を受けた。ところが,この建物は,抵当権設定後,Cの放火により焼失してしまった。BがCに対して損害賠償の請求ができる場合に,Aは,どのような要件のもとであれば,この損害賠償請求権に対して抵当権の効力を及ぼすことができるか。40字程度で記述しなさい。
 
【解答例】 CがBに対して払い渡す前に,損害賠償請求権をAが差し押さえなければならない。(38字)
□記述式問題で求められる知識レベル
 上に示した平成18年度本試験の問題44は,行政訴訟における原告適格の有無を問う問題であり,択一試験対策としても勉強するレベルの内容です。
 また,問題45と問題46は,いずれも民法上の制度についてその要件を問うものですが,これも,択一式問題において問われることがある論点であり,知識レベルとしては,それほど高度なものではありません。
 このように,平成18年度本試験を見る限りは,記述式問題で求められている知識は,択一試験と同レベルであるといえます。記述式問題は,受験生の論理的・法的思考力を試すことに主眼があるので,今後も択一レベルを超えた細かい知識が出題されることはないでしょう。
 したがって,知識の面では,択一試験対策としての勉強をしっかりやっていれば大丈夫です。テキストと条文を中心に知識のインプットを図ってください。
□記述式問題に特有の対策
 上で述べたとおり,知識レベルとしては,基本的に択一試験対策用の勉強でカバーすることができます。しかし,記述式問題には,択一式問題とは異なる要素があるので,択一試験対策用の勉強にプラスアルファして,次のような点に留意して学習する必要があります。
(1) キーワードを正確に押さえる
 平成18年度本試験の問題44の解答においては,「原告適格」,「法律上の利益」,「却下判決」などのキーワードを正確に記述する必要があります。
 択一式問題では,問題文に出てくる用語の意味さえ分かれば解答できます。用語の文字を一言一句正確に覚えていなくても,何とかなります。しかし,記述式問題では,キーワードになる用語を正確に押さえ,これを漢字で書けるようにしておかなければなりません。
 キーワードになる用語を正確に押さえるためには,日頃テキストを読むときなどに,重要な用語をマーカーで塗って目立つようにしておくとともに,特に重要な用語や覚えにくい用語については,単語帳などに書き出しておくとよいでしょう。
(2) 解釈論に注意
 平成18年度本試験の問題45と問題46は,いずれも民法の問題ですが,条文を丸暗記して,そのまま記述しても解答としては,やや不完全になります。条文が出発点になるものの,条文の文言について一定の解釈が必要なのです。
 たとえば,問題45の場合,手付解約の要件について,民法の条文では「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは」とありますが(民法557条1項),これは解釈により,解除の相手方の履行の着手を意味し,解除する側が履行に着手していてもかまわないとされています。この点は,解答の文章の中に,ぜひ取り入れるべきでしょう。
 また,問題46については,抵当権の物上代位性を定めた民法の条文には,「その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」とありますが(民法372条,304条),この差押えは,第三者が行った差押えでは足らず,抵当権者自身による差押えが必要であるとする判例があります(大連判大12・4・7)。本問では,この点を解答の文章の中に取り入れておきたいところです。
 こうして見ると,民法の記述式問題では,条文だけでは解答が完結せず,判例・学説による条文の解釈論等についてプラスアルファの記述が必要な問題が出題されているといえます。
 したがって,受験対策としては,重要な論点については,解釈論にも気をつけて要件等を正確に押さえておくことが必要です。特に判例が要注意です。有名な判例は必ずチェックしておいてください。
(3) 論理の流れに着目する
 択一式問題は,ある論点の結論部分だけを覚えておけば解答できますが,記述式問題では,結論に至る論理的な筋道を文章で示すことが求められることが多くあります。
 したがって,テキストを読む際は,論点について自分の頭で理解しつつ,結論を導き出す理由づけの部分にも着目する必要があります。
(4) 文章を書く練習をする
 記述式問題では,解答を文章で示さなければなりません。頭の中では分かっていても,文章で表現できなければ合格できないのです。
 法律の文章をたくさん読むことによって,文章を書く能力も多少はアップしますが,やはり実際に書く訓練をしないと真の実力は養成されません。40字程度の字数で,文章をうまくまとめることはそう簡単なことではないからです。
 現時点では,記述式問題の過去問は1年分しか存在しないので,予想問題を解くことによって書く練習をすることになります。本誌に掲載されている予想問題や市販の予想問題集などで,解答を作成する訓練をしてください。
□解答作成上の注意
 記述式問題の解答を作成する場合は,次のような点に注意してください。
(1) 正しい日本語を書く
 解答の文章において,必要なキーワードが示されており,問題に関連することが書かれていても,日本語の文章としておかしければ,減点されるおそれがあります。
 特に注意したいのは,主語と述語がしっかり対応しているかという点です。自分ではきちんと解答したつもりでも,主語と述語がかみ合っていない場合は,文章の意味が採点者に正しく伝わりません。
 日本語としておかしくないかという点は,自分ではなかなか気づかないことがあります。予想問題の解答を作成したときは,その解答を他人に見てもらうといいでしょう。解答を他人に見せるのは,日本語としての正しさをチェックしてもらうためですから,その相手は,法律知識のない人でもかまいません。
(2) 字数は35字~45字で
 本試験の解答欄のマス目は,45字分までしかないので,字数の上限は45字です。
 下限については,明確な基準があるわけではありませんが,35字くらいにしておくのが無難でしょう。
 実際に書いてみると分かりますが,35字~45字という字数は,案外少ないものです。関連する知識をたくさん詰め込もうとすると,すぐに字数がオーバーしてしまいます。問題の核心部分について簡潔に答えることを心がけてください。
(3) 問われていることに答える
 解答として作成した文章をそれだけで読めば,正しい内容であったとしても,問題で問われていることや要求されていることに答えていない場合は,減点の対象となります。
 たとえば,平成18年度本試験の問題44には,「……裁判所は,どのような理由で,どのような判決をすることとなるか……」とあります。この問題の解答としては,「どのような判決をするか」という点だけでなく,それは「どのような理由」によるかということも求められているのです。
 したがって,解答を作成する際は,この問題文に沿って,「……という理由で,……の判決をする」という文章にするべきです。
 それから,「問われていることに答える」ということは,「問われていないことは書かない」ということも意味します。
 たとえば,平成18年度本試験の問題45の問題文には,「買主は,どのような要件のもとであれば,売買契約を解除することができるか」とあり,あくまで買主が解除する場合だけを問題にしています。それなのに,解答において「売主は手付の倍額を返還して解除できる」ということを書くと(これを書くと字数もオーバーしますが),余計な記述として減点されることになるでしょう。
(4) 問題文をよく読む
 上で述べた「問われていることに答える」という話にも関連することですが,問題を正確に把握しないと,的確な解答を作成することはできません。特に,事例問題では,事例の中の登場人物を解答においても示すことになるので,問題文をよく読み,事例を自分なりに図解するなどして正確に把握するようにしてください。



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